【R18】ハロー!ジャンキーズ

藤原紫音

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第2部

第13話「西部ゲリラに拿捕される顛末」

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 ベツたちとの合流地点は、デンバーの給電所だった。

 自動運転の車が屋根の下に入るとき、ぼくを愛撫していたライラが口を離して「様子がおかしいよ」と呟く。
 車が停まる。目的地です、お疲れさまでした。ナビが自動運転の終了を告げると、充電器の影から戦闘スーツ姿の兵士たちが現れ、ぼくたちに銃を向ける。ゲラルディーニ記念病院でみたのと同じ兵士たち。西部ゲリラの兵隊だ。

「車から降りろ」

 ぼくたちは両手を上げて車を降りる。
 ライラと共に兵士に捕らえられる。拳銃とバイザーを奪われる。
 装甲車に乗せられる。両手を拘束されたまま、ライラはぼくに寄り添う。装甲車が走り出す。ぼくたちが乗せられた荷台から外は見えない。

「イスカリオテが素早く手を回したなら、アタシたち終わりだね」とライラが呟く。
「殺す気なら、とっくに殺されてるよ」
「西部ゲリラってルツと仲いいんじゃないの」
「どうかな、取引は多いみたいだけど」

 十五分ほど走り続け、停車する。後部ハッチが開き、装甲車から下ろされる。掩蔽壕えんたいごうのようなところで、垂直離着陸できるV4攻撃機が整備されている。
 ぼくたちは奥の通路から建物へ連行される。ようやく暖かい空気に触れる。入り口に小銃を持った見張りの立つ部屋に入ると、サチやベツたちが囚われていた。サチはぼくをみて残念そうな顔をする。

「リオも捕まったのかい」
「給電所に誰もいなくて」
「イ式のアンタが捕まったら何もできないだろ」

 ヴィクトールや非戦闘員の男たちはともかく、ベツとボリスも大人しく繋がれている。嫌な予感がする。扉が開いて、青い肌の女、フェオドラがハルトをつれて現れる。ハルトの左目と口元は青く腫れていて、髪はボサボサ、びっこをひいている。

「てめーハルトに何をした!」

 サチが逆上して立ち上がるが、戦闘スーツの男たちが取り押さえる。ハルトが壁に凭れて座り込むと、サチが拘束された手でハルトの腕に触れる。ハルトは「大丈夫だから」と言う。

「恩義を仇で返すからよ」とフェオドラが言う。
「なんの仇よ」
「電脳鍵持ってるでしょ」
「はあ?」
「女の闇医者、ソフィア・イズランデルから受け取ったゲリラの電脳鍵のコピーよ」
「イーライたちのしかもらってねーよ」
「信用できないわ」
「ウェンディに聞きなよ」
「そっちはキレイにしたわ、残りはあなたたちの持ってるリスト」

 フェオドラは部屋の奥に歩いて、壁のモニタをつける。手術台のような鉛色のテーブルの上で、革の拘束具に吊られたウエンディが大勢の男たちに輪姦される。喘ぎ声と悲鳴が響く。

「この電脳医は苦痛を与えても痛覚切っちゃうから、反対に天国に招待するとベラベラしゃべるものよ、快楽と引き換えに」
「ヴィクトール、鍵のリストは?」とハルトが訊く。
「端末に入ってるので全部だよ」とヴィクトール。
「だとよ」
「ほんとうに全部かしら」

 フェオドラがぼくたちの周囲を練り歩き、ライラの顎に指で触れる。近くで見ると氷のような青白い肌と、温度のない冷たい表情、瞬きしない青い眼はこの世のものとは思えない。

「睡眠薬を寄越せってんなら、お断りだけど」とハルトが強気に言う。
「この子がユタニからなんか盗んだでしょ」
 フェオドラがライラの頬に指を滑らせながら言う。
「それが欲しいのか」
「いいえ、それを使って、盗んだ本人と取引して欲しいの」
「何を?」
「好きなものでいいわ、睡眠薬でもセックスドラッグでも」
「どうしてユタニなんだ、エゼキエルの方が安全だぜ」
「シュウレイの裏の顔を知りたいだけ。やってくれるなら、金を払うわ」
「断ったら?」
「あの闇医者は生きたままミキサーで砕いて、カンダ川に流すだけね」

 ハルトが天井を仰いで眼を閉じる。サチが「ウェンディに死なれちゃ困るわ」と言う。ボリスが貧乏ゆすりしながら犯されるウェンディをみている。
 東部ゲリラが治安維持部隊の兵士を捕虜にして、生きたまま生皮を剥ぐ映像をダイバーネットでみたことがある。反政府組織なんてそんな連中だ。

 ハルトが眼を開いてベツをみる。

「人選は任せる」とベツは肩を竦める。
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