17 / 32
第2章︙モスタニア連合国編
私の秘密
しおりを挟む
扉を開けて中に入ると、内部は大きなホールのような場所だった。
そして天井には、恐ろしいほど大きな蜂の巣が鎮座している。
「クイーンビーですね。」
毎回ボスの魔物は変わるので、普通はどの魔物になるのかダンジョンの周期を把握しなければならないが、今回は急だったため把握することはできなかった。
クイーンビーは、本体にはそれほど戦闘能力はないけれど、周りのキラービーの数がとにかく尋常じゃないほど多い。
クイーンビーを討伐する方法は主に2つ。
広範囲殲滅魔法を発動しての討伐と、キラービーの目をすり抜けのクイーンビーの討伐である。
私にキラービーの目をすり抜けられるほどの魔法技術や身体能力があるわけがないので、今回は広範囲殲滅魔法でかたをつけようと思っている。
しかしこの戦法にも欠陥はあって、失敗したときに魔力残量の問題で負けてしまうことだ。
私の場合、魔力量は多くても、広範囲殲滅魔法を連発して大丈夫なわけが無いので、魔力量的に四回の魔法で必ず仕留めないといけないのだ。
「いくよ。」
魔法陣の構築、魔力放出をはじめ、素早く水属性の広範囲殲滅魔法を完成させる。
天井に向け、魔法陣に魔力を流し込んでいく。
「アイスフィールド」
一回目。
私が魔法を発動させると、天井一面が凍りついた。
しかしただ凍らせただけでは意味がないので、突破される前に次の魔法を構築していく。
「ウインドカッター」
二回目。
中級魔法であるウインドカッターを独自に改良して作った広範囲型ウインドカッター。
私が発動させた改良型ウインドカッターは、氷漬けにされていたキラービー達を容赦なく切り裂き、葬っていく。
そして生き残ったクイーンビーと数匹のキラービーに、私は最後の魔法を叩き込む。
「フレイムランス」
3回目。
火の槍が降り注ぎ、氷漬けから脱したクイーンビー達を容赦なく貫いていった。
十分後。私は倒れたクイーンビーの前に立ち、サリアスさんの方へ振り返った。
「……終わりました。」
「えぇ、疲れたでしょう。少し休みましょうか。」
私達はボス部屋の隅に座り、暫く黙って休んでいた。サリアスさんが魔法で火を起こし体を温めてくれる。
「よくここまで頑張ったわね。私も随分と厳しく貴方には教えてきたけれど、本当によくついてこれたわ。」
「……そうですよね。とても厳しかったです。」
「本当にね。………私はね、初めて貴方を視たときは驚いたわ。こんなに気配が強い人なんて数えるほどしか見てこなかったから。そして………とても寂しそうだった。」
「……………。」
「貴女はおそらく私達にまだ言えないこと、言ってないことがあるのでしょうけど、それが貴女を悲しませているのかなって思っていたわ。
………でも、そんなことも貴女がここに来てからは心配しなくなっていったわ。」
ここではないどこかを見つめているような表情で話しているサリアスさんは、静かに口を開く。
「もう大丈夫かなって思っていたけど……最近ダンジョンに潜るようになって、貴女がまた寂しそうな表情を見せるようになった。それがとても心配なの。……まるで何処かに行ってしまいそうで………」
そうポツポツと呟くサリアスさんは、心の底から私を心配していることが伺えた。
「………私、実はある婚約者がいたんです。小さい頃から仲が良くて……とても素敵な人でした。私が困ったり辛いときには一緒にいてくれて、とても心強かったです。………そして、愛しています。
でも、あの人が向けた今までの愛は、私のものに向けた愛じゃなかったんだって思うと、今でも悲しくなります。結局あの人は、私よりも別の人を選んだのですから。」
「………それで?」
優しく促してくれるサリアスさんに、私は段々と言葉が溢れ出ていった。
「だから……だからもう、嫌になったんです。結局耐えられなくて逃げました。私が今まで見てきたものは偽りだったのかと耐えられなくて……それで、このモスタニア連合国にきたんです。今では、これが良かったのかもしれませんね。」
私が声に出さずに微笑むと、サリアスさんが私の手を握って呟いた。
「凄いわね。一人で立ち上がることができたなんて。」
「え?」
「………いや、なんでもないわ。貴女が私達と出会ったのもあなたの選択よ。そしてそれも貴女の運命。私はあなたに出会えたことを嬉しく思うし、感謝しているわ。だから……これだけは忘れないでね。貴女のことを大切に思っている人もいるということを。」
私はハッとしたように顔を上げた。
どうして今まで気づかなかったんだろう、見てこなかったんだろう。
私の周りには仲間がいる。大切な人達がいる。
…もう、あのときの弱い私じゃないんだ。
「ありがとうございます。サリアスさん……いえ、サリアス副団長。そして、これからもよろしくお願いします。」
私は改めてサリアス副団長に頭を下げると、サリアス副団長は私の頭をなでた。
「いいのよ全然。こちらこそこれからもよろしくね。」
私達は立ち上がり進み始めた。
そして、ギルド戦で私は過去と向き合うことになる。
そして天井には、恐ろしいほど大きな蜂の巣が鎮座している。
「クイーンビーですね。」
毎回ボスの魔物は変わるので、普通はどの魔物になるのかダンジョンの周期を把握しなければならないが、今回は急だったため把握することはできなかった。
クイーンビーは、本体にはそれほど戦闘能力はないけれど、周りのキラービーの数がとにかく尋常じゃないほど多い。
クイーンビーを討伐する方法は主に2つ。
広範囲殲滅魔法を発動しての討伐と、キラービーの目をすり抜けのクイーンビーの討伐である。
私にキラービーの目をすり抜けられるほどの魔法技術や身体能力があるわけがないので、今回は広範囲殲滅魔法でかたをつけようと思っている。
しかしこの戦法にも欠陥はあって、失敗したときに魔力残量の問題で負けてしまうことだ。
私の場合、魔力量は多くても、広範囲殲滅魔法を連発して大丈夫なわけが無いので、魔力量的に四回の魔法で必ず仕留めないといけないのだ。
「いくよ。」
魔法陣の構築、魔力放出をはじめ、素早く水属性の広範囲殲滅魔法を完成させる。
天井に向け、魔法陣に魔力を流し込んでいく。
「アイスフィールド」
一回目。
私が魔法を発動させると、天井一面が凍りついた。
しかしただ凍らせただけでは意味がないので、突破される前に次の魔法を構築していく。
「ウインドカッター」
二回目。
中級魔法であるウインドカッターを独自に改良して作った広範囲型ウインドカッター。
私が発動させた改良型ウインドカッターは、氷漬けにされていたキラービー達を容赦なく切り裂き、葬っていく。
そして生き残ったクイーンビーと数匹のキラービーに、私は最後の魔法を叩き込む。
「フレイムランス」
3回目。
火の槍が降り注ぎ、氷漬けから脱したクイーンビー達を容赦なく貫いていった。
十分後。私は倒れたクイーンビーの前に立ち、サリアスさんの方へ振り返った。
「……終わりました。」
「えぇ、疲れたでしょう。少し休みましょうか。」
私達はボス部屋の隅に座り、暫く黙って休んでいた。サリアスさんが魔法で火を起こし体を温めてくれる。
「よくここまで頑張ったわね。私も随分と厳しく貴方には教えてきたけれど、本当によくついてこれたわ。」
「……そうですよね。とても厳しかったです。」
「本当にね。………私はね、初めて貴方を視たときは驚いたわ。こんなに気配が強い人なんて数えるほどしか見てこなかったから。そして………とても寂しそうだった。」
「……………。」
「貴女はおそらく私達にまだ言えないこと、言ってないことがあるのでしょうけど、それが貴女を悲しませているのかなって思っていたわ。
………でも、そんなことも貴女がここに来てからは心配しなくなっていったわ。」
ここではないどこかを見つめているような表情で話しているサリアスさんは、静かに口を開く。
「もう大丈夫かなって思っていたけど……最近ダンジョンに潜るようになって、貴女がまた寂しそうな表情を見せるようになった。それがとても心配なの。……まるで何処かに行ってしまいそうで………」
そうポツポツと呟くサリアスさんは、心の底から私を心配していることが伺えた。
「………私、実はある婚約者がいたんです。小さい頃から仲が良くて……とても素敵な人でした。私が困ったり辛いときには一緒にいてくれて、とても心強かったです。………そして、愛しています。
でも、あの人が向けた今までの愛は、私のものに向けた愛じゃなかったんだって思うと、今でも悲しくなります。結局あの人は、私よりも別の人を選んだのですから。」
「………それで?」
優しく促してくれるサリアスさんに、私は段々と言葉が溢れ出ていった。
「だから……だからもう、嫌になったんです。結局耐えられなくて逃げました。私が今まで見てきたものは偽りだったのかと耐えられなくて……それで、このモスタニア連合国にきたんです。今では、これが良かったのかもしれませんね。」
私が声に出さずに微笑むと、サリアスさんが私の手を握って呟いた。
「凄いわね。一人で立ち上がることができたなんて。」
「え?」
「………いや、なんでもないわ。貴女が私達と出会ったのもあなたの選択よ。そしてそれも貴女の運命。私はあなたに出会えたことを嬉しく思うし、感謝しているわ。だから……これだけは忘れないでね。貴女のことを大切に思っている人もいるということを。」
私はハッとしたように顔を上げた。
どうして今まで気づかなかったんだろう、見てこなかったんだろう。
私の周りには仲間がいる。大切な人達がいる。
…もう、あのときの弱い私じゃないんだ。
「ありがとうございます。サリアスさん……いえ、サリアス副団長。そして、これからもよろしくお願いします。」
私は改めてサリアス副団長に頭を下げると、サリアス副団長は私の頭をなでた。
「いいのよ全然。こちらこそこれからもよろしくね。」
私達は立ち上がり進み始めた。
そして、ギルド戦で私は過去と向き合うことになる。
975
お気に入りに追加
2,482
あなたにおすすめの小説
冤罪で殺された聖女、生まれ変わって自由に生きる
みおな
恋愛
聖女。
女神から選ばれし、世界にたった一人の存在。
本来なら、誰からも尊ばれ大切に扱われる存在である聖女ルディアは、婚約者である王太子から冤罪をかけられ処刑されてしまう。
愛し子の死に、女神はルディアの時間を巻き戻す。
記憶を持ったまま聖女認定の前に戻ったルディアは、聖女にならず自由に生きる道を選択する。
神のいとし子は追放された私でした〜異母妹を選んだ王太子様、今のお気持ちは如何ですか?〜
星里有乃
恋愛
「アメリアお姉様は、私達の幸せを考えて、自ら身を引いてくださいました」
「オレは……王太子としてではなく、一人の男としてアメリアの妹、聖女レティアへの真実の愛に目覚めたのだ!」
(レティアったら、何を血迷っているの……だって貴女本当は、霊感なんてこれっぽっちも無いじゃない!)
美貌の聖女レティアとは対照的に、とにかく目立たない姉のアメリア。しかし、地味に装っているアメリアこそが、この国の神のいとし子なのだが、悪魔と契約した妹レティアはついに姉を追放してしまう。
やがて、神のいとし子の祈りが届かなくなった国は災いが増え、聖女の力を隠さなくなったアメリアに救いの手を求めるが……。
* 2023年01月15日、連載完結しました。
* ヒロインアメリアの相手役が第1章は精霊ラルド、第2章からは隣国の王子アッシュに切り替わります。最終章に該当する黄昏の章で、それぞれの関係性を決着させています。お読みくださった読者様、ありがとうございました!
* 初期投稿ではショートショート作品の予定で始まった本作ですが、途中から長編版に路線を変更して完結させました。
* この作品は小説家になろうさんとアルファポリスさんに投稿しております。
* ブクマ、感想、ありがとうございます。

実は私が国を守っていたと知ってましたか? 知らない? それなら終わりです
サイコちゃん
恋愛
ノアは平民のため、地位の高い聖女候補達にいじめられていた。しかしノアは自分自身が聖女であることをすでに知っており、この国の運命は彼女の手に握られていた。ある時、ノアは聖女候補達が王子と関係を持っている場面を見てしまい、悲惨な暴行を受けそうになる。しかもその場にいた王子は見て見ぬ振りをした。その瞬間、ノアは国を捨てる決断をする――

〈完結〉毒を飲めと言われたので飲みました。
ごろごろみかん。
恋愛
王妃シャリゼは、稀代の毒婦、と呼ばれている。
国中から批判された嫌われ者の王妃が、やっと処刑された。
悪は倒れ、国には平和が戻る……はずだった。

妹に婚約者を奪われ、聖女の座まで譲れと言ってきたので潔く譲る事にしました。〜あなたに聖女が務まるといいですね?〜
雪島 由
恋愛
聖女として国を守ってきたマリア。
だが、突然妹ミアとともに現れた婚約者である第一王子に婚約を破棄され、ミアに聖女の座まで譲れと言われてしまう。
国を頑張って守ってきたことが馬鹿馬鹿しくなったマリアは潔くミアに聖女の座を譲って国を離れることを決意した。
「あ、そういえばミアの魔力量じゃ国を守護するの難しそうだけど……まぁなんとかするよね、きっと」
*この作品はなろうでも連載しています。

婚約破棄された私は、処刑台へ送られるそうです
秋月乃衣
恋愛
ある日システィーナは婚約者であるイデオンの王子クロードから、王宮敷地内に存在する聖堂へと呼び出される。
そこで聖女への非道な行いを咎められ、婚約破棄を言い渡された挙句投獄されることとなる。
いわれの無い罪を否定する機会すら与えられず、寒く冷たい牢の中で断頭台に登るその時を待つシスティーナだったが──
他サイト様でも掲載しております。
婚約破棄されて満足したので聖女辞めますね、神様【完結、以降おまけの日常編】
佐原香奈
恋愛
聖女は生まれる前から強い加護を持つ存在。
人々に加護を分け与え、神に祈りを捧げる忙しい日々を送っていた。
名ばかりの婚約者に毎朝祈りを捧げるのも仕事の一つだったが、いつものように訪れると婚約破棄を言い渡された。
婚約破棄をされて喜んだ聖女は、これ以上の加護を望むのは強欲だと聖女引退を決意する。
それから神の寵愛を無視し続ける聖女と、愛し子に無視される神に泣きつかれた神官長。
婚約破棄を言い出した婚約者はもちろんざまぁ。
だけどどうにかなっちゃうかも!?
誰もかれもがどうにもならない恋愛ストーリー。
作者は神官長推しだけど、お馬鹿な王子も嫌いではない。
王子が頑張れるのか頑張れないのか全ては未定。
勢いで描いたショートストーリー。
サイドストーリーで熱が入って、何故かドタバタ本格展開に!
以降は甘々おまけストーリーの予定だけど、どうなるかは未定

初夜に「君を愛するつもりはない」と夫から言われた妻のその後
澤谷弥(さわたに わたる)
ファンタジー
結婚式の日の夜。夫のイアンは妻のケイトに向かって「お前を愛するつもりはない」と言い放つ。
ケイトは知っていた。イアンには他に好きな女性がいるのだ。この結婚は家のため。そうわかっていたはずなのに――。
※短いお話です。
※恋愛要素が薄いのでファンタジーです。おまけ程度です。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる