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閑話

閑話︙大輝の夏休み

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いつも読んでくださりありがとうございます!

今回の話は本ストーリーと関係はありませんので、読まれなくてもなんら支障はありません。
が、読んでくださると嬉しいです!!
宜しくお願いします!

----------------


「よっし!これでばっちりだな!」


俺は大輝。来月9歳になる大人間近の小学三年生だ。
そして今は一年の中でも最高の時である夏休み。俺は朝早くから起きてやることがあるのだ。

それは、俺の子分を見つけること。

うむ、カブトムシは勿論王道だが、ノコギリクワガタも中々だ。もしかしたら伝説のオオクワガタが見つかるかもしれない。

フフン、今日のために朝の四時から起きて、朝ご飯用の鮭と昆布のおにぎりを作り、水筒には氷をたっぷりと入れ麦茶を注ぎ、虫取り網と虫かごを持ったら準備万端だ。

俺が住んでいるおばあちゃん家は、山が近く周りが田んぼの田舎なので、すぐそこの裏山で子分を獲得する予定である。
時計を見ると朝の五時くらい。今ならまだ全然間に合うな。

「おばあちゃん!!いってくるね!」

俺はオーッと虫取り網を掲げて遠征の宣言をした。



「うーん、いない。そもそもー、じゅえきの木がないから、カブトムシたちも見えないんだよなー」

山に入ってすぐ我が子分を発掘しようとしたが、やはり現実は甘くない。
蜜がある木に集まる生き物たちなので、やはりここは駄目なのだろう。

「……もうちょっとおくまで行ってみるか」

そうこうしているうちに、俺はいつの間にか知らないところまで来ていた。


「………まいごになっちゃった。どうしよー」

山で迷子になるなんて笑えないが、そんなに深く考えていなかった俺は適当に山の中を散策していく。

「あれ?……ここ、かいだんがあるな」


苔に覆われ年月が経ったような石の階段がそこにはあった。
結構長く続いていて、頂上が見えない。
俺はほんの少しの躊躇……なんてものはなく、好奇心いっぱいで階段をどんどんあがっていった。


「やっと……ふぅー、つかれたな………むむ!?すごいぞ!!」

ずっとひたすら真っすぐ階段をあがり、ついに終りが見えてきた。
そしてついに階段を上りきった俺の目の前には、凄い光景が広がっていた。

俺なんかよりずっとずっと大きな鳥居。その奥には、ところどころ漆喰が剥げていてとても立派な作りの神社があった。
近くには観賞用と思われる池があり、大きな鯉が泳いでいる。
そして神社の縁側には、扇子を持った綺麗な若い女の人が座っていた。


「………あら?ここに人間がやってくるなんて、何百年ぶりかしら」

「なにしてるんだ?おれは、道にまよってここにきたんだ。みちを、おしえてくれだぞ!」

「あら…?そう。道に迷ったのね。大丈夫よ。私が後で帰り道を教えてあげるから。そんなことより、私と少しお話をしない?」


女の人がこっちに座りなさいと隣の縁側をポンポンと叩いたので、俺はテクテクと女の人の所へ歩み寄ると、よいしょと縁側までよじ登り隣に座った。

「ここにはとても長い歴史があってね。私の知り合いの話なんだけど………それはなに?」

「あ、これは、ですねー……おれが作った朝ごはん!こんぶのおにぎりとー、あとしゃけのおにぎりだぞ!とってもおいしいんだぞ!」

「………そう」

俺がくまさんのお弁当を取り出すと、不思議に思った女の人が興味津々にそう問いかけてくるので俺は自信満々に答えてあげる。
俺がおにぎりを取り出し包みを開けるのをじっと見つめる女の人。


「…………ほら、これあげる」


あまりにもじーっと見つめてくるので、俺は昆布のおにぎりを半分にして片方を差し出した。
健康のためには朝ご飯はしっかり食べないといけないっておばあちゃんも言ってたしね。

「いいの?……ありがとう」

女の人は俺からおにぎりを受け取ると、一緒にいただきますをして食べる。


「………美味しい。それに……懐かしい味だわ」

「むむ?なつかしい……このおにぎりはおれが作ったんだぞ、なつかしいのはおかしいぞ」

「そうね。きっと勘違いよね」


無言で黙々とおにぎりを食べる俺達。
木と木の間の隙間から漏れる木漏れ日を浴びながら食べるおにぎりは、やはり俺が作っただけあって美味しかった。


「ほら、これもあげる」

鮭のおにぎりも半分こして渡してあげると、女の人は鮭のおにぎりを神社の真ん中に置いた。

「食べないのか?」

「フフッ、別に鮭が嫌いなわけじゃなくて、あの子にもこのおにぎりをあげようと思って」


……あの子?


「あの子はね。昔はみんなに愛されてたの。でも……やっぱり永遠なんてものはないのね。今じゃあ存在すら忘れ去られかけているわ。結局、私より先に逝ってしまった」

「おわかれ……おひっこししたのか?おれも、去年おひっこししてさびしい友だちがいたぞ」

別れは辛いものだ。今まで当たり前のように会っていた人達が突然と離れ離れになるのはなんとも言えない寂しさに包まれる。
それがより自分にとって大切な人なら尚更だ。

「……でもね。あの子の最後はとっても笑顔だった。もうすぐ忘れ去られるというのに、晴れやかな笑顔で満足げだったの」

「だったら、よかったな。ずっといっしょがしあわせじゃなくても、その人はすごーくまんぞくだったんだろ?
おれもおすしやさんいったら、おなかパンパンでまんぞくだけど、ずっとおすしがいいわけじゃないからな。やきにく、たべたいし」

「フフッ、ありがとう。永遠じゃなくても、あの子が幸せかどうだったかが大切よね。あの子が満足しているのに、私が嫌な顔をしているなんて駄目よね」


二人で暫くぼーっと前を眺めていると、俺はハッとして絶望した。


「おれのこぶんがっ!!きょうこそカブトムシはゲットしようとしたのに!!」

今は恐らく朝の七時頃。これはもう間に合わな……いや、まだ希望はある。あるはずだ。
俺は慌ただしく荷物をくまさんのリュックに詰めると、ピョンと縁側から飛び降りて、タタターッと階段を駆け下りようとした。

「あ、名前を教えてだぞ!!」

俺は鳥居の前でバッと振り返ると、女の人はふんわりと微笑みながら俺に手を振った。

「私は……アマネ。アマネよ」

「ありがとうアマネさん!!おれ、こぶんをがんばってゲットするから!」


俺は階段を駆け下り山の中を探し回ったが、やはりこの時間は駄目だったらしく、結局子分を獲得することはできなかった。
そして道も聞き忘れた俺は絶望していると、急に景色が変わりいつの間にか俺の家の前にいた。

「うん?いつのまにか、いえについた……おれ、天才すぎる!ついにしゅんかんいどーができるようになったか!!」


それから一日ずっと瞬間移動の練習に費やした俺は、明日の進化した俺を想像しながら眠った。



………何故だ。俺は瞬間移動を極めようとしたんだ。何故こうなる。

朝起きて俺の目の前にいたのは、燃えるような真紅の小鳥さんだった。
まるで幻かのように触ることができないこの鳥は、夏休み中ずっと俺と一緒に過ごし、夏休みが終わると、突如として消えてしまった謎の鳥。
そして翌日大輝を見て頭を抱える祖母。

「あの子に天照アマテラスの加護が宿るなんて……私の孫は一体何をしたらそうなるんだ。」





「私が自ら加護を授けるのは、月読命ツクヨミの時以来かしら?最高神としても、たった一柱の神としても、あの子の純粋な心が綺麗に芽吹いて欲しい。だから眷属を授けてあげたけど……心配はいらなかったようね。あの子は強い」


私のお気に入りの子。
どうか幸せになって欲しい。


それから何年も後、異世界の時空神とある神により大輝をとられて天上世界で危うく戦争が始まろうとするのはまだ誰も知らないことだった。

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