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第2章︙魔法都市編

ムカつくチビエルフ1

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「……い………おいチビ!寝っ転がってないで起きろ!」


なんか声がする。

「……んむ……あれ、ここは?おれ、さっきまでわるものとたたかっていたのに……」

周りを見れば人がたくさん。
そして俺のそばには心配そうな顔のシルと、綺麗な顔立ちの金髪碧眼で、まるで絵本の王子のような男の子が俺の顔を覗き込んでいた。


「あ、起きたかチビ。おまえ、なんでこんな通りの真ん中で寝てたんだよ。馬鹿か?」

は?………チビ?馬鹿?


「おれ、ねてないし。そしてチビッていうなチビ!!バカなチビはおまえだろ!!」

大体初対面でチビとか言ってくるやつは性格が悪いやつしかいない。
つまり、性格の悪いやつが俺より大きいなんてことはあり得ないわけで、そして俺よりチビだということは俺よりお馬鹿さんなのだ。
だから俺に向かって突然チビとかバカとか言ってくるんだろう。頭の良い人なら俺が最強で格好良いことがすぐに分かる…………あ!?

「お、おまえ!!みみがチョンッてなってるぞ!」

「はあ?お前、エルフを見たのは初めてか?ここじゃあ珍しくもないのにお前、世間知らずだなー」

「う、うるしゃい!!おれはここにきたばかりなんだよ!!だいたいおまえ、チビのくせになまいきだな!!」

「なんだと!?ザコのくせに!!」

「やんのか?おれはさいきょーだぞ!!」



壮絶な戦いが幕を開けた。



「ちょっと見てあれ。可愛い子どもが何かやっているわ。新手の遊びかしら?」
「通りのど真ん中で遊ぶ子どもなんて、なかなか度胸があるな」
「真剣な表情で戯れてる子ども……かわゆい」


「キック!!」

俺が強烈な回し蹴りを放つと、あのチビはやすやすと避けて俺にパンチを放ってきた。
勿論俺は最強なので当たるはずもなく、華麗に避けていく。

「お前……なかなかやるな!チビのくせに!」

「だれがおまえだ!!おれはダイキだ!!おれはチビじゃないし、おまえがチビだぞ!!」

「チビじゃねえし!!これでも喰らえ!」


あのチビが両手を突き出して飛びかかってきたので取っ組み合いになり、地面をゴロゴロ転がりながら接戦を繰り広げる俺達。

「シル!!おれをてつだえ!!」

「キャンッ!」

ダメだ。
シルは俺が壮絶な戦いを繰り広げているにも関わらず、傍でちょこんと座っているだけでなにもしない。
なんならあの大きくなる魔法でも使って欲しいところだが、可愛いシルは俺が最強だと信じているのでこんなチビ程度大丈夫だと思っているのだろう。
まあ、確かに俺なら負けることはないが、このチビが意外としぶといんだよな。



「くっ………よし!なら背比べして勝者を決めようじゃないか!!」

「フンッ、けんかじゃあまけるから、せいくらべか?………ないてもなぐさめてやらないからな!!」


いつまで経っても終わりが見えないので、ついに痺れを切らした俺達は背比べして誰がチビか決めることにした。

「………おれのほうが、すこしたかいな!」

「………。おいお前、堂々と背伸びするな。やり口がセコいぞ」

「ち、ちがわい!これはいせかいりゅーのおうぎで………あ、やめろ!!」


あ、あの野郎、ほんのすこーしばかり踵を宙に浮かせていただけなのに、目ざとく気づいて押さえつけてきやがった。

「はい、俺の方が高いな」

「たかくない、たかくない!!おれのほうがたかいだろ!!」

全く、一体どこを見れば俺より背が高くなるんだよ。どう見ても俺の方が………うん。俺の方が高いな。


「ま、まあいいだろー。このはなしはあとにして、おれはおまえにききたいことがあるんだ」

「しれっと話をそらしてきやがったコイツ。……はあ。それで?聞きたいことってなんだ?」


なんか呆れたような目で見てくるので少しばかりイラッとくるが、俺は大人なのでサラッとスルーをしておく。
そもそもここの現在地が分からないので何をしたらいいのか分からないが……ていうか異世界初心者の俺を突然知らないところにとばされたなんてあまりにも無理があるのでは?
現状を嘆いても仕方がない。幸いこのチビ……じゃなくて生意気なエルフが色々知ってそうだからな。

「まずは……ここは、いったいどこなんだね?」

「ここは魔法都市ミネルヴァだけど?お前、この都市の名前も知らないなんて、どんだけ箱入りで育てられたんだよ」


余計な一言は無視して……ふむ、ここは魔法都市なのか。だからたくさんの人がいるし、なにより精霊の都よりも大分文明が発達しているな。

そしてこの生意気エルフによると、ここ魔法都市ミネルヴァは魔法の頂点たる人物である『魔法王』が治める方式であり、血筋や家柄に囚われないので一攫千金を夢見て飛び出す魔法使いもいるという。

しかし先代の『魔法王』が亡くなってから、どうも跡取り争いで最有力候補の二人の魔法使いの実力が拮抗しているらしく、今は空席の座らしい。

そして魔法都市というだけあって、魔法に関しては右に出る国はいないので、幸い戦争を仕掛けられることなんぞないし平和で発展した街なんだとか。
なにより、ここには生意気なこいつの種族であるエルフが沢山いて、精霊とも親和性が高いので精霊もいるという。
それでこの生意気エルフはなんか精霊もいるって自慢げに言ってたけど、なんら珍しくもなんともないのにそんなに威張っちゃうなんて……やっぱりまだお子様だな。


「フフン!おれは、せーれーのおーさまとけーやくしたおとこだぞ!!どうだ、すごいだろ!!」

「嘘つけ。そもそもエルフ以外に精霊と契約する人自体が珍しいってのに、精霊王なんて馬鹿げたこと言うなよ。そんな嘘赤ちゃんでも分かるぞ」


こ、こいつ!!
俺を嘘つき扱いしやがって……俺は本当に精霊王のクロスと契約を結んだし!!

「フンッ!!まあ、おれのあふれでるオーラは、ザコにはわからないもんな。しかたがない」

「オイ、誰が雑魚だチビ。お前、そもそも全然強くないくせに威張るなよ。冒険者ランクだってどうせC級なんだろ?」


………。冒険者ランクか。


「おいおまえ。その……ぼーけんしゃになるためには、どこにいけばいーんだ?」

「は…?お前、冒険者ギルドしらないのかよ!?どんだけお坊ちゃん……はあ、まあいい。付いてこい」


どうやら案内してくれるらしい。どんどんと人混みの中を歩いていく。流石はここを詳しいだけあるらしく、どんどんと離れていく背中に俺は足元にいたシルを抱っこすると慌ててついて行った。



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いつも読んでくださりありがとうございます!


昨日は暑すぎて死にかけましたけど、今日も強烈に暑くて死にそうですが、皆さんいかがお過ごしですか?
アイスやキンキンに冷えたジュースが欲しいのに、外が暑すぎて外出できない私は今日の朝は紅茶でした。
氷を沢山ぶっ込んで冷たくしたのですが、甘くないことに気づき砂糖も追加しました。
朝からなにやってるんだと自分でも思いましたが……この暑さでは、ねえ?

皆さんも十分にご自愛ください。
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