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心春のわがままと伊織の嘘 4
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次の日、いつも通り出勤すると大きな欠伸をした雛菊ちゃんがデスクに座って項垂れていた。
その横では尚くんがメガネを外して目元を指で押えている。
「2人ともおはよ」
「おはようございます」
「こはるんおはようございます!」
「疲れてるね2人とも」
「そうですね。疲れ目がひどいです」
「発売まで1ヶ月切ってますし、最後の追い込みデバック作業がしんどいですよね」
私たちのゲームはもう完成しており、あとはバグが起こっていないか正常に動作するかの最終確認を残すのみとなっていた。
プログラミング言語のバグを探す作業は根気強さが必要だし、いよいよリリースとなるとより精密さが問われる。
ゲームチームの人たちはほぼ全員自分が携わった部分の修正作業に今は追われている感じだ。
私もまたしばらくはその作業に追われる日々になりそうだが、販売まであと少しのため全力で駆け抜ける。
「みんなおはよう」
「翔くんおはよ」
いつものように出勤してきた翔くんは私の隣の椅子に腰をかけた。
すぐに作業に取りかかれるようパソコンの電源をつけて、両腕を真上に伸ばし大きく伸びをする。
「翔くん昨日は楽しかった?」
「え、昨日?なんのこと?」
「ん?昨日は伊織くんと出かけてたんだよね?」
「⋯⋯⋯あー、うんそう!出かけてた!」
一瞬キョトンとした顔で私を見つめる翔くんだったがすぐにいつも通りの表情に戻り大きく頭を振ってうなづいた。
少し大袈裟にも取れる態度に少しの違和感を覚える。
(察しのいい翔くんなのに私の問いかけに一瞬間があったのが気になる⋯⋯)
「昨日は何してたの?」
「え?!えーとね、伊織からは聞いてないの?」
「⋯⋯伊織くんは2人でラーメン食べに行ったって言ってたけど」
「あーそうそう。ラーメン!食べたよ美味しかったな~」
(やっぱり嘘ついてる⋯⋯)
昨日の夜、確かに伊織くんは翔くんと出かけたと話してきてくれたが何をしたのか聞いた時、蕎麦を食べたと言っていた。
翔くんのあの間が気になってカマをかけたがまさかこんな簡単に嘘がバレるとは。
だとしたらなぜ伊織くんは翔くんと出かけたなんて嘘をついたんだろう。
伊織くんのことだから浮気の類では絶対なさそうだし。
こういうタイミングで伊織くんの浮気を疑わないでいられるのも、日頃からたくさんの愛をくれて信頼を築いてきてくれた伊織くんの行動あってのことだろう。
「翔くんちょっといいかな?」
「えっと、何かな?!」
グイッと距離を詰めて翔くんに寄ると少しだけ困ったように眉を八の字にさせる。
私に質問攻めにされるとまずいということが分かっているからだろう。
「怒ってないから素直に教えてね」
「え、もはやそれは怒ってない?絶対怒ってるよね?なんか顔が怖いんだけど、いつもの心春ちゃんより数倍怖いんだけど!」
あからさまに私から離れようと椅子を引こうとするがそれを腕でガシッと止めて離れられないようにする。
どうせ伊織くんに聞いてもはぐらかすだけだろうし、翔くんに聞くのが1番手っ取り早いはずだ。
身体を縮こませ背筋をピンと伸ばし叱られ待ちをしているような翔くん。
そこまで私は怖い顔をしていないと思うのだが。
「昨日、翔くんは伊織くんと会っていませんね?」
「はい?!あ、いいえ!会っています!」
「いえ、あなたは嘘をついています。伊織くんに話を合わせてくれなんて言われたんでしょう」
「まさか!そんなはずございません」
(なぜお互い敬語になってるんだろうか)
しかも翔くんの喋り方が変になっている。
伊織くんのために嘘をついてくれるのは翔くんの優しさだし、誰も傷つかない嘘だと分かっているからだろう。
次の日、いつも通り出勤すると大きな欠伸をした雛菊ちゃんがデスクに座って項垂れていた。
その横では尚くんがメガネを外して目元を指で押えている。
「2人ともおはよ」
「おはようございます」
「こはるんおはようございます!」
「疲れてるね2人とも」
「そうですね。疲れ目がひどいです」
「発売まで1ヶ月切ってますし、最後の追い込みデバック作業がしんどいですよね」
私たちのゲームはもう完成しており、あとはバグが起こっていないか正常に動作するかの最終確認を残すのみとなっていた。
プログラミング言語のバグを探す作業は根気強さが必要だし、いよいよリリースとなるとより精密さが問われる。
ゲームチームの人たちはほぼ全員自分が携わった部分の修正作業に今は追われている感じだ。
私もまたしばらくはその作業に追われる日々になりそうだが、販売まであと少しのため全力で駆け抜ける。
「みんなおはよう」
「翔くんおはよ」
いつものように出勤してきた翔くんは私の隣の椅子に腰をかけた。
すぐに作業に取りかかれるようパソコンの電源をつけて、両腕を真上に伸ばし大きく伸びをする。
「翔くん昨日は楽しかった?」
「え、昨日?なんのこと?」
「ん?昨日は伊織くんと出かけてたんだよね?」
「⋯⋯⋯あー、うんそう!出かけてた!」
一瞬キョトンとした顔で私を見つめる翔くんだったがすぐにいつも通りの表情に戻り大きく頭を振ってうなづいた。
少し大袈裟にも取れる態度に少しの違和感を覚える。
(察しのいい翔くんなのに私の問いかけに一瞬間があったのが気になる⋯⋯)
「昨日は何してたの?」
「え?!えーとね、伊織からは聞いてないの?」
「⋯⋯伊織くんは2人でラーメン食べに行ったって言ってたけど」
「あーそうそう。ラーメン!食べたよ美味しかったな~」
(やっぱり嘘ついてる⋯⋯)
昨日の夜、確かに伊織くんは翔くんと出かけたと話してきてくれたが何をしたのか聞いた時、蕎麦を食べたと言っていた。
翔くんのあの間が気になってカマをかけたがまさかこんな簡単に嘘がバレるとは。
だとしたらなぜ伊織くんは翔くんと出かけたなんて嘘をついたんだろう。
伊織くんのことだから浮気の類では絶対なさそうだし。
こういうタイミングで伊織くんの浮気を疑わないでいられるのも、日頃からたくさんの愛をくれて信頼を築いてきてくれた伊織くんの行動あってのことだろう。
「翔くんちょっといいかな?」
「えっと、何かな?!」
グイッと距離を詰めて翔くんに寄ると少しだけ困ったように眉を八の字にさせる。
私に質問攻めにされるとまずいということが分かっているからだろう。
「怒ってないから素直に教えてね」
「え、もはやそれは怒ってない?絶対怒ってるよね?なんか顔が怖いんだけど、いつもの心春ちゃんより数倍怖いんだけど!」
あからさまに私から離れようと椅子を引こうとするがそれを腕でガシッと止めて離れられないようにする。
どうせ伊織くんに聞いてもはぐらかすだけだろうし、翔くんに聞くのが1番手っ取り早いはずだ。
身体を縮こませ背筋をピンと伸ばし叱られ待ちをしているような翔くん。
そこまで私は怖い顔をしていないと思うのだが。
「昨日、翔くんは伊織くんと会っていませんね?」
「はい?!あ、いいえ!会っています!」
「いえ、あなたは嘘をついています。伊織くんに話を合わせてくれなんて言われたんでしょう」
「まさか!そんなはずございません」
(なぜお互い敬語になってるんだろうか)
しかも翔くんの喋り方が変になっている。
伊織くんのために嘘をついてくれるのは翔くんの優しさだし、誰も傷つかない嘘だと分かっているからだろう。
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