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第2章︙魔法都市編

帰還と再会

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「あ、あの、はなして…」

「いやよ。あー、なんか心が洗い流されるこの感じ、これが至福なのよ。久しぶりだからもうちょっとこのままでいさせなさいな」

ムグっと力強く抱き締められている俺は、視線でクロス達に助けを求めるけど全く当てにならない。
クロスはにこにこして見守ってるだけだし、レオンは口を半開きにしながらこっちを見てるだけ。
シルに至ってはもう嬉しそうにキャンキャン鳴いているではないか!


「これがしゃかい……まったくもって、せちからい」

「せちからい?全くまた変な言葉使って……異世界人だからって、私たちに分からないような悪口とか言っちゃいけないからね?」


俺を力強く潰し……抱き締めているアクアは、ご機嫌な様子で俺のほっぺたをスリスリしてくる。


俺達がクロスの魔法で帰還したとき、もうアクア達が何故か結界に入り込んで待ち伏せしていたのだ。
実はもっと前から居場所を特定してたらしいが……というかクロスもそうだったから当たり前なのだが…
とにかく、それで精霊の都を守る為にクロスしか動けなかった状況なんだと。

「いやもう、我らが精霊王がここに転移印してくれたからこれたけど、本当に皆寂しかったのよ?」

「そ、それは、ごめんさい…」

「いいのよ。あれはあなたのせいじゃないし、アスモデウスは今度見つけたら全力でしばくことにしたから」


にこにこ笑顔であの偽物アスモデウスに呪詛を吐き捨てるアクア。これが精霊だとは世の中不思議でならない。

「はあー、お前を見つけるために精霊皆で一丸となったんだぞ。こんなの千年前の大戦以来だったわ」

なんだか疲れた様子なクロウは、俺に拳を差し出すと、ニッと笑って俺の拳と軽くぶつけた。

「まあでも、お前が元気ならそれでいい。それにしても、お前も色々成長したな」


クロウは視線を反らしてレオンの方をチラリと見ると、何故かしみじみとした口調で俺を褒めてくる。
クロウに見られたレオンは一瞬固まったあと、緊張したようにチョコンと頭を下げて挨拶をしていた。

……フッ、初対面の人に緊張してしまうなんて……まだまだレオンも人見知りするお年頃か。
しかし、クロウとアクアに再会できたのはいいとして、流石にアクア達もここに住むとなると精霊さん達が危ないのでは……

「あ?それは大丈夫だ。精霊王がここに『印』を付けてくれたからな。これでいつでも精霊の都と行き来できやすくなったし、俺達は精霊の都にいることにしたから」

やはりクロスはできる助手くんなだけある。
精霊さん達が困らないよう手を打ってあるだなんて、精霊王という名に恥じない行動を心がけているようでなにより。
いつもは穏やか感じで、俺に引っ付いてほっぺを摘んできたり、なんか一人でブツブツ呟きながら魔法を使っているところしか見ていないから、実はクロスが結構凄いやつだってことを度々忘れかける。



「それじゃあそろそろ戻らないと。全く……他の最上位精霊達は何しているのかしら?このままじゃずっと私達で留守番しないといけないじゃないの。そろそろウインドあたりを捕まえてやらないと…」

「アクアばいばい。クロウも、ばいばい」

「じゃあなダイキ。なんか用があったらすぐ呼べよ!一瞬で駆けつけてやるからな!」


ギュッと手を握ってブンブン振ってクロウとアクアにさよならをした。
そして……俺は椅子に座り足を組んでふぅー、と息をはいた。特に疲れてはいないけど、雰囲気づくりは大切だ。

「ようやくしずかになったな……あ」

「どうしたお前」

「アクアとクロウに、レオンしょーかいするのわすれた。まずった」


折角また会えたから少し嬉しくて忘れてしまったからか、レオンを紹介することがすっぽり頭から抜けていた。
アクアもクロウもレオンの方をチラ見していたから、恐らく気にはなっていたんだろうけど俺が紹介しなかったから…

クッ…これでは大人としてダメダメな対応と言わざる得ない。
今回は全面的に俺がミスったうえに、里から帰ってきてお疲れのレオンにいらぬ迷惑をかけてしまった。


「お、オレはダメダメなおとな…」

「どうした急に……うん、まあ、大丈夫だ。よく分からんけどそんな落ち込むなって。お前は元々大人じゃないから」


これまたレオンがいらないことを言って慰めてくれるけど、俺は大人だ。
まだお子様には分からないかもしれないが、俺自身からは大人のオーラというものが仕草と動作、言動に挙動で表れているんだ。
しかし、レオンの言う通りここで落ち込んじゃいられない。
今回里に行って気づいてしまったが、俺はまだ真の最強ではない。
あの大神官でいるとかいうへなちょこな奴に怖気づいてしまったのは、俺かまだ最強じゃないからだろう。
俺が目指すのはまさにこう……周りの人から『この人強すぎだろ!マジでチートだな!!』って言われるくらいがいいのだ。


「む……こんなこっちゃ、いられない!おいレオン!いますぐギルドにいくぞ!」

「お、へ?あ、別にいいけど……また急にどうしたんだお前」

「どーしたもこーしたもない!クロスはおるすばんだ!シルもおるす…」

「シルはダメだよ主。念の為に主にちょっかい出す輩がいた場合困るでしょ?」

クロスとシルはお留守番と言おうとした瞬間に、クロスからダメ出しが入った。
俺にちょっかいをかける奴らなんて……けちょんけちょんのボコボコにしてやるから大丈夫なのに、そんなことよりも手早く強くなるためレオンと二人だけで実戦討伐をしたいのだが。


「でも、シルはまほうつかいわんこで、おれがさいきょーになるには、シルのおてつだいのないほうが……」

「主の安全が大事だよね」

「で、でも!おれのちからを、はっきできるするために…」

「主の安全が大事だよね」

「で…」

「主の安全が大事だよね」



ダメだ。これはクロスの目が完全にいっちゃってる。
これは逆らったらいけないやつだと、大人の勘で素早く察知した俺は渋々シルを連れて冒険者ギルドに行くことにした。

シルはまだまだ子犬だから俺が守らないといけないはずなのに、クロスは何故あんなに俺の安全がー、とか言っていたのか不思議だが、これも修行の一環だと思えば大したことない。
俺は気を取り直してシルを抱っこしレオンと冒険者ギルドへ意気揚々と向かった。












「……おや?」

「あ…」

完全にやらかした。まさかここにいるなんて思わないでしょ。
ていうかクロスの転移がないのにどうやってここに来てるんだ?転移はクロスしか使えないはずなのに……もしかして、クロウみたいに自分だけの能力があるとか?

「また会いましたね。これもなにかの縁でしょうか」

「ば、ばかいうな。こんなのふこーのはじまりだ」

「ハハッ、よくもまあそんな失礼なこといえますね。これだから子供は…」


こちらを見つめて優しく笑っている……ような顔で見下してくる大神官デイル。
前回会った時のように、やはりなんか嫌な感じがするけど、今回はクロスもいないし何よりこいつ、レオンの境遇を知っていて放置していた屑だからな。
さっきの物言いといい、怖さより怒りが湧き上がってくる。

「やはり子供という生き物は良く分かりませんね。突然突拍子もない行動をとったり、意味のないことを始めたり……本当、なんでいるのでしょうね?」


まるで子供なんていらないと言っているような物言いだな。自分だって昔は子供だったはずなのにそんな言葉が出るなんて、まるで自分は子供時代がない別の生き物のような言い方だな…。これは余程の変人と見た。

しかし俺は健全な大人。立派な大人はこんな屑を相手にしない。さっさと離れるとするか。

「たしかにこどもって、うるさいね。とつぜん、なきむしになるし……でも、おとなみたいにズルくないし、うそもつかないよね。
ねー、

「おばっ!?…………いえ、子供は純粋無垢な生き物ですよね。神に祝福されし汚れのない子供は、私達神殿の宝でもありますから」

「ふーん、あっそ。じゃ、おれたちはぼーけんしゃのにんむするから、そこどいて」


なんか呆然としているデイルを置いて俺はレオンと一緒に依頼を物色しはじめた。
レオンもあの大神官にはいい感情がないのか、レオンにしては珍しく徹底的に無視を決め込んでいるようだ。



もう、レオンは家族のことで心配しなくてもいいかもしれないな。

俺はシルとこっそり目を合わせて笑い合った。






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レオンSIDE


ここ最近落ち着く暇が無い。
原因はダイキだ。
いつもトラブルというか問題事を起こし、いつもなんとかしようとして予想外のことが起こってしまう、世間で言う問題児。
それでも町の人達からの印象は悪くなく、なんなら一部の女性達からは物凄い人気を誇っているが、俺達の邪魔をしないよう基本的に優しく見守ることだけにとどめてくれている。優しい。

それでも偶にダイキにお菓子をあげているので、目を離したらいつの間にかダイキがお菓子につられて離れていることもしばしば。
アレで俺は大人だと言い張るのだから、本当に不思議だ。

でも俺に不満はない。
俺自身はダイキが来てから楽しい日々を送れている。

一度故郷に帰ってきたときはどうなるかと思っていたけど、ダイキのお陰で勇気が出せた。
きっと俺一人でいたら流されていただろうから、本当色んな意味で規格外のダイキには、実はコッソリ感謝している。言ったら調子に乗りそうだから言わないけど。

帰ってきてからも水属性の高位精霊や闇属性の高位精霊がいたけど、もう女神様や精霊王様の一見で大抵のことにはあんまり驚かなくなっていた。
それでもこちらに注意を向けられたときは緊張してしまったので、まだまだ俺は一般常識で生きていることが再確認できた。
ダイキと会ってからは俺も段々とダイキに影響されそうで怖い。あんな規格外と同じ考えになったら俺の身に危険が迫りそう。


そんなこんなでいつの間にかダイキといっしょに過ごしている俺だけど、最近嫌なことがある。


「今日も会えましたね。どうですか?私と一緒に依頼でも受けませんか?」

「むりです、いやです。もうちかくにくるな」


最近毎日のように大神官のデイルと鉢合わせするのだ。
しかも毎回冒険者ギルドなので、一応人目があるから物騒なことはできないと思うが、相手は大神官なのでそもそも物騒なことをする可能性は低い。

それでも俺が警戒しているのは、今までのこの人の行動とダイキの態度からだ。
人見知りしないダイキがあそこまで毛嫌いするなんてどう見てもおかしい。
ダイキは見た目や身分で人を判断しないし、種族に驚くことはあっても差別はしない。
それなのにこんなにも冷たい態度をとるのは…


一抹の不安が頭をよぎった。




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いつも読んでくださりありがとうございます!
今回は話すネタもないので……


【レオンについて】


ハイエルフ。金髪蒼眼。凛々しい顔立ちをしていて、所作や言動はハイエルフなので意外とお上品。
言葉遣いはハイエルフの時のお上品言葉と、冒険者ギルドで培った乱暴言葉が混ざってほんのちょっとワイルドになった。


大輝に出会ってからは立て続けに起こる問題に頭を抱えている。
でも、大輝のことを大切な仲間だと思っていてボタンを掛け違えていたりするときは直してあげている。ハイエルフのくせに面倒見がいい。

最近は大輝の作ったご飯とレイクの特訓とこれまた大輝が起こす面倒事により、自分が色々な面で成長できていることを実感して素直に喜べていない。
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