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確かなモノは闇の中……
確かなモノは闇の中……3
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「イ、イリア?!」
たどり着いた先には、涙で顔をボロボロにしたイリアが居た。どうやら、人魂と思ったのは、生活魔法の『ライト』だったようだ。
「ヤ、ヤマドざば~。よがっだ~。」
そう言い、イリアは俺の胸に飛び込んでくる。
その瞬間、俺の頭の中で絡まっていた糸がほどけて、ピンと張った綺麗な一本になったような気がした。
俺、これに似た光景を見た事がある……。
俺……この世界に小さい頃に来た事あるわ……。
そう確信に変わった。
イリアに案内されるままに、イリアの家へ帰った。道中、イリアが何か言っていたが、ほとんど耳に入らなかった。
思った事は、ゼウス様が言っていた事が本当で真実。
俺はイリア達に騙されていたのか……。
そう思うと何も考えられなかった。
イリアに即されるまま、風呂に入り、庭に出た。
夜空に、月はやはり出ていなかった。その代わり、星は夜空の主役を独り占めしたように輝いている。
あの時と同じだ。イリアと別れた日と……。
記憶は、今まで思い出されなかった分まで鮮明に脳裏に映し出していた。
父さんと虫取りに出掛け、俺はこの世界に迷い込んだ。そして、あの森で泣いているイリアに出会ったんだ。
真っ赤な宝石。ルビーのように輝く瞳の可愛い子。
魔法を自慢気に披露してくれて、俺にも教えてくれた。
ほんの2日だったけど……。
「ヤマト様。どうなさったのですか?随分、昼間は暑くなりましたが、夜はまだ冷えますよ。」
何事もないように、イリアは俺を心配しながら笑顔で声を掛けてくれる。
この笑顔は……本物なのだろうか?少し前の俺だったら、疑う事すらしなかっただろう。でも、今はどうだろう?この笑顔は……偽物なんじゃないか??
いや……偽物のはずがない。そう……信じたい。
このまま、俺が記憶を取り戻した事を伝えなければ、何事もなく日々を続けていけるだろうか……。
そんな事が頭を駆け巡る。
このまま……。このまま……で。そう思っても、心はそれを許さなかった。
「……綺麗だな。今日は月が出ていなんだな。」
「そうですね。綺麗です。月が出ていない分、星が綺麗に見えますね。」
「あの日も……新月で、星が綺麗だったよな。」
「……え?ああ……前に実家にみんなで挨拶に来た時ですか?」
イリアは一瞬、ビックリしたように俺の顔を見たが、真意をかわすように言葉を並べた。
しかし、イリアのその一瞬の顔が何を物語っているか、分かった。それが許せなかった。もう、止められない。
「もう、30年以上も前の話になるのか……。あんなに小さかったのに、俺達、大きくなったよな。お前、よく泣いてたな。あの時。」
いじめられていたしな。あの時は仕方ないよな。そんな事を思い出すと自然と笑いが出てくる。
「今考えれば、人間の俺に魔法なんて使えないよな。でも、イリア、一生懸命、教えてくれたな……。」
そう。今思えば滑稽かもしれない。だって、エルフ以外は魔法使えないんだ。
「な、なんで……そんな。」
イリアの顔色はみるみる青くなる。
「おじさんやおばさんも相変わらず、若いままだし、俺がまたこの世界に来るとは思わなかったよ。」
イリアはガタガタと震える。
「なあ、イリア。俺はお前達に騙されていたのか?俺はお前達にハメられてこの世界に居るのか?お前やターニャさん、女王様は嘘をついているのか?」
俺は、上手い言葉で取り繕えなかった。
「………。」
イリアは何も答えない。その代わりに瞳には、今にも溢れんばかりの涙が浮かぶ。
ああ……。これが現実か。
その顔を見れば分かる。真実は、その涙が物語っていた。
俺はたまらず走り、イリアの横を通り過ぎ、その場を後にした。
そして、麗月を片手にイリアの実家を出た。
たどり着いた先には、涙で顔をボロボロにしたイリアが居た。どうやら、人魂と思ったのは、生活魔法の『ライト』だったようだ。
「ヤ、ヤマドざば~。よがっだ~。」
そう言い、イリアは俺の胸に飛び込んでくる。
その瞬間、俺の頭の中で絡まっていた糸がほどけて、ピンと張った綺麗な一本になったような気がした。
俺、これに似た光景を見た事がある……。
俺……この世界に小さい頃に来た事あるわ……。
そう確信に変わった。
イリアに案内されるままに、イリアの家へ帰った。道中、イリアが何か言っていたが、ほとんど耳に入らなかった。
思った事は、ゼウス様が言っていた事が本当で真実。
俺はイリア達に騙されていたのか……。
そう思うと何も考えられなかった。
イリアに即されるまま、風呂に入り、庭に出た。
夜空に、月はやはり出ていなかった。その代わり、星は夜空の主役を独り占めしたように輝いている。
あの時と同じだ。イリアと別れた日と……。
記憶は、今まで思い出されなかった分まで鮮明に脳裏に映し出していた。
父さんと虫取りに出掛け、俺はこの世界に迷い込んだ。そして、あの森で泣いているイリアに出会ったんだ。
真っ赤な宝石。ルビーのように輝く瞳の可愛い子。
魔法を自慢気に披露してくれて、俺にも教えてくれた。
ほんの2日だったけど……。
「ヤマト様。どうなさったのですか?随分、昼間は暑くなりましたが、夜はまだ冷えますよ。」
何事もないように、イリアは俺を心配しながら笑顔で声を掛けてくれる。
この笑顔は……本物なのだろうか?少し前の俺だったら、疑う事すらしなかっただろう。でも、今はどうだろう?この笑顔は……偽物なんじゃないか??
いや……偽物のはずがない。そう……信じたい。
このまま、俺が記憶を取り戻した事を伝えなければ、何事もなく日々を続けていけるだろうか……。
そんな事が頭を駆け巡る。
このまま……。このまま……で。そう思っても、心はそれを許さなかった。
「……綺麗だな。今日は月が出ていなんだな。」
「そうですね。綺麗です。月が出ていない分、星が綺麗に見えますね。」
「あの日も……新月で、星が綺麗だったよな。」
「……え?ああ……前に実家にみんなで挨拶に来た時ですか?」
イリアは一瞬、ビックリしたように俺の顔を見たが、真意をかわすように言葉を並べた。
しかし、イリアのその一瞬の顔が何を物語っているか、分かった。それが許せなかった。もう、止められない。
「もう、30年以上も前の話になるのか……。あんなに小さかったのに、俺達、大きくなったよな。お前、よく泣いてたな。あの時。」
いじめられていたしな。あの時は仕方ないよな。そんな事を思い出すと自然と笑いが出てくる。
「今考えれば、人間の俺に魔法なんて使えないよな。でも、イリア、一生懸命、教えてくれたな……。」
そう。今思えば滑稽かもしれない。だって、エルフ以外は魔法使えないんだ。
「な、なんで……そんな。」
イリアの顔色はみるみる青くなる。
「おじさんやおばさんも相変わらず、若いままだし、俺がまたこの世界に来るとは思わなかったよ。」
イリアはガタガタと震える。
「なあ、イリア。俺はお前達に騙されていたのか?俺はお前達にハメられてこの世界に居るのか?お前やターニャさん、女王様は嘘をついているのか?」
俺は、上手い言葉で取り繕えなかった。
「………。」
イリアは何も答えない。その代わりに瞳には、今にも溢れんばかりの涙が浮かぶ。
ああ……。これが現実か。
その顔を見れば分かる。真実は、その涙が物語っていた。
俺はたまらず走り、イリアの横を通り過ぎ、その場を後にした。
そして、麗月を片手にイリアの実家を出た。
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