ちっちゃくなった俺の異世界攻略

鮨海

文字の大きさ
上 下
61 / 75
第2章︙魔法都市編

古代の遺物3

しおりを挟む

 【夢幻雪スノーメアリ


とある吟遊詩人が大地を覆い尽くす『夢幻雪スノーメアリ』を発見し、まるで幻のような光景の絶望の雪だと言ったことから『夢幻雪スノーメアリ』と名付けられた原因と考えられている

神話時代にいたとされる魔獣。強大な力を持ち、増殖能力がずば抜けていて現在は神話級魔物に指定されている。
最後に発見された約二千年前の『大戦』以降、全く姿を現すことはなくなり、『大戦』を最後に全ての個体が消えたと言われていた。







突然だが俺は今、大量の白いマリモに追われている。


「むー……あたっく!!」

俺は風で、竜巻を起こして白いマリモの大群にぶつけるけど、まさに焼け石に水。


「魔術の檻へと閉じ込められよ、ウォーターハント!!」

「天空に貫かれよ、サンダー!!」

「灼熱の花を咲かせよ、ファイアフラワー!!」

街の人達も白マリモを止めようと魔法を使ってくれてるけど……あの呪文はなに?
厨二病が言いそうなセリフを汗を垂らしながら懸命に言ってる姿は、状況が状況だから何ともいえない気持ちになってしまう。
しかも、ウォーターハントとかも俺が使ってるやつよりちっちゃくて脆く、白マリモには全く効いている様子がない。


………なんか、うん。俺は応援してるぞ。


そんな無駄なことを考えている傍ら、次々と襲ってくる白マリモを魔法で片っ端から殲滅しながらシルに乗って逃げ回っているけど、流石にそろそろ不味くなってきた。
余りにも白マリモが量産され過ぎて、逃げ場がなくなってきている。
俺にしか襲わないから周りに致命的な被害が出ていないのが幸いか。

しかし、ここでずっと粘っててもあの結界のせいで実質詰みになっているが……ここはちょっとばかし本気を出して差し上げようではないか!!


「ウォーターハント!!おぼれろ!!」

俺はお馴染み水魔法で大量のマリモを閉じ込めると、風魔法でグルグルかき混ぜてあげて、最後に燃え盛る白い炎で炙り焼きにする。

ここで一通り調理して大半の白マリモは死滅するけど、ごくわずかに生き残ったしぶとい奴らが分裂しまた増え始める。

「ちぇ……まるでゴキブ……みすたージーにそっくりだ、つぶしてもつぶしてもわいてくる」

シルに乗って逃げながらつい舌打ちをついてしまうけど、本当にこの白マリモえげつないのだ。
数秒で家一件分を埋められるような勢いで増えているこの白マリモたちを全滅させようなんて思ったら、それこそ俺か全力を出してシルにも手伝ってもらって、あと色々条件が重なってこの都市を更地にできる魔法を放つことくらいだと思う。
無論そんなことしたら俺たちもお陀仏なのでやらないけど、現状それ以外に方法がないのだ。


「おいダイキ!!もう少し集めてから来い!!」


さっきは少し多く集めてしまったから一度殲滅したけど、今度は少なすぎたか。
俺はさっきと同じように駆け回って白マリモたちの注意を引いて、ギルド長とレオン達が待機している場所までいく。



「今だ」


ギルド長の合図で冒険者たちの集中砲火を食らった白マリモ達は跡形もなく消え失せる。
しかし直ぐに他の場所から増殖して全く意味を成してない。

「………どうするおつもりですか、ギルド長」

勿論このままではジリ貧で体力が尽きてしまうことが明白なので、いち早く状況を見抜いている冒険者たちは焦っているけれど、これに関しては俺に秘策があるのだ。

「……最悪、この子を引き渡して後から追跡させて奪い返すか……しかし、この方法は余りにも成功率が低い……」

「ギルドちょー、おれ、シロマリモつかまえる?」

「しろま……は?」

「シロマリモ」


何だか不思議そうな顔で俺を見てくるが……あ、白マリモって俺が勝手につけた名前だから不思議なんだな。じつは違う名前……というかほぼ絶対違う名前なのでほぼ混乱したに違いない。
訂正しようとした俺よりも早くギルド長は白マリモが何なのか気づいたようで、片手を上げて首を傾げた。

「何故だ?そもそもあんなもの捕まえたところで何の利益もないではないか。そんな危険なことするほうがどう見ても悪手だと……」

「ちがう、ちがう。ギルドちょー、わかってないな!シロマリモつかまえて、じっくりじゃくてんをさがすんだぞ!!」

「………。」


「ちぎったり、きったり、つぶしたりして……どんなこーげきがいちばんか、しっかりしらべないとだぞ!!」

「………お前、その年で中々に残酷で鬼畜なことが思いつくな」



……何を今更。
魔法で焼いたり細切れにしたり溺れさせたりしている代表が冒険者のくせに、そのトップにいるギルド長が俺のことを鬼畜と言うのか?
これだからもう……全くこの世の常識というやつが染み付いてないな。やはりギルド長は精神が俺より子供だったか。

「フンッ……よのなか、せちからいからな。おとなのおれは、しっかりわかってるからな」

「ほう。よく意味がわからないが侮辱されたことだけは分かった。だったらほれ、お前はなにか解決策があるのか?」

「それは……」

ギルド長に逆に詰め寄られて答えに窮した俺は、また白マリモが湧いてきたのでシルに乗って戦略的撤退をすることにした。

決して答えられなかったわけではない。ただ間が悪かっただけ。それに俺は一応秘策があるし……

俺が考えた最終手段は一つの問題は解決するけど、もう一つ新たな問題が生まれて意味がなくなってしまうのだ。
要はプラマイゼロになってしまうので、そうならないためにもじっとこのまま耐えるしかない。



「頑張れよクロちゃん!!」


突然声をかけられて俺は後ろを振り向くと、あの屋台のおばさんが、屋台の人には全く似つかわしくない大剣をぶん回しながら俺に向かって大きく手を振っていた。

「こっちは気にせんでいいよ、こんな白いのにあたし達がノコノコやられるわけないね。クロちゃんがなにか考えてるのもあたしゃ分かるからさ。クロちゃんの味方だよ」


「うん………うん!ありがとおばちゃん!!」


白マリモを殲滅しながらジーンとなっていると、折角の感動な雰囲気に邪魔が入った。


「しぶといですね、このままでは貴方方全員死ぬというのに、底辺同士の傷のなめ合いですか?しっかりと現実を見なければ生き残れないことを分かっていて?」

白マリモに囲まれた大神官が、白マリモを愛しげに撫でながらこっちに軽蔑した視線を投げてくる。


「こんな人族何かのためにどこまで耐えられるか見物ですね。さて……私はあと半日にかけましょうか」

愉しげに口元を歪めて物思いにふけっている大神官に悪いが、俺はそれをボーっと見ているほど馬鹿じゃないし優しくもない。


「えい」

巨大な火球を放って大神官ごと燃やし尽くそうとしたけど、白マリモに阻まれて結局届かない。
勿論こんなのは想定内。
俺は今度は火球を分裂させ数を増やすと、腕を振り上げて大神官に攻撃する。


「だからそんな稚拙な攻撃で私が……あ?」

白マリモにぶつかった火球は爆発を起こし、他の火球に伝染して連鎖爆発を起こす。
先程放ったただの火球は、大神官を油断させるためのブラフであり、今はなったのは『理』仕込みの特別な火球だ。


「が……ぁ…」

「あーらあーら!!みにくいおばさん、おれのちせつなまほうでズタボロだな!かあいそー、とってもキモいなって……えぇー!?」

ここぞとばかりに俺は大人の煽りを入れてやると、案の定大神官は怒りに包まれた様子。
そしてなんと驚いたことに火傷した肌が再生されていく。

魔法陣や詠唱を使って光に包まれる治癒魔法とは違う、まるで動画を逆再生したかのような治り方に、俺は驚きを隠せなかった。

………こいつ、もしかしなくても人間ではないな?


「このガキ!!よくも私の高貴な身体を………いいわ。もうこんなんじゃ埒が明かない。私直々にお前を殺してあげる」

大神官が片手を上げて詠唱を始めると、白マリモ達がこちらに一直線に向かってくる。
嫌な魔力を撒き散らしながら詠唱をしている大神官は、俺を殺意のこもった目で見ながらヒクリと口元を歪めた。


「大体お前達がまさか『鏡』から脱出したから計画にズレが生じたのよ。お陰でこっちはもう表立って活動することが難しくなったわ。その代償は命をもって償ってもらわないとね」

「ふざけんな。だれが……だれが、おまえのいうとーりにするか」


大神官が放ってきた魔法を魔法で相殺して、周りに被害が広がらないよう全力で大神官を相手にしていると、四方八方から白マリモが襲ってくる。

「消えろっ!!」

俺の周りの白マリモを切り倒したレオンが、俺に白マリモが近づかないようにしてくれている。


「はあ……面倒ね」

大神官は突然魔法攻撃をやめてレオンに手を向けた。
するとどこからともなく現れた透明な鎖がレオンを縛り付け、空中に高く吊り上げる。


「放せ!!くそっ!!」


「ほら、あのエルフは私の掌の上にあるわ。生きるも死ぬも私が決められる……ほら、抵抗をやめなさいな」


こ、こいつ……なんて卑怯な!!

まだお子様のレオンを人質にするなんて、悪逆非道で下劣で外道、愚図なやつがすることなのに!!

「あら?さっさと投降しなさいよ。こいつがどうなってもいいの?」


にやにやと気持ち悪い笑みを浮かべて俺を挑発してくるが、悔しいことに万事休すな俺は渋々魔法を使うのをやめると、シルから降りて大神官のもとへ向かった。


「ダイキっ…!お前何して!?」


「うるさいレオン。ちょっとしゅーちゅーしてるから、だまってて」

レオンが驚いたように目を見開いて必死に俺を止めようとしてくるけど、どうせ最初から選択肢なんてないのだ。レオンを見捨てるほど俺は落ちぶれてないし、そこまで無情なやつでもない。


「そうよ。ほら、もう少しこちらによって……」


俺は素直に近づくと、大神官はニヤッと口角を上げて俺に手を伸ばした。












「止まれ」


声が響き渡ると同時に、この世界から全ての音が消えた。
周りをみると宙に浮いたまま静止している瓦礫の破片、魔法、そして人々。
白マリモの増殖は勿論、動きも停止していた。
俺の他に動けるレオン、大神官は呆然と周りを見渡して空を見上げる。


大神官が張った結界の頂点に、一筋の月明かりが差し込んでいた。




「助けに来たよ、主」




----------------

いつも読んでくださりありがとうございます!

すみません。体調不良で更新が遅くなりました。今年は風が何故か結構ひく年になりましたが、今考えたらあと一ヶ月で2024年が終わりますね。

この作品も、そろそろ半年を迎えるので時が経つのは早いですね……

これからも末永く仲良くしてくださると嬉しいです。よろしくお願いします(⁠^⁠^⁠)
しおりを挟む
感想 7

あなたにおすすめの小説

異世界転生目立ちたく無いから冒険者を目指します

桂崇
ファンタジー
小さな町で酒場の手伝いをする母親と2人で住む少年イールスに転生覚醒する、チートする方法も無く、母親の死により、実の父親の家に引き取られる。イールスは、冒険者になろうと目指すが、周囲はその才能を惜しんでいる

異世界でチート無双! いやいや神の使いのミスによる、僕の相棒もふもふの成長物語

ありぽん
ファンタジー
ある異世界で生きるアーベル。アーベルにはある秘密があった。何故か彼は地球での記憶をそのままに転生していたのだ。 彼の地球での一生は、仕事ばかりで家族を顧みず、そのせいで彼の周りからは人が離れていき。最後は1人きりで寿命を終えるという寂しいもので。 そのため新たな人生は、家族のために生きようと誓い、そしてできるならばまったりと暮らしたいと思っていた。   そんなマーベルは5歳の誕生日を迎え、神からの贈り物を授かるために教会へ。しかし同じ歳の子供達が、さまざまな素晴らしい力を授かる中、何故かアーベルが授かった力はあまりにも弱く。 だがアーベルはまったく気にならなかった。何故なら授かった力は、彼にとっては素晴らしい物だったからだ。 その力を使い、家族にもふもふ魔獣達を迎え、充実した生活を送っていたアーベル。 しかし変化の時は突然訪れた。そしてその変化により、彼ともふもふ魔獣達の理想としている生活から徐々に離れ始め? これはアーベルの成長物語、いやいや彼のもふもふ達の成長物語である。

【完結】神様と呼ばれた医師の異世界転生物語 ~胸を張って彼女と再会するために自分磨きの旅へ!~

川原源明
ファンタジー
 秋津直人、85歳。  50年前に彼女の進藤茜を亡くして以来ずっと独身を貫いてきた。彼の傍らには彼女がなくなった日に出会った白い小さな子犬?の、ちび助がいた。  嘗ては、救命救急センターや外科で医師として活動し、多くの命を救って来た直人、人々に神様と呼ばれるようになっていたが、定年を迎えると同時に山を買いプライベートキャンプ場をつくり余生はほとんどここで過ごしていた。  彼女がなくなって50年目の命日の夜ちび助とキャンプを楽しんでいると意識が遠のき、気づけば辺りが真っ白な空間にいた。  白い空間では、創造神を名乗るネアという女性と、今までずっとそばに居たちび助が人の子の姿で土下座していた。ちび助の不注意で茜君が命を落とし、謝罪の意味を込めて、創造神ネアの創る世界に、茜君がすでに転移していることを教えてくれた。そして自分もその世界に転生させてもらえることになった。  胸を張って彼女と再会できるようにと、彼女が降り立つより30年前に転生するように創造神ネアに願った。  そして転生した直人は、新しい家庭でナットという名前を与えられ、ネア様と、阿修羅様から貰った加護と学生時代からやっていた格闘技や、仕事にしていた医術、そして趣味の物作りやサバイバル技術を活かし冒険者兼医師として旅にでるのであった。  まずは最強の称号を得よう!  地球では神様と呼ばれた医師の異世界転生物語 ※元ヤンナース異世界生活 ヒロイン茜ちゃんの彼氏編 ※医療現場の恋物語 馴れ初め編

H.I.S.A.H.I.T.O. みだりにその名を口にしてはならない小説がある。

あめの みかな
ファンタジー
教会は、混沌の種子を手に入れ、神や天使、悪魔を従えるすべを手に入れた。 後に「ラグナロクの日」と呼ばれる日、先端に混沌の種子を埋め込んだ大陸間弾道ミサイルが、極東の島国に撃ち込まれ、種子から孵化した神や天使や悪魔は一夜にして島国を滅亡させた。 その際に発生した混沌の瘴気は、島国を生物の住めない場所へと変えた。 世界地図から抹消されたその島国には、軌道エレベーターが建造され、かつての首都の地下には生き残ったわずかな人々が細々とくらしていた。 王族の少年が反撃ののろしを上げて立ち上がるその日を待ちながら・・・ ※この作品はフィクションです。実在の人物や団体などとは関係ありません。

『転生したら「村」だった件 〜最強の移動要塞で世界を救います〜』

ソコニ
ファンタジー
29歳の過労死サラリーマン・御影要が目覚めたのは、なんと「村」として転生した姿だった。 誰もいない村の守護者となった要は、偶然迷い込んできた少年リオを最初の住民として迎え入れ、徐々に「村」としての力を開花させていく。【村レベル:1】【住民数:0】【スキル:基本生活機能】から始まった異世界生活。

うっかり『野良犬』を手懐けてしまった底辺男の逆転人生

野良 乃人
ファンタジー
辺境の田舎街に住むエリオは落ちこぼれの底辺冒険者。 普段から無能だの底辺だのと馬鹿にされ、薬草拾いと揶揄されている。 そんなエリオだが、ふとした事がきっかけで『野良犬』を手懐けてしまう。 そこから始まる底辺落ちこぼれエリオの成り上がりストーリー。 そしてこの世界に存在する宝玉がエリオに力を与えてくれる。 うっかり野良犬を手懐けた底辺男。冒険者という枠を超え乱世での逆転人生が始まります。 いずれは王となるのも夢ではないかも!? ◇世界観的に命の価値は軽いです◇ カクヨムでも同タイトルで掲載しています。

もふもふ相棒と異世界で新生活!! 神の愛し子? そんなことは知りません!!

ありぽん
ファンタジー
[第3回次世代ファンタジーカップエントリー] 特別賞受賞 書籍化決定!! 応援くださった皆様、ありがとうございます!! 望月奏(中学1年生)は、ある日車に撥ねられそうになっていた子犬を庇い、命を落としてしまう。 そして気づけば奏の前には白く輝く玉がふわふわと浮いていて。光り輝く玉は何と神様。 神様によれば、今回奏が死んだのは、神様のせいだったらしく。 そこで奏は神様のお詫びとして、新しい世界で生きることに。 これは自分では規格外ではないと思っている奏が、規格外の力でもふもふ相棒と、 たくさんのもふもふ達と楽しく幸せに暮らす物語。

世界最強で始める異世界生活〜最強とは頼んだけど、災害レベルまでとは言ってない!〜

ワキヤク
ファンタジー
 その日、春埼暁人は死んだ。トラックに轢かれかけた子供を庇ったのが原因だった。  そんな彼の自己犠牲精神は世界を創造し、見守る『創造神』の心を動かす。  創造神の力で剣と魔法の世界へと転生を果たした暁人。本人の『願い』と創造神の『粋な計らい』の影響で凄まじい力を手にしたが、彼の力は世界を救うどころか世界を滅ぼしかねないものだった。  普通に歩いても地割れが起き、彼が戦おうものなら瞬く間にその場所は更地と化す。  魔法もスキルも無効化吸収し、自分のものにもできる。  まさしく『最強』としての力を得た暁人だが、等の本人からすれば手に余る力だった。  制御の難しいその力のせいで、文字通り『歩く災害』となった暁人。彼は平穏な異世界生活を送ることができるのか……。  これは、やがてその世界で最強の英雄と呼ばれる男の物語。

処理中です...