公爵令嬢のRe.START

鮨海

文字の大きさ
上 下
16 / 32
第2章︙モスタニア連合国編

私の修行

しおりを挟む
総ギルド戦が2か月後に開催されることが決定。

世界各地の様々なギルドが期待し、準備を始めていくなか、私達オリポストギルドも出場のための準備に備えていた。

「前回の大会は僅差で負けてしまったものね。」

「次こそは勝ちたいですよね」

セイズさんとアロさんが穏やかに談笑している傍ら、シュノさんとアリスさんは声を上げて気合いを入れている。

「大丈夫よ!今年はシアがいるんだもの!絶対勝てるわ!!」

アリスさんがまるで確信したような表情でそんな事を言い始めたので、私は慌てて訂正した。

「アリスさん、無理ですよ!私なんてまだまだですよ!」

実際一度もサリアスさんの訓練を完璧に達成できていない私は、そんな戦力になるはずがないと言ったけれど、アリスさんはそんなはずはないと一向に聞いてくれない。

「まさか……副団長の訓練で自信を失くしちゃった?大丈夫よ。副団長の訓練はそもそも達成できるような訓練じゃないから。」

どういうことだと私が首を傾げると、隣にいたアロさんが親切に教えてくれた。

「サリアス副団長の訓練は、簡単に言うと上限がないんだよ。実力が上がれば上がるほどサリアス副団長も難易度を上げる仕様だから。それなのに9割は防げてる君はなかなかに凄いことなんだよ。」 

そうなのか。今まで気が付かなかったけど、サリアスさんって意外とスパルタなのかもしれない。

「とにかく団長と副団長はギルド戦に興味がないから私達で勝手に決めるとして……今一番必要なのは個人の訓練。つまり一人ひとりのスペックを上げることよ。」

「そうだね。まずは僕とセイズ、アリスとヒュノ達でチーム戦をやろうか。シアは僕が事前にサリアス副団長から訓練を言いつかってるから頑張ってね。」


何故だろう。皆私のことを不憫そうに見ている。

「うん。副団長は君のことを気に入ってるんだよ!良かったね!」

「え?あ、ありがとう?」

まあ頑張りなよと皆に応援されながらサリアスさんの部屋へ行くと、いつもはロングにしている髪を一つに縛って張り切った様子のサリアスさんが待ち構えていた。

「シア、貴女はアロから言われてもう知っているかもしれないけれど、私と特別訓練を受けてもらうわ。」

……特別訓練?

「あの、具体的に何をやるんですか?」

私が気になって質問すると、サリアスさんはいかにも楽しそうな様子で答えた。

「貴女と私でこれから一ヶ月程ダンジョンに潜ってもらって修業をするわよ。あ、勿論ギルドの仕事はセイズ一人でもできることだから心配ないわよ。それに私の仕事は我らが団長に献上してきたから。」

なにか嫌な予感がする。


「あの、私やっぱりやめよ……」

「大丈夫よ。私がいる限り命の危険はないから。それに貴女の防御魔法の精度は中級冒険者を遥かに上回る実力よ。じゃあ準備してきて頂戴。」

辞退しようとした私は結局サリアスさんと突如ダンジョン修行の為に連れてかれていった。


今回私達が向かったダンジョンは【楽園】。
高ランクに分布される【楽園】ダンジョンでは様々な魔物が生息していて、そのくせレアアイテムのドロップ、発見率が低くあまり人気ではないダンジョンの一つ。
毎回大量の魔物に遭遇しては切り抜けて進まないといけないため、最下層まで到達するのには困難を極める。
ダンジョン名が【楽園】になったのも、クリアする前に死んでしまうことのほうが多いからつけられた名前となっている。

……と、グリモワールが教えてくれた。

「じゃあ今から一ヶ月以内にこのダンジョンを制覇するわよ。あ、貴女の契約相手の力を直接借りることは禁止ね。」

そう宣言したサリアスさんを、私は呆然と見つめることしかできなかった。



ダンジョン1日目。
私が想像してたのを遥かに超える魔物の大群がやってきた。
私は早速心が折れそうになったけれど、サリアスさんが一人で防御魔法を展開し私を放りだしたせいで嫌でも戦うことになってしまった。
防御魔法を展開しながら拙い魔法操作で攻撃魔法を発動していったけれど、勿論魔力効率が悪く魔力切れを起こしてしまった。
意識を失った後、サリアスさんが私を助けてくれたらしく、「明日も頑張りましょう。」と笑顔で言われてまたもや気を失いそうになった。


ダンジョン3日目。
死物狂いでやったおかげか、攻撃魔法を安定して発動できるようになってきた。
まだダンジョンに入って一歩も進めてはいないけど、魔力切れで倒れることはなくなった。
自分の実力が上達していることは分かるけど、本当に一ヶ月以内にこのダンジョンをクリアできるのだろうか?
まあ、地道に頑張るしか道はなさそうだ。


ダンジョン5日目。
少しずつだけど進めるようになった。
もう攻撃魔法は大体安定して撃てるようになった。
今いる場所を維持するだけならば大分余裕が出てくるので、今日は進むのをやめてグリモワールに他の攻撃魔法を教えてもらうことにする。
進めば進むほど魔物のランクも上がっていくので、今のうちに自分の手札を増やしといたほうが賢明だろう。


ダンジョン10日目。
5日間魔法の修得に費やした。グリモワールの分かりやすい説明に加えて、サリアスさんが時々アドバイスしてくれる。何よりこの極限状態にいるおかげかすぐに習得することが出来た。
私は基本属性である7大属性の魔法をほぼ網羅したので、暫くは以前より楽に進むことができるだろう。
これからは7大属性をアレンジしてより効率が良い魔法を編み出していきたい。


ダンジョン15日目。

「予定より早く着いたわね。」


私達はこのダンジョンの第一関門、中間地点のボス部屋の前にいた。


「入るわよ、準備はいいかしら?」


私はコクリと頷いて、扉に魔力を流した。魔法陣が浮かび上がりドアが開いていく。

「さあ、始まるわよ。」


私の戦いが幕を開ける。


しおりを挟む
感想 25

あなたにおすすめの小説

冤罪で殺された聖女、生まれ変わって自由に生きる

みおな
恋愛
聖女。 女神から選ばれし、世界にたった一人の存在。 本来なら、誰からも尊ばれ大切に扱われる存在である聖女ルディアは、婚約者である王太子から冤罪をかけられ処刑されてしまう。 愛し子の死に、女神はルディアの時間を巻き戻す。 記憶を持ったまま聖女認定の前に戻ったルディアは、聖女にならず自由に生きる道を選択する。

【完結】聖女にはなりません。平凡に生きます!

暮田呉子
ファンタジー
この世界で、ただ平凡に、自由に、人生を謳歌したい! 政略結婚から三年──。夫に見向きもされず、屋敷の中で虐げられてきたマリアーナは夫の子を身籠ったという女性に水を掛けられて前世を思い出す。そうだ、前世は慎ましくも充実した人生を送った。それなら現世も平凡で幸せな人生を送ろう、と強く決意するのだった。

婚約破棄された上に国外追放された聖女はチート級冒険者として生きていきます~私を追放した王国が大変なことになっている?へぇ、そうですか~

夏芽空
ファンタジー
無茶な仕事量を押し付けられる日々に、聖女マリアはすっかり嫌気が指していた。 「聖女なんてやってられないわよ!」 勢いで聖女の杖を叩きつけるが、跳ね返ってきた杖の先端がマリアの顎にクリーンヒット。 そのまま意識を失う。 意識を失ったマリアは、暗闇の中で前世の記憶を思い出した。 そのことがきっかけで、マリアは強い相手との戦いを望むようになる。 そしてさらには、チート級の力を手に入れる。 目を覚ましたマリアは、婚約者である第一王子から婚約破棄&国外追放を命じられた。 その言葉に、マリアは大歓喜。 (国外追放されれば、聖女という辛いだけの役目から解放されるわ!) そんな訳で、大はしゃぎで国を出ていくのだった。 外の世界で冒険者という存在を知ったマリアは、『強い相手と戦いたい』という前世の自分の願いを叶えるべく自らも冒険者となり、チート級の力を使って、順調にのし上がっていく。 一方、マリアを追放した王国は、その軽率な行いのせいで異常事態が発生していた……。

異世界に落ちたら若返りました。

アマネ
ファンタジー
榊原 チヨ、87歳。 夫との2人暮らし。 何の変化もないけど、ゆっくりとした心安らぐ時間。 そんな普通の幸せが側にあるような生活を送ってきたのにーーー 気がついたら知らない場所!? しかもなんかやたらと若返ってない!? なんで!? そんなおばあちゃんのお話です。 更新は出来れば毎日したいのですが、物語の時間は割とゆっくり進むかもしれません。

【完結】『飯炊き女』と呼ばれている騎士団の寮母ですが、実は最高位の聖女です

葉桜鹿乃
恋愛
ルーシーが『飯炊き女』と、呼ばれてそろそろ3年が経とうとしている。 王宮内に兵舎がある王立騎士団【鷹の爪】の寮母を担っているルーシー。 孤児院の出で、働き口を探してここに配置された事になっているが、実はこの国の最も高貴な存在とされる『金剛の聖女』である。 王宮という国で一番安全な場所で、更には周囲に常に複数人の騎士が控えている場所に、本人と王族、宰相が話し合って所属することになったものの、存在を秘する為に扱いは『飯炊き女』である。 働くのは苦では無いし、顔を隠すための不細工な丸眼鏡にソバカスと眉を太くする化粧、粗末な服。これを襲いに来るような輩は男所帯の騎士団にも居ないし、聖女の力で存在感を常に薄めるようにしている。 何故このような擬態をしているかというと、隣国から聖女を狙って何者かが間者として侵入していると言われているためだ。 隣国は既に瘴気で汚れた土地が多くなり、作物もまともに育たないと聞いて、ルーシーはしばらく隣国に行ってもいいと思っているのだが、長く冷戦状態にある隣国に行かせるのは命が危ないのでは、と躊躇いを見せる国王たちをルーシーは説得する教養もなく……。 そんな折、ある日の月夜に、明日の雨を予見して変装をせずに水汲みをしている時に「見つけた」と言われて振り向いたそこにいたのは、騎士団の中でもルーシーに優しい一人の騎士だった。 ※感想の取り扱いは近況ボードを参照してください。 ※小説家になろう様でも掲載予定です。

婚約破棄されて満足したので聖女辞めますね、神様【完結、以降おまけの日常編】

佐原香奈
恋愛
聖女は生まれる前から強い加護を持つ存在。 人々に加護を分け与え、神に祈りを捧げる忙しい日々を送っていた。 名ばかりの婚約者に毎朝祈りを捧げるのも仕事の一つだったが、いつものように訪れると婚約破棄を言い渡された。 婚約破棄をされて喜んだ聖女は、これ以上の加護を望むのは強欲だと聖女引退を決意する。 それから神の寵愛を無視し続ける聖女と、愛し子に無視される神に泣きつかれた神官長。 婚約破棄を言い出した婚約者はもちろんざまぁ。 だけどどうにかなっちゃうかも!? 誰もかれもがどうにもならない恋愛ストーリー。 作者は神官長推しだけど、お馬鹿な王子も嫌いではない。 王子が頑張れるのか頑張れないのか全ては未定。 勢いで描いたショートストーリー。 サイドストーリーで熱が入って、何故かドタバタ本格展開に! 以降は甘々おまけストーリーの予定だけど、どうなるかは未定

妹に婚約者を奪われ、聖女の座まで譲れと言ってきたので潔く譲る事にしました。〜あなたに聖女が務まるといいですね?〜

雪島 由
恋愛
聖女として国を守ってきたマリア。 だが、突然妹ミアとともに現れた婚約者である第一王子に婚約を破棄され、ミアに聖女の座まで譲れと言われてしまう。 国を頑張って守ってきたことが馬鹿馬鹿しくなったマリアは潔くミアに聖女の座を譲って国を離れることを決意した。 「あ、そういえばミアの魔力量じゃ国を守護するの難しそうだけど……まぁなんとかするよね、きっと」 *この作品はなろうでも連載しています。

私は聖女(ヒロイン)のおまけ

音無砂月
ファンタジー
ある日突然、異世界に召喚された二人の少女 100年前、異世界に召喚された聖女の手によって魔王を封印し、アルガシュカル国の危機は救われたが100年経った今、再び魔王の封印が解かれかけている。その為に呼ばれた二人の少女 しかし、聖女は一人。聖女と同じ色彩を持つヒナコ・ハヤカワを聖女候補として考えるアルガシュカルだが念のため、ミズキ・カナエも聖女として扱う。内気で何も自分で決められないヒナコを支えながらミズキは何とか元の世界に帰れないか方法を探す。

処理中です...