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第2部
第10話「レダの店でイスカリオテと接触する顛末」
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ユリアとエレナが昔働いていた風俗店『キャッシー』は、サギノミヤの駅前にあった。宮殿のような外観で、イービスタウンの売春窟には無い高級店だ。
ぼくたちは正面ではなく、裏口から店内のバックヤードに入り、店の女たちが鏡の前でメイクする中で待たされる。裸に網状のボディケージをまとった女たちがうろついていて、ユリアとエレナは昔の知り合いと話し込んでいる。
壁際で手持ち無沙汰に突っ立っているぼくを、鏡の前でメイク中の女が見上げて、上から下まで値踏みして、股間で目をとめて微笑む。
「お兄さん、リオだろ。ハカマダ・リオ、あたし知ってるよ」
「そうです」
「アンタならギャラリーに上がれるよ。面接かい?」
「いえ、体験入店です」
「アハハ、客として来てくれれば、可愛がってあげられるのに」
ぼくは曖昧に微笑む。部屋の奥から黒いドレスを来た中年の女が入ってくる。ユリアたちをみつけて近づく。座っていたエレナが立ち上がる。
黒いドレスの女は指先でエレナの顎をあげて、唇が触れそうなくらい顔を近づける。
「久しぶりだね、変わりないかい」
「レダ、赤いドレスはやめたの?」とユリア。
「旦那が死んで、喪に服してるんだよ」
「リック、亡くなったの?」
「リックは別れた旦那だよ。それより今日はフェラーレの男を連れてきたんだろ、どこだい?」
「レダ、そこにいるよ」
ユリアがぼくを指差す。レダがぼくを上から下まで値踏みする。股間に目を止める。一歩近づいて、黒い手袋をはめた手でぼくの股間に触れる。
「いーじゃないか、上物だよ。アンタ、名前は」
「リオといいます」
「ああ、ウチの若い子たちが噂してる、例の子ね」
ダイバーネットの違法コンテンツが置かれているダークサイトにオンラインセックスの配信者を紹介しているところがあって、自分の情報をみつけた。
ぼく自身は配信していないので、人気ランキングには載ってないけど、ユリアのセックスのエクスペリエンスは二百万人のユーザに一千万回以上再生されている。数字の桁が多すぎて、二百万人の女がぼくの身体をしっているという事実に実感が湧かない。だけど、こうして現実に「あたし知ってるよ」と言われると、途方も無い数字に酷い焦燥を感じる。
「着替えてギャラリーに上がりな、ウチの店で初めての男だって、みんなに伝えるよ。ユリア、着替えを手伝って」
レダから許可が出る。
ユリアがぼくを姿見の前に連れてくる。服を脱がす。全裸になると、メイク中の女たちが覗き込む。編み上げの黒いボディケージをつけると、身体が締めつけられる。胸も性器も露出するけれど、締めつけのせいであまり裸でいる感覚がない。店内の閉域網につなぐ配信用の丸いアンテナプラグを首筋の端子につける。ギャラリーにあがるときの注意を受ける。
白いボディケージをつけた客に誘われたら断らないこと。客が求めることをなんでもすること。
ユリアとエレナも似たようなボディケージに着替えて、巻いた髪に花を挿して、ぼくの手をひいて階段を上る。
* * *
店内はアクリル板の空中回廊になった二階席ギャラリーと、一般客がひしめく一階席が入り口から完全に分かれている。ギャラリーには限られた女性客しかあがることができない。
その女性客たちは白いボディケージをつけて、レピタがつけているような人造ペニスを装着して、店の女とそこかしこで交わる。そして、そのセックスを一階席の客に有料配信することで、客でありながら金を稼ぐのだ。
客と店の女を見分けるのはボディケージの色。黒が店の女で、白が客の女。
アクリル板の回廊を歩く。透明度の高い床板から一階がみえる。一階からもぼくたちがみえる。
全方位から照明で照らされた空中の通路は、蜘蛛の巣状に拡がっていて、中央の大きな円形のエリアには、楕円形のバーカウンターが備えられ、周囲に円形のソファが並び、女たちが酒を飲み、水タバコを吹かし、ぬるぬると交わる。天井から吊り下がった透明ディスプレイに、人造ペニスの先端からみえる膣粘膜の映像が映し出され、無数の肉の華が開いたり閉じたり繰り返し脈動し、ダークテクノの緩いリズムにあわせて喘ぎ声と粘膜の音が響く。西部でも極めて不道徳な店だ。
客の女達は皆、肌の美しさが際立っていた。イービスタウンで立ちんぼしている娼婦たちのデジタルスキンのような人工的なかんじがしない。ワンオフユニットのボディ以外は立ち入ることができない高級店特有のサロンのように洗練された社交場で、唯一の男であるぼくは客たちの目を惹いた。
ユリアが中央付近で立ち止まる。ぼくに耳打ちする。
「あそこにいるのがクラウディアだよ、イスカリオテの連絡役の女だね」
「ちょっと怖そうなひとだね」
円形のソファに寝そべってお酒を飲んでいるブロンドの女がいた。両脇に店の女を侍らせ、股間の人造ペニスをしゃぶらせる。
入り込めそうにない雰囲気の空間へ、ユリアとエレナは平気で割り込んでいく。クラウディアの両脇を挟み、ユリアが耳元で何かを囁く。冷たい表情のクラウディアが人懐っこく緩んで、笑い声をあげる。エレナがクラウディアとキスをする。首筋を舐める。乳首に吸い付く。ユリアが手招きする。ぼくは一歩、二歩近づくと、別の客の女二人に両腕に飛びつかれる。
「ちょっと、アンタ、リオだろ!? あたし、ロアンヌだよ、この子がファリン」
「造顔師の?」
「そうそう、ダイバーネットでしか会ったことないよね。何? この店で働いてンの?」
ぼくはファリンとロアンヌに腕を引かれて、クラウディアのいるところとは対角線上のソファに寝そべる。バーカウンターが邪魔でユリアたちがみえない。
黒い給仕スーツのウエイトレスが飲み物を運んでくる。ガラスのストローに刺さったオリーブのような果実にウエイトレスが火を付ける。緑色の炎が揺れる。ロアンヌとファリンが、ぼくとグラスを打ち鳴らす。ライチのような香りのカクテル。
「ぼく、今日だけ体験入店してるんです」
「なんだ、ここに来ればリオとファックできるわけじゃないんだ」
「ロアンヌとファリンは、この街に住んでるの?」
「あたしたちはコーエンに住んでるよ、隔月くらいでここに遊びに来るの。今日、出会えたのはすごいラッキーだね」とファリンがアニメ声で言う。
ロアンヌとファリンは、ダイバーネットのフェラーレ公式ラウンジで出会った造顔師で、ネット上ではふたりともアニメ風の造形だけど、実物は完璧な顔立ちだった。
顔をデザインする仕事をしているのだから当然かもしれないけれど、完璧な二人に挟まれて、ぼくは童貞のようにおどおどした仕草でカクテルを飲む。
二人はぼくの胸に舌を這わせる。ぞわぞわと鳥肌が立つ。長い陰茎がぐーっと上を向き、みぞおちまで反り返る。震える手でカクテルグラスをカフェテーブルに置く。
両手を二人の胸に滑らせて、宝石のような薄い色の乳首を摘む。
「二人は、フェラーレの造顔師だよね」
「元、ね」
「いまは?」
「ゾッチェに移籍したの。リオといつもファックしてるユリアたちが、ゾッチェのボディでしょ。フェラーレは規則が厳しいから、自由なところで働きたいじゃん」
「二人の身体は、フェラーレなの?」
「そうだよ、フェラーレの女とヤったことある?」
「うん……二人」
「ウフフ……じゃあ、あたしたちで四人だね」
ファリンがぼくの陰茎をちゅるりと根元まで飲み込んでしまう。
ロアンヌがぼくと舌を絡める。唇を触れ合わせたまま、ロシア語でなにか囁く。なんていったの? ロアンヌはぼくの手をすべすべの割れ目に導いて、ここに聞いてみて、と言う。指先で花弁にふれると、もうにゅるにゅるに濡れていて、中指と薬指を沈めて、恥骨を掴むように抉って、小刻みに震わせる。
ファリンが大きく頭を上下させるたびにフェロモンを撒き散らす。
通りかかる客の女たちが、ぼくを見て色目を使う。バーカウンターで抱き合う女たちが、ぼくたちを鑑賞しながらお互いの性器を愛撫し合う。一階席でダンスに興じる集団がぼくたちを見上げる。
ファリンが口を離して、ロアンヌがぼくを跨ぐ。みちゅるるるっと卑猥な音を立てて、巨根が美しい花弁に飲み込まれる。
ファリンがぼくの頭を跨ぐ。ロアンヌが上下に身体を波打たせ、ファリンが割れ目をぼくの唇におしつける。ぼくはファリンの甘い粘膜に吸い付いて、濡れた膣口に舌を挿れて掻き回し、ダークハウスサウンドのビートに合わせてロアンヌの子宮を突き上げる。ファリンの指先がぼくの乳首と脇腹を優しくくすぐり、全身の毛穴が開きそう。
「すっご、硬い、アハハッ、やっぱオンラインと違っ、あっあっあっひっ、あっあっあっ」
「ロアンヌ、有線してよ」
ファリンが自分のケーブルを引き出して、ロアンヌにつなぐ。
女同士はそうやって快楽を共有できる。ぼくが有線しても、自分に存在しない器官の快感はうまく伝わらない。だからこの時代はゲイが多いのかもしれない。そんなことを考えながら、夢中でロアンヌを突く。ファリンの割れ目を愛撫する。両手を伸ばしてファリンの乳房をマッサージする。乳首を摘む。
早くもロアンヌの律動が激しくなり、子宮頸の周囲がぎゅっと引き攣る。その絶頂が有線ケーブルを伝ってファリンに伝播し、舌を挿れた膣粘膜が痺れたように震える。
絶頂が落ち着かないうちにロアンヌが腰を浮かしてぼくを引き抜く。ぼくは起き上がって、ファリンを仰向けにしてちゅるりと挿入する。身体を立てて、腰だけを前後にスナップさせる。
ロアンヌがぼくを背中から抱いて、肩越しにキスをする。乳首を摘む。ロアンヌの指がぼくのお尻の穴に沈む。前立腺と精嚢を抉る。きもちよすぎて白目を剥く。
クーペリアを飲んだときとおなじで、肌と粘膜の触れ合いをより鮮やかにかんじる。あの酒になにか入ってた。
一階席のダンスステージで流れる曲が、俗悪なダークハウス系から尖ったEBMに変わって、赤い照明に切り替わる。ポールダンサーが宙を歩き、ヘッドマウントを被った男女がギャラリの女達に同期して快楽に身を捩る。
壁沿いの席は見たこと無い色のカートリッジを差した煙管を燻らすジャンキーたちが床に座り込んで、魂の抜けた顔で空中回廊を見上げる。ユリアたちは首尾よく運んでいるだろうか。バイザーもないから通信すらできない。
「リオ、交互にファックしてよ」
ロアンヌが耳元で囁いて、仰向けのファリンに覆いかぶさる。ぼくは陰茎を引き抜いてロアンヌに挿れる。深いストロークでピストンする。再び引き抜いてファリンに挿れる。子宮頸に先端を押し付けて、腰をぐるぐる回転させる。そして衝く。
ファリンが悲鳴を上げて、ぼくはファリンの膣内に精を噴射する。結合からドボリと精液が溢れ出し、合成皮革のソファに流れる。陰茎を引き抜いて、精液を撒き散らしながら、ロアンヌに挿入する。お尻を掴んでめちゃくちゃ突きあげる。
ぼくたちは正面ではなく、裏口から店内のバックヤードに入り、店の女たちが鏡の前でメイクする中で待たされる。裸に網状のボディケージをまとった女たちがうろついていて、ユリアとエレナは昔の知り合いと話し込んでいる。
壁際で手持ち無沙汰に突っ立っているぼくを、鏡の前でメイク中の女が見上げて、上から下まで値踏みして、股間で目をとめて微笑む。
「お兄さん、リオだろ。ハカマダ・リオ、あたし知ってるよ」
「そうです」
「アンタならギャラリーに上がれるよ。面接かい?」
「いえ、体験入店です」
「アハハ、客として来てくれれば、可愛がってあげられるのに」
ぼくは曖昧に微笑む。部屋の奥から黒いドレスを来た中年の女が入ってくる。ユリアたちをみつけて近づく。座っていたエレナが立ち上がる。
黒いドレスの女は指先でエレナの顎をあげて、唇が触れそうなくらい顔を近づける。
「久しぶりだね、変わりないかい」
「レダ、赤いドレスはやめたの?」とユリア。
「旦那が死んで、喪に服してるんだよ」
「リック、亡くなったの?」
「リックは別れた旦那だよ。それより今日はフェラーレの男を連れてきたんだろ、どこだい?」
「レダ、そこにいるよ」
ユリアがぼくを指差す。レダがぼくを上から下まで値踏みする。股間に目を止める。一歩近づいて、黒い手袋をはめた手でぼくの股間に触れる。
「いーじゃないか、上物だよ。アンタ、名前は」
「リオといいます」
「ああ、ウチの若い子たちが噂してる、例の子ね」
ダイバーネットの違法コンテンツが置かれているダークサイトにオンラインセックスの配信者を紹介しているところがあって、自分の情報をみつけた。
ぼく自身は配信していないので、人気ランキングには載ってないけど、ユリアのセックスのエクスペリエンスは二百万人のユーザに一千万回以上再生されている。数字の桁が多すぎて、二百万人の女がぼくの身体をしっているという事実に実感が湧かない。だけど、こうして現実に「あたし知ってるよ」と言われると、途方も無い数字に酷い焦燥を感じる。
「着替えてギャラリーに上がりな、ウチの店で初めての男だって、みんなに伝えるよ。ユリア、着替えを手伝って」
レダから許可が出る。
ユリアがぼくを姿見の前に連れてくる。服を脱がす。全裸になると、メイク中の女たちが覗き込む。編み上げの黒いボディケージをつけると、身体が締めつけられる。胸も性器も露出するけれど、締めつけのせいであまり裸でいる感覚がない。店内の閉域網につなぐ配信用の丸いアンテナプラグを首筋の端子につける。ギャラリーにあがるときの注意を受ける。
白いボディケージをつけた客に誘われたら断らないこと。客が求めることをなんでもすること。
ユリアとエレナも似たようなボディケージに着替えて、巻いた髪に花を挿して、ぼくの手をひいて階段を上る。
* * *
店内はアクリル板の空中回廊になった二階席ギャラリーと、一般客がひしめく一階席が入り口から完全に分かれている。ギャラリーには限られた女性客しかあがることができない。
その女性客たちは白いボディケージをつけて、レピタがつけているような人造ペニスを装着して、店の女とそこかしこで交わる。そして、そのセックスを一階席の客に有料配信することで、客でありながら金を稼ぐのだ。
客と店の女を見分けるのはボディケージの色。黒が店の女で、白が客の女。
アクリル板の回廊を歩く。透明度の高い床板から一階がみえる。一階からもぼくたちがみえる。
全方位から照明で照らされた空中の通路は、蜘蛛の巣状に拡がっていて、中央の大きな円形のエリアには、楕円形のバーカウンターが備えられ、周囲に円形のソファが並び、女たちが酒を飲み、水タバコを吹かし、ぬるぬると交わる。天井から吊り下がった透明ディスプレイに、人造ペニスの先端からみえる膣粘膜の映像が映し出され、無数の肉の華が開いたり閉じたり繰り返し脈動し、ダークテクノの緩いリズムにあわせて喘ぎ声と粘膜の音が響く。西部でも極めて不道徳な店だ。
客の女達は皆、肌の美しさが際立っていた。イービスタウンで立ちんぼしている娼婦たちのデジタルスキンのような人工的なかんじがしない。ワンオフユニットのボディ以外は立ち入ることができない高級店特有のサロンのように洗練された社交場で、唯一の男であるぼくは客たちの目を惹いた。
ユリアが中央付近で立ち止まる。ぼくに耳打ちする。
「あそこにいるのがクラウディアだよ、イスカリオテの連絡役の女だね」
「ちょっと怖そうなひとだね」
円形のソファに寝そべってお酒を飲んでいるブロンドの女がいた。両脇に店の女を侍らせ、股間の人造ペニスをしゃぶらせる。
入り込めそうにない雰囲気の空間へ、ユリアとエレナは平気で割り込んでいく。クラウディアの両脇を挟み、ユリアが耳元で何かを囁く。冷たい表情のクラウディアが人懐っこく緩んで、笑い声をあげる。エレナがクラウディアとキスをする。首筋を舐める。乳首に吸い付く。ユリアが手招きする。ぼくは一歩、二歩近づくと、別の客の女二人に両腕に飛びつかれる。
「ちょっと、アンタ、リオだろ!? あたし、ロアンヌだよ、この子がファリン」
「造顔師の?」
「そうそう、ダイバーネットでしか会ったことないよね。何? この店で働いてンの?」
ぼくはファリンとロアンヌに腕を引かれて、クラウディアのいるところとは対角線上のソファに寝そべる。バーカウンターが邪魔でユリアたちがみえない。
黒い給仕スーツのウエイトレスが飲み物を運んでくる。ガラスのストローに刺さったオリーブのような果実にウエイトレスが火を付ける。緑色の炎が揺れる。ロアンヌとファリンが、ぼくとグラスを打ち鳴らす。ライチのような香りのカクテル。
「ぼく、今日だけ体験入店してるんです」
「なんだ、ここに来ればリオとファックできるわけじゃないんだ」
「ロアンヌとファリンは、この街に住んでるの?」
「あたしたちはコーエンに住んでるよ、隔月くらいでここに遊びに来るの。今日、出会えたのはすごいラッキーだね」とファリンがアニメ声で言う。
ロアンヌとファリンは、ダイバーネットのフェラーレ公式ラウンジで出会った造顔師で、ネット上ではふたりともアニメ風の造形だけど、実物は完璧な顔立ちだった。
顔をデザインする仕事をしているのだから当然かもしれないけれど、完璧な二人に挟まれて、ぼくは童貞のようにおどおどした仕草でカクテルを飲む。
二人はぼくの胸に舌を這わせる。ぞわぞわと鳥肌が立つ。長い陰茎がぐーっと上を向き、みぞおちまで反り返る。震える手でカクテルグラスをカフェテーブルに置く。
両手を二人の胸に滑らせて、宝石のような薄い色の乳首を摘む。
「二人は、フェラーレの造顔師だよね」
「元、ね」
「いまは?」
「ゾッチェに移籍したの。リオといつもファックしてるユリアたちが、ゾッチェのボディでしょ。フェラーレは規則が厳しいから、自由なところで働きたいじゃん」
「二人の身体は、フェラーレなの?」
「そうだよ、フェラーレの女とヤったことある?」
「うん……二人」
「ウフフ……じゃあ、あたしたちで四人だね」
ファリンがぼくの陰茎をちゅるりと根元まで飲み込んでしまう。
ロアンヌがぼくと舌を絡める。唇を触れ合わせたまま、ロシア語でなにか囁く。なんていったの? ロアンヌはぼくの手をすべすべの割れ目に導いて、ここに聞いてみて、と言う。指先で花弁にふれると、もうにゅるにゅるに濡れていて、中指と薬指を沈めて、恥骨を掴むように抉って、小刻みに震わせる。
ファリンが大きく頭を上下させるたびにフェロモンを撒き散らす。
通りかかる客の女たちが、ぼくを見て色目を使う。バーカウンターで抱き合う女たちが、ぼくたちを鑑賞しながらお互いの性器を愛撫し合う。一階席でダンスに興じる集団がぼくたちを見上げる。
ファリンが口を離して、ロアンヌがぼくを跨ぐ。みちゅるるるっと卑猥な音を立てて、巨根が美しい花弁に飲み込まれる。
ファリンがぼくの頭を跨ぐ。ロアンヌが上下に身体を波打たせ、ファリンが割れ目をぼくの唇におしつける。ぼくはファリンの甘い粘膜に吸い付いて、濡れた膣口に舌を挿れて掻き回し、ダークハウスサウンドのビートに合わせてロアンヌの子宮を突き上げる。ファリンの指先がぼくの乳首と脇腹を優しくくすぐり、全身の毛穴が開きそう。
「すっご、硬い、アハハッ、やっぱオンラインと違っ、あっあっあっひっ、あっあっあっ」
「ロアンヌ、有線してよ」
ファリンが自分のケーブルを引き出して、ロアンヌにつなぐ。
女同士はそうやって快楽を共有できる。ぼくが有線しても、自分に存在しない器官の快感はうまく伝わらない。だからこの時代はゲイが多いのかもしれない。そんなことを考えながら、夢中でロアンヌを突く。ファリンの割れ目を愛撫する。両手を伸ばしてファリンの乳房をマッサージする。乳首を摘む。
早くもロアンヌの律動が激しくなり、子宮頸の周囲がぎゅっと引き攣る。その絶頂が有線ケーブルを伝ってファリンに伝播し、舌を挿れた膣粘膜が痺れたように震える。
絶頂が落ち着かないうちにロアンヌが腰を浮かしてぼくを引き抜く。ぼくは起き上がって、ファリンを仰向けにしてちゅるりと挿入する。身体を立てて、腰だけを前後にスナップさせる。
ロアンヌがぼくを背中から抱いて、肩越しにキスをする。乳首を摘む。ロアンヌの指がぼくのお尻の穴に沈む。前立腺と精嚢を抉る。きもちよすぎて白目を剥く。
クーペリアを飲んだときとおなじで、肌と粘膜の触れ合いをより鮮やかにかんじる。あの酒になにか入ってた。
一階席のダンスステージで流れる曲が、俗悪なダークハウス系から尖ったEBMに変わって、赤い照明に切り替わる。ポールダンサーが宙を歩き、ヘッドマウントを被った男女がギャラリの女達に同期して快楽に身を捩る。
壁沿いの席は見たこと無い色のカートリッジを差した煙管を燻らすジャンキーたちが床に座り込んで、魂の抜けた顔で空中回廊を見上げる。ユリアたちは首尾よく運んでいるだろうか。バイザーもないから通信すらできない。
「リオ、交互にファックしてよ」
ロアンヌが耳元で囁いて、仰向けのファリンに覆いかぶさる。ぼくは陰茎を引き抜いてロアンヌに挿れる。深いストロークでピストンする。再び引き抜いてファリンに挿れる。子宮頸に先端を押し付けて、腰をぐるぐる回転させる。そして衝く。
ファリンが悲鳴を上げて、ぼくはファリンの膣内に精を噴射する。結合からドボリと精液が溢れ出し、合成皮革のソファに流れる。陰茎を引き抜いて、精液を撒き散らしながら、ロアンヌに挿入する。お尻を掴んでめちゃくちゃ突きあげる。
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