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勇名証
勇名証 6
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「こん、ばかちん共が!!!!」
イリア達は女王にその場で正座させられ、ゲンコツを頭にくらってうなだれていた。
その光景を後から戻ってきた他の生徒達は呆然と見ている。女王が怒る場面など滅多に見られるものではないからだ。
「お前達は、何時も何時も何時も!!悪巧みばっかりしよって!!しかもなんじゃ!今回は!!!ララが先に行動に移してくれぬかったら、お前達は国家反逆罪で死刑だったのじゃぞ!!!」
「「「「……国家反逆……罪?」」」」
「そうじゃ!当たり前じゃろうが!!ララが先に動かず、妾の横に居たなら、妾に向かって魔法を放つと同じ事になるじゃろうが!!女王である妾に向かって魔法を放つという事は、国家反逆になるのじゃ!!そのような事も分からぬのか!!!」
女王にそう言われ、4人はもう一発ずつゲンコツを頭にくらう。
女王自身がゲンコツをしている事も微笑ましかったが、ララはその光景を見て羨ましく思った。
(バザルーナだったら、問答無用に斬首か他の極刑だろうな。弁明の機会もなく。それだけじゃない。貴族に対しても同じ事をしたら、ゲンコツ数発じゃ済まない。それに、女王様みたいに、愛情を持って叱るなんて事は王族も貴族も有り得ない。彼女達が特別なのか、あるいは誰にでもそうなのかは分からないけど、女王様は愛に満ちておられる。)
「まったく……。ほれ、顔を上げてララに謝らぬか。」
女王に即され、4人は顔を上げララに謝罪した。
「「「「申し訳ございませんでした。」」」」
(気が付かなかったけど、みんな、瞳の色が違うんだ。一人の子は違和感があるけど。変わった子達だな。)
ララは謝罪を受け入れ、4人は解放された。そして、女王が生徒達に言葉を掛け、学校見学は終わりを告げた。
それから数日、ミスリルの鎧の修繕が終わるまで、ララは城に滞在し、任命式を迎える事になった。
ララが学校見学を済ませた翌日。
イリアは、女王の元を訪れていた。
「それで?話というのはなんじゃ?イリアよ。」
「はい。女王様。私を勇者様のパーティーに加えて欲しいのです。」
「ふむ。そうか。ララから何か感じたのか?」
「はい。勇者様と共に旅をすれば、私自身も成長出来るのではないかと。」
「ふむ。そうじゃな。成長は出来るじゃろう。」
「それでは!」
「うむ。ダメじゃ。」
「へ?」
女王の予想外の返答にイリアはマヌケな声を出す。その顔を見て、女王は更にくぎを刺す。
「だから、ダメじゃ。と言っておる。」
「どうしてなのですか?!私も勇者様と同じ年齢。この世代では、優秀な方だと自負しております。」
「うむ。お主は、優秀じゃよ。同い年で、イリアに勝てる魔術師は、なかなか居らぬじゃろうて。」
「それなら、なぜですか!?」
「はっきり言うぞ。今のお主では、役不足。力不足という事じゃ。」
「そんな……。」
「今のお主と、ララではかなりの力差がある。昨日の事で分かったであろう?ほんの些細な事で集中力を欠き、呆気なくララに間合いを詰められ、慌てて放とうとした魔法も途中で止めた。ララは、かなり力を抑えておるにも関わらず、完敗じゃったじゃろ?」
「そ、それは……。」
(本気じゃなかったとは言えないし……勇者様の瞳に目を奪われたとも言えない。」
「仮に、お主が全力を出したとしても、ララには敵わぬ。そして、今度、ララが勇名証を手に入れれば、ステータスの補助が受けられるようになる。さすれば、お主とララの差は更に開く一方じゃ。」
「………。」
イリアはショックで何も言い返せなかった。
「イリアよ。今はまだその時ではない。もっと研鑽を積め。技を磨け。そうすれば、自ずと道も拓かれる。」
「……はい。」
イリアはしょんぼりと女王の元を後にした。
それを見て、女王は一つ溜め息をついて考える。
(ふう。まさか、イリアがララと旅をしたいと言うとは思わなんだな。あの子はあの子なりに考えておるのじゃろう。……実際のところ、実力差はあるが、潜在能力は差ほど変わらんじゃろう。成長の速度というものは個人によって違うゆえ。ただ、致命的な点は、育った環境が違い過ぎる事じゃ。イリアは学校という、温室で育っておる。それゆえ、まだ簡単に隙が出来る。その隙は致命傷になりかねん。一方、ララはあの年で幾つもの死線をくぐり抜け、人の汚さ……人の業を肌で感じて知っておる。まあ、ララの場合は悪い所が目に入りすぎておるのじゃが……。油断する事もなく、隙がない。この差は大きすぎる。ただダンジョンのモンスターと戦っておる分には問題は少ないかも知れぬが、野生のモンスター、それに勇者の旅には人も深く関わってくる。その隙が無くならぬ限り、イリアをララに同行させる訳にはいかぬ。それに、妾は勇者の旅には深く関われぬ。勇名証を渡し、仲間を一人紹介する程度じゃ。人選も既に済ませてある。イリアにはショックが大きいじゃろうが、これを乗り越えて、一つ成長してくれるとありがたいのう。)
イリア達は女王にその場で正座させられ、ゲンコツを頭にくらってうなだれていた。
その光景を後から戻ってきた他の生徒達は呆然と見ている。女王が怒る場面など滅多に見られるものではないからだ。
「お前達は、何時も何時も何時も!!悪巧みばっかりしよって!!しかもなんじゃ!今回は!!!ララが先に行動に移してくれぬかったら、お前達は国家反逆罪で死刑だったのじゃぞ!!!」
「「「「……国家反逆……罪?」」」」
「そうじゃ!当たり前じゃろうが!!ララが先に動かず、妾の横に居たなら、妾に向かって魔法を放つと同じ事になるじゃろうが!!女王である妾に向かって魔法を放つという事は、国家反逆になるのじゃ!!そのような事も分からぬのか!!!」
女王にそう言われ、4人はもう一発ずつゲンコツを頭にくらう。
女王自身がゲンコツをしている事も微笑ましかったが、ララはその光景を見て羨ましく思った。
(バザルーナだったら、問答無用に斬首か他の極刑だろうな。弁明の機会もなく。それだけじゃない。貴族に対しても同じ事をしたら、ゲンコツ数発じゃ済まない。それに、女王様みたいに、愛情を持って叱るなんて事は王族も貴族も有り得ない。彼女達が特別なのか、あるいは誰にでもそうなのかは分からないけど、女王様は愛に満ちておられる。)
「まったく……。ほれ、顔を上げてララに謝らぬか。」
女王に即され、4人は顔を上げララに謝罪した。
「「「「申し訳ございませんでした。」」」」
(気が付かなかったけど、みんな、瞳の色が違うんだ。一人の子は違和感があるけど。変わった子達だな。)
ララは謝罪を受け入れ、4人は解放された。そして、女王が生徒達に言葉を掛け、学校見学は終わりを告げた。
それから数日、ミスリルの鎧の修繕が終わるまで、ララは城に滞在し、任命式を迎える事になった。
ララが学校見学を済ませた翌日。
イリアは、女王の元を訪れていた。
「それで?話というのはなんじゃ?イリアよ。」
「はい。女王様。私を勇者様のパーティーに加えて欲しいのです。」
「ふむ。そうか。ララから何か感じたのか?」
「はい。勇者様と共に旅をすれば、私自身も成長出来るのではないかと。」
「ふむ。そうじゃな。成長は出来るじゃろう。」
「それでは!」
「うむ。ダメじゃ。」
「へ?」
女王の予想外の返答にイリアはマヌケな声を出す。その顔を見て、女王は更にくぎを刺す。
「だから、ダメじゃ。と言っておる。」
「どうしてなのですか?!私も勇者様と同じ年齢。この世代では、優秀な方だと自負しております。」
「うむ。お主は、優秀じゃよ。同い年で、イリアに勝てる魔術師は、なかなか居らぬじゃろうて。」
「それなら、なぜですか!?」
「はっきり言うぞ。今のお主では、役不足。力不足という事じゃ。」
「そんな……。」
「今のお主と、ララではかなりの力差がある。昨日の事で分かったであろう?ほんの些細な事で集中力を欠き、呆気なくララに間合いを詰められ、慌てて放とうとした魔法も途中で止めた。ララは、かなり力を抑えておるにも関わらず、完敗じゃったじゃろ?」
「そ、それは……。」
(本気じゃなかったとは言えないし……勇者様の瞳に目を奪われたとも言えない。」
「仮に、お主が全力を出したとしても、ララには敵わぬ。そして、今度、ララが勇名証を手に入れれば、ステータスの補助が受けられるようになる。さすれば、お主とララの差は更に開く一方じゃ。」
「………。」
イリアはショックで何も言い返せなかった。
「イリアよ。今はまだその時ではない。もっと研鑽を積め。技を磨け。そうすれば、自ずと道も拓かれる。」
「……はい。」
イリアはしょんぼりと女王の元を後にした。
それを見て、女王は一つ溜め息をついて考える。
(ふう。まさか、イリアがララと旅をしたいと言うとは思わなんだな。あの子はあの子なりに考えておるのじゃろう。……実際のところ、実力差はあるが、潜在能力は差ほど変わらんじゃろう。成長の速度というものは個人によって違うゆえ。ただ、致命的な点は、育った環境が違い過ぎる事じゃ。イリアは学校という、温室で育っておる。それゆえ、まだ簡単に隙が出来る。その隙は致命傷になりかねん。一方、ララはあの年で幾つもの死線をくぐり抜け、人の汚さ……人の業を肌で感じて知っておる。まあ、ララの場合は悪い所が目に入りすぎておるのじゃが……。油断する事もなく、隙がない。この差は大きすぎる。ただダンジョンのモンスターと戦っておる分には問題は少ないかも知れぬが、野生のモンスター、それに勇者の旅には人も深く関わってくる。その隙が無くならぬ限り、イリアをララに同行させる訳にはいかぬ。それに、妾は勇者の旅には深く関われぬ。勇名証を渡し、仲間を一人紹介する程度じゃ。人選も既に済ませてある。イリアにはショックが大きいじゃろうが、これを乗り越えて、一つ成長してくれるとありがたいのう。)
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