21 / 40
おいかけて、マグロ丼
おいかけて、マグロ丼編11
しおりを挟む
夜中、ふっと目が覚めた。少し、喉が渇いたのか?トイレなのか?覚醒し始めた身体を起こして、両方の欲求を満たすため、とりあえず、トイレに行き、キッチンへ水を飲みに向かった。
冷蔵庫を開けて水を取ると、階段を降りる足音が聞こえる。
姉さんだろうか?
そう考えていると、キッチンのドアが開いた。
あっ、大森さんだ。
「大森さん。どうしたんですか?」
トイレでは無いのは分かっている。二階にもトイレはあるし。わざわざ降りてくる必要はない。
「喉が渇いてしまって……。お水を頂けませんか?」
あ~。なるほど。お酒を飲んだ後とか喉が渇いたりするみたいだしね。遠慮しないで、飲んでくれていいのに……。
大森さんに椅子に座るようにすすめ、コップに水を注ぐ。そして、僕もコップを大森さんに渡して、対面側の椅子に座る。
「……ありがとうございます。」
大森さんは、いい飲みっぷりで水を飲み干す。
「もう一杯どうですか?」
「すみません。……いただきます。」
二杯目の水を少し飲んだところで、大森さんが口を開いた。
「すみませんでした。今日は、いっぱいご迷惑をおかけして……。」
大森さんは申し訳なさそうに、頭を下げる。
いや、謝るのはこっちの方だろう。お酒まで誘惑して飲ませ、ちゃんと寝れているのかも不安だ。
「いえ。こちらこそ、ご迷惑をおかけして……。ちゃんと姉さんの部屋で寝れていますか?」
「はい。お布団も引いていただいて……。さっきまでは、ぐっすりと言って良いほど寝れました。」
良かった。遅くまで姉さんが付き合わせていたかもしれないけど、ぐっすり寝れていたなら、それにこしたことはない。
「頭は痛くありませんか?」
あれほどの量のお酒を二人で飲んだのだから、頭も痛くなってないか心配だ。そう思い、冷蔵庫からウコンドリンクを取る。
飲む前に飲む、飲んだ後も飲む?だっけ??忘れたけれど……。
それを僕は大森さんに差し出した。
「あっ。ありがとうございます。」
大森さんはそれを受け取り飲んで言った。
「マスターや愛奈さん、お店に来店されるご近所の方、みんな、お優しいですよね……。」
僕や姉さんが優しいかは分からない。でも、近所の人はみんな優しい。困った事があれば助け合い、悲しい事があったら慰めてくれる。僕達、姉弟も随分と助けられた。
「近所の方々は優しいです。僕達も随分と助けられています。大森さんも、僕はお優しいと思います。」
大森さんは目を見開いてこちらを見たかと思ったら、俯いた。
『私、優しくなんかありません。』
そして、何かを言ったように聞こえたが、僕には上手く聞き取れなかった。
少しの時間、沈黙が流れる。
「マスターの好きな食べ物って何ですか?」
大森さんが、ポツリと口を開いた。
好きな食べ物……。久しぶりに聞かれた質問だった。
もう、思い出の食べ物になってしまった。好きな食べ物……。幼い頃に、誕生日によく母が作ってくれた、クリームコロッケ。それが僕の大好物だった。
「……クリームコロッケ。ですかね……。」
僕は曖昧に答えた。
「クリームコロッケ?ですか??」
「はい。クリームコロッケです。カニクリームでもコーンクリームでも……。クリームコロッケが大好きです。」
僕の今度はハッキリとした答えに大森さんはクスリと笑って言った。
「マスター。何か可愛いですね。」
大森さんにそう言われ、僕は顔が赤くなるのが分かった。それを、はぐらかすように笑い。
「僕。そろそら寝ますね。コップはそのまま置いといて大丈夫ですよ。」
そう言い。僕は席を立った。
「ありがとうございます。私も愛奈さんの部屋へ戻って寝ますね。……マスター。おやすみなさい。」
大森さんは微笑んでいた。
「大森さんも、おやすみなさい。」
僕は嬉しくなった。姉さん以外、久しぶりに『おやすみなさい』を聞けたし言えた。ただ、それだけ。でも、嬉しかった。
冷蔵庫を開けて水を取ると、階段を降りる足音が聞こえる。
姉さんだろうか?
そう考えていると、キッチンのドアが開いた。
あっ、大森さんだ。
「大森さん。どうしたんですか?」
トイレでは無いのは分かっている。二階にもトイレはあるし。わざわざ降りてくる必要はない。
「喉が渇いてしまって……。お水を頂けませんか?」
あ~。なるほど。お酒を飲んだ後とか喉が渇いたりするみたいだしね。遠慮しないで、飲んでくれていいのに……。
大森さんに椅子に座るようにすすめ、コップに水を注ぐ。そして、僕もコップを大森さんに渡して、対面側の椅子に座る。
「……ありがとうございます。」
大森さんは、いい飲みっぷりで水を飲み干す。
「もう一杯どうですか?」
「すみません。……いただきます。」
二杯目の水を少し飲んだところで、大森さんが口を開いた。
「すみませんでした。今日は、いっぱいご迷惑をおかけして……。」
大森さんは申し訳なさそうに、頭を下げる。
いや、謝るのはこっちの方だろう。お酒まで誘惑して飲ませ、ちゃんと寝れているのかも不安だ。
「いえ。こちらこそ、ご迷惑をおかけして……。ちゃんと姉さんの部屋で寝れていますか?」
「はい。お布団も引いていただいて……。さっきまでは、ぐっすりと言って良いほど寝れました。」
良かった。遅くまで姉さんが付き合わせていたかもしれないけど、ぐっすり寝れていたなら、それにこしたことはない。
「頭は痛くありませんか?」
あれほどの量のお酒を二人で飲んだのだから、頭も痛くなってないか心配だ。そう思い、冷蔵庫からウコンドリンクを取る。
飲む前に飲む、飲んだ後も飲む?だっけ??忘れたけれど……。
それを僕は大森さんに差し出した。
「あっ。ありがとうございます。」
大森さんはそれを受け取り飲んで言った。
「マスターや愛奈さん、お店に来店されるご近所の方、みんな、お優しいですよね……。」
僕や姉さんが優しいかは分からない。でも、近所の人はみんな優しい。困った事があれば助け合い、悲しい事があったら慰めてくれる。僕達、姉弟も随分と助けられた。
「近所の方々は優しいです。僕達も随分と助けられています。大森さんも、僕はお優しいと思います。」
大森さんは目を見開いてこちらを見たかと思ったら、俯いた。
『私、優しくなんかありません。』
そして、何かを言ったように聞こえたが、僕には上手く聞き取れなかった。
少しの時間、沈黙が流れる。
「マスターの好きな食べ物って何ですか?」
大森さんが、ポツリと口を開いた。
好きな食べ物……。久しぶりに聞かれた質問だった。
もう、思い出の食べ物になってしまった。好きな食べ物……。幼い頃に、誕生日によく母が作ってくれた、クリームコロッケ。それが僕の大好物だった。
「……クリームコロッケ。ですかね……。」
僕は曖昧に答えた。
「クリームコロッケ?ですか??」
「はい。クリームコロッケです。カニクリームでもコーンクリームでも……。クリームコロッケが大好きです。」
僕の今度はハッキリとした答えに大森さんはクスリと笑って言った。
「マスター。何か可愛いですね。」
大森さんにそう言われ、僕は顔が赤くなるのが分かった。それを、はぐらかすように笑い。
「僕。そろそら寝ますね。コップはそのまま置いといて大丈夫ですよ。」
そう言い。僕は席を立った。
「ありがとうございます。私も愛奈さんの部屋へ戻って寝ますね。……マスター。おやすみなさい。」
大森さんは微笑んでいた。
「大森さんも、おやすみなさい。」
僕は嬉しくなった。姉さん以外、久しぶりに『おやすみなさい』を聞けたし言えた。ただ、それだけ。でも、嬉しかった。
0
お気に入りに追加
15
あなたにおすすめの小説
快適に住めそうだわ!家の中にズカズカ入ってきた夫の浮気相手が家に住むと言い出した!私を倒して…
白崎アイド
大衆娯楽
玄関を開けると夫の浮気相手がアタッシュケースを持って立っていた。
部屋の中にズカズカ入ってくると、部屋の中を物色。
物色した後、えらく部屋を気に入った女は「快適ね」と笑顔を見せて、ここに住むといいだして…
ああ、本気さ!19歳も年が離れている会社の女子社員と浮気する旦那はいつまでもロマンチストで嫌になる…
白崎アイド
大衆娯楽
19歳も年の差のある会社の女子社員と浮気をしている旦那。
娘ほど離れているその浮気相手への本気度を聞いてみると、かなり本気だと言う。
なら、私は消えてさしあげましょう…
今ここで認知しなさいよ!妊娠8ヶ月の大きなお腹を抱えて私に子供の認知を迫る浮気相手の女が怖い!違和感を感じるので張り込むと…
白崎アイド
大衆娯楽
妊娠8ヶ月という大きなお腹を抱えて、浮気相手が家に来て「認知してよ」と迫ってきた。
その目つきは本気で、私はショックと恐怖で後ずさりをする。
すると妊婦は家族の写真立てを床に投げつけ、激しく「認知しろ!」と叫ぶのだった…
ママと中学生の僕
キムラエス
大衆娯楽
「ママと僕」は、中学生編、高校生編、大学生編の3部作で、本編は中学生編になります。ママは子供の時に両親を事故で亡くしており、結婚後に夫を病気で失い、身内として残された僕に精神的に依存をするようになる。幼少期の「僕」はそのママの依存が嬉しく、素敵なママに甘える閉鎖的な生活を当たり前のことと考える。成長し、性に目覚め始めた中学生の「僕」は自分の性もママとの日常の中で処理すべきものと疑わず、ママも戸惑いながらもママに甘える「僕」に満足する。ママも僕もそうした行為が少なからず社会規範に反していることは理解しているが、ママとの甘美な繋がりは解消できずに戸惑いながらも続く「ママと中学生の僕」の営みを描いてみました。
小学生最後の夏休みに近所に住む2つ上のお姉さんとお風呂に入った話
矢木羽研
青春
「……もしよかったら先輩もご一緒に、どうですか?」
「あら、いいのかしら」
夕食を作りに来てくれた近所のお姉さんを冗談のつもりでお風呂に誘ったら……?
微笑ましくも甘酸っぱい、ひと夏の思い出。
※性的なシーンはありませんが裸体描写があるのでR15にしています。
※小説家になろうでも同内容で投稿しています。
※2022年8月の「第5回ほっこり・じんわり大賞」にエントリーしていました。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる