あなたと友達でいられる最後の日がループする

佐倉響

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第三章 ずっとあなたと友達でいたい

タイムリミット(2)

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「柊く……ン、欲しいの……奥……熱い……」
「でも、まだ小春の体……狭いよ?」

 柊の声にはからかうような響きはなかった。指を一本咥えただけでは心配なのだろう。

「や……やだ……柊くん……お願い……」

 言いながら、小春はとろとろになった膣壁で柊の指を吸う。

 もしも朝に戻ってしまったら、小春は柊を襲ってしまうかもしれない。彼を押し倒して、自ら腰を落としていてもおかしくなかった。愛撫が続けば続くほど、その衝動が強くなる。

 小春は自分の性欲があまりにも強くて泣きそうになった。

「あんまり煽らないで、小春。頼むから……」
「でも、私……柊くんが欲しいって思ってるよ……体が本当に、おかしいの。頭だって……ふわふわする……柊くん」

 小春は息を荒くしながら、腰をすこしだけ浮かせた。そして自ら腰を柊に寄せ、肩を震わせる。こんなことをして柊の指を汚したくない。けれど全然足りなかった。

「変だよね。内側がすごくビクビクするの……ここの、さらに奥が……もっと変なの……」
「……俺だって、我慢しているのに」

 ずるいよ、と柊が呻く。小春に挿れた指を引き抜くと、柊の指を覚えた窪みから蜜があふれる。

 小春は秘裂をひくつかせながら、じっと柊の行動を待つ。彼はサイドチェストからコンドームの箱を取り出すと、パッケージを破り、コンドームを装着した。

 そしてすぐに柊の先端は小春の窪みに触れ、小春の下腹が強く疼く。

「ぁあ……ひぅ……」
「痛かったら、言って」
「柊くん、も……」
「俺は平気だよ」

 柊の腰に力が入り、小春の窪みがぬっと広がっていく。

 パチパチと弾けるような甘い痺れが駆け巡り、小春はふっと息をついた。全身が火照り、体の力が抜けてしまいそうになる。破瓜の痛みが途中であったものの、理性を失うほど長い前戯の後では恐怖を抱けなかった。

「きもちぃ……」

 まだ先っぽしか挿っていないのに、小春は無意識に声が出ていた。

「はぁ……小春……」

 蕩けるように熱く潤んだ窪みが、必死になって柊の劣情を食んでいく。

「柊くん……あぁ……」

 甘えるような声に、柊の喉が鳴る。たまらなかったのだろう。柊は腰を寄せ、ぐちゅりという音と共に小春との繋がりを深くした。

「ひゃっ……」
「小春、好きだ」
「ん……私も、柊くんのこと好き。好きなの」

 本当に恋人みたい、と小春は胸が熱くなる。

 柊は小春よりも前から辛い状態になっていたのに、挿入しても無理矢理に動かなかった。優しく腰を揺らし、小春の体が馴染むのを待つ。根元まで繋がっても乱暴なことはせず、小春を好きだと言いながらキスをした。

 小春の体に柊の存在が刻まれていく。最奥をゆったりと擦られて、小春は何度も柊の腕の中で絶頂を迎えた。

 柊も同じく小春の中で欲情を発散させたが、復活するのは早かった。

 二人は狂ったように体を重ねて、ベッドを愛液と汗で汚す。

 その時はもう、時間のことなんて頭から抜けていた。

 何度も体位を変えて互いを貪り、しばらくすると異変に気づく。

 ――も、もう、朝に戻っているはずなのに。

 小春は快感に震えながら、顔を上げた。後ろから快楽を植え込まれて、全身がふにゃふにゃに蕩けていたけれど、確認したかった。いくら何でもこの状況はおかしいのだ。

 時計はベッドの上部にあり、探ればすぐに見つかった。ヘッドボードにデジタル時計がある。薄らと数字が見える程度だったけれど、小春が目を凝らせばどうにか読めた。


 ≪03:23≫


「あ、あれ……あ、ふぅ……ンっ」

 何かを読み間違えたのかもしれない。小春は焦った。動揺して、つい下腹部に力が入る。

「こ……はる……これで、終わりって決めたのに」
「あっそこ……ふ、深い……のっ……――」
「大丈夫、ゆっくり動くから」
「そっうじゃ……ふ、ぁああ……ンっ、んく」

 違うよね。大丈夫だよね。小春は頭の中で自分に問う。眠ったら戻っているはずだ。十七日の朝で、小春が住むアパートにいる。きっと。今さら普通に時間が過ぎてしまうなんて、小春には考えられなかった。戻ると思ったからやってしまったことが幾つもあるのだ。

 こんな状況でなかったら、柊からブレスレットを受け取らなかったし、家にも行かなかった。今していることなんて、最も取り返しのつかないことだ。もう何度も柊に好きと言ってしまっている。恋人ごっこだとしても、柊に気持ちがバレていないか不安だった。たぶん大丈夫だとは思うが、絶対とは言えない。

「んっ、あぁ……だめ……っ」
「イッていいよ、小春」
「んん――……は、っふ」

 ぱちゅぱちゅと肌がぶつかって、小春は頭を左右に振った。だめ。だめ。こんな風に感じてしまうことを柊に知られたくない。羞恥が込み上げて、小春はさらに柊を締めつける。彼の杭が燃え上がっていくのを感じ、シーツを握った。

 寝たらなかったことになっている。そうであって欲しい。

 小春は柊の腰から逃れようと、手と足でベッドをするように前進しようとした。

 だが、まともに進む前に柊の腰が小春にぶつかり、小春は快楽で頭が真っ白になる。

「ん、あ――……っ」
「小春、好き……好きだ……」

 柊は小春の首筋や背中に唇を落とす。小春と同様に、熱に浮かされたような声だった。

「あ……あぅ……ぅう……」
「眠くなった? いいよ、寝ても……小春が寝たら俺も寝るから」
「んっ……んんっうう……」

 柊は寝てもいいと言いながら、小春の腰を掴んで火照った最奥をほじる。そのせいで小春は体から力が抜けてしまうのに、柊を受け入れている部分だけが元気に蠢いていた。腰の動きは優しいものだけれど、小春のうねりが収まり切らないうちに次から次へと刺激を送り込んでくる。

 こんな調子では、小春が眠る前に朝日が出そうだった。

「う……あぅ……ま、またイク……」

 掴んだシーツを顔へ引き寄せ、小春は果てる。意識がふわりと遠くなりかけていた。

 これで朝に戻っているだろうか。次の日なんて来なくていい。

 小春が眠りにつく直前、柊の手が頭を撫でた。

「俺は本当に小春のことが……好きなんだよ」

 柊はどんな顔で言っているのだろう。

 小春の瞼は重たくて開かなかった。

「ごめん、小春」

 彼の声は泣きそうで、小春まで切なくなる。

 ――本当に、好きだったんだね。

 柊はフラれてしまった人のことを思い浮かべながら言ったのだろう。

 いっそのこと好きな人の名前を呼べばいいのにと小春が思うくらい、柊の声は切実だった。
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