【R18】ハロー!ジャンキーズ

藤原紫音

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第1部

第31話「ヌクイを尋問する顛末」

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 セーフハウスのラウンジ、背もたれのない合成皮革のソファーを並べて、四つん這いのエレナを突き、ユリアとレピタを両腕に抱いて、乳首を愛撫させる。ちゅるちゅる、ちゃぷちゃぷ、濡れた音と喘ぎ声が高い天井に反響する。ぼくたちの裸体を、頼りない保安灯と夜のネオンだけが照らし出す。

 ラウンジは天井から下がる半透明のカーテンでスペースが区切られ、それぞれの区画で愛し合う声と音が響く。狭いセーフハウスの個室は怪我人のものだ。

 ぼくたちから十歩離れた別のソファで、ボリスが新しい女とファックする声の方がぼくたちよりうるさい。ロビーに近い柱の影で、包帯を巻いた男のペニスを別の男が愛撫するのがカーテンの隙間からみえる。窓際で、痩せた男が太った男とつながって、喘ぎ声を漏らす。
 他人のファックをみてもなにも感じなくなった。ここの自由民たちは、男が好きな男が多い。ストレートなのはハルトとボリスとぼくくらい。アキラやヴィクトールも男と過ごしている。異性愛の方がマイノリティーかもしれない。

「ヌクイって、イーライの手下だったの?」
 ぼくの乳首に舌を這わせながら、ユリアが聞く。
「そうみたい。ハルトが戻ったら、尋問するって」
「イーライって、ゲリラ崩ればっかりだから、あたしたちみんな、殺されちまうね」

 ユリアがエレナから陰茎を引き抜く。飲み込む。扁桃腺でぼくの陰茎を締め付け、唇を開いたままマッサージする。ラウンジに、ちゅるごっ、ちゅるごっ、という複雑な音が響く。
 ぼくは腰を突き出してぶるぶる震え、ユリアの頭を股間に押し付ける。ユリアの前歯が恥骨にあたる。蠕動する喉の刺激に、堪えきれず射精する。ユリアの胃に直接噴射する。ユリアが頭を引く。じゅぽっと音を立てて抜ける。

「はぁ、はぁ、はぁ、ふーっ、きもちよかった?」
「ヴァギナと全然違う……、たまらない」
「アタシは息ができないんだけどね」
「ごめん」
「いいよ、リオがきもちよくなれば」

 うつ伏せで尻を突き出したエレナが振り返って「はやくちんぽ挿れてぇ……」とおねだりする。ぼくはエレナに硬いままの巨根を突き立てて、つながったエレナを抱き起こす。今度はぼくが仰向けになる。
 エレナが背を向けたまま、お尻を上下にスナップさせて、股間をぺちゃぺちゃ打ち鳴らす。ユリアとレピタがぼくの脇腹を舐める。胸の上に舌を滑らせる。乳首に到達して、舌先でぐりぐり抉る。寝ているだけなのに、快楽のピークが際限なく続く。

 * * *

「しゅう……、襲撃のことは、知らないんです」

 全裸でロビーの床にうつ伏せになったヌクイが、サチのブーツに踏まれて、聞かれたことをべらべら喋る。ぼくとボリスが見下ろし、闇医者のマオ・リーライがクーラーボックスに腰掛けて煙草を吸っている。

「じゃあなんでシュウジは逃げたんだよ」とハルト。
「それは、ぼくが警告したからで……」
「しってんじゃねーかよ」

 ハルトがヌクイの脇腹を蹴飛ばす。ヌクイは身体をくの字に折って、文字通りゲロを吐く。
 何を食ったかしらないけど、緑色のドロドロした吐瀉物としゃぶつを床にぶちまける。ひどい臭い。

「襲撃があるかもしれないと思っただけです」
「シュウジは最初からイーライの手下か?」
「違います、私が誘ったんです」
「仲間になれって? それで簡単にリオを殺しにきたの?」とサチ。
「シュウジは、リオくんを殺せと言われて、渋ったんです。シュウジは、リオのことが好みだったんだと思います……だから」

 ハルトがヌクイの頭を踏みつける。

「俺たちを襲ったのはシマが欲しいだけだろ、シャドウマウントから西部ゲリラとの接触履歴がもりもり出てきたぜ。なんでリオを狙う?」
「それは……」
「透明人間が嫌いか」
「リオくんが、グループにとってまずい情報とつながっているからです。私はそれを調べるつもりでしたが、ダイバーネットに接続できないリオくんの頭の中身は、どうやってもわかりません。それで、イーライがシュウジに命じて殺害に踏み切ったんです。リオくんの殺害は、イーライに信用してもらうための、踏み絵なんです」
「まずい情報ってなんだ?」
「闇医者です」
「その闇医者ってなんなんだよ?」
「そこから先は、私もしりません……本当です」

 ハルトがぼくに振り返る。サチもぼくを見る。ボリスもぼくを見る。クーラーボックスに座って煙草を吸うマオ・リーライまでぼくを見上げる。ぼくは肩を竦める。

「ウェンディのことですか?」
「他に医者を知っているか?」
「マオ・リーライと……」とぼくはマオを指差す。
「いや、女医」

 思い出す。ウェンディ以外に女医なんかしらない。いや、まて、そうだ、ぼくがこの異世界で目覚めたとき、水槽の中から女が見えた。

「ゲラルディーニ病院で目覚めたとき、女が……」
「どんな女だ」
「水槽の中からだったので、ちゃんとみえませんでした。ウェンディみたいなエロい服で、ぼくはナースだと思っていましたが、女医かもしれません」
「ログあるか?」
「裸だったので」
「あーそっか」とハルトは頭を抱える。

 ロビーの壁のモニタにANP通信のニュース映像が流れる。さっきまでぼくとセックスしていたユリアたちが、裸にタイツだけでキッチンに立ち、カナッペをつまみ食いする。ラウンジから女同士で愛し合う声がきこえる。

「コイツ、どうする?」とボリスがヌクイを蹴飛ばす。
「チンポ切りとって、デンバーに捨ててこい」とハルト。

 ボリスがヌクイの髪を掴んで引きずる。ヌクイは裸でジタバタしながら、哀れな泣き声をあげる。

「イーライたちヨブはゲリラ出身が多いから、フェオドラが追ってる女と同じやつかもな」とハルト。
「じゃあ、リオの見た女が、ソフィア・イズランデルって女医かもね」とサチが呟く。
「ウェンディに聞けば、何かわかるかもしれねーな」

 マオ・リーライが肩を震わせて笑う。大笑いする。

「何わらってンの?」

 ハルトが聞く。マオ・リーライが顎を擦る。

「確か、ソフィア・イズランデルは、ウェンディの本名だよ」
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