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決闘

決闘5

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 宴は、賑やかにだが、慎ましく行われた。
 そして、酒も入り、さっき聞けなかった事を女王様に聞いた。
 「何で、旧世界法三条なんて悪法があったんですか?」
 俺は、納得していなかった。それは、悪法だからだけではない。何か胸の奥が苦しいのだ。
 「あれか。あれは、ある意味『仕方ない』法案じゃったのじゃ。」
 え?何が『仕方ない』だ?!
 「『仕方ない』ってどういう事ですか?『仕方ない』なんて有り得ないでしょ?!」 
 「うむ。まあ、おぬしが怒るのも無理はないのぉ。妾もそう思ったから改正した。しかし、昔のエルフの在り方にも問題があったのじゃ。」
 エルフの在り方?
 「在り方って何ですか?」
 「貴族の話は聞いておるか?」
 確か、貴族は階級があって、元々は特別な力を持っていたとか?
 「階級の話と特別な力があるから貴族ということくらいしか……。」
 「ふむ。それを聞いておれば、大丈夫じゃろう。」
 女王様は果実酒を一口飲んで、口を開いた。
 「昔のエルフは同族愛というのが、もの凄く強くてな。今のエルフとは比べものにはならなんだ。それは王族じゃろうと一般民でも変わらんのじゃ。」
 良いことじゃないか。
 「それは、悪い事なのですか?」
 「ふむ。悪くは無いのじゃ。しかし、その強過ぎる同族愛というのは、時に問題も起こすのじゃ。」
 問題?
 「おぬしは、貴族がなぜ貴族か聞いておるじゃろ?」
 「特別な力があるから。」
 「うむ。そうじゃ。『特別な力』。即ち、モンスターを退ける力が強い。という事じゃ。現在も貴族はモンスター討伐の中心におる。各国の騎士団や魔術師団と同じように。王族も同じじゃ。」
 「はい。聞きました。」
 王族までは聞いていなかったけど。
 「エルフはその強過ぎる同族愛から、自己犠牲もいとわぬのじゃよ。特に昔のエルフは。」
 どういうこと?
 「そうじゃな。例えば、モンスターに襲われ、怪我をして歩けない一般民のエルフがおるとしよう。その者は、絶体絶命のピンチじゃ。それを躊躇なく助けようと貴族のエルフが犠牲になる。」
 それがいけない事なのか?
 「いけない事なのですか?それは美しいって言われそうですが?」
 「そうじゃな。美しい。と言われるじゃろう。しかし、実際問題となると話は別なのじゃ。その貴族の力が無くなったせいで、大勢の一般民が死ぬ事になる。それくらい、貴族というのは強力なのじゃ。力の無い一般民と力のある貴族位より上の位を分ける。そのための法案じゃったのじゃ。世界法三条は。記し方も悪かったが、そう記さなければならぬ程じゃった。ということじゃな。まあ、それを悪用する輩もおったからな。後々になると、物議が出たのじゃ。事実、その法案が出来たおかげで、モンスターによる死亡者の数は激減した。世界を守るためには、当時、必要だった法案というところじゃな。」
 納得したような、そうでもないような気持ちになる。ようは、個を切り捨て、全を……多を守るって事だろ?複雑な気分にしかならない。答えなんて出ない。
 「ふふふ。ヤマトや。おぬしが今、考える事ではないのじゃ。考えても、答えなど出ぬ。もし、おぬしがその様な場面に出くわした時に、己に忠実であればよい。ただ、覚えていて欲しい事もある。もし、おぬしが危険な目にあっていたら、イリア、ララノアは自分の命を犠牲にしても、おぬしを助けようとするじゃろう。その事だけは、覚えていて欲しい。……およ?話が何か変な方向へ行ってしまったのぅ。」
 女王様の言葉は胸に刺さった。
 「はい。覚えておきます。」
 素直に答えよう。うん。
 「ふむ。若いという事は良いことじゃな。」
 女王様は満足そうだった。
 「あっ、そうだ。女王様はバザルーナ国王と何を賭けていたのですか?」
 これも、聞いておきたい。
 「うむ。まあ、世界法三条の事じゃな。バザルーナ国には国内法として生きておるじゃろ?それの撤廃じゃ。」
 「それなら、女王様が賭けていたのは?」
 「世界法一条。『女王の発言は、どの国王の発言より重い』の改正じゃ。まあ、手っ取り早く言えば、妾の権力を低下させたかったのじゃよ。バザルーナ国王は。」
 それって、この世界の崩壊を意味するんじゃ?
 「良かったんですか?そんな大事な事を賭けて。もし、俺が負けてたら?」
 そう。俺が勝ったからいい。でも、負けていたら?イリアの秘策がはまらなかったら?
 「ん?大丈夫じゃよ。妾は、おぬしが勝つと分かっておったから。」
 え?どういうこと??未来予知??
 「どういうことですか?もしかして、未来予知が出来るとか??」
 「ははは。まさか。それが出来ておるなら、おぬしはこの世界には居らぬよ。ただの『勘』じゃ。『勘』。」
 ええ?!勘でいいの?!勘で?!
 俺は、女王らしからぬ発言に絶句した。
 
 
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