公爵令嬢のRe.START

鮨海

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第2章︙モスタニア連合国編

中級冒険者シア2

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お気に入り二千突破!!本当にありがとうございます!!
近々登場人物に細々とした物語設定を書いたやつを載せたいと思います。気になったりすることがあったら気軽にご連絡を!

………………………………………………………


「……………え?……………それはちょっと………」

初対面の人にそんな提案をされたら誰だって怪しむに決まってるでしょう。
私が助けてくれた恩人だと思っていた人から少しずつ距離をとっていくと、男性は慌てたように離れようとする私を引き止めてきた。

「誤解だ誤解!何を勘違いしているのか知らんが俺は妻帯者だ!………だからそんな不審者を見るような目で見るなって!」

薬指に嵌めてある指輪を私に見せてきたその男性に、妻帯者という話は嘘ではないようだとと安心した私は、男性を注意深く見つめながら返事をする。

「……………いえ、私を助けてくださった恩人を不審者を見るような目なんて私がするわけないじゃないですか。…ですが…………何故私にそんな提案を?」


突然うちに来ないかと言われて、素直に頷くなんて年端のいかない子供くらいですよ。
私がそう言うと、男性はまた私をじっと見つめながら静かに口を開いた。

「……………俺はお前から物凄い気配を感じるんだが。それもよくよく見ないとわからない程に巧妙に隠されている。……………それに、お前のその【眼】…………相当やばいものだろ。」

「…………………ちょっと何を言っているのか分かりませんね。」

また意味のわかんないことを言い出したこの男性に、私は内心冷や汗をかきながらも表情には出さず言葉を返す。
……………流石に物凄い気配……………もしやグリモワールのことじゃないでしょうね。
本人が別にそんなに凄い悪魔じゃないって言っていたから、物凄い気配なんてするはずがない。ないはずだ。
それに目がなんとかとか言ってたけどそれはどうでもいい。私にも心当たりはない。

そんなことより物凄い気配なんて……………これはもうグリモワールが嘘をついたか、この男性の単なる妄想話か。
この男性の妄想であってくれと願っていた私だけど、やはり現実は甘くなかった。 

「……………なんか魔力じゃない気配……………もっと古代の力の気配がするんだよな。今までそんな奴一人しか見たことないからな。……………それで興味が湧いたんだ。」

………………………これ、絶対にグリモワールね。今まで気配がどうのこうのなんて言われなかったのに、今になってバレそうになるとは思わなかった。

「……………えぇ、私は……………とある者と契約魔法を結びました。ですが物凄い気配がするなんて言われたことは一度もありませんでしたよ。貴方は何者ですか?」

私はグリモワールが封印されていたボロボロの本を取り出しながら小さな声で白状すると、何故気づいたのか質問した。 

「俺はただのおっさんだぞ。ちょっとばかし腕っ節が強いだけの正真正銘人間だ。それにお前、道に迷ってんだろ。俺が人のいるところまで案内してやるから。俺はアレス。宜しくな。」

そういった男性は立ち上がると、私について来いと手を振った。


「……………分かりました。宜しくお願いします。アレスさん」

私はどうやら人のいるところまで案内してくれるらしいアレスさんに頭を下げてお礼を言ったのだった。




「あの……………………………ここは?」

綺麗な外観の大きな建物の前に連れてこられた私に、アレスさんが入れと手で合図してくる。

「ここは冒険者ギルドだ。一応ここには宿や食堂もあるしお前にピッタリの場だと思って連れてきた。お前、どうせ迷ってたから今日の宿もとってないんだろう。もうほとんどの宿が埋まっているからここしか空いとらんと思うぞ。」


確かにもう日が沈む頃だ。宿もほとんど埋まっている可能性が高いだろう。

「おかえりなさい、マスター!全くどこ行ってたんですか!サブマスターがお冠でしたよ!」

私とアレスさんが話していると、慌てたように素早く駆けつけてきた男の人がアレスさんに早口で喋り始めた。

「……………そうか。分かった。俺はちょっと用事があるから仕事に戻っていいぞ。」

チラチラと私の方を見ながら去っていった男の人を尻目に、アレスさんは私を二階の方へ連れて行く。

「……………サリー。入るぞ。」

ノックしてから入っていったアレスさんに、私は恐る恐るついていくと、美しい女性が椅子に座ってアレスさんをじっと見つめていた。

「また仕事をサボってフラフラしていたわね。」

静かに喋りだした女性に前に、アレスさんは見るからに焦った様子で弁明をしている。

「べ、別にサボっていたわけじゃ…………俺はただ少し息抜きをしようとしただけで…………それにほら!サリーに見てもらいたい人がいるんだ!」

そう言って私を押し出したアレスさんは、私に頑張れよと手を振ってきた。
……………やられた。巻き込まれたわ。

私は予想外の事態に驚いて硬直していると、サリーと呼ばれていた女性は私を見つめながら驚いたように口を開いた。


「まさか……………………原初契約者?」






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