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第1章︙精霊編

魔法訓練2

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「え、ちょっ、待って!?」
「キャーッ!!」
「ダイキ!!一旦やめなさ……!?」


俺が魔法を唱えた瞬間、突然視界が歪んだ。
身体は思うように動かず、息をすることもできないこの状況。


……これはやっちったぞ。


まさか人や物を閉じ込める魔法に自分諸共閉じ込められてしまうなんて思わないだろ普通。


てゆうかなんで俺の魔法だけサイズが違うんだよ。やっぱりあの神様が何か俺に仕掛けたのかも。だったら許さん。次会ったらボコボコにしてやる!

あ、なんかちっちゃくなった反動か高校生のときと違ってもう息が苦しくなってきだぞ。これ、死んだのでは?


意識が朦朧としてあの世に出発しようとしていた頃に何やら鳴き声が聞こえる。


『……ンッ……………キャンッ!!』



これまた突然バシャッと音がして水から解放された俺は、不思議に思って息を整えながら体を起こした。
前を見ると心配そうな顔で俺を覗き込んでくるシルがいる。
流石は魔法使いわんこ。只者ではないと思っていたがまさかここまでできる奴だとは。

「さすがだなシル!!おれのきょーりょくなまほうをとめられるなんてすごいぞ!!これでぼーけんしゃになってもあんし……うにゅ!?」

「いくらダイキでもさすがにこれはやり過ぎよー?閉じ込められたのが水の精霊たちだったから良かったものの、万が一火の精霊とかだったらどうするのよ?………それにしてもこの……シル?とんでもないわね」


俺の魔法を止めたシルに称賛を送りよしよししようとしたら、アクアに両手で顔をムギュッとやられてお説教を受けてしまった。
………確かに今回はほんの少しやりすぎてしまった感は否めない。
しかし!!これは不可抗力であり、どうにもできないことなので潔く割り切らなければならないこと……であると思う。


「ふ、ふふん!!お、おれのまほうはどうやらつよすぎたようだな!さ、さすがはおれ。まさにさいきょーだな!」


そう。つまりは俺が最強すぎて起こってしまった事故。絶対そうなのだ。やはり罪な男は苦労を強いられる運命。まあ、今回で俺の最強さがみんなに伝わったことだろうし良しとしようではないか………あれ?


何故か精霊さん達がまた一斉に俺から後退っている。なんなら近くにアクアとクロスとクロウしかいないんだが。
あ、あと足元にシルがいる。………もしかして、シルが可愛すぎるから照れたのか?
ふーん。俺のことは無視してシルに夢中になっているのか。俺、頑張ったのに無視するんだな。

「ふん!!おれ、もうおまえたちなんてしらない!!」


もういい。俺一人で魔法を極めてやる。アクア達に教われば周りの精霊さん達なんてすぐに追い抜いてみんな尊敬するようになるんだ。
今に後悔しても遅いからな!!

俺はシルを抱き上げてクロス達の方へ走り寄ると、少し離れた場所にいる精霊さん達に舌を出し顔を背けた。



「流石にダイキのあれは魔法の出来以前の問題だと思う。だってどう見てもおかしいでしょ」

「そもそも水の精霊が水の魔法に閉じ込められるなんてことがあり得ないよな。どうやって中級魔法からあそこまでの効果を叩き出したのか……」

「それはもう主だからと割り切るしかないよ。そもそも主に常識を求めるほうが悪いし、それに主は超絶可愛いからなにが起こってもおかしくないんだ。はあー。主は可愛すぎる」

「なんかここに頭のおかしい奴がいる気がするのは俺だけか?」


なんかまた集まってコソコソと内緒話をしているではないか。俺は今精霊さん達と喧嘩しているから一人ボッチなんだ。俺も混ぜろ。

「なにをはなしてたんだ?おれもなかまにいれてだぞ!!」


「何の話って……勿論ダイキの魔法がおかし『主がとっても才能があって凄すぎるって話をしてたんだよ!!もう少し魔法を工夫すれば一気に伸びるかもしれないと三人で相談してたんだ。……そうだよね??』…………そこの精霊王の言う通りだ」


やはりこの三人はシルにうつつを抜かすなんてことはなく、しっかりと俺のことを考えてくれている。やはり頼れるのはこの三人だけだな!

「んー。くふうか………あ!こまったときは、グリモアール……ちがった。グリモアー………。グリさんにきけばいーじゃないか!!」


……フッ。ここは時間を効率化するために名前は短くするのが大人の常識というやつだ。

とりあえず神々の結晶だかなんだかのあの本は、確か知りたいことを教えてくれるのだった。うっかり忘れていたけれど、最初からそうしてればよかったじゃないか。


俺はいそいそとグリさんを取り出すと、少しサイズが大きくてずっと持っていると腕がプルプルしてくるので地面に置きページを開く。


【魔素について】

魔素とは魔力を構成する原子であり、また世界を構成する原初の物質の一つである。非常に希薄でありながらも強い力を秘めていて、魔素を扱えるのは魔法神ヘカテのみと言われている。
極めて希薄な存在であるため完全に扱うことは不可能であり、魔法媒介品を通して活用することが唯一の方法とされている。



…………ん?

なんか意味の分からない文章と言葉が飛び出しできたのだが。

何故俺だけ魔法のサイズが違うのか知りたかったのに出てきたのは魔素だかなんだかの意味分からんやつ。
………やはり次あの神に会ったときは二発くらわせてやらないといけないようだな。
これで本一個持たせて異世界へ放り込もうとしたなんてどんだけケチなんだよ。心が広くて格好良くて強い俺を見習え。


「え……?なにその本?しかも……なんか色々とんでもないことが書かれているけど、この本どこで見つけてきたの?」

いつの間にか傍で覗き込んでいたアクアがびっくりしたような表情でグリさんを凝視している。
この意味が分からん文章にアクアがいたく感銘を受けているところ悪いが、グリさんは恐らく不良品だぞ。


「アクア。これ、ふりょーひんかもだぞ………はなしきーてる?」

「もしかしてダイキのあの魔法は魔素を直接扱っていたから……?でも、今まで魔素を扱える存在がいるなんて聞いたことがない。でも、ダイキが魔素に直接干渉できるのなら、あの強力な魔法にも説明がつくわ…」

………なんかアクア怖い。
真顔で暫くブツブツ呟いていたと思ったら、突然ガバッとこっちを振り返って俺を捕獲してきた。


「やっぱりそうだ!ダイキは魔素を扱えるに違いないわ!!もしかしてと思っていたけどまさかこんなに凄いなんて。それにダイキは全属性だし…………うん?」


突然アクアは何かを感じ取り首を傾げる。



「これは………クロウ。頼むけど今すぐ精霊たちをここに集めて」

「分かった。俺が負けることはないと思うが、一応警戒を怠らないようにする」


クロス達の雰囲気が一気に緊迫したものになって、腕の中のシルがキャンキャン鳴き始める。


「誰かが神秘の森の結界を攻撃した。恐らく攻撃者は僕たちが気づかないなんて思っていない筈。こちらと争うつもりだろうな」



突然の襲撃。精霊に送られた宣戦布告。ダイキを狙った強者達の争奪戦が幕を開けた。





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いつも読んでくださる方、ありがとうございます!!
事態が一気に変わってきました………ダイキの可愛さが健全であるように皆様お祈りください。

そして梅雨に入ってきました。
毎日が雨ですこし憂鬱ですが、頑張っていきましょう!

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