【R18/TL】ハイスペックな元彼は私を捉えて離さない

春野カノン

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その時、隣にいるのは

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6月頭の土曜日。
本当なら今日は健二くんと会う日だったが仕事が入ってしまったため私は暇を持て余していた。


ただ以前にも華乃子ちゃんに言われた言葉を思い出し、今日は健二くんの家に合鍵を使ってお邪魔しようと思っている。
午後になり身支度を整えた私は家を出るためカバンを片手に忘れ物の確認をした。


ふわふわレースが使われたブラウスにスカートを合わせた可愛い系のコーデを組んだ。
健二くんがこういう服を好きなため、彼と会う日は無意識にそれに合わせてコーデを組んでいる。


家の鍵を持って外に出ると丁度どこからか帰ってきた理玖くんとバッタリ外で会った。
会社で会う時のようなきっちりとした格好ではなく、ラフなTシャツにデニムという格好は自然体で普段と違った雰囲気だ。


「これからお出かけ?」

「うん」

「なんかいつもと雰囲気違うね」

「そう?」

「そんな陽葵ちゃんも可愛いよ」


健二くんを想って選んだ服だがそう言われて純粋に嬉しかった。
裏のない真っ直ぐな笑顔に思わず頬に熱が集まる。


「あ、陽葵ちゃんちょっと」

「ん?」


手招きされそのまま理玖くんに近づくと突然彼の指先が私の頬に触れた。
触れられるとは思っておらず一瞬身体がビクッと震えるものの、私に触れる指先はとても優しくあの頃と何一つ変わらない。


にこやかに微笑んだ理玖くんは苦しいくらい甘ったるい視線を私に向けてきた。
その眼差しがむず痒くて昔の記憶が蘇り直視できない。


「ほっぺに髪の毛ついてたよ」

「あ、ありがとう」

「⋯こんな可愛い顔、他の男に見せてるんだ⋯⋯」

「え、あの⋯⋯」


理玖くんは少しだけ眉をひそめて悔しそうに笑う。
そんな顔を見て心臓をギュッと掴まれたように痛み、なぜか私の中に罪悪感が生まれた。


「ほら早く行かなくていいの?」

「あ、うん、行ってくるね」

「はい、いってらっしゃい」


理玖くんに背中を向けて私は足早にマンションを出た。
頬に熱が集まり赤くなっているのが自分でもわかり、それを冷ますように風を切りながら歩くとすごく心地よい。


これから彼氏に会うというのに別の人に触れられ赤くなるなんて最低だ。
そっと自分の頬にそっと触れると理玖くんに触れられた感触が蘇る。


それをかき消すように健二くんの顔を思い浮かべ、彼が喜んでくれるように夕食の献立を何にするか考えた。
健二くんの家は私の家から2駅ほど離れた場所にあるため電車に乗って向かう。


電車に揺られて健二くんの家の最寄り駅に着いた私はそのままの足で近くのスーパーに向かった。
今日の夜は唐揚げにしようと思い順番に食材をカゴに入れていく。


お会計を済ませた私は袋に食材を詰め込み足早に健二くんの家に向かった。
買い物に少し時間がかかってしまい、時計は既に夕方の5時を過ぎているため急いで支度を始めなければ彼の帰りに間に合わない。


足取り軽く健二くんの家に着いた私は合鍵を使って家の鍵をそっと開ける。
扉を開けると玄関にはいつも健二くんが仕事に履いている革靴が脱いで綺麗に揃えられていた。


(え⋯待って、どういうこと⋯⋯)


そんな大きな革靴の横には見慣れないサンダルが揃えて置かれていた。
きゅーっと心臓が鷲掴みされたようにどんどん冷や汗が流れてくる。


指先から体温が奪われていきバクバクと心臓の音が大きくなっていった。
足音を立てないようにゆっくりと廊下を進んでいくと扉に近づくにつれて中から男女の声が聞こえてくる。


「んんっ、もう⋯けんちゃんったら⋯」

「可愛いよ⋯もう1回抱いてもいい?」

「彼女さんともしてるんでしょ~?性欲強いんだからけんちゃんは」

「陽葵とは最近してないよ。君だけだって」

「ふふっ。彼女さんも残念ね、浮気されてるのにずっと気づかないなんて。んっ、ぁっ、そこ、好き⋯っ」


扉の向こうから聞こえてくるその声は明らかに男女の行為中のもので、甘ったるく猫なで声で囁くその声が耳に響き不快感が込み上げてくる。
健二くんが私に向けるその欲を別の子にも向けていることに心底気持ち悪さを感じた。


(見ない方がいいって分かってるのに、確認しないと気が済まない⋯⋯)


体温が奪われた指先でドアノブにゆっくりを手をかける。
暴れ出す心臓を落ち着かせるように深呼吸をしてゆっくり息を吐き勢いよく扉を開けた。


リビングにベッドが置かれた部屋の間取りのため扉を開けたらすぐにベッドが広がっている。
その上で裸の状態で抱き合う男女の姿が目に入った。


長い髪の毛の女は身体を見られないように布団で勢いよく隠し、健二くんの背中に隠れて私から逃れようとする。
ここに私が来ることを想像もしていなかった健二くんは今の現実を受け入れられないように呆然と私を見つめていた。


「え、な、んで陽葵が⋯?」

「今日、仕事じゃなかったの?」

「え⋯⋯」

「誰?その女」


思ったよりも冷静な自分に驚いた。
健二くんのことが好きなはずなのに、取り乱すことなく淡々と言葉が出る自分が怖い。


「いや、あのこれは⋯⋯」

「誰って聞いてるの。その女」

「会社の⋯後輩、です」

「会社の後輩と仕事って嘘ついて浮気ですか。部屋で堂々とセックス三昧とか、最低⋯⋯」


布団に包まる女をよそに急いでパンツを履いた健二くんは私に近寄り腕を伸ばす。
その腕を振り払い距離を取ると傷ついたように瞳が大きく揺れた。


(そんな顔したいのはこっちなんだけど⋯⋯)
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