上 下
13 / 65
第1章︙精霊編

お料理大作戦3

しおりを挟む

「あ、い、いま!!いまこーりつけ!!」

クロスの華麗な解体?捌きにすっかり意識を持っていかれて忘れていたけど、氷漬けにしないと魔力がなんたらって書いてあった。
はっと我に返った俺は慌てて水の子供精霊さん達に頼んだけど……えっと、大丈夫だよな?

「果物持ってきたよ!」
「あ、俺はたくさんキノコ採れたぜ!!」

風の子供精霊さん達も続々と戻ってきて食材が山のように積み上げられていく。

「よし!ごしごしするぞ!!」

まずは食材を洗うことから。
水の子供精霊さん達に空中にとても大きな水球を出してもらい、それを風の子供精霊さん達がぐるぐると回す。
そこにキノコなどの食材をバンバンと突っ込み、ざっと洗い流すと大きなボウルに入れていく。

「はい!はい!どんどん、きるんだぞ!」

俺は神様から貰ったナイフ……神様ナイフを取り出しキノコを縦に切っていく。
助手くんも俺の素早く華麗なナイフ捌きを真似て………なんか指先から時空斬みたいなの出してキノコを斬っている。
………いいな。俺もあれやりたいぞ。

その他手が空いてる風の子供精霊さん達もキノコを切っていって、大分切れた頃にキノコをこれまた大きなフライパンの中に入れる。
今回は油やバターが無い。このままだとキノコがフライパンに付着するので仕方がないが水で代用することにした。

「うーん、しょ!!」

俺が手を大きく開き精一杯伸ばすと、風の子供精霊さん達がかき混ぜる。
ちなみに火の精霊さん達に応援に来てもらい火力管理をしてもらっている。


「主………混ぜるタイミングで万歳してるだけで何もしていないけど………可愛い」

「なんかいったかー?」


「ううん。なんでもないよ!主の素晴らしい指揮能力に呆然としてただけだよ!」


ふふん。やはり俺はリーダー的素質があるか。流石は俺。異世界に来てから色々パワーアップした気がする。


「ほら、ほら!つぎはおゆ、わかするよ!!」

もはや当然となりつつある大きな鍋に水をたっぷりと注ぎ、火の精霊さん達に沸かしてもらう。
キノコ達の様子を見ながらも水が沸騰したのを見届けると、俺は声を張り上げた。

「ほら!いまですぞ!!」

一気に解凍された熊肉がドボドボと投入されていく。 
熊肉もフライパンにやろうと思っていたけど、なんかこの熊肉、すごい柔らかくなっていたので直で鍋行きにすることにした。


「つぎ、キノコさん!!」


フライパンでリハーサルを終えたキノコがついに本番の鍋へと召喚されていき、俺は少し時間をおいてから、神様から貰った魔法の瓶………神様ビンを取り出しコルクを抜いた。

「カレーこ、カレーこ……おねがします!!」


俺が一生懸命願ったおかげか、これまたお高そうな値段のカレー粉が神様ビンからドバドバと溢れ出てきた。
ぐるぐるとみんなでかき混ぜ、少し経つと香しいあの匂いがしてきた。

………早く食べたいぞ。

周りの精霊さん達も匂いに刺激されてソワソワし始めている。
そろそろ全体に混ざった頃、俺は鍋を精霊さん達に任せ、助手とともに台の方へ向かう。
さっきのボウルを洗い綺麗にすると、今度はあの美味しい果物をボウルの中に入れていく。

「ごほん。じょしゅくん、できるかな?」

俺の仰々しい問いかけに、俺の助手は厳格な表情……と見せかけたデレデレな表情でパチンと指を鳴らした。
重力を操作したのか、一瞬で潰れてジャムみたいな形状になったそこに、あの神様ビンを開け、砂糖にみりん、そしてお祖母ちゃん特製の隠し味である醤油を少々入れていく。

グルグルとよくかき混ぜてえっちらおっちら鍋の方へ運ぶと、弱火でよく煮込まれたそこに隠し味ソースを入れていく。



暫く経ち、カレー特有のピリッとした香りの中に豊潤な香りもする異世界カレーが完成した。



「わーい!できたぞー!!」

俺が拳を突き上げると、周りの精霊さん達も手を合わせて喜び合っている。




「あ………ごはんがないぞ。どーしよ」


俺が世界の真理に気づきしょぼんとしていると、それに気づいた助手が慰めてくれる。


「あ、主……それなら人間たちがよく食べる、えっと、なんだったかな………あ、そうだ!「パン」とかいう物があるんだ。何か使えるか?」


パン……これはいける。いけるぞ!!
 
「なんか定期的に人間たちが船に乗ってやってきては沢山のパンを置いてくんだ。僕たちへの捧げ物かもしれないね。今は僕の時空間倉庫に時を止めて保管してあるから大丈夫だと思うよ」

「じゃ、じゃあ、いま、だせるか?」

「うん。ほら」

なにもないところからポンポンと焼き立てとはいかずとも微かに温かいフランスパンのようなものがたくさん出てきた。

うん。これなら量の心配もしなくていいな。


カレーをいくつかの大きなお皿に盛り付けていくと、パンを精霊さん達に配りみんなで台の周りに集まった。

「それではー、いただきましゅ!!」


「「「「「いただきます!!」」」」」


俺はパンを千切りカレーに付けて食べるとそれを見ていた精霊さんたちが各々真似をして食べ始めた。




しおりを挟む
感想 7

あなたにおすすめの小説

悪役貴族の四男に転生した俺は、怠惰で自由な生活がしたいので、自由気ままな冒険者生活(スローライフ)を始めたかった。

SOU 5月17日10作同時連載開始❗❗
ファンタジー
俺は何もしてないのに兄達のせいで悪役貴族扱いされているんだが…… アーノルドは名門貴族クローリー家の四男に転生した。家の掲げる独立独行の家訓のため、剣技に魔術果ては鍛冶師の技術を身に着けた。 そして15歳となった現在。アーノルドは、魔剣士を育成する教育機関に入学するのだが、親戚や上の兄達のせいで悪役扱いをされ、付いた渾名は【悪役公子】。  実家ではやりたくもない【付与魔術】をやらされ、学園に通っていても心の無い言葉を投げかけられる日々に嫌気がさした俺は、自由を求めて冒険者になる事にした。  剣術ではなく刀を打ち刀を使う彼は、憧れの自由と、美味いメシとスローライフを求めて、時に戦い。時にメシを食らい、時に剣を打つ。  アーノルドの第二の人生が幕を開ける。しかし、同級生で仲の悪いメイザース家の娘ミナに学園での態度が演技だと知られてしまい。アーノルドの理想の生活は、ハチャメチャなものになって行く。

フリーター転生。公爵家に転生したけど継承権が低い件。精霊の加護(チート)を得たので、努力と知識と根性で公爵家当主へと成り上がる 

SOU 5月17日10作同時連載開始❗❗
ファンタジー
400倍の魔力ってマジ!?魔力が多すぎて範囲攻撃魔法だけとか縛りでしょ 25歳子供部屋在住。彼女なし=年齢のフリーター・バンドマンはある日理不尽にも、バンドリーダでボーカルからクビを宣告され、反論を述べる間もなくガッチャ切りされそんな失意のか、理不尽に言い渡された残業中に急死してしまう。  目が覚めると俺は広大な領地を有するノーフォーク公爵家の長男の息子ユーサー・フォン・ハワードに転生していた。 ユーサーは一度目の人生の漠然とした目標であった『有名になりたい』他人から好かれ、知られる何者かになりたかった。と言う目標を再認識し、二度目の生を悔いの無いように、全力で生きる事を誓うのであった。 しかし、俺が公爵になるためには父の兄弟である次男、三男の息子。つまり従妹達と争う事になってしまい。 ユーサーは富国強兵を掲げ、先ずは小さな事から始めるのであった。 そんな主人公のゆったり成長期!!

異世界転生目立ちたく無いから冒険者を目指します

桂崇
ファンタジー
小さな町で酒場の手伝いをする母親と2人で住む少年イールスに転生覚醒する、チートする方法も無く、母親の死により、実の父親の家に引き取られる。イールスは、冒険者になろうと目指すが、周囲はその才能を惜しんでいる

テンプレな異世界を楽しんでね♪~元おっさんの異世界生活~【加筆修正版】

永倉伊織
ファンタジー
神の力によって異世界に転生した長倉真八(39歳)、転生した世界は彼のよく知る「異世界小説」のような世界だった。 転生した彼の身体は20歳の若者になったが、精神は何故か39歳のおっさんのままだった。 こうして元おっさんとして第2の人生を歩む事になった彼は異世界小説でよくある展開、いわゆるテンプレな出来事に巻き込まれながらも、出逢いや別れ、時には仲間とゆる~い冒険の旅に出たり 授かった能力を使いつつも普通に生きていこうとする、おっさんの物語である。 ◇ ◇ ◇ 本作は主人公が異世界で「生活」していく事がメインのお話しなので、派手な出来事は起こりません。 序盤は1話あたりの文字数が少なめですが 全体的には1話2000文字前後でサクッと読める内容を目指してます。

底辺おっさん異世界通販生活始めます!〜ついでに傾国を建て直す〜

ぽっちゃりおっさん
ファンタジー
 学歴も、才能もない底辺人生を送ってきたアラフォーおっさん。  運悪く暴走車との事故に遭い、命を落とす。  憐れに思った神様から不思議な能力【通販】を授かり、異世界転生を果たす。  異世界で【通販】を用いて衰退した村を建て直す事に成功した僕は、国家の建て直しにも協力していく事になる。

攫われた転生王子は下町でスローライフを満喫中!?

伽羅
ファンタジー
 転生したのに、どうやら捨てられたらしい。しかも気がついたら籠に入れられ川に流されている。  このままじゃ死んじゃう!っと思ったら運良く拾われて下町でスローライフを満喫中。  自分が王子と知らないまま、色々ともの作りをしながら新しい人生を楽しく生きている…。 そんな主人公や王宮を取り巻く不穏な空気とは…。 このまま下町でスローライフを送れるのか?

異世界のんびりワークライフ ~生産チートを貰ったので好き勝手生きることにします~

樋川カイト
ファンタジー
友人の借金を押し付けられて馬車馬のように働いていた青年、三上彰。 無理がたたって過労死してしまった彼は、神を自称する男から自分の不幸の理由を知らされる。 そのお詫びにとチートスキルとともに異世界へと転生させられた彰は、そこで出会った人々と交流しながら日々を過ごすこととなる。 そんな彼に訪れるのは平和な未来か、はたまた更なる困難か。 色々と吹っ切れてしまった彼にとってその全てはただ人生の彩りになる、のかも知れない……。 ※この作品はカクヨム様でも掲載しています。

異世界を【創造】【召喚】【付与】で無双します。

FREE
ファンタジー
ブラック企業へ就職して5年…今日も疲れ果て眠りにつく。 目が醒めるとそこは見慣れた部屋ではなかった。 ふと頭に直接聞こえる声。それに俺は火事で死んだことを伝えられ、異世界に転生できると言われる。 異世界、それは剣と魔法が存在するファンタジーな世界。 これは主人公、タイムが神様から選んだスキルで異世界を自由に生きる物語。 *リメイク作品です。

処理中です...