上 下
45 / 63
第2章︙魔法都市編

俺の夢と討伐依頼

しおりを挟む

「お、おれは………ここに、いるにする」

俺は黙り込んでじっくりと考え、しっかりと決断しそう言って、俺が本気なことを確認し、ふうっと息を吐いた。


「そう。主がそうするなら………僕は応援するしかないね」

……精霊王のクロスとはいつも会えなくなってしまうけれど、やっぱり寂しい。
だってクロスは俺が異世界に来てから初めてできた仲間なのだ。
でも、ここでクロスと一緒にいたいという欲が、俺の夢の達成に遅れてしまうならば我慢するしかない。
いつだって今ばかり見ず、これから未来さきを見据えて行動しなさい、そう教えられて育った俺は、ここにいることを選択したのだ。

………でも、再会したばっかですぐにお別れなんて寂しいな……


「おれ、クロスのことはわすれないから……」

「なに言ってるの主?僕もここに引っ越すんだから忘れてもらっちゃ困るよ……えっと、それでここに来るために必要な物を持ってこないとね……」


………は?


「で、でもクロス……おまえおーさま、でしょ?もどらなきゃダメでしょ?」

「……え?あ、それは大丈夫。ここに直通の転移陣を設置しておけばいくらでも行き来出来るし、僕が精霊王って言っても、まあ、称号みたいなもので仕事なんて一切ないからね。なんの支障もないよ」


……あらやだ。そんな発想は無かったぞ。
確かにクロス、いつも俺と一緒に行動していたもんな。王様ならもう少し忙しくしていてもいいはずなんだけど、あまりにも当然のことすぎて今まで疑問に思ったこともなかった。

つまり、クロスはここにいてくれて、俺は冒険者活動に精を出して最強の冒険者になるという夢を叶えられるわけだ。

さっきまで真剣に悩んでたのが恥ずかしいな。

でもこれで一件落着したわけだ。
良かった。クロスと離れ離れにならなくて、ほんのちょっとしんみりしちゃうところだったぞ。


「でも……寂しいね主。僕たちと一緒に神秘の森で一生楽しく過ごしていればいいのに、自分の道を行くのか……人間って不思議な生き物だよね。わざわざ大変な道を行くなんて」


冒険者をやっていれば嫌なことや理不尽なことにも出会うはず。人間社会はそういうものだ。とおばあちゃんが嫌そうに言っていたのをふと思い出した。
でも俺は、それでも冒険者を目指したい。格好良い人生を送りたい。
ちっぽけで軽いと言われても仕方がないと思う。
でも、夢なんてそういうものじゃないか。格好良い、ああなりたい。そういった小さな思いから始まるものだと俺は思っている。


「それは心配しなくてもよろしいですよ。もしこの子に酷い仕打ちをしたら、私達が全力で処……お仕置きして差し上げますので」

「……ほお。それは頼もしいね。是非主の助けになってくれ。主を害そうとしたら処……お仕置きしてくれる人がいないといけないからね」


なんかガシリと熱く握手をしているクロスとレイシアさんをぽけーっとした目で見ていた俺は、ハッと我に返りクロスをベシベシ叩いて大事なことを問いただした。

「アクアとクロウはどーした!!それに、せーれーさんたち……だーじょぶなのか?あのわるものにやられてないよな!!」

俺がここに転移する直前まであの悪者を圧倒していたから大丈夫だと思うけど……


「あー……ごめん主。アスモデウスは主が転移して生じた混乱に乗じて、姿を消しちゃったんだよね。でも、主がきっちり縛りを課したから大丈夫!!今後あの悪魔が僕達に危害を加えることは出来ないから!!それにアクアたちも元気だよ」

そうか。なんか俺、いつの間にか凄いことをしていたらしいのだが、あの俺が命令したやつ……縛りが、正直ここまで効力のあるやつだとは思わなかった。
でも、アクアとクロウ、それに精霊さんたちが元気で何よりだ。
これでクロスたちと再会もできたし、俺も弓の特訓したし、これからやることは一つしかないな!


「じゃあ……そろそろ、ぼーけんしゃやろ!!」

今こそ冒険者活動再開のとき!!
この直近1週間くらい頑張って特訓してきたんだ。そろそろその成果を試したい。


「うーん……レイク?レオナルド君は今どれくらい?」

「今なら、同ランク程度の魔物なら狩れる程度までいっているな。勿論油断は禁物だが、ダイキと2人でコンビを組んで連携が取れれば、一つ上のランクでも大丈夫だと思う」

「そう……じゃあ、あなた達もそろそろ討伐依頼を受けましょうか。そろそろ実戦経験も積まないといけない頃だしね」


やった!!
やっと、やっと冒険者らしい冒険者生活に一歩近づいた!!
今までは討伐依頼なんて受けようもんなら許さない、という感じで周りが許可してくれず、ギルドの受付嬢から拒否を食らっていたけれど、やっとこれで一人前の冒険者!!

しかしこれで安心してはいけない。俺が目指すのは真の最強冒険者。己を律し日々努力に励んで強くならなければ。
だから、初の討伐依頼を何としても成功させ、最強への道を駆け上がっていかねば…!!


「レ、レオン!!はやくじゅんび、じゅんびしないと!!しっかりあしたにそなえないと!!」

「お、え、分かってる分かってる。だからそんなに興奮すんなって。初めての討伐依頼ではしゃぐ気持ちも分かるが、お前が気合を入れて物事に当たるといつも予想外の事が起こるからな」

なんかしれっと悪口を言われた気がするのだが、気の所為だな。
きっとレオンも久し振りの、それで初めてのしっかりとした討伐依頼だ。興奮して少し口が悪くなっているのかもしれない。 

俺はポシェットにハンカチ、あとお菓子とお弁当箱を取り出し明日持って行く物の整理を始めた。


「ちょっと見てあれ。弁当箱にお菓子、それにハンカチ……あ、飴もこっそり入れてるわ!!」

「………僕、精霊王だからよく人間の常識というものが分からないんだけど、あれってどう見ても冒険者活動する準備じゃなくて……遠足に行くやつだよね?」

「別にいいんじゃないかレイシア。俺たちの初めての討伐依頼なんて血なまぐさい事だらけだったからな。こいつらみたいに楽しくやって良い思い出になるほうが良いだろうな」

「それはそうね。レイク、あなたいつもはなんにも考えてなさそうなのに、偶には頭が回るのね。少し見直したわ」

「黙れ」


シルのために、果物も持ってかないといかないとでしょ……あと、のどが渇いたときのために水筒に冷えた水を入れて……


「……ダイキお前、そんなに討伐依頼が楽しみなのか」

「うん!!」

不思議そうな顔をして聞いてきたレオンに、俺はにっこり破顔で答えると、レオンが目を細めて少し微笑んだ。

「ん……良かったな。明日のためにしっかり用意しとけよ。くれぐれも忘れ物しないようにな」


偶に、まるでお兄ちゃんのような対応をするレオンは格好良い。
俺はそんなレオンに格好良いと言うのは少し恥ずかしいので、ちょっと照れながら明日に向けて準備を始めた。






----------------

いつも読んでくださりありがとうございます!


冒険者ランクについて

B級……普通に凄い。おじさんのようなベテランに多い。

A級……街に1人いるくらい。大きな街ではA級冒険者のパーティーもあることが多い。
国の騎士団長くらいのレベル。


S級……一つの国では片手で数えられるくらいの人数しかいないことが多い。魔法都市は例外で強い人達が集まるので、そこそこいるが世界からみてもなかなかの実力。
そこらの国の騎士団を圧倒できる実力。

とまあ、こんな感じです。

参考になってくれたら嬉しい……!!
ついでに投票もしてくれたらもっと嬉しいです!!
よろしくお願いします!!
しおりを挟む
感想 6

あなたにおすすめの小説

勇者召喚に巻き込まれ、異世界転移・貰えたスキルも鑑定だけ・・・・だけど、何かあるはず!

よっしぃ
ファンタジー
9月11日、12日、ファンタジー部門2位達成中です! 僕はもうすぐ25歳になる常山 順平 24歳。 つねやま  じゅんぺいと読む。 何処にでもいる普通のサラリーマン。 仕事帰りの電車で、吊革に捕まりうつらうつらしていると・・・・ 突然気分が悪くなり、倒れそうになる。 周りを見ると、周りの人々もどんどん倒れている。明らかな異常事態。 何が起こったか分からないまま、気を失う。 気が付けば電車ではなく、どこかの建物。 周りにも人が倒れている。 僕と同じようなリーマンから、数人の女子高生や男子学生、仕事帰りの若い女性や、定年近いおっさんとか。 気が付けば誰かがしゃべってる。 どうやらよくある勇者召喚とやらが行われ、たまたま僕は異世界転移に巻き込まれたようだ。 そして・・・・帰るには、魔王を倒してもらう必要がある・・・・と。 想定外の人数がやって来たらしく、渡すギフト・・・・スキルらしいけど、それも数が限られていて、勇者として召喚した人以外、つまり巻き込まれて転移したその他大勢は、1人1つのギフト?スキルを。あとは支度金と装備一式を渡されるらしい。 どうしても無理な人は、戻ってきたら面倒を見ると。 一方的だが、日本に戻るには、勇者が魔王を倒すしかなく、それを待つのもよし、自ら勇者に協力するもよし・・・・ ですが、ここで問題が。 スキルやギフトにはそれぞれランク、格、強さがバラバラで・・・・ より良いスキルは早い者勝ち。 我も我もと群がる人々。 そんな中突き飛ばされて倒れる1人の女性が。 僕はその女性を助け・・・同じように突き飛ばされ、またもや気を失う。 気が付けば2人だけになっていて・・・・ スキルも2つしか残っていない。 一つは鑑定。 もう一つは家事全般。 両方とも微妙だ・・・・ 彼女の名は才村 友郁 さいむら ゆか。 23歳。 今年社会人になりたて。 取り残された2人が、すったもんだで生き残り、最終的には成り上がるお話。

悪役貴族の四男に転生した俺は、怠惰で自由な生活がしたいので、自由気ままな冒険者生活(スローライフ)を始めたかった。

SOU 5月17日10作同時連載開始❗❗
ファンタジー
俺は何もしてないのに兄達のせいで悪役貴族扱いされているんだが…… アーノルドは名門貴族クローリー家の四男に転生した。家の掲げる独立独行の家訓のため、剣技に魔術果ては鍛冶師の技術を身に着けた。 そして15歳となった現在。アーノルドは、魔剣士を育成する教育機関に入学するのだが、親戚や上の兄達のせいで悪役扱いをされ、付いた渾名は【悪役公子】。  実家ではやりたくもない【付与魔術】をやらされ、学園に通っていても心の無い言葉を投げかけられる日々に嫌気がさした俺は、自由を求めて冒険者になる事にした。  剣術ではなく刀を打ち刀を使う彼は、憧れの自由と、美味いメシとスローライフを求めて、時に戦い。時にメシを食らい、時に剣を打つ。  アーノルドの第二の人生が幕を開ける。しかし、同級生で仲の悪いメイザース家の娘ミナに学園での態度が演技だと知られてしまい。アーノルドの理想の生活は、ハチャメチャなものになって行く。

異世界転生目立ちたく無いから冒険者を目指します

桂崇
ファンタジー
小さな町で酒場の手伝いをする母親と2人で住む少年イールスに転生覚醒する、チートする方法も無く、母親の死により、実の父親の家に引き取られる。イールスは、冒険者になろうと目指すが、周囲はその才能を惜しんでいる

女尊男卑 ~女性ばかりが強いこの世界で、持たざる男が天を穿つ~

イノセス
ファンタジー
手から炎を出すパイロキネシス。一瞬で長距離を移動するテレポート。人や物の記憶を読むサイコメトリー。 そんな超能力と呼ばれる能力を、誰しも1つだけ授かった現代。その日本の片田舎に、主人公は転生しました。 転生してすぐに、この世界の異常さに驚きます。それは、女性ばかりが強力な超能力を授かり、男性は性能も威力も弱かったからです。 男の子として生まれた主人公も、授かった超能力は最低最弱と呼ばれる物でした。 しかし、彼は諦めません。最弱の能力と呼ばれようと、何とか使いこなそうと努力します。努力して工夫して、時に負けて、彼は己の能力をひたすら磨き続けます。 全ては、この世界の異常を直すため。 彼は己の限界すら突破して、この世界の壁を貫くため、今日も盾を回し続けます。 ※小説家になろう にも投稿しています。

世界最強で始める異世界生活〜最強とは頼んだけど、災害レベルまでとは言ってない!〜

ワキヤク
ファンタジー
 その日、春埼暁人は死んだ。トラックに轢かれかけた子供を庇ったのが原因だった。  そんな彼の自己犠牲精神は世界を創造し、見守る『創造神』の心を動かす。  創造神の力で剣と魔法の世界へと転生を果たした暁人。本人の『願い』と創造神の『粋な計らい』の影響で凄まじい力を手にしたが、彼の力は世界を救うどころか世界を滅ぼしかねないものだった。  普通に歩いても地割れが起き、彼が戦おうものなら瞬く間にその場所は更地と化す。  魔法もスキルも無効化吸収し、自分のものにもできる。  まさしく『最強』としての力を得た暁人だが、等の本人からすれば手に余る力だった。  制御の難しいその力のせいで、文字通り『歩く災害』となった暁人。彼は平穏な異世界生活を送ることができるのか……。  これは、やがてその世界で最強の英雄と呼ばれる男の物語。

クラス転移から逃げ出したイジメられっ子、女神に頼まれ渋々異世界転移するが職業[逃亡者]が無能だと処刑される

こたろう文庫
ファンタジー
日頃からいじめにあっていた影宮 灰人は授業中に突如現れた転移陣によってクラスごと転移されそうになるが、咄嗟の機転により転移を一人だけ回避することに成功する。しかし女神の説得?により結局異世界転移するが、転移先の国王から職業[逃亡者]が無能という理由にて処刑されることになる 初執筆作品になりますので日本語などおかしい部分があるかと思いますが、温かい目で読んで頂き、少しでも面白いと思って頂ければ幸いです。 なろう・カクヨム・アルファポリスにて公開しています こちらの作品も宜しければお願いします [イラついた俺は強奪スキルで神からスキルを奪うことにしました。神の力で学園最強に・・・]

惣菜パン無双 〜固いパンしかない異世界で美味しいパンを作りたい〜

甲殻類パエリア
ファンタジー
 どこにでもいる普通のサラリーマンだった深海玲司は仕事帰りに雷に打たれて命を落とし、異世界に転生してしまう。  秀でた能力もなく前世と同じ平凡な男、「レイ」としてのんびり生きるつもりが、彼には一つだけ我慢ならないことがあった。  ——パンである。  異世界のパンは固くて味気のない、スープに浸さなければ食べられないものばかりで、それを主食として食べなければならない生活にうんざりしていた。  というのも、レイの前世は平凡ながら無類のパン好きだったのである。パン好きと言っても高級なパンを買って食べるわけではなく、さまざまな「菓子パン」や「惣菜パン」を自ら作り上げ、一人ひっそりとそれを食べることが至上の喜びだったのである。  そんな前世を持つレイが固くて味気ないパンしかない世界に耐えられるはずもなく、美味しいパンを求めて生まれ育った村から旅立つことに——。

異世界転生した俺は平和に暮らしたいと願ったのだが

倉田 フラト
ファンタジー
「異世界に転生か再び地球に転生、  どちらが良い?……ですか。」 「異世界転生で。」  即答。  転生の際に何か能力を上げると提案された彼。強大な力を手に入れ英雄になるのも可能、勇者や英雄、ハーレムなんだって可能だったが、彼は「平和に暮らしたい」と言った。何の力も欲しない彼に神様は『コール』と言った念話の様な能力を授け、彼の願いの通り平和に生活が出来る様に転生をしたのだが……そんな彼の願いとは裏腹に家庭の事情で知らぬ間に最強になり……そんなファンタジー大好きな少年が異世界で平和に暮らして――行けたらいいな。ブラコンの姉をもったり、神様に気に入られたりして今日も一日頑張って生きていく物語です。基本的に主人公は強いです、それよりも姉の方が強いです。難しい話は書けないので書きません。軽い気持ちで呼んでくれたら幸いです。  なろうにも数話遅れてますが投稿しております。 誤字脱字など多いと思うので指摘してくれれば即直します。 自分でも見直しますが、ご協力お願いします。 感想の返信はあまりできませんが、しっかりと目を通してます。

処理中です...