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第2章︙魔法都市編
ギルド試験
しおりを挟むこ、このマッチョ共、もしかして俺のことを馬鹿にしているのか!?
俺はこれから最強冒険者になる男だぞ!!
「おまえ!!すこしばかりムキムキだからって、なめるなよ!!」
「キャンッ!!」
「はあ?いや、どう見てもお前弱いだろ………おい、その犬はなんだ」
「フフン!!これからさいきょーのぼーけんしゃの、あいぼーになるシルだぞ!!まほうつかいわんこでつよいんだ!!」
俺の腕の中にいる可愛いシルに向かってその犬と言うとは……やはり性格がねじ曲がっているな。
それにしてもシルも一緒にこの男くらいはボコボコにして二人で実力を示さないと、後で『ダイキさんは強いのだけれど……あの犬は、ねえ?』なんてことが言われてしまうかもしれない。
そんなことしたらシルが落ち込んでしまうではないか。流石に俺ほどの活躍は出来なくてもシルは普通に強いので、このマッチョ程度どうってことないだろう。
「よっし!!そこのムキムキ!すこしさくせんをたてるから、ここでまってろ!!」
「作戦か?……作戦……意味があるのか知らないが、まあいいだろう。少し時間をやる」
「フンッ、ありがとうだぞ!!」
どんな人にも基本的な礼儀を尽くす。それが立派な大人だ。
俺はマッチョ共に聞こえないようシル向かい合ってゴニョゴニョと作戦会議を始めた。
「おい。俺を忘れるな。俺も仲間だぞ」
………なんだこの生意気エルフは。あのマッチョ共なんて俺とシルで片付くからお前はいらないのだが。
「おれとシルでたおすから、なにもしなくていーぞ」
「………はあ?お前とその子犬で倒す?ププッ、無理に決まってんだろ雑魚のくせに」
な、なんだと!?
「フ……フフッ、チビはよくほえるな。おまえがザコだからって、おれもザコとはかぎらないんだぞ。だからレオちゃんは、はしっこでみてなさーい」
「うるさいチビ!!」
結局俺と生意気エルフはフンッ!とそっぽを向いて別々で作戦をたてることにした。
「おい、おいシル。おれがあのムキムキのちゅーいをそらすから、おまえはうしろからいっきに、
『バーンッ』ってやってたおすぞ!!わかったか?」
「キャン?」
……少しわからなさそうな顔をしているが、まあ大丈夫だろう。なんとかなる。
「丸聞こえだったが……よく分からなかったな。よし!!お前等作戦はたて終わったか?」
「おれはさいきょーのさくせんをたてたから、かつのはまちがいなしだし、さいこーのあいぼーがいるから、いっしゅんでおわるぞ!!」
「………作戦なんてもの最初からない。大体お前、このチビにまともな作戦なんてありえないと思ってただろ……」
なんかまたあの生意気エルフが失礼なことを口走っているが、今に見てろよ。じきに俺を尊敬した目で見てくること間違いなしだからな。
「えー、では始め!!」
「おれのさいきょーパンチをくらえ!!」
先手必勝。
攻撃は最大の防御なり。
俺は試合開始の合図がされると同時に神速でマッチョの目の前に立つと全力で拳をお見舞いしてやっ……な、こいつ、俺の拳を受け止めた、だと!?
俺はさらに拳を繰り出すも、全て受け止められてしまう。
「小手調べはこれくらいにして、最初から全力でかかってこ………あ、もしかしてこれが全力か?」
く、くそー!!やはりその筋肉は伊達ではなかったか!!
しかし残念だったな。俺にしか注意を向けなかった時点でお前の敗北が決まったのだよ。
「さあシル、いまだぞ!!」
あれ……?なんかおかしいな。
後ろで奇襲を仕掛けるはずのシルが何故か俺の足元で座っているのだが。
え?なんで?
「おっと。お前が奇襲を思いつくなんてやるじゃねえか。でも、冒険者の俺にお前程度の奇襲が通じるとでも?」
そしてこれまた何故か、あの生意気エルフが奇襲を仕掛けたが、あっさりと防がれてしまった。
「………ククッ、まさかこんなに弱いとは思わなかったぞ。特にこの黒髪のガキなんて踊ってんのか?ってくらいの動きをしてたし。マジで笑えるわ」
俺を引っ掴んだまま弱いと馬鹿にしてくるマッチョ。
俺は強いし。今回は少しミスしただけだし。次やっとら絶対勝てるし……
「ハハッ、あー……マジで弱すぎだろ!!」
俺、強いもん。馬鹿にするなよ。俺だって……
「お、おれつよいし……ほんとにつよいもん!!だから……だから……」
あ、あまりの焦りについ目から汗が……
「お、おい泣くなよ。確かにまだ子どものお前には少し言い過ぎたかもしれん……ヒィッ!?」
突然俺の周りから皆がバッと離れる。
不思議に思って俺は目をこすりながら周りを見渡すと、シルが唸り声をあげながら大きくなっていた。
多分俺の汗に驚いてしまったのだろう。
「シル!!お、おどろいたな。ほら、よしよし」
俺は大きくなったシルに抱きつくと、頭……じゃなくて体をよしよししてあげて落ち着かせると、俺をギュッと囲んで周りが見えなくなってしまった。
「な、なんだこの魔力濃度は!?」
「ちょっとあれ、魔物だったんですか!!あんなに強い魔物今までに見たことありませんが……とにかく、あの幼子を飼い主と定めているようです!!」
「ほらお前!!今からでも遅くないから謝れ!!このままじゃギルドどころか最悪町も消えることになる!!」
シルの毛に埋もれて周りが見えないけれど、なんか騒がしいのは分かる。
それにしてもこの毛並み……気持ちいいな。
さっき少し汗を掻いてしまったからか、まだこの子どもの体が眠くなってきた。
「……おれ、つよ……つよい……」
結局俺は眠気に逆らえずシルの中で爆睡してしまった。
----------------
とある冒険者SIDE
今日はとことんツイていない。
冒険者ギルドの依頼が順調に進まず、やっと終わったとイライラを募らせていた俺に、ギルド受付嬢がガキの面倒を押し付けてきやがった。
俺は適当にあしらって断ろうとしたが、受付嬢の顔を見て渋々引き受けることにした。
冒険者ギルドは色々物騒なので、戦闘能力のある人がギルドを運営しているのは当たり前。
特に何らかの理由で冒険者をやめた人が多く、とにかくそういう人達は強い。特にここでは強者が集まる魔法都市なので、一介の冒険者の俺がどうにかこうにかできるものではないのだ。
そして今。
恐らくS級をはるかに上回る魔物が俺をじっと見据えている。
元々はあの黒髪のガキに引っ付いていた小さい犬っころだったが、まさかこんな戦闘力を秘めていると誰が思っただろう。
あの黒髪のガキが泣いたのがトリガーとなったらしく、周りを、特に俺を激しく警戒して唸ってくる。
これもう………死んだな。
「な、なんだこの魔力濃度は!?」
今まで全く感じられなかった強烈な魔力の放出に、遂にギルマスが気づいてこっちに飛び込んできた。
……俺のせいです。でも態とじゃなかったんです。
「ちょっとあれ、魔物だったんですか!!あんなに強い魔物今までに見たことありませんが……とにかく、あの幼子を飼い主と定めているようです!!」
「ほらお前!!今からでも遅くないから謝れ!!このままじゃギルドどころか最悪町も消えることになる!!」
俺より遥かに強い元S級冒険者であるギルマスが、今までにない程の焦った表情で俺に謝れと怒鳴ってくる。
「す、すまんチビ!!俺が悪かった!!俺の負けだから、どうにか許してくれないか!!」
俺は魔物で見えなくなってしまったガキに必死で謝るが、全く返事が返ってこない。
それから俺はひたすら謝り倒して、やっと敵意がないことがわかったのか魔物が内側で守っていたガキをそっと解放してあげると、なんと呑気に寝てやがった。
それを見て少しばかり殺意が湧いた俺は仕方がないと思う。
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いつも読んでくださりありがとうございます!!
前々回の投稿が公開通知と話が被らなかったようですみませんm(_ _)m
恐らく書き始めてすぐに間違えて公開してしまって、慌てて取り消したのが原因だと……。
本当にすみませんでしたm(_ _)m
それでも読んでくださる方やいいねをくださる方、本当にありがとうございます。
不束者ですが、精一杯頑張りますのでこれからも宜しくお願い致します!!
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