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最終章 釣りっていいもんだぁ~
釣りっていいもんだぁ~10
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三年後。
私は大学を卒業して、故郷の北海道に帰る事もなく、大都市の病院に看護婦として働くでもなく、熊本にそのままとどまり、なんとか看護婦として働いている。
ユウちゃんもそのまま、熊本の病院で看護婦として働き、フーコさんは近くの介護施設で働いていた。
そして、今日は久しぶりに三人で会える日。
私達は海にいた。正確には船の上。
「はい!いいですよ~。」
私は二人に声を掛ける。そう、私は小型船舶免許を取得した。そして、今日は船をレンタルして沖に釣りへとやってきたのだ。
「いや~。やっぱり、海はいいね。」
「そうですね~。」
フーコさんとユウちゃんは仕掛けを落とす。
穏やかな潮風が私達の頬をかすめる。やっぱり、こうしていると日頃の疲れがとれるような気がするなぁ~。うんうん。やっぱり、釣りっていいもんだぁ~。
私がそんな事を思いながら、仕掛けを海底まで落としていると。
「お!早速きたよ!!」
フーコさんの声で船上は活気づく。どうやら、今日のおつまみは確保出来そうだ。
釣りも終わり、私達は魚んちゅ~へ向かった。
まだ開店には早い時間。クーラーボックスを肩に掛け、行き慣れた裏口へと向かう。懐かしい……いや、そんな感覚は余り無かった。アルバイトを辞めてからも足繁く通っているので感傷に浸るとか、感慨深いとか、そういうのは無縁だ。
「お疲れ様で~す。」
私達はそう言いドアを開ける。
「おう!おかえり~。」
「おかえりなさ~い。」
大将にハルカさんは「いらっしゃい。」ではなく、何時も「おかえり。」と言って迎えてくれる。もう、このお店は私の第二の実家と言っても言いようなくらいに落ち着ける場所になっていた。
フーコさんの代わりにハルカさんが厨房に立ち、新しいアルバイトの子が三人が接客を担当している。
「お!よかとの釣れたばいね!!」
大将はクーラーボックスを開けて中を見てそう言う。
「あら、本当だ~。美味しそうね~。今日も後から来るんでしょ?どうしたら良いかしら?お魚??お刺身?それとも……。」
ハルカさんもクーラーボックスを覗き込みながらそう言う。
見慣れた風景。
夜にまた訪れた時は、シゲルさんやミチナガさんにお店で会うのかもしれない。
今は当たり前になった日常。私はそれを大事にしていこうと思った。これから様々な事が起こるだろう。色々なチャレンジも重ねるだろう。きっと、多くの失敗をするだろう。その度、心に傷ができ、折れる事もあるだろう。それでも、きっとここへ戻ってくれば傷も次第に癒え、折れた心も新しく強くなっていくだろう。そんなぬくもりがある。私にはそう思えた。あ、結局は感傷に浸っているのかな?
「ほら、アヤカ。ボーっとしてないで温泉に行くんでしょ?」
「そうそう。そんな、お魚臭いんじゃ、いい男の人も寄って来ないよ?」
私がそう思っていると、フーコさんとユウちゃんは口々にそう言う。
「なによぅ?ユウちゃんも同じなんじゃないの??お魚臭いよ~?それに、彼氏いないじゃん。」
「ふふふ。それはどうでしょう??」
私の言葉を聞いて、ユウちゃんはどこか挑発するような勝ち誇ったような笑みを浮かべ私を見る。
え?まさか!?
私はそう思い、フーコさんに目をやる。
「あれ?アヤカ。ユウから聞いてないの??」
フーコさんは少し驚いたふうに言う。
え?!ええ~!?まさか!!
ユウちゃんはフーコさんにシ~っと言わんばかりに人差し指で合図を送り言う。フーコさんはそれに納得したように頷いて答えた。
「ほら、フーコさん。早く温泉、行きましょう。」
「そうだね。急ごっか。」
ユウちゃんとフーコさんそう言い、勢いよくお店から出て行った。
え~~~!ちょっと待ってよ~。二人とも~!!
私は二人を追い掛けた。
心安らげる場所だって思っていたのは私だけ?!かけがえのない人達だと思っていたのは私だけ?!
ええ~!?ちょっと~~!!!
完
私は大学を卒業して、故郷の北海道に帰る事もなく、大都市の病院に看護婦として働くでもなく、熊本にそのままとどまり、なんとか看護婦として働いている。
ユウちゃんもそのまま、熊本の病院で看護婦として働き、フーコさんは近くの介護施設で働いていた。
そして、今日は久しぶりに三人で会える日。
私達は海にいた。正確には船の上。
「はい!いいですよ~。」
私は二人に声を掛ける。そう、私は小型船舶免許を取得した。そして、今日は船をレンタルして沖に釣りへとやってきたのだ。
「いや~。やっぱり、海はいいね。」
「そうですね~。」
フーコさんとユウちゃんは仕掛けを落とす。
穏やかな潮風が私達の頬をかすめる。やっぱり、こうしていると日頃の疲れがとれるような気がするなぁ~。うんうん。やっぱり、釣りっていいもんだぁ~。
私がそんな事を思いながら、仕掛けを海底まで落としていると。
「お!早速きたよ!!」
フーコさんの声で船上は活気づく。どうやら、今日のおつまみは確保出来そうだ。
釣りも終わり、私達は魚んちゅ~へ向かった。
まだ開店には早い時間。クーラーボックスを肩に掛け、行き慣れた裏口へと向かう。懐かしい……いや、そんな感覚は余り無かった。アルバイトを辞めてからも足繁く通っているので感傷に浸るとか、感慨深いとか、そういうのは無縁だ。
「お疲れ様で~す。」
私達はそう言いドアを開ける。
「おう!おかえり~。」
「おかえりなさ~い。」
大将にハルカさんは「いらっしゃい。」ではなく、何時も「おかえり。」と言って迎えてくれる。もう、このお店は私の第二の実家と言っても言いようなくらいに落ち着ける場所になっていた。
フーコさんの代わりにハルカさんが厨房に立ち、新しいアルバイトの子が三人が接客を担当している。
「お!よかとの釣れたばいね!!」
大将はクーラーボックスを開けて中を見てそう言う。
「あら、本当だ~。美味しそうね~。今日も後から来るんでしょ?どうしたら良いかしら?お魚??お刺身?それとも……。」
ハルカさんもクーラーボックスを覗き込みながらそう言う。
見慣れた風景。
夜にまた訪れた時は、シゲルさんやミチナガさんにお店で会うのかもしれない。
今は当たり前になった日常。私はそれを大事にしていこうと思った。これから様々な事が起こるだろう。色々なチャレンジも重ねるだろう。きっと、多くの失敗をするだろう。その度、心に傷ができ、折れる事もあるだろう。それでも、きっとここへ戻ってくれば傷も次第に癒え、折れた心も新しく強くなっていくだろう。そんなぬくもりがある。私にはそう思えた。あ、結局は感傷に浸っているのかな?
「ほら、アヤカ。ボーっとしてないで温泉に行くんでしょ?」
「そうそう。そんな、お魚臭いんじゃ、いい男の人も寄って来ないよ?」
私がそう思っていると、フーコさんとユウちゃんは口々にそう言う。
「なによぅ?ユウちゃんも同じなんじゃないの??お魚臭いよ~?それに、彼氏いないじゃん。」
「ふふふ。それはどうでしょう??」
私の言葉を聞いて、ユウちゃんはどこか挑発するような勝ち誇ったような笑みを浮かべ私を見る。
え?まさか!?
私はそう思い、フーコさんに目をやる。
「あれ?アヤカ。ユウから聞いてないの??」
フーコさんは少し驚いたふうに言う。
え?!ええ~!?まさか!!
ユウちゃんはフーコさんにシ~っと言わんばかりに人差し指で合図を送り言う。フーコさんはそれに納得したように頷いて答えた。
「ほら、フーコさん。早く温泉、行きましょう。」
「そうだね。急ごっか。」
ユウちゃんとフーコさんそう言い、勢いよくお店から出て行った。
え~~~!ちょっと待ってよ~。二人とも~!!
私は二人を追い掛けた。
心安らげる場所だって思っていたのは私だけ?!かけがえのない人達だと思っていたのは私だけ?!
ええ~!?ちょっと~~!!!
完
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