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第ニ章︙魔法都市編
女神様のアンブロシア
しおりを挟む『貴方達。私は今この身体では力を使うことができなくて、奇跡を起こすことはできないわ。ここまでは良いわね?』
テントの中で女神様から講義を受けている俺達はうんうんと頷く。
レオンは未だに恐れ多くて少しまごついているけれど……フッ、まだまだ子供だな。
『だからね?今回はアンブロシアを……ちょっと違う方法で生成しようと思います!!』
パチパチと拍手する俺。呆気にとられるレオン。お利口さんに俺の隣でおすわりしているシル。
『流石に私が降臨したことは魔法都市の人間達も気づいている筈だから、早急に事を進めるわね。まずは貴方達、特にダイキ。貴方は適当に祈って私に魔力を捧げて頂戴』
女神様が言うには、すでに俺の魔力で実体化しているので、あとはアンブロシアを生成するための魔力さえあればどうにかなるんだとか。
それでも今回は奇跡を起こすことができないので……というかそもそも人為的に奇跡を起こすには神の権能を行使しなければならないから、方向性を変えてアンブロシアを生成することにしたそうだ。
それはズバリ!!
女神様が直接力を注ぎこんじゃえっ!!という神様ならではのゴリ押し……じゃなかった。戦法をとることにしたのだ。
アンブロシアに奇跡を注ぐことができずに穴が空いてしまったら、代わりのもので埋めればいいだけのこと。
それは奇跡に相当する代物でなければならないため、まさに神の御業としか言いようがない。
つまり手順としては
女神様に魔力をあげる。
女神様が魔力と自分の力を交換し直接女神の神力を注ぎこむ。
アンブロシアに相当する効力な実になるまで注ぎ込み、さっさと女神様は退散する。
俺と女神様が無限大の知恵を引き絞り、そして完成した究極で完璧で素晴らしいとしか言いようのない作戦だ。
そろそろ真夜中になってきたので俺の瞼も重くなってしまってきている。子供の体で健康的な生活習慣を送ると真夜中にはどうしても眠たくなってしまう。
そしてほんのちょっぴり悔しいが……レオンは全く眠そうにしていない。
「レ…レオン。おまえ、そんなにつよがらなくてもいーぞ……ねむかったら、ねていーぞ……」
「は…?いや、とう見てもお前のほうが眠たそうだけど?てかお前みたいな年齢のいってない子供が真夜中まで起きれることが少しおかしいわ」
「おまえもだぞ……おまえも、まだちっさいだろ…」
「……この常識なしは一体どこまでいくんだよ。俺はハイエルフ。肉体の成長速度が人族より何倍も遅いんだ。俺、今十二歳だけど?」
………は?
一気に目が覚めた。
え…?俺から見ても三、四歳くらいにしか見えないのに、十二歳、だと!?
う、嘘だ!!せっかく神様にちっちゃくされた俺の唯一の同類だと思っていたのに…!!
いや、落ち着くんだ俺。
レオンは精神年齢だけ年をとっていて、体の成長は依然として幼児体型のままだ。
そう。つまり俺の下位互換の精神年齢を秘めた子供?ということになる。
フッ、やはり神でもどうにもできないこの成長速度が俺の同類だという証であり証明なのだよ。
さっきまで落ち込んでいたけどニヤニヤと笑っている俺を見てドン引きしているレオン。
『ほら、ダイキはそんなどうでもいいことに気を取られていないでさっさと動くわよ!!そろそろ本当に魔法都市から人が来るわよ!!』
おっと。
俺達は慌てて月の方を見て魔力を捧げるために祈りを始めた。
「この世界に命をお与えくださった神へ感謝の気持ちを表し、祈りを捧げる我が……」
「えと…えっと……かみさまかんしゃ……あ、かみさまのナイフはおりょーりにつかえた。ありがとー。これからもよろしく……ほいっ!!」
俺は女神様に言われた通りササッと祈りを捧げ魔力をドパーッと開放すると、すかさず女神様に魔力を全て吸収されてしまった。
流石は女神様。仕事が早いことで。
そして暫く小声でブツブツとなにかを呟く女神様は、ついに俺の作った未完成のアンブロシアに力を注ぎ込み始めた。
虹色の光が辺り一面に輝き、小さくともとても精巧な魔法陣が何重にも形成され、女神様が祝詞を唱える。
それはまさに女神様の『奇跡』と言える光景だった。
『………ふう。これで最後ね』
少しずつ光が収まり、女神様は息を吐き出しながら作業を止めた。
光で見えなかったアンブロシアにはまさにグリモアで見た極彩色の核のようなものがあり、本の中で見た時よりも何倍も神秘的な雰囲気を放っていた。
「めがみさま。おつかれですな」
「おい!!さすがに不敬がすぎるぞ馬鹿!!」
少しつかれた様子に見えたので労ってあげたら、何故かレオンにキレられた。
なにが不敬だ。こっちはお疲れって言ってあげただけだぞ。お前のほうが俺に対して理不尽で意地悪じゃないか!!
「……まあ、まだまだじゅーにのおこさま。おとなのじょーしきがわからんとしごろ。しかたがない。こんかいは、みのがしてやろうではないか」
俺はハア…と大人の溜息をつくと、女神様にありがとうとお礼を言った。
『これくらい全然大したことないわ。そんなことより……貴方、さっき祈るときにクロノス様のナイフについて言っていたけれど、流石に料理に使うのは……ちょっと見せてくれる?』
あら?どうやら女神様は神様のナイフ、もとい超優秀な包丁に興味を持っているらしい。
俺はポシェットからナイフを取り出すと、女神様にはいっと渡してあげる。
『ありがとう』
お礼を言ってじっくりとナイフを眺めていた女神様は、顔を上げて俺の方を見て微笑んだ。
『これは私からのサプライズ。異世界へお引っ越ししたお祝いよ。喜んでくれるといいのだけれど』
女神様は今度は魔法陣を使わずに何かを呟いた。
ナイフがピカッと光って徐々に形を変えていく。
そして大きく、曲線を描きより神秘的な形へと姿を変えて俺の方へ漂ってきた。
元々ナイフだったそれは、今は仄かに光りながらも鮮烈な力を持った弓へと進化を遂げていた。
【聖月・創滅の神弓】
・創世神話における原初のアイテムに聖女神セレナーデが加護を与えたもの。絶対心中の力を有し、極めた者には世界の理さえ貫くことができる強力な弓。
無制限魔法付与が可能。
『聖神』の権能使用が可能。
………すごい。
その一言に尽きた。
「めがみさま、ありがとー!!」
『それじゃあまたね。貴方達。私も何百年ぶりに楽しめたわ。こちらこそありがとうね……』
女神様が維持していた魔力の身体が段々と崩れ始める。
『あ……あとレオナルド。これからずっと貴方がダイキと一緒にいるのなら、貴方に渡したいものがあるの』
「……渡したいもの、ですか?」
『えぇ……貴方がこの子といっしょにいれば自ずと自分に限界を感じてしまう時がくるはず。だから、その時は炎帝のダンジョンへ向かいなさい。原始の刻印を持っている貴方ならあれを……扱えるはずよ』
「ま、待ってください女神様!!あれとはなんですか!!それに、炎帝のダンジョンになにが……」
『もうそろそろ魔法都市の人達がここに着く。私からはなんにも言えないけれど、これだけは覚えておいて。私はセレナーデ。いつでも貴方達を照らす光となってあげるから』
そう言って淡く微笑んだ女神様は完全に姿を消し、俺達はしんみりとした雰囲気の中無言でいた。
「うん。まあ、なんとかなった。いっけんらくちゃく!!だな!!」
この重い雰囲気を少しでも明るくしようと俺が口を開くと同時に、たくさんの足音が聞こえた。
「ここに女神様の降臨が……お、お前たち、ここでなにをしている!!」
「あ、ギルドちょー」
丁度いい。今渡しちゃおう。
「あい。これできたから、あげる」
俺は手に持っていたアンブロシアを差し出した。
----------------
いつも読んでくださりありがとうございます!!
この頃暑さがほんの少し収まった……気休め程度で収まってきましたね。
ファンタジー大賞もまだ始まったばかりで、気合を入れて頑張ろう!!と思い立ったちょうどその時が真夜中の中十一時半過ぎ……
まあ、楽しくやっていけたらなと思います!
投票をポチりんしてくださると感謝です!!そして投票してくれた方々、本当に感謝!!
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