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第1部
第38話「ヒバリーヒルの雑貨商を訪れる顛末」
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ヒバリーヒルの北側は自由民による雑多な繁華街になっていて、あらゆる店が軒を連ね、カラフルなネオンが通りを曇った昼間より明るく照らす。
ぼくは雑貨商のソファに座り、ユリアとエレナが寄り添って、服の上からぼくの陰茎を撫でる。
二人は身体にぴったりした黒いワンピースに、サスペンダータイツを履き、下着をつけない。レピタがメイド服を着て、レジカウンターの前で査定を待つ。
丸メガネをかけた太った店員が大量の汗をかきながら、ケースレス銃とそれ以外を分けていく。
ぼくたちはベツとボリスが回収したイーライたちの武器や電脳ドラッグを車に積み、ここに売りに来た。雑貨商に売却すれば、製造番号は削られ、入手経路はわからなくなる。
「リオのお陰でしばらく仕事しなくていいみたい、ありがと、リオ」
ユリアが言って、ぼくにキスをする。エレナがぼくのシャツに手を入れて、勃起して反り返った陰茎をマッサージする。
ぼくはローライズのショートパンツに丈の長いシャツを着て、フード付きの撥水パーカーを着る。勃起の収まらない陰茎は上向きにシャツの中におさめて、すね毛のない生足をユリアとエレナに並べると、ぼくも女にみえる。
「その、しばらくの間は、なにして過ごす?」とぼく。
「セックス以外に?」
エレナが言って、ぼくの手を自分の股間に導く。ぼくは指を挿れる。
太った店員がぼくたちをチラチラ見ている。金髪ショートにイヤーマフをつけた客の女が、壁に並んだ刀を吟味する。眼球がレンズのおじさんが、ショーケースのバイザーを女型のアンドロイド店員にみせてもらう。ぼくがベツに貰ったアムストラッド製のバイザーはどこにも置いてない。若い男どうしのカップルがディルドーをみている。スーツの男が電脳ドラッグ用の煙管を選ぶ。
その男も含めて、明らかに自由民でない者も多い。この街では、誰が何をしていようと、誰も気にしない。通りに並ぶ店の隙間でセックスする奴もいるし、路上でドラッグの売買をしているし、血まみれで殴り合いの喧嘩をする奴もいるけど、誰かが銃を抜くまで警官はやってこない。
『四十人以上が死亡したハラシンタワー襲撃事件で、検察当局はタワーの職員とオーナーの五人が襲撃に関与している疑いが強まったとして、身柄を拘束したと明らかにしました。現場のタワーの監視カメラには、武装した軍用サイボーグ二名の姿が映っており、この襲撃者がタワーに侵入するために職員らが内通した可能性が指摘されています……』
ANP通信のニュースがモニタから流れる。このチャンネルはCNNみたいに朝から晩までひっきりなしにニュースだけをやっている。
店に三人の女たちが入ってくる。ローライズの黒いショーツに乳首だけを隠すチューブトップ、フロントカップのついたディルドーをつけて、X字の水着のような衣装や、シースルーのテディを着たエロい女たちがくっつきあって、ケラケラ笑いながらぼくたちの前を通り過ぎる。立ち止まって振り返る。
「ねえ、あんたリオだろ」とチューブトップの女が言う。
「ほんとだ、リオだ」とディルドーの女。
「この街に住んでるの? ねえ、あたしたちとヤらない?」
テディの女が手招きする。ユリアがぼくの片膝を跨いで、股間をこすりつけながら女達を振り返る。
「ヤりたかったら、今夜もライブするから入りな」とユリアが言う。
「ユリアだね、あんたのヴァギナもイケてたよ。もっと舌挿れて貰いなよ」
ディルドーの女がそう言って、笑いながらドラッグコーナーへ消える。いつの間にか、ぼくたちの身体が女達に知られていることに戦慄する。ぼくの時代のネットよりずっと危ない。
えー査定終わりました、全部で二万八千八百なので、サービスして二万九千になります。太った店員がレピタに話しかける。レピタがタブレットの確認ボタンに触れて、決済する。
ぼくたちは店を出る。
小雨が降り始めている。ぼくはフードを被る。
三人の女を連れて、メキシコ料理店で、ヴィクトールが食べたがっていたハラペーニョの入った炒り卵を食べる。ソーダ水を飲む。ユリアとエレナはチリコンカルネを分け合って食べる。レピタはホットドッグを食べる。
アンドロイドも食事が摂れる。レピタは眠ることなくぼくに奉仕するから、電気羊の夢は見ないだろう。
「ねえ、リオ……今夜は、ウェンディのとこ、行かない?」とエレナが聞く。
「突然行ってもいいの?」
「いつも突然押しかけてンじゃん」とユリアが笑う。
食料を買い込んで、駐車場に戻る。
ハルトに貰った赤い車に乗り、ウェンディの診療所を行き先に指定する。車が垂直に浮かび上がり、雨の飛沫が霧になって舞い上がる。
窓からみえる繁華街の通りの上空に、輝く鯉の映像が投影され、ぼくらの車の上を泳ぎ去る。
ぼくは雑貨商のソファに座り、ユリアとエレナが寄り添って、服の上からぼくの陰茎を撫でる。
二人は身体にぴったりした黒いワンピースに、サスペンダータイツを履き、下着をつけない。レピタがメイド服を着て、レジカウンターの前で査定を待つ。
丸メガネをかけた太った店員が大量の汗をかきながら、ケースレス銃とそれ以外を分けていく。
ぼくたちはベツとボリスが回収したイーライたちの武器や電脳ドラッグを車に積み、ここに売りに来た。雑貨商に売却すれば、製造番号は削られ、入手経路はわからなくなる。
「リオのお陰でしばらく仕事しなくていいみたい、ありがと、リオ」
ユリアが言って、ぼくにキスをする。エレナがぼくのシャツに手を入れて、勃起して反り返った陰茎をマッサージする。
ぼくはローライズのショートパンツに丈の長いシャツを着て、フード付きの撥水パーカーを着る。勃起の収まらない陰茎は上向きにシャツの中におさめて、すね毛のない生足をユリアとエレナに並べると、ぼくも女にみえる。
「その、しばらくの間は、なにして過ごす?」とぼく。
「セックス以外に?」
エレナが言って、ぼくの手を自分の股間に導く。ぼくは指を挿れる。
太った店員がぼくたちをチラチラ見ている。金髪ショートにイヤーマフをつけた客の女が、壁に並んだ刀を吟味する。眼球がレンズのおじさんが、ショーケースのバイザーを女型のアンドロイド店員にみせてもらう。ぼくがベツに貰ったアムストラッド製のバイザーはどこにも置いてない。若い男どうしのカップルがディルドーをみている。スーツの男が電脳ドラッグ用の煙管を選ぶ。
その男も含めて、明らかに自由民でない者も多い。この街では、誰が何をしていようと、誰も気にしない。通りに並ぶ店の隙間でセックスする奴もいるし、路上でドラッグの売買をしているし、血まみれで殴り合いの喧嘩をする奴もいるけど、誰かが銃を抜くまで警官はやってこない。
『四十人以上が死亡したハラシンタワー襲撃事件で、検察当局はタワーの職員とオーナーの五人が襲撃に関与している疑いが強まったとして、身柄を拘束したと明らかにしました。現場のタワーの監視カメラには、武装した軍用サイボーグ二名の姿が映っており、この襲撃者がタワーに侵入するために職員らが内通した可能性が指摘されています……』
ANP通信のニュースがモニタから流れる。このチャンネルはCNNみたいに朝から晩までひっきりなしにニュースだけをやっている。
店に三人の女たちが入ってくる。ローライズの黒いショーツに乳首だけを隠すチューブトップ、フロントカップのついたディルドーをつけて、X字の水着のような衣装や、シースルーのテディを着たエロい女たちがくっつきあって、ケラケラ笑いながらぼくたちの前を通り過ぎる。立ち止まって振り返る。
「ねえ、あんたリオだろ」とチューブトップの女が言う。
「ほんとだ、リオだ」とディルドーの女。
「この街に住んでるの? ねえ、あたしたちとヤらない?」
テディの女が手招きする。ユリアがぼくの片膝を跨いで、股間をこすりつけながら女達を振り返る。
「ヤりたかったら、今夜もライブするから入りな」とユリアが言う。
「ユリアだね、あんたのヴァギナもイケてたよ。もっと舌挿れて貰いなよ」
ディルドーの女がそう言って、笑いながらドラッグコーナーへ消える。いつの間にか、ぼくたちの身体が女達に知られていることに戦慄する。ぼくの時代のネットよりずっと危ない。
えー査定終わりました、全部で二万八千八百なので、サービスして二万九千になります。太った店員がレピタに話しかける。レピタがタブレットの確認ボタンに触れて、決済する。
ぼくたちは店を出る。
小雨が降り始めている。ぼくはフードを被る。
三人の女を連れて、メキシコ料理店で、ヴィクトールが食べたがっていたハラペーニョの入った炒り卵を食べる。ソーダ水を飲む。ユリアとエレナはチリコンカルネを分け合って食べる。レピタはホットドッグを食べる。
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「ねえ、リオ……今夜は、ウェンディのとこ、行かない?」とエレナが聞く。
「突然行ってもいいの?」
「いつも突然押しかけてンじゃん」とユリアが笑う。
食料を買い込んで、駐車場に戻る。
ハルトに貰った赤い車に乗り、ウェンディの診療所を行き先に指定する。車が垂直に浮かび上がり、雨の飛沫が霧になって舞い上がる。
窓からみえる繁華街の通りの上空に、輝く鯉の映像が投影され、ぼくらの車の上を泳ぎ去る。
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