ちっちゃくなった俺の異世界攻略

鮨海

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第2章︙魔法都市編

探し物依頼とキラキラな柱

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「むむ……!このにんむ、おれたちがひきうけた!」

「ちょ、なに勝手に決めて……てかその依頼!!どう見ても面倒くさいやつじゃ…」

 俺達はいつも通り冒険者ギルドに訪れると、なんか真っ白な狼が書かれた依頼書を持っている人を見かけたのだ。
 話を聞くと、どうやらこの絵に描かれている狼が失踪してしまったらしいのだ。
 従魔が失踪するなんて……と信じられない顔をしているレオンを見るに、とても大変なことなのだろう。
 最強な人は人格者であらねばならない。
 それに俺は更に強くなると心に決めたのだ。
 俺はしかと決意を胸にこの依頼を引き受けることにした。

「めんどーとは、なにごとだレオン。おまえは、そんなにつめたいヤツだったのか…」

「いや違うだろ。てかお前依頼受けたの、この狼魔物の見た目がシルに似てたからだろ」

 そ、そんなわけ……ちょっとしかないに決まってるじゃないか。
 大体なんだ、内心どんなこと思っていようが善行を行えば良いんだよ。世の中残酷だが過程より結果を重視するからな。

「依頼を受けてくださってありがとうございます!」

「うむ。おれたちも、せーいっぱいをつくすぞ。かならずみつけてやる」

 フッと笑いながらさっと髪を掻き上げて返事を返すと、依頼人はにこやかな笑顔で冒険者ギルドを出ていった。
 ……いや、まさか丸投げされるなんて思わなかったぞ。自分の従魔がいなくなったのは自分が悪いんだから、少しは手伝う素振りくらい見せて欲しかった。

「まったく、これだから……せちからいな」

「出た。その…せちからいって言葉、最近お前の流行語になってるよな」

「りゅーこー?フッ……おれはそんな、よーちなりゆうでいわない。おこさまではないからな!!」

 流行語とか、もうそんなものに囚われているのはお子様だけ。
 前の世界は毎年流行語大賞なんてあったけど、その言葉を実際に使うやつなんて小学生くらいだろ。
 大人は流行語なんてものに流されず、自己を確立して言葉を使い分けているからそんなことにはならない。
 そもそも……世知辛いを流行らせてる人がどこにいるんだよ。そんなやつは変人も変人、ものすごい変人と言わざる得ないだろう。



「おや、どうやらすごく珍しい任務を受けるようですね。私も参加させていただいてもよろしいでしょうか?」

 来たか。
 最近毎日のように俺達に張り付いてくるこの大神官、本当に迷惑だからやめて欲しい。
 ギルド長にも相談したけれど、全然取り合ってくれなかった。

「大神官にお前たちの気分という理由で根拠もなく近づくなと言ったら、流石に心象が悪くなる。特に害もないのだし、このままでもよかろうよ」

 なーにが「このままでもよかろうよ」だよ!!
 あいつがやってるのはストーカーだぞ。変態に許しも甘えも慈悲も与えちゃいけないんだよ。
 こういう奴が一番反省しないから、もう二度とこういう状況が作れないよう物理的制裁を与えるしかないってのに、トップにいるギルド長が怠けてるからこうなるんだ…


「やはりここは、おれのてで…!」

「良く分からんがやめろ。お前が何かすると余計ことが拗れる。絶対に辞めろ!」

 なんかレオンが鬼気迫った表情で俺にやめろやめろ言ってくるけど、どうしたんだ一体。
 もしかして……俺が失敗するかもしれないと思って不安になっているのか!
 だからあんな心にもないことを……そうかそうか。レオンはまだ俺の有能さが良くわからないのか。お子様だから仕方がない。
 しかし、俺は失敗することなどありえないのだ。この大神官を追い出す為あらゆる策を練り罠を張り、外堀を埋めて相手に反撃の隙を与えず最短ルートでとどめを刺す……俺なら余裕だ。


「だーじょぶだレオン、おれがしったいをさらすとでも?そんなにおバカじゃないからな!」

「そんなにお馬鹿だからやめろと言っているんだよ…」

「あ…?おまえ、おこさまのぶんざいでなまいきな!おまえがおバカだぞ!」

「お菓子にホイホイ釣られてついていくお前が何いってんだ」

 む、むかつく!!
 このお子様エルフ、いくらお子様だからってなんでも行っていいとは限らないんたぞ!

「おかしはこーいだ。まちのひとのこーいを、まさかむしするのか?まったくこれだからおこさまは……」

「……好意……好意!?」


 愕然とした顔になったレオンは、俺の言ったことをブツブツと反復してまた愕然としている。本当にどうしたんだレオン。今日なんかおかしいぞ。
 俺は何気に今も俺の横にいる大神官から逃げるため、レオンをガシッと掴みさっさと冒険者ギルドから出ていった。
 幸いあの大神官は俺たちを執拗に外までは追ってこないため、これ以上面倒臭いのと関わらなくて済むのだ。

 レオンと言い争っている暇はない。取り敢えず、この狼イラストを頼りに探さないといけないな。
 でも、手当り次第探しても多分見つからない。ていうかそんな脳筋戦法で見つかるならとっくに見つかってるだろ。
 せめてどこら辺で失踪したのか知りたかったけど、あの依頼主、俺達に押し付けて逃走したからな。そりゃ従魔も逃げたくなるわ。

 そう思いながらボンヤリと街を歩いていると、なんか遠くのほうにキラキラした柱が見える。
なにがなんだかわからないけれどすごく綺麗だ。
今まであんなの見たことなかったので、俺はレオンにあの柱はなんなのか聞くと予想外の答えが返ってきた。


「キラキラな柱?なんだよそれ。お前、頭おかしくなったのか?」

……頭がおかしくなったは余計だが、どうやら冗談で言っているわけでは無さそうなので、これは俺にしか見えないらしい。
いや、自分で言ってみて全く意味がわからないけど、本当に俺にしか見えていないらしいのだ。
さっき手当たり次第に柱について聞いたけど、全く知らないと言った反応だったから……これはもしや、選ばれし者にしか見えないとか?


「フムフム……だったらおれはもしや、えらばれしゆーしゃのつるぎを……」

「……今度はなんだ。また面倒なことがありそうで怖いんだが」


そう。これは選ばれし者の試練なのだ。漫画によくある勇者の試練と一緒だ。
ここはファンタジー世界だし勇者の剣くらいあるだろう。勇者の剣じゃなくても、大魔法使いの杖とか……
とにかく、俺は選ばれたのだ。異論は受け付けない。こればかりは動かぬ事実であり真実。
そして今、伝説が幕を開けたのだ。


「よっし!レオン!あそこにいくぞ!!」 

「は、あ?え?ちょ待てよ!!」


俺は遠くにある柱を目指して猛スピードで走り始めると、あまりの速さに驚いたレオンが慌てて追いかけてくる。
最強の俺にレオンがついてくれるとは思っていないので俺は更にギアを上げて走り始めた。



「はぁ………はぁ……く、これは……なんて、とーいみち……」

これだけ走ったのにまだ着いていない、だと?
確かにちょっと遠いなとは思っていたけど、この俺が全力を出してもまだ足りない……


「お前…突然走るなよな……こっちの心臓が悪くなる」

「な、なぜお前がここに!!」


つい驚きのあまりモブの悪役が言いそうなセリフを言い放ってしまった。
まさかレオンが俺に着いてこれたなんて……俺はレオンのことを甘く見ていたようだ。
確かにレオン、毎日朝早くに起きて走ったりトレーニングしているらしいし、日々の積み重ねは伊達じゃないってわけか。

「これだからダイキは……お前、なんでそんなに息を切らしてるんだよ。ちょっと走っただけなのに体力無さすぎ」

「ち、ちがわい!ま…まさかおまえ、シルのまほうでおれについてきた…?そうだ、そうにきまってる!!ひきょーだぞレオン!」

「なわけあるか」


フンッ、いくらレオンでも現役高校生だった俺にかなうわけがない。いくらちっちゃくなっても同年代に負けることなどありえないのだ。

「しかたない……ここからは、あるいていくぞ」

少しも疲れてはいないが、ここは適度に休憩を挟んでもしもの時のために体調を万全に整えておかなければならない。
俺は疲れていないが、レオンとシルは疲れてるだろう。特にシルはレオンが魔法でズルした代償で魔力を消耗してるはず。


「おばちゃん、これ、レオンとおれの、ふたつください」

「まぁー!!この子が最近噂の黒ちゃん?あらまあ可愛いわねー。2つ欲しいの?可愛いから1個おまけしちゃう」


おばちゃんのおまけにより3本のワーウルフの串焼きを買った俺は、神速でレオンとシルのもとへ戻るとワーウルフの串焼きを一本ずつ配ってあげる。
カリカリで肉汁が噛めば噛むほど溢れ出す絶品だが、今の俺にそんな余裕はなかった。

「レオンレオン!!あの……おれのこと、クロちゃんっていわれてるぞ」

「あーそれね。お前知らなかったのか?お前が黒髪黒目だから『黒ちゃん』って言われてるんだ。良かったな可愛がられて」


な……なんだと!?


「おれかわーくない!!かっこいーんだ!!クロちゃんって、ちゃんじゃない!!おれ、おんなのこじゃないぞ!!」

「はいはい。良かったなー黒ちゃん?」


こ、こいつ…!俺が嫌なの知っててわざと言ってやがる!!もしやあれか?俺がお子様って言ったことまだ根にもってるのか?

俺はチクチクと続けられるクロちゃん攻撃に必死に耐えていると、いつの間にかキラキラの柱の目の前に着いていた。
俺は未だクロちゃん攻撃を続けるレオンの口をベチッと塞ぐと、目の前を指差してキラキラしてることを伝える。


「……なんもないじゃんか」

「あるぞ!ほら、このキラキラ!!すごーくキラキラしてる!みえないのか?」

「……全く」


レオンはどうやら目と鼻の先にあるキラキラの柱を見ることができないらしい。なんか面白い。
でも、どうやらシルはキラキラの柱が見えてるらしい。
ガン見していて、どう見てもなにも見えていないようには思えない。

「シル…!もしかしておまえ、みえてるのか…?」

「キャンッ」

勝った。
これで2対1で俺の言う事の信憑性が増した。
さあレオン、お前だけだぞ見えない見えないとほざき散らかしているのは。
俺の無言の視線に居心地悪そうにしていたレオンが腕を組んで俺の方に向き直ると、自信満々に俺に向かって容赦無く言葉を吐き捨てた。

「ほら、俺にはなんも見えない。お前が何か見えているか知らないけど、お前は元々おかしいからアテにならない。こうなったら俺が証明してやるよ」


レオンはキラキラの柱がある場所へ容赦無く歩み寄ると、一寸の躊躇もなく手を前に出した。


「ほら、なんもないだろ。お前がキラキラしたなんかが…」


そして唐突にキラキラした柱の中に吸い込まれたレオンは、一瞬で姿を消した。
……いや、嘘だろ?

「シル。レオンはおばかだから、すいこまれちゃったな。だからおれ、あれだけキラキラあるいったのに……」

「キャン?」

「フンッ……しかたない。ここは、おれがレオンを、かっこよくたすけてあげよーではないか」


俺はキラキラの柱に向き直りスタタターッと走ろうとしたが、シルがおれの服の裾をつかんで必死に引き止めてくる。
どうやらクロスが恋しいのか家の方角を指して精一杯引っ張ってくるけど、俺は優しくシルを引き離した。

「ダメだ。クロスにたよってたら、おれはいつまでもせーちょーしない。ここは、おれひとりでやってやろうではないか!!」

もしかしたら勇者の剣もあるかもしれないしな。





俺はかっこよく宣言すると、シルと共に目の前のキラキラな柱に手を伸ばし中に飛び込んだ。




----------------
いつも読んてくださりありがとうございます!
最近急激に冷え込み、いつものように朝自転車を漕いでたらまさかの白い息が出ました。

まだ10月なのに……と驚愕しながらも寒さに震えながら自転車を漕いでいたわけですが、とても新鮮な体験ができました。
最近雨の頻度も多くて勿論気分は暗いんですが、明るくいこうとイヤホン聴きながらちょっと体を揺らしてリラックスしてます。

皆様もストレスは程々に、そして思いっ切り発散できることを願ってます!!
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