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第2章︙モスタニア連合国編
事前準備
しおりを挟む「……ア?………シア!皆!シアが目を覚ましたわ!」
光がだんだんと収まり、私が目を薄っすらと開けると、ウトウトしながら私を看病していたらしいセイズさんが、驚いたように目を見開き、直後、今まで聞いたこともないような声で叫んだ。
遠くの方からガタガタと音がして、一斉に部屋になだれ込んできた皆が私の様子を見て歓喜の声をあげる。
「目を覚ましてくれて本当に良かった。君が目を開けてくれないんじゃないかって皆がとても心配していたんだよ。生きててくれて本当に良かった」
「そうっすよ!シアさんが意識を失ってから、あのヒュノがセイズさんと図書室に籠もって目を覚ます方法を調べていたくらいですから……とにかく!目を覚ましてくれてありがとうっす!」
アロさんとシュノさんが私のことを心配してくれていた様子がありありと伝わってきて、不謹慎かもしれないけれど、私は嬉しい気持ちになった。
「そうなんですね……ヒュノさん、ありがとうございます」
私はヒュノさんの方を見てお礼を言うと、少しばかり照れた様子でコクリと頷いた。
「シアー!ほんとに無事で良かったよ!もう、ほんとに心配したんだよ!」
まだベッドから起き上がっていない私にガバッとアリスさんが抱き着いてくる。
セイズさんがすぐに離してくれたけど、二週間も動いていなくて筋力が落ちた体はうめき声を上げていた。
「本当に、ここまで心配してくださってありがとうございます。私が今生きているのも、皆さんのおかげですね」
私は上手く起き上がれない状態で、ペコリと頭を下げてお礼を言った。
「全然!シアこそ不可能と言われていたメディアの魔法から抜け出すなんて、本当に凄いわ!………でも、副団長が、シアを危険な目に合わせてしまったって思い詰めて……団長も慰めてあげてるんですけど一向に聞かなくて……」
そうなのか。
確かにサリアス副団長が私をダンジョンに連れて来たけれど、結局は私の決断だし、それにサリアス副団長が常に私の傍にいてくれていた。
いざとなったら守ってくれるためだんだんだろうけど、まさかメディアが死に際にあんな強力な攻撃を放つなんて誰にも予想できなかっただろう。
「そんなに気に病む必要はないと思いますよ」
「シアがそう思ってくれるのなら良いけれども……副団長はそうは思っていないのよ」
確かに、私のせいで大切な人が死にそうってなると
気に病む気持ちは分かる。
でも、正直私に死にそうという実感なんてあんまり無かったし、真っ白な空間で物凄く男前になったグリモワールと一緒に漂っていただけだった。
強いて言えば、暇で退屈だったことくらいである。
「……サリアス副団長を呼んできて貰えますか」
私は静かに目をつぶったままそう言うと、私の真剣な雰囲気を感じだったのか、皆が部屋から出ていった。
暫くして、アロさんがサリアス副団長を連れてきた。
部屋に入ってきたサリアス副団長は、少し疲労を感じられる。それに追い詰められたような顔をしていた。
「サリアス副団長……何故そんなに不安そうなんですか」
「…………」
「私は別にダンジョンに行ったことを後悔なんてしていません。むしろ、短期間でここまで強くしてくださって感謝しかないですね」
「でも、私は……」
少しうつむきながら弱々しく口を開いたサリアス副団長の言葉を私は遮った。
「大体、なんでそんなくだらないことで悩んでいるのですか。人がいつ死ぬかなんて誰にも分からないことでしょう。次の日には私は死んでいるかもしれないですし、そうでないかもしれません。未来は誰にもわからないんです。だから……サリアスさん。いつまでもない未来で自分を責めているなんて格好悪いですよ」
「格好いいとか格好悪いとか、そんな話じゃ…」
「そんな話?何を言っているんですか。もうすぐ総ギルド戦が開催されるにも関わらず、あなたは無駄に時間を過ごしている。ギルドの副団長としてやることがあるはずなのに……早くしっかりしてください。私は生きているんです。これでいいではありませんか」
起こり得なかった未来について悩む必要なんてない。私も、旅の始めはライオル王子と聖女様のことばっか考えては悲しい気持ちになった。
でも、もう私はフェリシアじゃない。中級冒険者のシアだ。
だから、フェリシアの悩み事なんて私は気にしない。
「……そうね。貴女が生きてくれたんですもの。貴女のことを祝福はすれどもこんなに暗い雰囲気にさせるなんて……本当に格好悪いわね」
そう言ったサリアス副団長は、いつもの冷静で綺麗な副団長だった。
「私は2週間も鍛錬をサボっていたんですよ。あと2週間、しっかりと面倒を見てくれないと今回のギルド戦は勝てないかもしれません」
私が冗談交じりにそう言うと、サリアス副団長は笑いながら私に手を差し伸べた。
私は手を掴んで起き上がろうとし、
「イタタッ!」
どうやら普通に戻るまでの道程は長そうである。
それから2週間。
私はリハビリと魔法の研鑽に時間を費やし、夜にはグリモワールから私のあの力について話を聞き、いつの間にかギルド戦当日になっていた。
「総ギルド戦の開幕を、ここに宣言します!」
広場の真ん中。人々が期待を胸に集まるなか、3大ギルドの団長であるクリシュ様がギルド戦の開幕を宣言する。
総ギルド戦が始まった。
…………………………………………………………
次話から総ギルド戦に入ります。
暫く続く予定です。これからが本番なので、楽しみにしてくれたら幸いです。
これからも宜しくお願いしますm(_ _)m
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