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第2章︙魔法都市編
現状とこれから
しおりを挟む「しょくん………このせーれーさんは、おれのけーやくせーれー。なまえはクロス。おれのじょしゅくんでもある、デキるせーれーさんだぞ」
みんなに向かってビシッと言い放った俺。
先程は情けない声を出してクロスに飛びついてしまったが、少し子供っぽかったかもしれないと我に返り、キリッとした大人の姿を見せねばと思ったのだ。
………よし。みんなしっかり俺の話を聞いているな。これで俺が大人だということがわかったはず。
指一本たりともピクリと動かさず、石のように真剣に俺の話を聞いている姿を見て満足していると、後ろにいるクロスがちょんちょんと俺の肩を叩いてきた。
「それで……この人間…それにエルフは誰なの主?」
ほう。一目でレオンを選ぶと見抜くのは流石だ。伊達に何千年も生きていないというわけか。しかし……まだまだだな。
「ちっちっち……クロスくん。レオンはエルフじゃなくて、ハイエルフだぞ」
「え……うん。そう」
なんだ。反応が薄いな……ハイエルフだぞハイエルフ。なんかよくわかんないけどエルフよりすごい種族だぞ。驚かないのか?
そういえばハイエルフのレオンが敬われているところを今まで見たことないな。
これはもしや、ハイエルフってそんな珍しくない?
「レオン。じつは……ハイエルフってレアものじゃー、ないのか?」
そんなに珍しくもない種族ならなんでハイエルフなんて名前なんだ。紛らわしい。
「レア物言うな。ハイエルフは数が凄い少ないんだぞ。そもそもエルフは寿命が長いから繁殖能力が他の種族より劣っているんだ。特にハイエルフなんて以ての外だ」
ふーん……ハイエルフ少ないくせに俺の周りだけでも二人いるのだけれど、そこら辺大丈夫そ?
まさか……自分のレア度を高めるためにわざと嘘をついているんじゃ……
「フンッ!!レオンより、おれのがもっとレアだぞ!!」
「……今更何言ってんだお前」
俺が胸を張って格好良く言い放ったのに、なんて返事の仕方…!!
まるで最初からさも当然じゃね?みたいな顔!!なんかムカつく!!
「あー……取り敢えず一旦状況を整理するが、そこの高位精霊はお前の契約精霊で、危険はないということでいいか?」
俺がレオンをキッと睨んで威嚇していると、困ったように頬を掻きながらレイクさんが確認してきたので、俺は一旦レオンから視線を外しコクリと頷く。
「クロスはいーこだぞ。おこらないし、わがままもいわないし、まーにちおれのてつだいしてくれる」
「そ、そうか。それは……良かったな。うん」
なんかすごい微妙な顔で俺を見てくるのだが、俺なにかしたか?
なんかさっきのレオンもそうだけど、俺と話すとどうにも相手の歯切れが悪い気がする。
「……ふうー。まあ、一旦中に入ろーぜ」
そのレオンの一言で一旦俺たちは屋敷に戻ることにした。
俺はせっせとレオンとシルを引き連れお茶菓子を出す。
勿論お茶なんてないのでシルの氷魔法入りの水を配ってあげる。
今回のお菓子はレッドパイだ。
林檎に似た果物があったので、それで朝方朝食ついでにアップルパイもどきを作ったのだが、まさかこんなところで活躍するなんて。
俺ってば天才。
俺はナイフをレッドパイに切り込みを入れて切っていく。
……俺のところだけ少し大きくてもバレないな。
これは決して俺か食べたいからではない。俺が作ったから俺が余分に味見して……味見して、これからに活かさなければならないのだ。
俺はほんのちょっとナイフをずらして自分の分を少し余分に多くして、みんなに取り分けていく。
隣ではレオンがフォークを配り、シルが魔法で氷をコップに付け足していた。
シルって人並みの知性がありそうなんだけど、言葉を喋ることができないので簡単な意思疎通しかできないからな……でも、ここまで働ける子犬は逸材だ。将来大物になるに違いない。
「ふう………それじゃあ、僕から一つ聞きたいことがあるのだけれど…いいかな?」
皆が一息ついたころ、クロスが慎重にそう切り出してきた。
皆が緊張した様子で背筋を伸ばして身構える傍で、俺はレッドパイの味見を少しばかりしていた。
「まずは……君達は、主のご家族かな?」
レオン達は首を横に振って違うと否定すると、クロスが次は俺の方に向き直って聞いてきた。
「なら……主はこれから、ここにいるの?それとも神秘の森に帰る?」
………それは、考えてなかった。
精霊王のクロスとそばにいることを選ぶか、レオン達のそばにいることを選ぶか。
答えのない選択に俺は………
----------------
クロスSIDE
何十回もの転移を繰り返し、やっと出会えた主。
主の姿を見たときは本当に嬉しくて飛び込んできた主をギュッと抱きしめた。
そしてあまりの嬉しさにしばらく周りのことが見えていなかった僕は、ハッとして主の後ろにいる人間……それにエルフを見た。
(あの男女二人は人間……人族か。それも中々にいい身体能力だな。多分S級冒険者かな?それに……あのエルフ。まだ成体じゃないけれど、特別な雰囲気がする。神の祝福……か?)
どうやら主は僕とほんの少しの間離れていただけなのに、色々やらかしてしまっていたらしい。
確かに僕が主を見つける手掛かりが得られたのも、女神の降臨とかなんとかのとんでもない噂だからね。
「あー……取り敢えず一旦状況を整理するが、そこの高位精霊はお前の契約精霊で、危険はないということでいいか?」
男性の方の人族がそう主に問いかけると主は威勢よく、「クロスはいーこだぞ。おこらないし、わがままもいわないし、まーにちおれのてつだいしてくれる」
と、自慢げに言った。
なんか違う。そう感じたのは僕だけではないはず。
何故だ。何故なんだ主。今は精霊の僕と人の文明で生活している彼らがそういう違和感を感じるものだろう。
それなのに何故主のほうが突飛………違った。特別に見えてしまうんだ。
「……ふうー。まあ、一旦中に入ろーぜ」
エルフの子どもがそう言ったのを皮切りに、僕達は大きな屋敷の中にはいっていく。
主はササッと僕らを座らせると、エルフとシルを連れてでていったと思ったら、バタバタと騒がしくお皿やコップやら持ってきた。
どうやらおもてなしをしてくれるらしい。
グラスではなく子供用のコップに高密度の魔力が圧縮された氷が入れられた水と、なにやら甘そうなパイのようなものが運ばれてきた。
………あ、主。それはバレてるかも。
なんか主の量だけ多い。本人を見る限りこっそりやっているつもりらしいのだけど、多分、というか絶対皆にバレてる。
まあ、主が作ったと思うから皆文句なんてないんだろうけど、一言言わせてもらうと……そんなこっそりと悪戯をやってる主、今日もかわいい。
しかし、今はそんな悠長なことは言ってられない。
僕は姿勢を正すと、人族とエルフの方を向いてずっと疑問に思っていたことを問いかけた。
「まずは……君達は、主のご家族かな?」
そう聞くと、意外そうな顔をして違いますと言われた。確かに、いくらS級冒険者やハイエルフと言っても、僕を超える魔力量と質を持つ主と血縁なわけないか。
もしそうだったら今目の前にいる人達は僕と互角の魔力量、最低ラインでもシルと互角じゃなければおかしい。
「なら……主はこれから、ここにいるの?それとも神秘の森に帰る?」
次に、僕は慎重に主にそう問いかけた。
主が決めることなので、契約精霊である僕が主を縛ってはいけないことくらい当然。
でも、できれば主は僕にずっと一緒にいてほしい。
「お、おれは……」
僕は主の決断に耳を傾けた。
----------------
いつも読んでくださりありがとうございます!
投票を押してくれる方、感謝感激感涙です。そしてまだ押してない方も、是非押しちゃいましょう……。そうそう。ポチッと押せばいいだけですよ……ほら……。
というような夢を見る読者様は、アルファポリスに大分侵食されていますので要注意してください。
最近別視点が少し多いと思うのですが、嫌だよ!!という方は感想欄に言ってくださればなんとかかんとかしますので大丈夫です!
これからもよろしくお願いします!!
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