上 下
175 / 186

2度目の⋯⋯ 3

しおりを挟む
「おそろい?」

「ん。俺のスーツの柄と心春のドレスの柄をお揃いでオーダーした。差し色も合わせて赤を使ってもらったんだ」

「いつの間にこんな素敵なもの準備してくれてたの?知らなかった⋯」

「サプライズだからな」


こんな素敵なサプライズを用意されているなんて誰が思うだろうか。
明らかなおそろい、というわけではなくよく見るとおそろい、という柄がよりオシャレだ。


差し色の赤色も黒の上に乗ることでとても映える。
嬉しすぎて伊織くんに抱きつきたくなるのを理性で必死に止めた。


「着替えよう心春」

「うん」


私はドレスを持った女性の後に続いて着替えるための個室に案内された。
そこにはヘアアイロンなども準備されている。


「髪も合わせてセットしますね」

「あ、ありがとうございます」


ドレスを差し出した女性は1度個室を出た。
残された私はゆっくりと丁寧にそのドレスに腕を通す。


着心地や手触りもすごく上質で、おそろしいことに私の身体にピッタリのサイズだった。
二の腕が出る袖の長さとなっており胸元はしっかり詰まっているため肌の露出は少ないが、腰元の赤いベルトによってスタイルが引き締まって見える。


オーダーと伊織くんは言っていたしこれは私たちのためだけに仕立てられた服ということだが、よくサイズぴったりに合わせられたことだ。
伊織くんはそこまで私の身体のことを分かっているのだろうか。


(なんというか、伊織くんなら驚かないというか⋯⋯)


ドレスを着終えたタイミングで女性が個室に戻ってきたためそのまま椅子に座り髪の毛をセットしてもらう。
アップスタイルにしてくれるようで後れ毛などを出しながら緩くオシャレにまとめてくれた。


「とってもお似合いですね」

「ありがとうございます」

「東雲様がこちらのドレスをオーダーされる際、とっても幸せそうでした。奥様の話をされる時の表情と言ったら本当に愛おしそうに話すんです。見てるこちらまで幸せになりましたよ」


人伝いで伊織くんの話を聞くのはあまりないため聞いていてとても新鮮だった。
そもそも本来は無口で無愛想な伊織くんがそんな表情になるのが私のことを話す時、というのがとても嬉しい。


「奥様、とってもお綺麗です。東雲様にも早くお見せしましょう」


ドレスも着こなし髪も整えてもらったため最後に赤いヒールを履いて個室を出ると、既にスーツに身を包んだ伊織くんが待っていた。
私の姿を見た瞬間、伊織くんは一瞬目を見開きすぐに蕩けてしまうほど甘い笑みを私に向けてくれる。


スーツに身を包んだ伊織くんのかっこよさや色気はいつもに増して滲み出ておりドキドキと高鳴る心臓が止まらない。
普段の仕事に行く時のスーツもかっこいいけど、少しカジュアルなスーツを着た伊織くんも新鮮ですごくいい。


(伊織くんかっこよすぎる⋯⋯)


「心春。最高に似合ってる。すごい綺麗だ」

「ありがとう。本当に素敵だよこのドレス。こんな素敵なものプレゼントしてくれてすごく嬉しい」

「サイズもピッタリだな」

「さすが伊織くん。伊織くんのスーツもすごくかっこいいね」

「心春の隣を歩くんだからな、そう思われたくて選んだ」


いつだって私は伊織くんがかっこいいと思っている。
キメている時も家でリラックスしたラフな時も、いつだって伊織くんにドキドキさせられていた。


店員の2人にもお似合いです、と揃って言われ思わず照れてしまう。
私たちは2人にお礼を言ってそのままお店を後にした。


ヒールに履き替えたため少しだけ歩きづらいのを察した伊織くんはナチュラルに私の腰に腕を回し支えてくれる。
そんな行動ひとつ取ってもキュンと胸を高鳴らせてくれた。


「すっごく可愛い。本当に嬉しいよありがとう」

「心春に似合うと思って頼んだからな。喜んでくれて良かったよ」

「露出少なめも伊織くんぽいなって思った」

「最高に可愛く似合うドレスを着せたいけど、あまり露出はさせたくない。素肌を見ていいのは俺だけの特権だから」


歩きながら私の耳元で吐息混じりに囁く伊織くんにますます鼓動の高鳴りが大きくなり糖分高めでクラクラする。
甘さの供給過多にドキドキが止まらない。


私たちは停めてある車まで歩き伊織くんにエスコートされるまま乗り込む。
そして1度泊まるホテルまで向かい、そこに車を置いてそこからタクシーでディナーのお店まで向かうことにした。
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

お知らせ有り※※束縛上司!~溺愛体質の上司の深すぎる愛情~

ひなの琴莉
恋愛
イケメンで完璧な上司は自分にだけなぜかとても過保護でしつこい。そんな店長に秘密を握られた。秘密をすることに交換条件として色々求められてしまう。 溺愛体質のヒーロー☓地味子。ドタバタラブコメディ。 2021/3/10 しおりを挟んでくださっている皆様へ。 こちらの作品はすごく昔に書いたのをリメイクして連載していたものです。 しかし、古い作品なので……時代背景と言うか……いろいろ突っ込みどころ満載で、修正しながら書いていたのですが、やはり難しかったです(汗) 楽しい作品に仕上げるのが厳しいと判断し、連載を中止させていただくことにしました。 申しわけありません。 新作を書いて更新していきたいと思っていますので、よろしくお願いします。 お詫びに過去に書いた原文のママ載せておきます。 修正していないのと、若かりし頃の作品のため、 甘めに見てくださいm(__)m

一夜の過ちで懐妊したら、溺愛が始まりました。

青花美来
恋愛
あの日、バーで出会ったのは勤務先の会社の副社長だった。 その肩書きに恐れをなして逃げた朝。 もう関わらない。そう決めたのに。 それから一ヶ月後。 「鮎原さん、ですよね?」 「……鮎原さん。お腹の赤ちゃん、産んでくれませんか」 「僕と、結婚してくれませんか」 あの一夜から、溺愛が始まりました。

年上幼馴染の一途な執着愛

青花美来
恋愛
二股をかけられた挙句フラれた夕姫は、ある年の大晦日に兄の親友であり幼馴染の日向と再会した。 一途すぎるほどに一途な日向との、身体の関係から始まる溺愛ラブストーリー。

冷徹上司の、甘い秘密。

青花美来
恋愛
うちの冷徹上司は、何故か私にだけ甘い。 「頼む。……この事は誰にも言わないでくれ」 「別に誰も気にしませんよ?」 「いや俺が気にする」 ひょんなことから、課長の秘密を知ってしまいました。 ※同作品の全年齢対象のものを他サイト様にて公開、完結しております。

閉じ込められて囲われて

なかな悠桃
恋愛
新藤菜乃は会社のエレベーターの故障で閉じ込められてしまう。しかも、同期で大嫌いな橋本翔真と一緒に・・・。

夫の色のドレスを着るのをやめた結果、夫が我慢をやめてしまいました

氷雨そら
恋愛
夫の色のドレスは私には似合わない。 ある夜会、夫と一緒にいたのは夫の愛人だという噂が流れている令嬢だった。彼女は夫の瞳の色のドレスを私とは違い完璧に着こなしていた。噂が事実なのだと確信した私は、もう夫の色のドレスは着ないことに決めた。 小説家になろう様にも掲載中です

忘れたとは言わせない。〜エリートドクターと再会したら、溺愛が始まりました〜

青花美来
恋愛
「……三年前、一緒に寝た間柄だろ?」 三年前のあの一夜のことは、もう過去のことのはずなのに。 一夜の過ちとして、もう忘れたはずなのに。 「忘れたとは言わせねぇぞ?」 偶然再会したら、心も身体も翻弄されてしまって。 「……今度こそ、逃がすつもりも離すつもりもねぇから」 その溺愛からは、もう逃れられない。 *第16回恋愛小説大賞奨励賞受賞しました*

どうやら夫に疎まれているようなので、私はいなくなることにします

文野多咲
恋愛
秘めやかな空気が、寝台を囲う帳の内側に立ち込めていた。 夫であるゲルハルトがエレーヌを見下ろしている。 エレーヌの髪は乱れ、目はうるみ、体の奥は甘い熱で満ちている。エレーヌもまた、想いを込めて夫を見つめた。 「ゲルハルトさま、愛しています」 ゲルハルトはエレーヌをさも大切そうに撫でる。その手つきとは裏腹に、ぞっとするようなことを囁いてきた。 「エレーヌ、俺はあなたが憎い」 エレーヌは凍り付いた。

処理中です...