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第2章︙魔法都市編
ダンジョン攻略1
しおりを挟む「しょくん!!よくききたまえ!!えっと……ほんじつのにんむ、ワーウルフをたおす。おたからさがす……いじょーだ!!」
ついにとうとうこの日が来てしまった。
俺達は朝早く起きて冒険者ギルドへ行き、早々に討伐依頼を受注した。
いつものように却下されようとしたけれど、今回はレイシアさんとレイクさんもついて行くという条件なので、勝手に判子を押して許可にした。
そしたら何故か、ギルド長がやってきて頭をベシッとはたかれた。解せぬ。
それでなんやかんやあったけれど、ついに俺の根気と根性で討伐依頼をもぎとった。
ここまで来るのに中々大変な道程を歩んできたことか……まだここに来て一ヶ月も経ってないけれどすごい大変な日々だったな…
じーんと感傷に浸っている俺をよそに、大人達は淡々とこれから行く場所を決めていた。
「ワーウルフの討伐なら、やっぱり近くの森に行くべきよね」
「まあ、そうだろうな。森なら予想外の事態が起きても、すぐに応援を呼ぶこともできるし安定した狩りができるからな。問題は……そこの本人が草原が嫌だと言っている事だ」
「むむ!!しつれーな!!おれは、もりはいやだなんて…ぜんぜんいってないぞ!!」
「じゃあなんで意味のわからない依頼が付け足されてんだよ」
……意味のわからない依頼?
「ほら……お前が言ってた、お宝探しとかなんだとかのことだ」
俺が首を傾げてると、レオンが俺の耳元でボソッと教えてくれた。
……まあ、確かにお宝探しは俺のナイスなアドリブだが、まさかダンジョンが存在するなんて知らなかった。
俺がかつて読んだ漫画では、ダンジョンはまさに浪漫と冒険の王道をゆくもの。
「おれは、より、おのれをつよーくするため、きびしーダンジョンにするんだぞ」
「別にそんな厳しくもないけどな」
ここはダンジョンに一票。自分の勘がビビッと声を上げたのだ。決してダンジョンというものに釣られたのではなく、俺は自分の類稀なる直感を信じようとしたのである。
そして急遽決まったダンジョン攻略。
俺達が今から行くダンジョンはすぐ近くの森の中にある。
『果樹迷宮』という名前で、よく甘い果実が採れるため商人や依頼帰りによる冒険者などがちょくちょく来るそう。
しかしこの迷宮、ワーウルフの群れが出てくるらしく、安心して採集することはできないので、そこそこ腕のたつ冒険者や護衛を雇った商人たちだけが来る場所なんだとか。
今回は俺にレオン、そして見守り役にシルとクロス、レイクさん達になっているから全然大丈夫だと思う。
強いていえば、何故シルが見守り役に位置しているのか疑問だ。どう見てもシルは俺に見守られている側なのに。
ダンジョンにつくまで暫く暇なので、楽しくみんなでおしゃべりしていると、順調に道中を進む俺達に、ついに第一の試練がやってきた。
「お…これは、スライムじゃないか!!」
ポヨンポヨン跳ねて近づいてきた可愛らしいボディのスライム。
白色で可愛い姿に見えるが、舐めてかかると毒液を噴射してくるので要注意だ。
「じゃああなた達。まずはこのスライムを倒してみて。連携をしっかりとって素早く倒すのよ」
俺はサッと女神様の弓を取り出し狙いを定める。
勝手に魔力が吸い取られて、魔力の矢が生成されいつでも準備万端だ。
レオンも子供用の剣を取り出しビシッと構えている。
俺は昨日の夜、レオンと戦闘スタイルについて相談した。基本は俺が遠距離攻撃、レオンが俺目の前の敵を抑えながら削れれば削る、というような構図で一件落着した。
俺にはシルという魔法使いわんこがいるので、大抵の敵なら近づいてきても余裕で撃退できるらしい。
あとクロスもいるのでなんとかなるだろう。
クロスを呼ぶ事態になるなんて余程のことか、それ以上に俺たちが追い詰められたときの二択しかないので、なるべく出番が来ないことを祈ろう。
どうせ来ないと思うけど。俺強いし。
そして、取り敢えずこの弓の性能がどれくらいか試すために、俺は一発入れてみることにした。
実は今まで、俺もレオンもそうだが本物の武器を使っていない。
弓も剣も練習用の軽いやつだったので、イマイチ今の武器がどれくらいなのか分からない。
試し撃ちとして俺が放った矢は、おおよそ弓としてあってはならないようなスピードでスライムに向かっていった。
ピンッー
………まさかの即死貫通。
スライムの討伐原則として、『中心の核を破壊しなければならない』だったので、普通はスライムごと核を割るのがセオリーなのだが、まさかの貫通。
スライムの極限まで伸縮性のあるボディを突き抜けるなんて、と周りの人が唖然としていた。
なによりクロスは物凄く驚いているようだ。
「え……あの、運動が苦手な主がここまで上手く武器を扱えるなんて……」
……普通に失礼だが、間違ってはいない。
確かに今までの俺は拳と魔法だけだったからな。俺の新たな才能に感激しているんだろう。
「……取り敢えず、お前がC級冒険者としてはあり得ない方法でスライムを屠ったのは分かった。おいレイシア。お前、一体どんな教育を施したんだ?」
「そんなの私が知りたいわよ。これはこの子自身の力じゃなくて、この弓がおかしいんでしょ。どう見てとんでもない気配……感じ?がするから」
「フフン!!べつに、おれがつおいのは、むかしからだ。スライムてーど、こんなのあたりまえだ!」
俺がビシッと胸を張ってそう言うと、何故か周りから白けた目で見られた。
俺、なんにも間違ったこと言ってないのに、みんなそんな冷たい目を向けてくるなんて……ハッ!!もしかして、これが嫉妬!?
近所のお姉ちゃんたちが読んでた少女漫画にもあった!!
『聖女の力を嫉妬する悪役がいるんだけどね。結局は当て馬だからヒロインには勝てないのよ。まあ、強いていえば、聖女がより強い力を披露して特別さを引き立てる役かな?……ふふふっ、所詮ヒロイン以外はモブなのよ』
そう言って腹黒い笑みを浮かべていたあのお姉ちゃんは、正直とても怖かった。
でも、嫉妬か……俺が強い力を発揮してしまったばかりに、こんなことになるなんて……
「……おれは、どんなにおれがすごくても、いつもおまえたちのみかた。よくおぼえてくれだぞ」
俺は切なげにそう慰めてあげる。
皆胡乱げな目で俺を見てくるけど、いつか俺の言葉が理解されるまでじっと見守っていてあげようじゃないか。
それから出発を再開し、あれ以降魔物もでなかったので俺達は順調に道を進んでいった。
「ふう……やっとついたわね」
周りには木が沢山。もちろん森だから当たり前なのだけれど、一つおかしい点があるとすれば、目の前にとても大きな洞窟があることくらいだろうか。
結界が敷いてあり、ダンジョンにいる魔物が外に出ないようにされている。
深呼吸して息を整え、果樹迷宮の内部に俺は一歩踏み出した。
----------------
スライムについて
弱い魔物で毒液を吐くが致死量ではないため大丈夫。
存在そのものが弱いので、シルという強大な力を持った生物の魔力を検知することができず、近づいてしまった。
また視覚、聴覚、味覚もないため戦闘に弱い。
スライムなので弾力性が異常に高く、様々な攻撃を無効化できる。しかし核さえ破壊すれば倒せるので、外側から強い衝撃を与え核だけ壊す方法が普通。
様々な環境に馴染める特徴を持つ。
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