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第1章︙精霊編
精霊の都2
しおりを挟む「すごー!!たくさんせーれーさんいる!!」
クロウが扉を開けた先には、色々な姿の精霊さん達が歩いたり飛び交ってとても活発そうな雰囲気が感じられる。
それにじ建物や道など全てが自然で出来ていて、まるでどこかのお伽話に入ってきたようだった。
「ここはたくさんの精霊が集まる都の一つ。精霊は魔力が綺麗で沢山ある場所を好むから、必然的に集団で生活するようになっているの。それにしても、こんなに喜んでくれるなんて嬉しいわ」
ピョンピョンとジャンプしながら興奮している俺の頭を撫でながらそう言ったアクアに、俺は我に返って少し恥ずかしくなった。
現役の高校生がこんなに大人気ない姿を晒したなんて、絶対にだめなやつだ。
「そ、その……さっきのはすこしおどろいただけだから……そうだからな!」
慌てて俺が正当な理由を主張し始めるも、アクアもクロウも「そうだねー」と言って聞く耳を持ってくれない。
「ほら、そんなことより契約精霊を探しに来たんだろ。俺たちが見つけてやるから……だからそんなに拗ねるなって」
「そうよそうよ。こんなにおヘソ曲げちゃって。とってもかわ………怖いわ。機嫌直して?」
そう言って二人が俺にお願いしてくる。俺は最初から拗ねてないし立派な大人なので別にいいよと伝えてあげた。
「じゃあ精霊王の所へ行きましょうか」
何故か二人と手を繋いで歩き始める。
沢山の精霊達がいるここの風景は不思議で、歩きながらあれもこれもと首をブンブン振っていたら、周りの精霊さんたちから変な目で見られ始めた。
俺の行動を不思議に思っているらしい。確かに、道を通り過ぎる際に知りない人がキョロキョロしていたら不思議に思うだろう。
しかし、普段は冷静でクールな俺がキョロキョロしてしまうほどすごい光景なのだ。こればかりは仕方がない。
そうやって周りの景色を存分に堪能しながら着いたところは、真っ白なまるで歴史の教科書に出てくるようなお城だった。
「ほら、ここに精霊王がいるわ。あなたの契約精霊について何か知っているかもしてないから一応会いに行くけど、ダイキも行く?」
「……おれ、やっぱりいいや」
聡明な俺には分かる。ここはすごい人たちが住んでいるやつだ。つまり、少し無礼なことでもしたら首が飛ぶかもしれない。
中学で習った歴史なんて、なにかが起こるたびに人が首チョンパされてたんだ。俺は別に怖くないけど死ぬのは嫌だからね。別に怖くないけど。
「ふたりでいってきていいよ。おれ、ここであやしいひと、こないかみてる」
俺は胸を張ってそう言い放ち扉に背を向け仁王立ちになるが、即座にアクアに抱き上げられる。
「なにいってるのよ。あなたが行かなくて誰が行くの?ほら、そんなに躊躇ってないで出発よ!」
ズカズカとお城の中に入っていくアクアに、俺はヤバいと思いながら降ろしてとバタバタするが、全くといっていいほど効果がない。てゆうか気づいてさえくれない。
「精霊王!少しお話があります!」
そして奥の方に進むと見えてきた扉に手をかけ、豪快に開け放ったアクアは大きな声で中にいる人達にビシッと言い放った。
「ん?僕は今忙しいからあとにしてくれないか。こいつ等の対応で面倒くさいことになっ……たん……だ…!?」
「クロスー!」
俺は部屋の中にいたクロスを見つけた途端、アクアの腕の中からピョンと飛び降りて走り出した。
「なにやってたんだよ!おれをおいてきぼりにして……とってもさびし……しんぱいしたんだぞ!!」
クロスに駆け寄り腰辺りを本気で殴っていると、クロスが俺の頭をナデナデしながらご機嫌取りをしてくる。
「うんうん。僕もすごい会いたかった。でも、こいつ等が「人間ごときがこの街に入るなんぞ言語道断!」とか言っていたから遅れちゃったんだよ。ごめんね。あと……あー、そうだ!なんか腰が殴られていたくなってきちゃったー。やっぱり大輝って強いねー!」
どうやら本当に反省してるらしい。俺の強い殴りに耐えられなくなって心から謝罪しているに違いない。
それにしても俺がこんなにクロスを痛いと言わせられるほど凄いだなんて……これも異世界ということだからだろうか。
どうやら俺には戦闘の才能が眠っているのかもしれないな!
そう俺が自分の才能について思いを馳せている間にも話し合いは続いていた。
「に、人間じゃないか!アクア様!なぜここに連れてきたのですか!?」
「はあ?まさかここに連れてきちゃいけないとでも言うわけ?」
「勿論そうに決まっているではないですか!下賤な人間が我ら精霊の都に入れるだなんて間違っております!今すぐ追い出すべきです!」
俺を指差してそう叫ぶ精霊さんが怖くなり、俺はクロスの後ろに隠れた。
「大丈夫だよ主。追い出すなんてこと僕が許さないからね。それに……僕の主を怖がらせるなんて……死にたいのかな?」
あ、なんかクロスからヒヤヒヤしたものが出てきている気がする。
俺はササッとクロスから離れようとクロスの服の裾を掴んでいた手を離したら即座に掴まれる。
「主はここから離れないでね。こいつ等が主に何をするか分かったもんじゃないから」
そう穏やかな声音で言いながらクロスは掌をあの精霊さん達に向けた。そして多数の綺麗な魔法陣が形成される。
「お前たちは邪魔だし、これから主に手を出すかもしれない不穏分子なんて必要ないんだよ。だから……消えてくれるね?」
あ……クロスが本気で怒ってる。
俺はクロスと手を繋ぎながらもアワアワして冷や汗をかきはじめたのだった。
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