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第2章︙魔法都市編
俺の夢と討伐依頼
しおりを挟む「お、おれは………ここに、いるにする」
俺は黙り込んでじっくりと考え、しっかりと決断しそう言って、俺が本気なことを確認し、ふうっと息を吐いた。
「そう。主がそうするなら………僕は応援するしかないね」
……精霊王のクロスとはいつも会えなくなってしまうけれど、やっぱり寂しい。
だってクロスは俺が異世界に来てから初めてできた仲間なのだ。
でも、ここでクロスと一緒にいたいという欲が、俺の夢の達成に遅れてしまうならば我慢するしかない。
いつだって今ばかり見ず、これから未来を見据えて行動しなさい、そう教えられて育った俺は、ここにいることを選択したのだ。
………でも、再会したばっかですぐにお別れなんて寂しいな……
「おれ、クロスのことはわすれないから……」
「なに言ってるの主?僕もここに引っ越すんだから忘れてもらっちゃ困るよ……えっと、それでここに来るために必要な物を持ってこないとね……」
………は?
「で、でもクロス……おまえおーさま、でしょ?もどらなきゃダメでしょ?」
「……え?あ、それは大丈夫。ここに直通の転移陣を設置しておけばいくらでも行き来出来るし、僕が精霊王って言っても、まあ、称号みたいなもので仕事なんて一切ないからね。なんの支障もないよ」
……あらやだ。そんな発想は無かったぞ。
確かにクロス、いつも俺と一緒に行動していたもんな。王様ならもう少し忙しくしていてもいいはずなんだけど、あまりにも当然のことすぎて今まで疑問に思ったこともなかった。
つまり、クロスはここにいてくれて、俺は冒険者活動に精を出して最強の冒険者になるという夢を叶えられるわけだ。
さっきまで真剣に悩んでたのが恥ずかしいな。
でもこれで一件落着したわけだ。
良かった。クロスと離れ離れにならなくて、ほんのちょっとしんみりしちゃうところだったぞ。
「でも……寂しいね主。僕たちと一緒に神秘の森で一生楽しく過ごしていればいいのに、自分の道を行くのか……人間って不思議な生き物だよね。わざわざ大変な道を行くなんて」
冒険者をやっていれば嫌なことや理不尽なことにも出会うはず。人間社会はそういうものだ。とおばあちゃんが嫌そうに言っていたのをふと思い出した。
でも俺は、それでも冒険者を目指したい。格好良い人生を送りたい。
ちっぽけで軽いと言われても仕方がないと思う。
でも、夢なんてそういうものじゃないか。格好良い、ああなりたい。そういった小さな思いから始まるものだと俺は思っている。
「それは心配しなくてもよろしいですよ。もしこの子に酷い仕打ちをしたら、私達が全力で処……お仕置きして差し上げますので」
「……ほお。それは頼もしいね。是非主の助けになってくれ。主を害そうとしたら処……お仕置きしてくれる人がいないといけないからね」
なんかガシリと熱く握手をしているクロスとレイシアさんをぽけーっとした目で見ていた俺は、ハッと我に返りクロスをベシベシ叩いて大事なことを問いただした。
「アクアとクロウはどーした!!それに、せーれーさんたち……だーじょぶなのか?あのわるものにやられてないよな!!」
俺がここに転移する直前まであの悪者を圧倒していたから大丈夫だと思うけど……
「あー……ごめん主。アスモデウスは主が転移して生じた混乱に乗じて、姿を消しちゃったんだよね。でも、主がきっちり縛りを課したから大丈夫!!今後あの悪魔が僕達に危害を加えることは出来ないから!!それにアクアたちも元気だよ」
そうか。なんか俺、いつの間にか凄いことをしていたらしいのだが、あの俺が命令したやつ……縛りが、正直ここまで効力のあるやつだとは思わなかった。
でも、アクアとクロウ、それに精霊さんたちが元気で何よりだ。
これでクロスたちと再会もできたし、俺も弓の特訓したし、これからやることは一つしかないな!
「じゃあ……そろそろ、ぼーけんしゃやろ!!」
今こそ冒険者活動再開のとき!!
この直近1週間くらい頑張って特訓してきたんだ。そろそろその成果を試したい。
「うーん……レイク?レオナルド君は今どれくらい?」
「今なら、同ランク程度の魔物なら狩れる程度までいっているな。勿論油断は禁物だが、ダイキと2人でコンビを組んで連携が取れれば、一つ上のランクでも大丈夫だと思う」
「そう……じゃあ、あなた達もそろそろ討伐依頼を受けましょうか。そろそろ実戦経験も積まないといけない頃だしね」
やった!!
やっと、やっと冒険者らしい冒険者生活に一歩近づいた!!
今までは討伐依頼なんて受けようもんなら許さない、という感じで周りが許可してくれず、ギルドの受付嬢から拒否を食らっていたけれど、やっとこれで一人前の冒険者!!
しかしこれで安心してはいけない。俺が目指すのは真の最強冒険者。己を律し日々努力に励んで強くならなければ。
だから、初の討伐依頼を何としても成功させ、最強への道を駆け上がっていかねば…!!
「レ、レオン!!はやくじゅんび、じゅんびしないと!!しっかりあしたにそなえないと!!」
「お、え、分かってる分かってる。だからそんなに興奮すんなって。初めての討伐依頼ではしゃぐ気持ちも分かるが、お前が気合を入れて物事に当たるといつも予想外の事が起こるからな」
なんかしれっと悪口を言われた気がするのだが、気の所為だな。
きっとレオンも久し振りの、それで初めてのしっかりとした討伐依頼だ。興奮して少し口が悪くなっているのかもしれない。
俺はポシェットにハンカチ、あとお菓子とお弁当箱を取り出し明日持って行く物の整理を始めた。
「ちょっと見てあれ。弁当箱にお菓子、それにハンカチ……あ、飴もこっそり入れてるわ!!」
「………僕、精霊王だからよく人間の常識というものが分からないんだけど、あれってどう見ても冒険者活動する準備じゃなくて……遠足に行くやつだよね?」
「別にいいんじゃないかレイシア。俺たちの初めての討伐依頼なんて血なまぐさい事だらけだったからな。こいつらみたいに楽しくやって良い思い出になるほうが良いだろうな」
「それはそうね。レイク、あなたいつもはなんにも考えてなさそうなのに、偶には頭が回るのね。少し見直したわ」
「黙れ」
シルのために、果物も持ってかないといかないとでしょ……あと、のどが渇いたときのために水筒に冷えた水を入れて……
「……ダイキお前、そんなに討伐依頼が楽しみなのか」
「うん!!」
不思議そうな顔をして聞いてきたレオンに、俺はにっこり破顔で答えると、レオンが目を細めて少し微笑んだ。
「ん……良かったな。明日のためにしっかり用意しとけよ。くれぐれも忘れ物しないようにな」
偶に、まるでお兄ちゃんのような対応をするレオンは格好良い。
俺はそんなレオンに格好良いと言うのは少し恥ずかしいので、ちょっと照れながら明日に向けて準備を始めた。
----------------
いつも読んでくださりありがとうございます!
冒険者ランクについて
B級……普通に凄い。おじさんのようなベテランに多い。
A級……街に1人いるくらい。大きな街ではA級冒険者のパーティーもあることが多い。
国の騎士団長くらいのレベル。
S級……一つの国では片手で数えられるくらいの人数しかいないことが多い。魔法都市は例外で強い人達が集まるので、そこそこいるが世界からみてもなかなかの実力。
そこらの国の騎士団を圧倒できる実力。
とまあ、こんな感じです。
参考になってくれたら嬉しい……!!
ついでに投票もしてくれたらもっと嬉しいです!!
よろしくお願いします!!
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