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第1章︙精霊編

お料理大作戦2

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「それじゃー、えっと………どうしよー」

俺が指揮をとることになったのはいいが、材料がないこの状況で何をやればいいのか。
うーん、と首をひねっていると、突然キッチンの扉がバーンと開かれた。

「主!!食材狩ってきたよ!!」

そう言って台にズドンと置いたのは、なんと大っきな角の生えた熊だった。


………狩ってくるって、買うことじゃないのかよ!

いや、まさか直接狩ってくるとは思わんよ。それに俺、魚は捌くことができるけど、こんな熊捌いたことない。

「なークロス。これって、さばけるか?」

「捌く?んー、僕には無理かなー。主のお願いはなるべく叶えてあげたいけど、僕、今まで料理したことがないんだ」

やはり無理か。どうしよう、流石にこの熊を放食べないで放置するのはよくない。食材は無駄にしてはいけないしな………あ!!グリモアさんに聞けばいいじゃないか!

俺はいそいそと原初の魔導書グリモアを取り出すと子供精霊さん達がクロスを遠巻きにしながら俺の方へ近づいてくる。
沢山の精霊さん達に見られている俺は、仰々しく本を開いた。


【キングベアの捌き方】

キングベアはS級に属する魔物の一つである。
捌き方は、キングベアの毛皮は並の剣では傷一つつけられないため、キングベアの強度を上回る物で行うこと。
先ずは腹を縦に捌き内蔵を出す。そして血抜きをしながらキングベアの体を氷漬けにして魔力感染を防ぐ。
暫くして解凍すれば肉を切り取り調理することができる。





フムフム、なるへそ。つまりは、「頑張ってね!」ってことだな!!
それに……毛皮が固いと書いてあったが、フフフッ、残念だったな!俺には神様から貰ったナイフがあるのだ!
確かなんでも切れるって書いてあったからできるはず。


「こっち!みんなこっちむいてー!」

俺は手をぱんぱんして皆の注目を集めると、水の子供精霊さん達を呼び寄せる。

「ねーねー。このくま、さばくのてつだってくれる?おれがあいずをしたら、すぐにこーりつけにしてくれるか?」

「良いよー!」
「やろうやろう!氷漬け!」

水の子供精霊さん達がわいわい騒ぎ始めてキングベアの周りを取り囲み始めた。

「つぎに、かぜのせーれーさんたち!このキノコと、このあかいの、もってこれる?」

俺はグリモアでこの前俺が採ったキノコたちに、あの美味しい果実の絵を見せてそう言うと、各々心当たりがあるのか、すぐに飛び去って取りに行ってくれた。

「主は何を作るの?」

俺のそばでボケーっとしていたクロスが俺に質問してきた。
確かに、果物にキノコを採らせて何がしたいんだ?って飲食をしない精霊さんでも思うほどには不思議なことかもしれんな。

しかし!!
クールな俺には常に一足先のことまでよんでいるのだよ!
確かクロスが「魔力で生活はできるけど、飲食はできないわけじゃない」ってなんとかかんとか言ってた気がしたから、俺がみんなに食事と料理の楽しさを伝授してやろうと思ったのだ!

「ふふん!おれは………カレーをつくっ……つくるのだ!!」

しまった。いいところで噛んでしまった。これは格好悪いのでは……?
俺は恐る恐るクロスたちの方をチラ見すると、何故か皆ほっこりした顔をしていた。


「………うん、カレー?が何かは分からないけど、きっと凄いものなんだね。流石は主。何千年も生きてきてこんなに凄い人は会ったことないよ!!」


なんか妙に心のこもったように言っているな。
まあ、確かに俺は凄いのだろう。なにせクールだし、強いし、怖いものなんて一つもないからな!


「あの……精霊王。精霊王とこの子の関係を教えてもらってもいいでしょうか……」

俺とクロスが話していたところを、どういう関係か恐る恐る聞いてくる水の子供精霊さん達。
なんかクロスのことを怖がっているように見える。

「うん?主と僕は契約関係だよ?」

「うむ。こころやさしーおれが、クロスのたすけにおーじて、けーやくしたのだよ。こころやさしーおれだからな」

「そ、そうなんですね……精霊王と契約できるなんて凄い!」

なんかざわざわし始めた子供精霊さん達。悪いが今はおしゃべりをしている時間はない。

「じゃー、はじめるぞー!」

俺は熊の前に椅子を持ってきて上に乗ると、乗ると………一旦降りた。

「こわ……く、ないけど、おれには、ちょっとおーきくてむずかしーかなー」


なんか目の前に凄い迫力のある熊がいるのだ。日本で育った俺には少しばかり刺激が強かったかもしれない。
勿論、怖いわけではないが、大きいから出来そうにないと思っただけだ。
そう、俺に怖いものなんてないからな。

「うーん、主が出来ないなら、僕がやってあげるよ!!」

何故かクロスが張り切った様子で熊に手をかざす。
そしてなんか凄いのが発動されそうな魔法陣が形成されていくと、ピカッと光って俺は目を閉じた。
光が弱くなってきた頃に俺は恐る恐る目を開けると、そこには肉の塊がデデンと現れている。

「な……!すごー!すごいぞクロス!どーやったんだ?」

「キングベアの肉を除いた空間を抉った……つまり消したんだよ。毛皮とか臓器とか美味しくないって聞いたから、空間ごと片付けちゃえば簡単でしょ?僕はこの熊を捌くことは出来ないけど、消すことは出来るから。どう、主?僕頑張っちゃった」 

臓器だけを消すなんて、どんだけ手先が器用なんだ。まあでも……ふふん。流石は俺の契約した精霊なだけある。俺の補助はしっかりしているじゃないか。
俺がそんなことを考えている間にも、風の精霊さんたちが沢山のキノコや赤い果物を抱えて帰ってきた。

「ふむ。すごいぞ、クロスくん。きみをおれのじょしゅに、しめーしてやるぞ!」

「え………あ、うん!とっても嬉しいな!さすが主!助手だなんて光栄だよ!」 

うむうむ。とっても喜んでくれたようで何よりだ。


俺は様々な食材と助手を手に入れ、料理完成への道を着実と歩んでいた。
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