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伝えたかった事。伝えたい事。

伝えたかった事。伝えたい事。3

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 「来い!フェイルノート!!!」
 エリはボーガンを外し、神弓・フェイルノートを呼び、構える。
 「魔法剣……黒雷。」
 ララは剣に魔法を付与する。白銀だったミスリルの剣は黒い稲妻を纏い、黒く変色する。
 そして、詠唱を終え、ターニャとアリシアはお互いを見合い、頷く。
 「では!行きますよ!!」
 ターニャは号令をかける。
 「『シャドーバインド』!!」
 「『アースバインド』!!」
 アリシアとターニャは、拘束系の魔法でゼウスの足を封じた。
 「な、なんね!?いきなり?!」
 ゼウスは両足を拘束され、動く事が出来なくなる。
 それを見て、イリアは更に拳の回転を速くする。
 「憎い!殺す!!死ね!!!この世界から消えて無くなれ!!!この世界も消えて無くなれ!!!!!」
 まさにサンドバッグ状態。まさにゼウスにダメージを与えられる最高の好機。
 「『万物の理を貫く弓矢よ その力を示せ』」
 エリは躊躇なくゼウスの左手目掛けて矢を放つ。
 矢は、ゼウスに攻撃を浴びせるイリアを避けるように動き、見事に矢はゼウスの左手をとらえる。
 矢の威力は凄まじく、ゼウスの左手ごと、見えない障壁にめり込んで行き、フェイルノートの力だろうか?ゼウスの左手は全く動かなくなった。
 「な!?くそ!?何で動かん?!ケ、ケラウ!?」
 ゼウスは左手の自由も失い、焦るようにケラウノスを呼ぼうとする。しかし。
 「……させない。黒雷、一の秘剣・影縫い……。イリア……トドメお願い。」
 ララはゼウスがケラウノスを呼ぶ前に、右手を刺す。
 刺さった剣の刀身は、大半を障壁深く沈め、更に黒雷が蜘蛛の巣のように障壁に張り付き動きを封じた。左手に比べ動く右手にケラウノスを呼ぼうと必死に壁から剥がそうとするが、その度、黒雷がゼウスに激痛を与える。磔の完成だ。
 それを確認し、ララはその場から少し離れる。
 「ああ!クソ!!!痛かし、動かんじゃなっか!!!って………おいおいおいおい!?」
 ゼウスは現状に困惑し、更に目の前を見て恐怖を感じられずには居られなかった。
 イリアは只ならぬ気配を漂わせ、少し離れた所に落としていた杖をゆっくりと拾い上げていたのだ。
 そして、不適な笑みを浮かべ、ゼウスに歩み寄る。
 ゼウスは歩み寄るイリアの瞳を色を見て、更に恐怖を隠しきれなかった。神をも怯ませる、畏怖だ計り知れないだろう。
 そのイリアの瞳は、何時もの宝石のような輝きを失い、赤黒く、まるで烈火の如く怒り狂う火竜の吐く炎を宿しているようだった。
 「あわわわわわわ……。イリアちゃん……話せば分かるけん。その……杖ば置いてくれんやろか?」
 磔の状態になったゼウスは、もう逃げ場のない事を悟り、和解しようとイリアに一か八か話し掛ける。
 しかし、イリアはそれを無視し、ゼウスを下から覗き込みながら言う。
 「地獄行きの切符、一枚ですね。ありがとうございます。ニヒ……ニヒ……ニヒヒヒヒヒヒヒヒヒ……。」
 もう、そこに何時ものイリアは居なかった。
 「ちょっ、ちょっと!?ララちゃん?!エリちゃん?!この娘、危なかよ!?よかと?こんままで、よかと~~~~!?」
 ゼウスは大声でララとエリにイリアがおかしい事と助けを求めるが、二人は反応しなかった。
 イリアはゼウスの顎に、杖を突き付けた。ブツブツと詠唱を始める。そして。
 「消えて無くなれ!!この世界ごと!!!『インルフェルノ・エクスプーロジョン』!!!!!」
 一瞬で青い業火がゼウスを包み、壁伝いだが、回避不能だろうと思わせれる位の広範囲に青い業火をはらんだ爆発がいくつも起こった。
 ゼウスは最後に言葉を放つ事さえ出来なかったようだ。爆発が終わるとゼウスの姿はなかった。
 「……ニヒ……ヤマト……仇はとったよ?……ん?ヤ……マ……ト??ヤマ……ト。ヤマト……??」
 そう言い、一瞬笑ったイリアは糸の切れた操り人形のように、力無く倒れ込んだ。
 「イリアお嬢様!!」
 ターニャは急いでイリアの元へ向かい。
 「ララ!アリシア!!主様を頼む!!イリアの事は、オレとターニャに任せろ!」
 エリの指示で、ララとアリシアはヤマトの救出に向かった。

 「……ん?ここは……どこですか??」
 イリアは目を覚まし、たずねる。
 「よかった。イリアお嬢様……。」
 ターニャは、涙を流しながら、微笑んだ。その微笑みは、嬉しさと悲しさ、両方の感情が混ざっている。そんな感じをイリアは感じ取った。
 「……ここは?」
 それに違和感を感じ、イリアはもう一度、ターニャにたずねる。
 「ここは、まだ天界です。」
 その言葉にイリアは、ハッとし、体を起こそうとした。しかし、全身が痛くて動けない。
 「無理をなさらないで下さい。意識は戻られましたが、まだ体は重傷のままです。特に、神ゼウスを殴っていた両手はボロボロで、私の回復魔法ではまだ少々の時間が必要です。」
 それを聞いて、イリアは瞳を閉じ、徐々に状況を思い出す。
 「神ゼウスはどうなったのです。」
 「イリアお嬢様が倒されました。」
 「……私が?」
 「はい。」
 イリアは自分がゼウスを倒した事を覚えてはいなかった。
 でも、イリアは単純に安心した。
 なぜ、倒せたか?どうやって倒したか?その事を覚えていない。それでも、それを放っておけるくらい、単純に安心した。倒した事。それが差ほど重要ではない。そんな気さえしていた。
 「そうですか……よかった。」
 そう言い安堵したが、一つ、最も重要だった事を忘れているような気がした。
 そして、その言葉にターニャの反応がない。その事になぜか焦りを感じ、突然、顔に落ちてきた生温かいモノに、瞳を見開いた。
 ……ターニャが泣いていた。大粒の涙を零しながら、声も上げずに。
 現状を上手く把握出来ていない。
 最も重要な事を思い出せない。見逃している?
 それが何か分からない……。
 脳をフル回転させ考える……。
 思い出すため……。
 必死に……。
 焼き切れんばかりに何度も……。
 それを繰り返しているうちに、一瞬、頭に激痛が走り、千切れていた回路が繋がったような感じがした。
 そして、イリアは思い出した。あの時の惨状を。
 恐る恐る、イリアは口を開く。
 「……ヤマトは?」
 その言葉にターニャは声を我慢出来なくなり、大声を出して泣き始めた。
 ターニャがこれほど取り乱した姿は、今までに見たことがなかった。今晩、泣いていた比ではない。
 ヤマトはゼウスに心臓を……貫かれた。
 イリアは、ゼウスを倒した事以外の事を完全に思い出した。
 「『ピュアオールヒーリング』!!!!!」
 自分に出来る最高の回復魔法を自分に唱える。
 しかし、魔法が反応しない。マインドが足りないのだ。
 それをイリアは瞬時に悟り、新たな回復魔法を唱える。
 「『ヒール』『ヒール』『ヒール』『ヒール』!!!!」
 下級の回復魔法、四回。それが、今のイリアに残されていたマインドだった。
 これでも、普通の魔術師からすれば脅威の回数だ。マインド切れしたら普通は数日、魔法を使えない。イリアのスキルのおかげだろう。
 イリアは少し動くようになった体を無理やり起こし、周りを確認する。
 ほんの少し離れた所に、ララ、エリ、アリシアの姿が見える。そして、そこには横たわっている、ヤマトの姿も……。
 イリアは強引に立ち上がり、体を引きずり、ヤマトの元へ向かう。
 それを見て、ターニャもイリアに体を貸し、ヤマトの元へと向かった。
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