【R18】ハロー!ジャンキーズ

藤原紫音

文字の大きさ
上 下
16 / 109
第1部

第15話「ドローンの追跡を逃れる顛末」

しおりを挟む
 トラックが走り出す。
 仰向けのハルトは左腕が千切れ、左肩を撃ち抜かれている。身体の左半分が真っ赤。唇は真っ青。サチが必死で圧迫止血する。血が足りない。
 ぼくは床を這ってハルトの脚を掴む。持ち上げる。バイザーの分析機能が出血量を解析する。約0.6リットル。生命に危険が及ぶ量の三分の一強。魚をさばいたときのようなリアルな臭いに、現実を突きつけられる。

「あー、どうしよう、血がとまんねーよ」とサチが情けない声を出す。
「おい、ドローンが来たぜ」とボリスが振り返る。
「あたし弾ないんだけど」とネム「サチ、弾ない?」。

 サチがライフルごとネムに投げる。
 ハルトの脚を抱えたまま振り返ると、機銃のついた円盤が空中を追跡してくる。撃ってくる。逸れた弾が周囲の道路と建物に当たり、破片が降り注ぐ。アキラが車を地下通路へ。ドローンがみえなくなる。

「アキラ! このへん深い地下道ないの?」とサチが叫ぶ。
「この下は通勤ラッシュだよ!」

 地下通路はまもなく途切れて、再び豪雨の中に飛び出す。ドローンが下降してくる。また撃ってくる。トラックのフェンダーにあたって、ものすごい音が響く。
 ハルトが眼をあけて、機械化した右手で軽機関銃を指差す。

「リオ、撃て」
「でも……」
「俺は死なねーから、撃て」

 足元に転がったライフルケースを引き寄せて、ハルトの脚の下に入れる。
 ぼくは軽機関銃のコッキングレバーを引く。バイザーの視界に『射撃』と表示され、オーバーレイが赤くなる。鉄の照門を見なくても、視界に照準が十字にポイントされる。ドローンに重なると円が描かれる。引き金を引く。

 バラララララッと凄まじい連射速度で弾を発射する。薬莢が真下に排出され、たくさんの金属音と火薬の焦げた臭い。ドローンが高度を下げ、道路に激突して部品を撒き散らしながら転がる。当たったのか。
 もう一機が迫る。ボリスとネムの銃弾は命中するけど、火花が散るばかり。ぼくは狙う、撃つ。避けられる。撃ちながら追いかける。音がすごいけど、スプラトゥーンと同じ。死ねっ、落ちろっ、しねしねしねしねしねっ。

 ドローンは回避行動を取る。ネムがグレネードを撃ち、命中する。空中で砕け散って、混合オイルの広告看板に激突する。ネムが中指を立てる。

 振り返ると床に血が拡がり、ハルトは眼を開いたまま、ぐったりしている。サチの呼びかけに答えない。
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

高身長お姉さん達に囲まれてると思ったらここは貞操逆転世界でした。〜どうやら元の世界には帰れないので、今を謳歌しようと思います〜

水国 水
恋愛
ある日、阿宮 海(あみや かい)はバイト先から自転車で家へ帰っていた。 その時、快晴で雲一つ無い空が急変し、突如、周囲に濃い霧に包まれる。 危険を感じた阿宮は自転車を押して帰ることにした。そして徒歩で歩き、喉も乾いてきた時、運良く喫茶店の看板を発見する。 彼は霧が晴れるまでそこで休憩しようと思い、扉を開く。そこには女性の店員が一人居るだけだった。 初めは男装だと考えていた女性の店員、阿宮と会話していくうちに彼が男性だということに気がついた。そして同時に阿宮も世界の常識がおかしいことに気がつく。 そして話していくうちに貞操逆転世界へ転移してしまったことを知る。 警察へ連れて行かれ、戸籍がないことも発覚し、家もない状況。先が不安ではあるが、戻れないだろうと考え新たな世界で生きていくことを決意した。 これはひょんなことから貞操逆転世界に転移してしまった阿宮が高身長女子と関わり、関係を深めながら貞操逆転世界を謳歌する話。

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

ヤンデレエリートの執愛婚で懐妊させられます

沖田弥子
恋愛
職場の後輩に恋人を略奪された澪。終業後に堪えきれず泣いていたところを、営業部のエリート社員、天王寺明夜に見つかってしまう。彼に優しく慰められながら居酒屋で事の顛末を話していたが、なぜか明夜と一夜を過ごすことに――!? 明夜は傷心した自分を慰めてくれただけだ、と考える澪だったが、翌朝「責任をとってほしい」と明夜に迫られ、婚姻届にサインしてしまった。突如始まった新婚生活。明夜は澪の心と身体を幸せで満たしてくれていたが、徐々に明夜のヤンデレな一面が見えてきて――執着強めな旦那様との極上溺愛ラブストーリー!

職場のパートのおばさん

Rollman
恋愛
職場のパートのおばさんと…

ママと中学生の僕

キムラエス
大衆娯楽
「ママと僕」は、中学生編、高校生編、大学生編の3部作で、本編は中学生編になります。ママは子供の時に両親を事故で亡くしており、結婚後に夫を病気で失い、身内として残された僕に精神的に依存をするようになる。幼少期の「僕」はそのママの依存が嬉しく、素敵なママに甘える閉鎖的な生活を当たり前のことと考える。成長し、性に目覚め始めた中学生の「僕」は自分の性もママとの日常の中で処理すべきものと疑わず、ママも戸惑いながらもママに甘える「僕」に満足する。ママも僕もそうした行為が少なからず社会規範に反していることは理解しているが、ママとの甘美な繋がりは解消できずに戸惑いながらも続く「ママと中学生の僕」の営みを描いてみました。

アイドルグループの裏の顔 新人アイドルの洗礼

甲乙夫
恋愛
清純な新人アイドルが、先輩アイドルから、強引に性的な責めを受ける話です。

性転のへきれき

廣瀬純一
ファンタジー
高校生の男女の入れ替わり

サンタクロースが寝ている間にやってくる、本当の理由

フルーツパフェ
大衆娯楽
 クリスマスイブの聖夜、子供達が寝静まった頃。  トナカイに牽かせたそりと共に、サンタクロースは町中の子供達の家を訪れる。  いかなる家庭の子供も平等に、そしてプレゼントを無償で渡すこの老人はしかしなぜ、子供達が寝静まった頃に現れるのだろうか。  考えてみれば、サンタクロースが何者かを説明できる大人はどれだけいるだろう。  赤い服に白髭、トナカイのそり――知っていることと言えば、せいぜいその程度の外見的特徴だろう。  言い換えればそれに当てはまる存在は全て、サンタクロースということになる。  たとえ、その心の奥底に邪心を孕んでいたとしても。

処理中です...