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17 恩賜拳銃
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符牒を使って状況に進展があったかどうかを問うのとは別に、恩賜の銃をシュミット少佐に返せ、という主旨が書かれていた。その銃は元々少佐のものだったはずだ。フレンゼンには内容までは分からないが、事情があってベッカーが預かっていたそうだ。出発前にも自分に代わって返却してほしいと言われていたのに、わざわざ危険な通信に載せる必要があるのだろうか。どちらにしろ、返す相手はすでに死んでいる。
その日、拠点に集まった四人は、どこか緊張しているようだった。
フレンゼンは、軍令部からの指示があったと話しながら銀色に鈍く輝く恩賜の銃を取り出した。
その瞬間、
「なんで!」と叫ぶアンヌ。
四つの銃口がフレンゼンに向けられた。
「どういうことだ!」とマリー。
フレンゼンは慌てて四人を手で制しながら、
「待ってくれ。お前たちこそ、どういうことだ?」と、なるべく柔らかい声を出した。
ニコルが構えを崩さずに、顎で、銀色の拳銃を指す。
「これか?これは少佐に下賜された恩賜の銃だ」
「なぜ、大佐が持っているんですか?」
アンヌは少しだけ落ち着いたようだったが、構えた銃は下ろさない。
「軍令部の人間に返しておいてくれと頼まれたんだ」
「どういうことだ!」
マリーの悲しさと怒りが混ざったような表情は、先ほどと変わらない。
「説明するから、みんな銃を下ろしてくれ」
ソフィーの腕が下がり始めたが、
「いや、説明が先だ!」というマリーの怒鳴り声で、また元の位置に戻った。
「分かった、分かった。……座ってもいいか?」とアンヌを見て尋ねた。
「どうぞ」
フレンゼンはゆっくりとした動作で椅子に腰掛けた。少女たちは立ったまま、銃口を彼の頭に向けている。
「この恩賜の銃は、軍令部のアンドレアス・ベッカー大尉がシュミット少佐から借りていたものだ。今回の任務で少佐に会う際に返してほしいと預かってきた。わざわざ通信で念を押されたんだ」
そう言って通信文をテーブルに置いた。カール・フレンゼン大佐に宛てて、シュミット少佐に恩賜の銃を返却してほしいことが記されていた。通信文に書くことなのか、という疑問については触れないでおいた。少佐の件の進捗を尋ねる箇所は符牒が使用されているので、四人には別の内容に見えるはずだ。
「この銃は、そのベッカー大尉という人が預かっていたんですか?」
アンヌの質問に、
「そうだ。少佐に会う機会がなかったから、ずいぶん長いこと返しそびれていた、と言ってたな」と答えた。
「長いこと?」
ニコルの声だった。
「どのくらい前からなのか、大佐はご存じですか?」
そう補足したアンヌの声は震えていた。
「確か、戦争前からだ、と聞いているが……」
フレンゼンが答えている途中で、ソフィーは、
「そんな!」と叫びながら座り込み、泣き出した。
マリーもアンヌも、崩れ落ちるように床に跪いた。
ニコルは立ったまま泣いていたが、もう銃は構えていない。
「どういうことだ?」
フレンゼンは、その日何度目かの同じ質問をした。
その日、拠点に集まった四人は、どこか緊張しているようだった。
フレンゼンは、軍令部からの指示があったと話しながら銀色に鈍く輝く恩賜の銃を取り出した。
その瞬間、
「なんで!」と叫ぶアンヌ。
四つの銃口がフレンゼンに向けられた。
「どういうことだ!」とマリー。
フレンゼンは慌てて四人を手で制しながら、
「待ってくれ。お前たちこそ、どういうことだ?」と、なるべく柔らかい声を出した。
ニコルが構えを崩さずに、顎で、銀色の拳銃を指す。
「これか?これは少佐に下賜された恩賜の銃だ」
「なぜ、大佐が持っているんですか?」
アンヌは少しだけ落ち着いたようだったが、構えた銃は下ろさない。
「軍令部の人間に返しておいてくれと頼まれたんだ」
「どういうことだ!」
マリーの悲しさと怒りが混ざったような表情は、先ほどと変わらない。
「説明するから、みんな銃を下ろしてくれ」
ソフィーの腕が下がり始めたが、
「いや、説明が先だ!」というマリーの怒鳴り声で、また元の位置に戻った。
「分かった、分かった。……座ってもいいか?」とアンヌを見て尋ねた。
「どうぞ」
フレンゼンはゆっくりとした動作で椅子に腰掛けた。少女たちは立ったまま、銃口を彼の頭に向けている。
「この恩賜の銃は、軍令部のアンドレアス・ベッカー大尉がシュミット少佐から借りていたものだ。今回の任務で少佐に会う際に返してほしいと預かってきた。わざわざ通信で念を押されたんだ」
そう言って通信文をテーブルに置いた。カール・フレンゼン大佐に宛てて、シュミット少佐に恩賜の銃を返却してほしいことが記されていた。通信文に書くことなのか、という疑問については触れないでおいた。少佐の件の進捗を尋ねる箇所は符牒が使用されているので、四人には別の内容に見えるはずだ。
「この銃は、そのベッカー大尉という人が預かっていたんですか?」
アンヌの質問に、
「そうだ。少佐に会う機会がなかったから、ずいぶん長いこと返しそびれていた、と言ってたな」と答えた。
「長いこと?」
ニコルの声だった。
「どのくらい前からなのか、大佐はご存じですか?」
そう補足したアンヌの声は震えていた。
「確か、戦争前からだ、と聞いているが……」
フレンゼンが答えている途中で、ソフィーは、
「そんな!」と叫びながら座り込み、泣き出した。
マリーもアンヌも、崩れ落ちるように床に跪いた。
ニコルは立ったまま泣いていたが、もう銃は構えていない。
「どういうことだ?」
フレンゼンは、その日何度目かの同じ質問をした。
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