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第1章︙精霊編

異世界の聖女

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「それにしても……か、可愛い。可愛すぎるわ。え、なにこのぷにぷにした手は。これはもはや至高の領域に辿り着いた神の手……?」

よろしくと差し出された手を俺は握ると、なんか小声で呟きながら俺の手をニギニギしてくる。怖い。

「ほらほら!うちのダイキの手を無遠慮に握るなんて失礼だと思わないの!?皆ほんとはダイキをムニムニしたいのに、偶にやるだけで我慢しているのよ!」

……それにしてはほっぺを摘まんだ記憶が数え切れないほどなのだが、アレで偶に、だと!?

「あ、ごめんなさいね。でも……わかるでしょ、聖女如きが神と同等……いえ、神なんて足元にも及ばないほどの尊さに抗える?無理よ」

「……フッ、伊達に聖女をやっているわけではないようね。貴方とは気が合いそうだわ」

なんかアクアと聖女様がガッチリと握手して親交を深めている。
その後ろではクロウがサラッと悪者たちを拘束していた。そして何故かシルがクロウを凝視している。


「シル。おまえ、だーじょーぶか?こわいなら、おれのうしろにかくれても、いーんだぞ。おれ、シルをまもるってやくそくしてるからな!」

「キャンッ!」

シルは元気よく返事をして………おい、何故俺の前に出るんだ。

「ハ、ハハッ、どうやら逃げられないようだな。しかし、その生き物程度が私から守れるとでも思っているのか?馬鹿馬鹿しい。お前等共々全員消し去ってやる」

手を突き出してなにかを唱えた悪者の親玉は、今度は魔族が放っていた巨大な黒炎を出し、こちらに向かって放ってきた。

「魔力が効かないならば、魔気を混ぜ込んで放てばいいだけのこと。今度こそ終わりだ」


「シル!おれがまもってやるから……あ、シル!おれのうしろにこいだぞ!!」

「キャンッ!」

俺の前にいたシルは威嚇するように鳴くと、体をピカッと光らせ、どんどんと巨大化していった。

……魔法使いわんこ。まさか体のサイズまで魔法で変えられるなんて、これはもう反則だろう。後で俺にもその魔法をかけてもらわねば!!

「ハッ………少しばかりサイズが変わったからなんだ?どうせ力にはなんの変化もない虚仮威しはこのくらいにしたほうがいいぞ。私はいくら珍しい生き物だからと容赦はしない」

ついに俺の何倍も大きくなったシルは、悪者の親玉をじっと睨むとブワッと何かを放出し始めた。
そして目に見えないなにかは悪者の親玉が放った黒炎と衝突し衝撃波を生み出した。

「あったかい。ふむ……これは、ふゆになって、さむさむっ!ってなったころにひつよーだな」

「ち、ちょっと待ちなさいダイキ。貴方これ、本当に温かいだけ?え?この生き物、とんでもない魔力威圧を放っているけど、ダイキからしたら温かいのね……うん。そうよね。ダイキだものね」

「さ、流石にこれは……あ、魔族達が気絶し始めたよ。いやほんと、流石は世界樹の守護獣として生み出されただけあるね。今は主の守護じゅ……じゃなくてペットだけどね」

あら?どうやら皆の様子は俺と少し違うらしい。なんか精霊さん達が大分後ろの方で何故かシルを畏怖の目で見つめてるし、アクアやクロウも目を見開いて緊張した様子を見せている。
唯一比較的落ち着いているクロスもなんだか俺を心配そうな目で見つめてくる。何故だ。


「わ、私は傲慢の悪魔、アスモデウスだ。たかだか劣等種族である精霊共に負けるわけ…!?」

後すざりして逃げようとした悪者の親玉は、後ろから魔法で拘束されて身動きが取れなくなった。

「ちょっとどこに逃げようとしてるのよ。私も一応、聖女だからね。フフッ、可愛い幼子を付け狙う変態は抹消してあげないとね」

光の帯で容赦なくギリギリと首を絞めていく聖女はまさにラスボス。なんだかあっちのほうが可哀想に見えてきた。

「そこの最上位精霊から事情は聞いていたけど、まさか原初の悪魔まで出てきてたなんて驚いたわ。流石に序列一位のサタンは来なかったみたいだけれど……時間の問題ね」

「だから、少しでも主のことが広まらないよう徹底しないといけないんだよね。だから、原初の悪魔だろうがなんだろうが、主の為には口を封じるしかないもんね」

捕らえられて段々と焦りだした悪者の親玉の目の前でなにか悪そうな顔で話す二人は、俺の方を振り向いて笑顔で聞いてきた。

「ねえ主。この悪魔を逃がしたら、おそらく他の原初の悪魔が主を狙うかもしれないんだよね。だから……この悪魔を殺すか、制約をかけるか、どっちがいい?」


殺す………殺す!?


「え、あ、えっと……こ、ころしゅのは、だめ。おれ、せーやくにする!!」

「ほら、まだ異世界こっちに来て日が浅いダイキくんはそんなの無理に決まってるじゃないの。でもこの悪魔に制約をかけるとなると、精霊王の貴方くらいしかいないでしょ?そこんとこはどうするつもり?」

「ちょっと待ってレイナ。制約をかけるのはダイキよ。流石に精霊が悪魔に制約をかけるのは種族相性の関係であまり宜しくないから。それに……精霊王よりダイキのほうが魔力凄いし適任でしょ」

……どうやら俺がせいやくなるものをするらしい。
クロスができないことなので、俺がやるしかないらしい。
そう。なのだ。

「ま、まあ?おれしかできないし?おれ、すごいからできるし?よし……そんなにしてほしいなら、やってあげよーではないか!!」

俺はいつの間にか聖女によって光の帯でぐるぐる巻きにされた悪者の親玉の前に立つと……立つと、一旦クロスの方に戻り耳に顔を近づけた。

「ちょっとクロス。おれ、せーやくできるけど、クロスがやりかたしってるのか、しんぱいだから……やりかた、いってみるんだぞ。おれ、しらないわけじゃないからな!!」

「…………うん。分かった。主は知ってるけど、僕ができるかわかんないから心配してくれてるんだよね。うん。理解した」

俺とクロスはコソコソと内緒話をして、新たなる叡智を取り入れ再び悪者の親玉の前に立った。

「せーやく…せーやく……よっし!!おまえは、ひみつをもらしちゃだめの、せーやくをかける!!」

今度は少しばかり悪者の親玉が微かに光った。
ふむ……クロスが言ったとおりにやってみたけど、これで終わりなのか?
それにしてはなんか目の前の悪者は呆然とした様子なのだが。

「凄いよ主!!相手の同意も必要なしに言葉だけで契約を成立させてしまうなんて!」

「驚いた……。これ、各国の首脳陣にバレたら戦争が起きそうね。あ、精霊たちがこの子に総力をあげれば戦争は起きないか」

「待って……なんか主から魔力が感じられるようになってる。しかもこれは……魔法術式?」

ダイキのかけた制約により、アスモデウスと魔族達は行動に縛りをかけられた。
それにより万が一にもダイキの存在が悪魔によって露見することがなくなったこの状況に、やっと一息つくことができたのだった。
しかし、ダイキとアスモデウスの間にある制約は、予想外のものをもたらした。

アスモデウスが逃げようとしたときに封じられた帰還の魔法。
本来ならば時間とともに魔法構築が少しずつ崩れていき、元の魔力に戻っていくはずだったものは、ダイキとアスモデウスの間に出来た繋がりにより、再び魔法構築を始めた。
魔法の術式はより魔力の質が高いダイキの方へ自然と寄っていき、悪魔の持つ魔気とダイキが操る魔素が混ざり合い新たな魔法が生まれる。


「え!?あ、なに!?」

「主!?不味い、シル!!」

「キャンッ」

目の前が閃光に包まれた。




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いつも読んでくださりありがとうございます!!

もうすぐ夏休み……お盆ですが、なにか楽しみにしている予定がある……探してみればあるかもしれません。

おそらく8月初めは寝転んでぐーたらしてると思う……。というか思いたいので、頑張ってやることを今のうちにやりたいですね。

誤字指定ありましたらお願いしますm(_ _)m
そして感想、ご意見ありましたら宜しくお願いします!!
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