キミを抱いて……

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旅立ち

旅立ち1

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 夕刻。
 影が消えてしまいそうな暗さの中、四本の刃は光を集約したように光っていた。
 その刃は揺らめき、疾風の如く駆け巡り、火花を散らす。
 一人は成長した青年へ、一人は老いを知らない不変のままで対峙している。
 それはソーマとギルバートだった。
 ギルバートの空間を切り裂くような鋭い一撃がソーマを襲う。
 ソーマがそれをギリギリのところで交わし反撃に出ようとした瞬間。先程の一撃より更に速い一撃がソーマをとらえる。
 声にならない声を発し、苦悶の表情を浮かべるソーマだったが、追撃は止まらない。
 計八発。ソーマは撃ち込まれ、その場に突っ伏した。
 それを木陰から見ていたのだろう。慌てて、レイナがやってきて、ソーマに回復魔法を施した。
 「ぷは~!やっぱり、師匠には敵わないや!」
 「そうだね。私に敵う者など、この世の中には存在しないのだからね。」
 ギルバートは、にこやかに笑って言い続けた。
 「ソーマ。お前はもう少し掛け引きというものを覚えた方がいい。私が少し速度を落とした一撃を放ったのだから、誘いだと理解しなければならない。直ぐに反撃しようとする癖は直さねばな。」
 「いやいや、師匠。師匠の手加減の一撃なんて分からないよ。レオナルドおじさんの一撃よりも師匠の手加減した一撃の方が速いんだし。もう、しまった!って思う前に二撃目くるんだもん。無理だよ。模造刀じゃなかったら何回死んでいることやら……。」
 「……め!」
 今まで話を聞いていた、レイナが少しふてくされているソーマにチョップする。
 「レオナルドおじさん。じゃなくて、パパでしょ?」
 ソーマはその呼び方が嫌いだった。実の娘が『お父様』なのに、なぜ自分が『パパ』なんだか?意味が分からなかった。そしてもちろん、この流れから言うとレイナの母エルザは当然『ママ』だった。
 「おじさん。」
 「め!」
 「お義父さん。」
 「め!!」
 「……パパ。」
 「よし!」
 レイナは満足そうに頷く。
 やれやれと肩をすくめるソーマ。
 それを見ながら、ギルバートはクスっと笑って二人へ言った。
 「帰って、ご飯を食べようか。その後は勉強だよ。」
 「「は~い。」」
 三人は家路についた。
 ソーマが宝剣『ラグナ・クルナ』を抜いたあの日から、十三年間、二人は毎日似たような生活を送っている。
 朝早くから、剣術と魔法の鍛錬。
 昼から夕刻まで、また鍛錬。
 そして、夜は学問なのど勉強。
 村の長になるのだから、学問などの教養も必要とされる他、魔族にたいする知識もソーマとレイナは教え込まれていた。
 
 
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