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第2章︙魔法都市編
特訓と再会
しおりを挟むレオン(レオナルド)SIDE
ダイキの剣の扱いを見た俺達は、ただならぬ衝撃を受けた。
俺は全力でレイクさんに飛び掛かって戦ったし、しっかりと俺の全力が出せたと思う。
しかし、ダイキの番になると、ダイキはレイクさんに顔を近づけてもらって、本人はコソコソ言っているつもりで、普通に周りの人に聞こえている声量で話しはじめた。
「おれ、けんもできるかも、だから……レオンとくらべること、いうのはやめてね」
魔力もあって、弓もできる。さらには剣もできるとなっては、もう俺なんかいらなさそうだな……そう思い少し胸がズキッとしたけど、実際、ダイキが剣を持つと凄まじかった。
これはもう、なんといえばいいのだろう……そう。まるで剣がダイキを振り回している感じだ。
飛び掛かるところでもう顔すれすれに剣が通っているのを見るだけでヒヤヒヤする。
持ち前の体幹のなさと大胆さ。それがとんでもなく悪い方へと働き、いつダイキが持っている剣でダイキ頭がちょん切られるのか……本当に恐ろしい。
お陰で俺には厳しい言葉を投げかけていたレイクさんも、ダイキのあまりに酷い剣捌きに、慰めというか優しい言葉をかけてあげていた。
なにはともあれ、やはり神は二物を与えなかったのだ。世の中平等で何よりだ。
そして、剣中心に強くなりたい俺はレイクさんに、弓を中心にやるダイキはレイシアさんに教わることになった。
「おれ……けんもやりたい。つよいから、けんもできるぞ」
ダイキはそう言っていたけど、周りのみんなから速攻拒否されていた。
いつ命が吹っ飛ぶかもわからない剣の使い方をする子供に、指導するのはほぼ無理だと断言していたレイクさんに俺は戦慄した。
あのS級冒険者にここまで言わせるなんてある意味凄いことだ。
そんなこんなではじまった特訓は、流石はS級冒険者というかなんというか、苛烈を極めた。
とにかく剣を振る。ひたすらに振る。
体を一つの軸とし、剣を己の穂先だと思えるように自由自在に扱えなければならない。そう言ったレイクさんの言う通り我武者羅に剣を握った。
一方ダイキも、ひたすらに矢を放っていくけど……やはりダイキと言うべきか……最初は少し外していたのがすぐにコツを掴んだらしくビュンビュン撃てるようになっていた。
黙っていれば才能ある子どもなのに、性格を知っているだけあって非常に残念な気持ちだ。
そんなダイキでも、やはりまだまだ子供なのでお腹が空くと、すぐに機嫌が悪くなったり注意散漫になるのでしょっちゅう休憩をとっている。
本人ができているので別に休憩はいいと思うけど、俺まで巻き込んで休憩する意味が分からない。
「おこさまは、きゅーけーがだーじなのだ。よく、おぼえておきたまえ」
……そして理由を聞いてみるに、どうやら俺のことを年齢のいっていない子供だと思っているようだ。
(俺……確かハイエルフだって伝えたはずなんだけど……こいつ、なんにも考えてないな)
「……おい。休憩だなんて甘ったれるな。ダンジョンの中でそんな甘えは通用しない。ほら、さっさと立て」
レイクさんもしょっちゅう休憩をとる俺にお冠らしく、特訓を継続すると言ってきた。
「お?……わかった。レオンはまだおこさまだから、おとなのおれが、けんのとっくんするんだぞ」
そう笑顔で言い放ったダイキのお陰で、それからしょっちゅう休憩をとっても全く注意されなくなった。
「もっと速く!!手数で攻めるんだ!!お前の体格で魔物を押し切れるなんてありえない。ましてや殆どの同業者に力で勝つなんて無理だ。だから、相手がやり返せないほどの速さで圧倒してみせろ!」
剣を振るう。ひたすらに剣を振るった。
強くなっているという実感はあるけど、レイクさんしか相手にしていないため、どれだけ強くなったのか分からない。
ただ一つのことに集中してはいけない。相手、自分、そして周りのこと。それを全て完璧に把握し、どのように剣を振るうのかを瞬時に判断する事が出来て一流の剣士となる。
「そうだ!!隙を逃さず叩き込め!!」
そして特訓が始まってそろそろ1週間が経つけれど、レイクさんは感覚派で教える人だった。
こればかりは自分でどうにか教えを吸収し上達するしかないので、日々必死で頑張っている。
一方ダイキの方は、騒がしく特訓している俺等とは違って、すごく静かに行っていた。
動かない的でほぼ百発百中になったダイキは、次は動く的に当てることにしたようだ。
そして的となったレイシアさんに向かって矢を放っダイキ。腕力もないくせに威力も何故か安定していて狙いも中々良さげだけれど、腐ってもS級冒険者のレイシアさんにはかすりもしなかった。
「ほらほら!!そんな雑魚い攻撃百年経っても当たらないわよ!!しっかり狙いなさい!!」
レイシアさんが鼓舞するように声をかけているけど、まだ精神年齢の低いダイキには逆効果だということに気が付かないのか。
段々と悔しくて愚図りはじめたダイキは、ついに感情が爆発したのか半泣きでプンプン怒り始めた。
「なんだよ!!そんなわるぐちいっちゃダメなのに、おとなのくせにわかんないのかよ!!」
地団駄を踏み怒ったダイキをどうすればいいのか分からないレイシアさんは、途方に暮れた顔をして俺たちに助けを求めてきた。
「……それは、まだレオナルドのようなハイエルフじゃなくて人族の子どもなんだから、そりゃあ手加減しないといけないだろ。お前が悪いな」
身も蓋もない言い方だけど、確かにレイクさんの言う通りなので仕方がない。いくら変人で規格外でおかしいダイキでも、まだちっちゃい子供なのだ。
「………分かったわ。ほ、ほらダイキ。私が悪かったわ。確かに酷いこと言っちゃったかも。本当にごめんね」
精一杯慰めているけど、一度そうなると頑固なダイキは中々へそを曲げたまま許してくれない。
そんなとき、ダイキの目の前に魔力が収束し始めた。
「あなた達下がって!!」
すかさずレイシアさんとレイクさんが俺たちの前に出て警戒するけど、現れたのは精巧な魔法陣だった。
「これは……古代精霊魔法?」
そして空間が歪んで転移陣が生成された。
とてつもなく膨大な魔力量と質。まだ見えないその姿にレイクさん達は最大限に警戒を高めた。
「………主?」
「クロスぅー!!」
現れたのは銀髪の恐ろしほどに顔の整った…精霊だった。
それもひと目見ただけで普通の精霊とは格が違うことが分かる。そう……まるで、神のような超越した存在に近い感じがした。
呆然としている俺たちを尻目に飛び出していくダイキ。
ムギュッとその精霊に抱きつき寂しかったと言っているダイキは、まるで旧知の仲のような間柄を連想させた。
………なんでいつも、こいつにはこんなに驚かされるんだ。
波乱の予感がするのに、俺は初めて感じた胸が高鳴るような、それでいて緊張感をはらんだよく分からない感情に、心の中が暖かくなるような気がした。
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いつも読んでくださりありがとうございます!!
ここで話すことがネタ切れ化してきたので、そろそろ最終手段にいきます。
魔法についてですが、いくつかの段階があります。
詠唱による魔法。
魔法陣による魔法。
無詠唱魔法。
詠唱魔法が一般的です。魔法陣による魔法はクロスやアクアが日常的に使う魔法。
そして無詠唱魔法は、簡単な魔法ならクロスもいける……そんな感じです。
これから沢山出てくるので覚えよう!!
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