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第2章︙魔法都市編
大神官の事情聴取
しおりを挟む「………私を嘲笑いに来たのですか」
魔法が刻印された鉄格子の向こう側には、ボサボサの髪と濃いクマがあり、やつれた様子の大神官が諦めたように虚ろな瞳を映す。
「お前のことなどどうでもいい。お前が一体何故あの様なことを企んだのか、またどうやったのか詳しく事情説明をしろ」
「そーだそーだ!!せつめいしやがれ!!」
「茶化すなダイキ。今大事な話をしてるんだ」
ごちゃごちゃとうるさく騒ぐ子供達。
「うるさい黙れ」
ギルド長の一喝で静かになったところで、大神官はボロボロの姿で不敵に笑いながらダイキ達を睨みつける。
「いくら私を痛めつけたところで情報を吐きはしませんよ。私自身『物理的』に吐けないですからね」
大神官はそう言って不敵に笑った。
三日前。
大神官を騙る人物により、魔法都市結界の破壊と魔獣を解き放ち人々を恐怖に陥れた。
約十四時間後、魔獣はクロスの時空属性魔法を利用した崩壊魔法により消滅。
また、結界は『理』魔法により無効化され、書き換えた。
魔法都市の結界は古代魔法に分類されるため、修復はおろか複雑すぎて解析もできず、また新たに結界を作るしかなくなったのだ。
幸いここは魔法都市。世界屈指の魔法発達都市であったので淡々と結界構築の計画は進むと思われたが、なにせ今の魔法のレベルでは以前の足元にも及ばないため、半端な結界は作れないとの住民の声もあり、遅々として結界構築の図案の作成は困難に思われた。
しかしここで現れた救世主ダイキ様。
自分のことを様付けするのはなんだか……という人もいるが、そんな奴の言葉は気にしなくていい。
たった一度きりの人生、ポジティブに楽しく生きていくのがいいからな。
俺は結界魔法なんてものは知らないので、解析した大神官の結界を完全に真似することはできない。
てことで前みたいに『理』を無理矢理組み込むのではなく、『理』を混ぜ込むことにより更に強化してまた壊されることがないようにし、魔力回路を上空に向けることでこの世界の太陽?みたいな星から放たれる魔力エネルギーを活用できるように太陽みたいな惑星の魔力を常に吸収するようにした。
これで魔力不足で崩壊することなんてないし、人為的に壊すのなら、俺を超える魔力の持ち主、かつ『理』を操れる人物じゃないといけなくなったわけだ。
クロスも壊せないらしいし(全力を出したら分からないけど、多分無理と言っていた)、もうあんな白マリモに追っかけられる心配はなくなった。
で、今は捕まえられた大神官の元へ情報を絞り尽くしに来たというわけ。
何故今ダイキ達が地下牢にいるのか、事の発端は1時間前に遡る。
大神官から少しでも情報を抜き出そうと奮闘していた様子のギルド長がおやつを頬張っていたダイキ達を訪ねてきたのだ。
勿論俺達の屋敷のとも持ち主なのであっさりと侵入を許してしまった。
「突然訪問してすまない。まだ年端もいかないお前達には悪いが、今回の首謀者であるデイルの事情聴取に当事者のお前達が必要………おい」
「む?いま、げんせーなるうたげの、さいちゅーだ。ようじはあとあと」
「そうだよデオライト。僕の主があとにしろって言ってるんだ。ちょっと待ってなさい」
クッキーのカスを口元に引っ付けながらなにが厳正なる宴なのか理解に苦しむギルド長。
隣のレオンはいつもどおりのマイペースに止めるどころか注意する気力もなくなったらしく諦め顔で空を見上げている。
「ごほん!!それで、わざわざきたのは……えっと……」
「容疑者の事情聴取だよ主」
「そう!!それで、ギルドちょーはおれたちに、なんのきょーりょくを……もとめているのかね?」
できたてのクッキーを食べ、フルーツを盛り合わせてアレンジも楽しみ、最後に熱々のミルクを飲んで口元が白くなったダイキは足を組んで優雅に席についた。
ダイキの視線の先には額に青筋を浮かべるハイエルフ。
「……フッ、お前が間食を楽しんでいる間に私は書類の山を二つは処理できたんだかな」
「ふーん。ギルドちょー、ちょっとおやつたべるのに、しょるいがなんとかっていうの………いちいちこまかいなー。ちょっとおちついて?」
遂にプルプル震えだしたギルド長は、一線のところでギリギリ踏みとどまり、深呼吸をしてどうにか己の心を落ち着かせ、少し怒りの滲んだ口調で再度話し始めた。
「デイルの事情聴取と言っているではないか。神話級の魔物に襲われて精神が不安定になっているのかと心配したが………どうやら私の見当違いだったようだな」
「おれはビビリじゃないからな。シロまりもなんてこわくない。へっちゃらだ」
「そうか。なら来てもらっても全然問題ではないな」
「なになに?どこかいくのか?」
「地下牢にいくぞ」
地下牢。ダイキの記憶の中では薄暗くて鉄格子があり、腐敗臭がして人の骨があるようなおぞましい場所………という印象を映画やアニメで刷り込まれていた。
「おれ、こわくないけど、おるすばんするよ。レオンだけいっておいで」
「何言ってるんだ貴様は。当事者の片割れがお留守番など許されない」
「でもなんでちかろー!!」
「デイルもいることだし、ちょうどいい。引き合わせれば何かあるかもしれないからな」
こうしてダイキの事を特殊な化学物質だとでも思っているらしいギルド長に無理矢理連れて行かれたのだった。
「それにしてもあんたさ、なんでこんなことしたのよ。たしかに、おれはかっこいーし、それにつよくて、てんさい………あ、やっぱおれってすごいやつだな!!」
「うんダイキ。ちょっといったん黙ろうか」
一回地下牢に入ってしまえば怖い心なんてなく、元から怖くなんてなかったが……
「だから私には何も吐くことができないって言ってるでしょう」
「む……なんで?」
「私の体には制約魔法が刻み込まれているわ。いくら女神様を召喚できた天才児や高位精霊でも、直接刻み込まれた魔法はどうにもできないわよ。まあ、制約魔法が解かれたとしても私は話さないけどね」
そう言って高らかに笑い始める大神官。
「ちょっとクロス。せーやくまほうって、おれが……にせものアスモデウスにかけたやつ?」
「そうだよ主。でも今回は刻印を使っているから解除は難しいだろうね。上書きも出来ないし」
………ちょっとクロスが難しい話をしだしたので無視することにする。
俺は口だけ達者なクロスとは違って根本的な問題解決のために行動することを選択したのだ。
「おいやい。おまえ、つかまってるくせに……ちょーしにのるなよ!!さっさとぜんぶはけよ!!」
作戦A、ゴリ押し。
「さっさとはけ!!おまえがなんといおーと、おれはおまえが……おれるまであきらめんからな!!」
「あ、そう。別にいいけど」
そして始まった持久戦。
あの手この手で情報を少しでも聞き出そうと俺の卓越した話術に、大神官は必死で耐え抜く時間が続き、長き戦いは遂に大神官の膜で勝利をおろした。無念。
続いて作戦B。
「ほら、おれがおまえのかれしになるからさ。このおれにきょーりょくしないかい?」
「………は?」
作戦B、ナンパ作戦。
俺はこの世界に来る前、高校に通っていた頃に女子の話を小耳に挟んだことがある。
『ねえ、近くの駅でチョーイケメン男子二人組がいたんですって』
『え、どんなどんな!?』
『一人は金髪のピアスしているワイルド系イケメンで、もう一人は黒髪メガネのザ・クールイケメンって感じだったって!!』
『まじっか…………で!?その人達がどうしたの?もしかして逆ナンしたとか…?』
『するわけないでしょ。流石にそんなビッチじゃないわよ。それが二人とも結構な女に言い寄られてたんだけど、全く相手にしてなかったのよ!!』
キャーッと甲高い奇声を上げる女子。
『でもさ、ああゆうお固い男子にナンパとかされたらマジで私キュンってしちゃうかも!!』
『あ、それ分かる!!そういうギャップがもう……ゾクゾクってくるのよ……』
隣で半分居眠りしながら聞いた叡智によれば、普段真面目でかっこいい人がナンパすると『ギャップ』でキュンとするらしい。
「ほら、おれがいちにちだけ、こーびとになってやるから、さっさとじょーほーをはきなさい!!」
「「「………はぁ」」」
大神官どころか周りからも溜息が聞こえてくる。解せぬ。
結果は惨敗。話によればどうやらこの女、心に決めた相手?がいるらしい。そりゃだめな訳だ。
「く、ここは、さいしゅーおーぎをつかうしかない!!」
最終作戦C、強制魔術。
「クロスくん、やっておしまい!!」
「分かったよ主」
クロスが手をかざすと大神官が透明な鎖で縛られた。
「な……!?お前達、なにを……」
「今からお前の過去を視る。誓約魔法でもお前の記憶まで縛られているわけじゃないからね」
精神魔法と時空魔法の合わせ技。現状クロスにしかできない魔法で大神官の過去の記憶を覗き見することにしたのだ。
しかしこの作戦は、クロスの精神的負担を危惧して最終手段にしていた………というか俺が渋っていたけど、クロスの『大丈夫』猛プッシュに折れた。
それから暫く気絶した様子の大神官と、目を瞑って集中しているクロスと沈黙した雰囲気が漂っていたが、遂にクロスが静かに目を上げた。
少しの驚きと、やっぱりかと言うような納得の表情をしたクロスは、真剣な表情で俺を見て静かに事の真犯人を告げた。
「簡潔に言うと……犯人は恐らく『神殿』だね」
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いつも読んでくださりありがとうございます!
あと二週間で2025年……!!そろそろ年越し蕎麦……はあまり好きじゃないので年越しうどんが食べたくなりますね。
年末は色々盛り上がりますもんね。ええ、すっごい楽しみです。クリスマスも年末も特に予定はありませんけど。
皆さんもぜひ今年がいい年だと思えるような年にできたらいいですね!!
(作者は今年土日に風邪をひきまくり平日に合法的に休めなかった年でした。最高でした)
あと少しで第二章も終わりますので、第三章も楽しみにしていてくれると嬉しいです。
いつも見てくれる皆様、改めてありがとうございます!!
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