【R18】ハロー!ジャンキーズ

藤原紫音

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第2部

第34話「フェオドラに外のニュースを聞く顛末」

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 スタジオに偽装したセーフハウスは、撮影室とベッドルーム、キッチン、使われていないオフィスがあって、窓にはディスプレイシートが貼られていて、ノリロ地区ではない景色が映し出される。
 ネットワークも閉域になっていて、域内網いきないもうからシャドウマウントを経由して外部と通信する。ぼくたちは勝手に出入りできず、ときどきヴィクトールに似たドレッドヘアの男が食料や酒、ドラッグを運んでくる。

 ぼくたちは外で雨が降ってるのか雪が降っているのか、昼なのか夜なのかもわからないまま、閉ざされた室内で何日も過ごす。
 毎日決められた配信時間に、ミサ、ハルカ、セイラの三人を相手に六時間近くセックスに励み、それ以外の時間も服を着ることなく、電脳ドラッグをキメてジアルジアをがぶ飲みし、ユリアやライラたちとだらだらとセックスして過ごす。ぼくが撒き散らす大量の体液は、シースルーのベビードールを羽織ったレピタが掃除する。

 そんな怠惰と情欲にまみれた生活を最初は理性的に畏れていたけれど、性欲の赴くまま、求められるがまま女に溺れる自分を叱ったり正したりしてくれるひともいないのだから、やがて難しく考えることをやめてしまう。なにもしないで、ソファに座ってココアを飲んでいると、ネムやサチのことを思い出して苦しくなる。ハルトやベツ、ボリス、ヴィクトール、セーフハウスで一緒に生活していた陽気なジャンキーたちのことが心配になる。セックスしていれば、痛くて苦しい想い出から逃れられる。

 ある日の夜、いや昼だったか。

 乱交に疲れて撮影室のソファで眠りこけていたぼくをセイラが跨ぎ、勃起したままの陰茎をちゅるりと幼い割れ目に沈める。少女たちが配信時間以外にじぶんから求めるのは初めてだったから、ぼくは少し驚く。他の女たちはレピタ以外は裸のままいぎたなく眠っていて、静かな撮影室に濡れた肉の音だけが響く。

「どうしたの? 眠れない?」
 ぼくが訊くと、セイラは切ない表情でぼくを見下ろして首を横にふる。グレージュのカールした髪がふわふわと甘い香りを漂わせる。
「あたし、今日、誕生日なんです」
「そうなんだ、おめでとう。何歳になったの?」
「十二歳」
「お姉ちゃんだね」

 北欧系の顔立ちだから、もっと上だと思っていたけれど、本人の口から年齢を聞くと罪悪感が増す。透き通るような肌に手を滑らせて、ほんのりふくらみかけた胸を撫でる。小さな乳首を摘む。はじめの頃はくすぐったがっていたのに、すっかり開発されて、胸を張って敏感に肩を震わせる。

「あたしがいたエドガー・タウンの学習施設は、女子寮なんです」
「女子寮ってことは、女の子だけ?」
「そう、ミサとハルカは同じ部屋」
「脱走したんだよね?」
「はい……」
「どうやって?」
「女子寮の隣の……エンライの倉庫で、爆破テロがあって、停電したから、そのすきに」
「いつ頃?」
「去年の六月ごろ」

 その爆破テロの犯人はベツだ。三億円事件作戦の撒き餌として、人的被害を避けたテロを起こしていた。セイラがじぶんのことを話すのは初めてだ。少女たちはセックスに関わること以外、ぼくたちとあまり会話をしない。

「逃げたのは……いいんだけど、行く……あても、なく……はーっ、あっ、ぐっ」

 セイラが絶頂する。ぼくの頭を抱いて、ガクガクと震える。あとの二人と違って、セイラはほとんど声を出して喘がない。イクときも声を堪える。快感を我慢している。ぼくはセイラの乳首を舐める。首筋を舐める。舌を絡める。

「それで、エゼキエルに捕まったの?」
「ううん、それはずっと後。ツェムナヤ・ドリナでレンタルバイザー使って、ミサとハルカと三人でエッチなことして、配信してました。あたしたちみたいな子が集まるバラックがあって、ずっとそこに住んでて……。稼いだお金でドラッグ買って、そのときエゼキエルの人から割の良い仕事があるって聞いて、怖かったんですけど……外は寒いし」
「生身だもんね」
「はーっ、でも……よかった。リオくん、顔が綺麗だから、好き。エッチも、きもちいいし、ずっと、まいにち、こうしていられたら……、あン」

 つながったままセイラの身体を持ち上げて歩く。歩く振動でセイラの子宮を突き上げる。出窓に座らせて見つめ合う。振り子のように腰を振る。キスをする。生々しい体液の匂いが結合から立ち上る。ディスプレイシートの立体映像は、覗き込むと霧に包まれた地上もみえる。クルグリー・プルドのキャンプにいた頃、毎晩眺めていた頽廃的な風景に似ていて、懐かしくなる。

「子供でも、きもちいい……ですか? まあまあ?」
「きもちいいよ……めちゃくちゃ」
「あたしも、ライラさんみたいな、オトナだったら……リオくんと……」

 出窓で向かい合ったまま、ぼくはセイラの胎内に射精する。一回でコップ半分くらい噴射するぼくの精液を受け止める余裕が十二歳になったばかりの少女にあるはずもなく、結合からぶじゅるるるっと泡を吹いて精液が溢れ出す。レピタがタオルを持って近づく。

「レピタ、ぼくのお尻に挿れて」
「はい、リオ様」

 そう命令すると、レピタは人造ペニスをぼくのお尻に突き挿れる。先端がぼくの前立腺と精嚢をぐるぐるとえぐり、ぼくはセイラの膣にびゅくびゅくと精を押し出される。前も後ろもきもちいい。レピタがぼくの背中を舐めて、鳥肌が立つ。

「アハハ、すごい、硬くなった」
 セイラが笑う。笑った振動が陰茎に伝わる。
「大人に、なりたいの?」
「うん、大人になったら、こんなコソコソしなくていいし」
「セイラちゃんは、美人になるね。今も天使みたいだけど」
「嬉しい」

 レピタがぼくの中に射精する。胎内でびくびくと痙攣する肉の実感は、女を絶頂させるよりもずっときもちいい。
 ぼくはセイラをつながったまま抱きかかえて、ベッドに移動する。仰向けになって、セイラを突き上げる。ぼくの脚の間にレピタが座って、ぼくのお尻にペニスを沈める。セイラを背中から抱いて、発育途上の薄い胸を撫でる。セイラとレピタがキスをする。小柄なレピタよりも華奢なセイラの身体が、青白い保安灯に照らされて幽玄に輝く。

 * * *

 セーフハウスに匿われて、おそらく数ヶ月が過ぎていた。

 窓のディスプレイシートに天気雨が降るのをみながら、仰向けのユリアに抱かれたハルカを突いている最中、予告なくフェオドラが訪れた。
 戦闘スーツの兵士に守られた青白い氷の女が、セックスの匂いが充満する撮影室につかつか入ってくる。セックスをやめないぼくの前に椅子を置いて座り、ネオスポラに火をつける。煙をぼくに吹きかける。

「久しぶり、元気そうだね」とフェオドラが言う。
「こん……にちは、こんばんはですか」
「昼も夜もないところで、ずっと過ごして辛くないか?」
「少し息苦しいです」
「いいニュースとわるいニュースがあるわ」
「良い方から、聞かせてください」
「ルツのメンバーに対する指名手配が取り下げられた」
「本当ですか?」

 ソファの上で水パイプを楽しんでいたライラとエレナが顔をあげる。シャワーボックスのガラスにすがりつき、後ろからレピタに突かれるジュリエが絶頂の悲鳴をあげる。

「ICSとユタニの癒着を告発するタレコミがあって、ルツは濡れ衣ってANPが報道してる。アーメッドは死んだし、情報庁も無関係な自由民を追いかけるほど暇じゃないからね」
「誰がそんなタレコミを」
「ヴィクトールに決まってるだろ」
「ヴィクトールはいま、どこに?」
「知らないよ、潜伏してるね」

 シャワーボックスからジュリエとレピタが出てくる。ミサとセイラがぼくの乳首に吸いついて、舌先で巧みに刺激する。ぼくの陰茎を二人で握って、ハルカからユリアに挿れ替える。ライラが立ち上がって、覚束ない足取りでベッドに座る。

「悪いニュースは?」とライラが訊く。
「ハルトとベツは死んだよ」
「確証あるの?」
「西部で内戦始まってるから、死亡者リスト全部拾ってるけど、二人の名前があったわ」

 ライラはベッドに仰向けになる。天井をみつめて、呟く。

「外の空気吸いたい」
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