【R18】ハロー!ジャンキーズ

藤原紫音

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第1部

第20話「ネムと結ばれる顛末」

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 セーフハウスの居住区画に、空き部屋をみつけて休息を取る。

 服を脱いでクリーンボックスに投げ込む。
 ベツに貰った拳銃とバイザーをベッドに置いたまま、ガラス張りのシャワーボックスでシャワーを浴びる。温度を下げて、火照った身体を冷ます。

 父の期待に答えてムショみたいな男子校に進学したぼくは、週二、三回の活動でも許される美術部に所属した。
 校内をクロッキーにデッサンする以外はたいした活動をしていない部活で、本館東側の階段の下にある倉庫スペースが部室として割り当てられていた。

 絵を描く道具よりもゲーム機とか漫画とかパソコンの方がたくさん置いてあって、学校の回線を使ってネットゲームやSNS、動画配信や筋トレなんかにうつつを抜かす不良部員ばかりだったけど、写生合宿と称して温泉街に泊まりに行ったとき、女子校の登山部と同じ旅館に泊まっていて、ぼくたちの部屋に呼んで夜遅くまで怪談と猥談で盛り上がった。
 その時、知り合った波根村紗英はねむらさえという子に、ぼくはSNSのダイレクトメッセージで告白した。その返事はこうだった。

『梨央くんとはエッチしてもいいけど、付き合うのは想像できない』

 童貞のぼくには意味がわからなかった。
 男子校で鬱々と過ごしている間に、同い年の女子たちはどんどん先に進んでいて、ぼくには何か異世界の生き物と会話しているような常識の齟齬そごをかんじた。ぼくが想像していた淡い恋愛は中学生までのもので、高校生からはもっとずっと具体的になっていく。

 ぼくは波根村紗英と駅前で会うと、どっちが提案したか忘れたけど、一緒に無人精算のホテルに行き、初めてセックスした。紗英は身体だけを要求したくせに処女だったとおもう。
 初めてのときは女の身体の存在感に狼狽えたけれど、二回目からはすっかり慣れて、回数を重ねるたびにセックスする時間も回数も増えていった。
 ぼくと紗英は会えばセックスして、それ以外では全くやりとりのないセフレの関係だったけれど、そうなったのはお互いに「これで最後」と思って毎回狂ったようにセックスしていたからだと思う。

 コンコン、とシャワーボックスのガラスを叩く音。振り返るとネムが立っていて、その場でボディスーツを脱いでドアを開ける。ネムの顔立ちに紗英の面影が重なる。

「他の部屋、空いてないから、使っていい?」

 ユリアたちのことを思い浮かべて一瞬狼狽える。

「どうぞ」

 ぼくは答えて、全裸のネムの手を取る。狭いシャワーボックスでネムがぼくに寄り添う。陰茎を掴んでマッサージする。ぼくとキスをする。舌をにゅるにゅる出し入れされる。ぼくはみるみる勃起する。

「それから、アタシいまめちゃくちゃヤられたい気分なんだ。ご無沙汰だし」
「ネム、男いなかったっけ?」
「裏切ったインポ野郎のこと?」
「いや、それ以外に」
「いないよ。アタシ、ほんとうは男とはヤらないんだよ……。ねえ、リオ、アタシをファックしてよ、クスリが切れてもう持たないんだ……」

 ネムはぼくの勃起した陰茎をちゅるりと飲み込む。激しく頭を上下させて、扁桃腺と喉で摩擦する。
 ぼくは左手でネムのふくよかな乳房を包み、右手でお尻を撫でて、つるつるの割れ目に指を滑らせる。乳首を摘む。指を膣に滑り込ませる。
 ネムがぼくを根元まで飲み込んで、陰嚢いんのうを掴んだ手の指をぼくのお尻に挿れる。前立腺を抉る。きもちよくて、甘い声が出る。

「ぼくもセックスしたいから、いいですよ」

 ぼくが言うと、ネムは口を離す。ぼくにキスをする。

「ありがと……ユリアたちには迷惑かけねーから」

 * * *

 窓から見えるエゴタウンの雑踏はイービスの売春窟ばいしゅんくつより活気があって、いくつもの広告船が行き交う。カラフルなネオンが濃い霧に反射して、まるで地獄を覗き込んでいるかのよう。
 窓際のベッドの上で、後ろ手を突いたぼくをネムが跨ぎ、ゆっくり突き上げるたびに股間がエロい音を響かせ、エロい声で泣く。

「あっ、あっ、あっ、ふーっ、リオ、アンタ……ワンオフなのに、めっ、あっ、なんで……こんな、強いの……」
「アキラさんの……粉のお陰です」
「ジアルジアなんて、男なら、みんな飲んでるよ。ウェンディともヤったばかりだろ、もともとアンタ……ぜっ、絶倫なんだよ、はーっ、きもちいい……」

 食事を挟んで、六時間くらいネムとつながったまま過ごす。最初の三時間くらいは貪るようにワイルドなセックスだったけれど、お互いヘトヘトになって、徐々にスローセックスに落ち着いてきた。
 ランジェリーのようなエロい衣装とバイザーを脱ぎ、メイクを落として銃を持たなければ、ネムはお人形のように綺麗な女だった。

 切れ長の眼と、感じ方でくるくる色の変わる瞳、サキュバスのような目立つ犬歯とダークバイオレットの唇、光の当たり具合で漆黒からグレーにトーンが変わる艶のある髪が、真っ白な肌を際立たせる。そんなモデルみたいな女に、ぼくは巨根を突き立てて、好き勝手に丸い子宮を突きほぐす。
 ネムの下腹部に描かれた紅色の淫紋いんもんのデジタルタトゥーは、ぼくの陰茎が出入りするのに合わせて、肌の上でぬるぬるとアニメーションする。タイトで筋肉質のヴァギナは、子宮を突くたびにぼくをキュンキュン締めつけ、ユリアたちとも、ウェンディとも似ていない快感をぼくに染み込ませる。

「ここでは、みんな……セックス好き、なんですね」
「クスリとセックス以外に、楽しいことある?」
「それは……旅行とか」

 ネムは笑ってぼくにキスをする。

「あたしはね、海をみてみたい」
「海?」
「みたことあるかい? 沈殿池よりずっと広い、水平線まで水でいっぱいのところだよ」
「海をみたいの?」
「セクター4で生まれると、死ぬまでみることはないけどね。アタシはみたことあるんだ。もう一度、みたいよ」
「じゃあ、いつか、一緒に行こう」
「行けたら……ね。海をみながら、リオとセックスできたら、最高だよ」

 ネムが舌を絡める。唇を擦り合わせる。ぼくたちの唇は、キスをしすぎて少し腫れている。

「リオは、セックス、好き?」
「好きです、めちゃくちゃ、好き」
「あたしの膣は……まあまあ、だろ?」
「ネムの膣、最高ですよ、朝まで、こうして……いたいです」

 ネムは微笑んで、ぼくに覆いかぶさる。舌をちゅるちゅる絡め合う。ウェットな音が狭い部屋の壁に反響する。唇を触れ合わせたまま、囁く。

「そんなこと言われたら、好きになっちゃうだろ」
「なんでですか? ぼく、ネムのこと、好きですよ」

 そう言うと、ネムはくすくすと含み笑い。ぼくの頬をつるりと舐める。

「リオの過去のことは知らないけど、ここで誰かを好きになると、つらい思いをするだけだよ」
「ネムは、つらい想いをしたの?」
「あたしを捨てた元恋人は生きてるよ、いま、あたしに同期して、あたしを通してリオとセックスしてる……」
「どんな人?」
「女さ。あいつを傷つけるために、アタシはいまリオとセックスしてるんだ。あんたがアタシを好きになるのは勝手だけど……」
「ネムのことを好きになっても……いい?」
「アンタほんと可愛いね、いいよ、特別、誰にもしたことない、最高にきもちいい体験させてあげる」

 そう言って、ネムはぼくを仰向けに寝かせる。両手を突いて、腰を浮かす。陰茎が抜けそうなところで静止して、ぼくをみつめたまま、ゆっくり、ゆっくり腰を沈める。陰茎の先端が子宮頸に触れる。
 硬い子宮頸がぐーっと押し付けられる。更に深く、深く、痛いくらい強く、不意に、ぶりっと皮が剥けるような感覚が包んで、熱い肉に亀頭が咥え込まれる。淫紋のタトゥーのハートマークが口を開いて、巨根を受け入れる。

「あっ、あーっ、こっ……あっ、これは?」
「リオのちんぽ、あたしの子宮に、入ってるよ」
「嘘……マジで? あーっ、やばいやばい、やっ、でっ」

 びじゅうううっと勢いよく精を放ち、ネムの子宮に直接精を注ぎ込む。タトゥーのハートマークの中を、無数のオタマジャクシが駆け巡る。たまらない快感に、全身を波打たせて、全力で射精する。ネムも仰け反って、ガクガク震える。
 真っ白な下腹部が、ぼくに突き上げられて、丸く膨らむ。びゅくっ、びゅくっ、びゅくっ、なんども痙攣して精を送り込むたびに、ネムは少女のような頼りない悲鳴と嗚咽を漏らす。

「リオ、大丈夫?」
「すごい、ネム、すごいよ」
「動くよ、痛かったら……言いな。やめねーけど」
「あっ、あっ、あっ、すっ、ごっ、きもち……ひっ」

 ぬるぬるの膣内で子宮頸に亀頭を握られて、上下にピストンされる。信じられない快感。
 十七歳の子供でも、陰茎が子宮に入らないことくらい知っている。異世界の人造ヴァギナは、そんな常識を簡単に覆す。

 ぼくはベッドのシーツを掴んで、顔を横向きにして、快楽に涙を流す。
 壁に立て掛けたネムのライフルと、ぼくの拳銃を、窓から挿し込む広告船のネオンが虹色に照らす。
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