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第2章︙魔法都市編
チビとの出会い1
しおりを挟むレオ(レオナルド)SIDE
俺はレオナルド。剣士を目指すエルフだ。
俺はエルフ、それもハイエルフという厄介な家系に生まれたせいで、小さい頃から魔法使いとなり精霊と契約をすることを望まれた。
しかし、俺は魔力がハイエルフの平均を大幅に下回っていた。
大きくなって徐々にそのことに気づき始めたエルフ達と俺の家族は、段々と俺のことを敬遠しはじめ結局俺の味方は母さんだけになってしまった。
しかし、そんな母さんも病弱で、何百年と生きるはずのハイエルフにも関わらず、俺が小さい頃にこの世を去っていってしまった。
その頃からだろうか。
母さんを失くしたショックを受け入れられなかったのか、俺の風当たりが強くなりはじめた。
そもそも母さんが周りから俺を守ってくれていたので、母さんが亡くなってしまった今、こうなるのは必然だったのかもしれない。
「ハイエルフのくせに、こんなにも才能の無いお前が生まれるなんて!!この恥晒しが!!」
「少しは私たちの言うことを聞いたらどうなんだレオナルド。お前は足手まといでしかないんだから、私たちの言うことを聞くのが最善の選択だということを忘れるな」
結局俺は、家族の邪魔者として扱われ仲間はずれにされた。
「ねえ?なんであなた、一人なの?まだ子供なんだから親と一緒にいなきゃ駄目でしょ?」
俺がいつものように森の中を散策していると、偶然ここに来ていた聖女様と鉢合わせした。
聖女様は強力な治癒を施すことができる異世界からの客人。いくら偉いハイエルフといえどもおいそれと呼び捨てできる人ではなかったので、俺は突然の偉い人からの質問に困惑してしまった。
「別に………どうせ家族も俺のことなんて心配していないし。仮に俺が死んだとしても無関心な奴らだと思うしな」
俺は投げやりにそう言うと、聖女様は首を傾げて不思議そうな顔をした。
「エルフは同族意識が強い種族と聞いていたのだけどだけど………ねえ?あなたの家ってどこにあるの?」
「俺はハイエルフだから、家はもう知っているはずだぞ」
俺がそうボソッと呟くと、聖女様は「家族の紹介になかったけど………ああ、そういうこと」とつぶやきながら徐々に険しい顔をして、暫くなにか考えたあと、まるで軽く冗談を言うような口調でとんでもないことを言い放ってきた。
「ねえ。私と一緒に行きましょ?」
………は?
「ほら、あなたがここにいても窮屈なだけでしょ?それにエルフ、それもハイエルフの長い寿命をここで終わらせるつもり?………世界は広いわ。あなたも色々見て、経験して、それで考えてここに戻るか決めるって言うならいいけれど、何も知らないままずっとこの状況は駄目よ」
……外の世界か。
今まで一度も考えたことがなかった。そもそもここから逃げるなんてことすら思いつかなかった俺は、突然の提案に呆然とするなか、ほんの僅かな、本当に小さな好奇心と期待が芽生え始めた。
………どうせここにいてもなんにも変わらない。だったら……
「分かった。俺も聖女様についていく」
「……そう。あなたの家族に別れの挨拶はいる?」
「ううん。いらない」
それから俺は、数年の間聖女様とともに世界を転々とした。
どうやら今代の聖女様は神殿に籠るのが性に合わないらしく、「私が異世界に来たばかりの頃は、神殿は性根から腐っていてね。だから教皇や大神官を全員追い出して、今は神殿は民間企業的な感じになってるわね」と意味のわからないことを言っていたので、とにかくじっとしているのが嫌なんだそうだ。
俺はハイエルフだから体の成長も遅く、全然身長も伸びないためよく幼児と勘違いをされていた。
俺が聖女様と魔法都市ミネルヴァに着いた頃には、俺はもうある程度一人で生活できるようになっていた。
俺は剣の大国とも言われるドワーフの国に行きたかったが、さすがに聖女様から止められていけなかった。
エルフとドワーフは昔神話大戦のときに対立した種族として有名で、現に今もエルフとドワーフはかなり仲が悪い。
しかし俺は別にエルフと言う種族に愛着、ましてやプライドなんてものはなかったためどうしても行きたかった。
体が大人になったら一度行ってみよう。
俺はそう決意をして魔法都市ミネルヴァで修業をすることにした。
幸いここは魔法都市なので他国では強くて重宝される人たちがゴロゴロいた。
俺は冒険者ギルドに登録して日々の金を稼ぎながら、いろいろな人に戦い方を教わった。
しかし、剣がない俺に剣の修行なんてできるはずもなく、時は無情なままに過ぎ去っていった。
ここに住み着いて1年ほど経った俺は、今日もいつものようにギルド依頼で採ってきた魔力草を渡し、今日の賃金をもらい街をブラブラしていたら、なんか道にちっさい人間が寝っ転がっていた。
周りの人達も勿論気づいていて、優しく見守る者、ほっこりしながら見つめている者、そして寝ているちっさい人間に絡もうとしたチンピラを瞬殺している女性魔法使い達といろんな人がこのちっさい人間に注目していた。
「おい」
俺が声をかけてもピクリともしないで呑気にすやすや寝ている。
「おいチビ!!寝っ転がってないで起きろ!!」
今度は耳元で叫んでやると、やっと起きたのか目を開けて周りをキョロキョロし始めた。
………黒髪黒目だ。
まさかの容姿に周囲の人達がどよめく。
異世界人に黒髪黒目なんて今まで聞いたことがない。
唯一この世界で黒髪黒目の人は聖女様だけ。
なのにこのちっさいのが黒髪黒目だなんて……
「あ、起きたかチビ。おまえ、なんでこんな通りの真ん中で寝てたんだよ。馬鹿か?」
俺は取り敢えずこのちっさいのを立たせようと手を差し出したが、何故かムッとした顔をするちっさいの。
「おれ、ねてないし。そしてチビッていうなチビ!!バカなチビはおまえだろ!!」
………は?
え?こいつ俺より身長高いと思ってんの?なんかチビって言われてすごいお冠な様子。
しかもハイエルフの俺にここまでストレートな悪口を言ってくるやつは初めてだ。
皆俺を別け隔てなく接していても、やはり心の何処かで俺が落ちこぼれでもハイエルフだということをを知っているからだろう。
ふとした時に、俺への配慮を感じることがあった。
だからどうこうじゃないけれど、俺がそれを少し寂しく感じていたのも事実。
「お、おまえ!!みみがチョンッてなってるぞ!」
「はあ?お前、エルフを見たのは初めてか?ここじゃあ珍しくもないのにお前、世間知らずだなー」
「う、うるしゃい!!おれはここにきたばかりなんだよ!!だいたいおまえ、チビのくせになまいきだな!!」
今まで悪口なんて言われなかった俺はこの状況にとてつもなくイライラするのと同様に、同じくらいのワクワクがあった。
「なんだと!?ザコのくせに!!」
「やんのか?おれはさいきょーだぞ!!」
俺は絶妙に素早い動きで飛びかかってくるちっさいのを軽く受け流しながらも、この心の中の躍動感を抑えることはできなかった。
まさかこのちっさいのが俺の人生をこんなにも変えるなんて今は思ってもいなかった。
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いつも読んでくださりありがとうございます!
ついに始まりましたね。ファンタジー大賞。
エントリーしたので心のなかでグッジョブをしてくれると嬉しいです。
更新頻度が増えると思いますので楽しみにしていてください。
いいねをくださる方、エールをくださる方、いつも感謝しています。
これからも宜しくお願い致します!!
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