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心春のわがままと伊織の嘘 3
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私はふと最近考えていることを寧々ちゃんに相談するか迷っていた。
私と伊織くんの始まりの関係を知っている寧々ちゃんだからこそ相談する意味があるのではないかとも思う。
「心春ってすごく分かりやすいよね」
「えっ」
「何か言い出そうとする時、すごく分かりやすい。でもいいよゆっくりで、私はいつまでも待ってるし」
無理に聞き出そうとせず私から話すのを待ってくれるのが寧々ちゃんの優しさだった。
時と場合によって空気を読んでくれるところが本当に寧々ちゃんのすごいところだと思う。
「私と伊織くんって恋愛して結婚した訳じゃないでしょ?私は冬麻の学費のために伊織くんと結婚することにしたのが始まりだったけど、一緒に過ごすにつれて本当に好きになって今はそれをちゃんと伝えられるようになった」
「うん、そうだったね」
「そんな私たちがもうすぐ結婚して1年が経とうとしていて私の中にわがままな気持ちが生まれてきたの」
「わがまま?」
一呼吸おいてティラミスをスプーンですくい口に運ぶ。
ほどよい苦味とほんのり甘いマスカルポーネの味が広がってとても美味しい。
寧々ちゃんは私の表情の真剣さに応えるように真っ直ぐ目を見つめながら話を聞いてくれた。
こんなこと話せるのは寧々ちゃんしかいない。
「私にも家族ができたらなって⋯⋯でもそれってわがままかな。始まりがあんな感じだし付き合ってる期間もないに等しいし、それなのにこんなこと思うのって重いかな?」
「んーそうだな⋯⋯⋯」
少しだけナイーブな話だと思うしきっと寧々ちゃんの中でもどんな言葉を使うべきなのか悩んでいるんだろう。
私は静かに寧々ちゃんの言葉を待った。
「子供のことは私がどうこう言えることじゃないから東雲くんと話すのが1番だと思うよ」
「うん⋯⋯⋯」
「だけどそれを言ってわがままだと思うような人ではないのは確かなんじゃない?」
「そうかな?」
「うん。だってあんなにかっこいいし仕事もできて女性関係には困らないはずなのに、高校からずっと一途に心春を想ってたんだよ?東雲くんって相当拗らせてるだろうし独占欲強めじゃんどう見ても」
笑って話す寧々ちゃんに私の気持ちが少しだけ軽くなる。
最大限私を配慮してくれているその言葉の数々に心がじんわりと温かくなっていった。
「誰から見ても間違いなく心春を特別に思ってるし、心春のことしか見えてないし、心春を溺愛してる。世界で1番愛してる心春からそんなこと言われたら泣いて喜ぶんじゃない?」
「伊織くんが泣く姿なんて想像できないな⋯」
冬麻は弟でお義父さんたちも家族だけど、私自身の家族というものに憧れがある。
それが伊織くんとの家族だったらきっと最高に幸せだろうしずっと笑って過ごせるんだろうな、とさえ簡単に想像がついた。
いつかそんなふうになれたらいいな、と思っていたことが一緒に暮らす時間が長くなり、伊織くんからの愛をこれでもかと受け取ったことによって私の中にそんな想いが芽生える。
「東雲くんにはもっと自分の気持ち伝えていいんじゃない?今まで心春が冬麻くんを支えようと頑張ってきたことも知ってるんだし、わがままたくさん言うほど嬉しいって思ってくれる人だと思うけどな」
似たようなことを翔くんにも言われたことを思い出した。
伊織くんは私のわがままを愛しいと思える人だと、そういう風に彼にも言われたんだ。
私がただ怖がっているだけで、きっとそう言えば伊織くんは喜んで受け入れてくれるだろう。
だけどまだ今じゃない、と思われていたらなんて考えると不安になり言葉にすることができなくなる。
「心春って人の変化にはすぐに気づくのに自分のことになるとほんとポンコツになるわよね」
「ぽ、ポンコツ?!」
「自分のこともっと考えていいんだよ。東雲くんと結婚してもう1人じゃないんだから、1人で冬麻くんを守るわけじゃなくなったんだよ。だから自分の幸せ、もっとたくさん考えていいの」
寧々ちゃんの言葉がやけに優しく聞こえて思わず涙が溢れそうになるのをティラミスを口に運び紛らわす。
いろんなことを共有してきた寧々ちゃんだからか、素直に私の心に染み込んできた。
いつも寧々ちゃんには助けられている。
今回もまた寧々ちゃんの真っ直ぐな言葉に私は救われて、また前を向こうと思えた。
伊織くんに話してみよう。
きっと伊織くんなら真正面から私の話を受け止めてくれるはずだ。
私と伊織くんの始まりの関係を知っている寧々ちゃんだからこそ相談する意味があるのではないかとも思う。
「心春ってすごく分かりやすいよね」
「えっ」
「何か言い出そうとする時、すごく分かりやすい。でもいいよゆっくりで、私はいつまでも待ってるし」
無理に聞き出そうとせず私から話すのを待ってくれるのが寧々ちゃんの優しさだった。
時と場合によって空気を読んでくれるところが本当に寧々ちゃんのすごいところだと思う。
「私と伊織くんって恋愛して結婚した訳じゃないでしょ?私は冬麻の学費のために伊織くんと結婚することにしたのが始まりだったけど、一緒に過ごすにつれて本当に好きになって今はそれをちゃんと伝えられるようになった」
「うん、そうだったね」
「そんな私たちがもうすぐ結婚して1年が経とうとしていて私の中にわがままな気持ちが生まれてきたの」
「わがまま?」
一呼吸おいてティラミスをスプーンですくい口に運ぶ。
ほどよい苦味とほんのり甘いマスカルポーネの味が広がってとても美味しい。
寧々ちゃんは私の表情の真剣さに応えるように真っ直ぐ目を見つめながら話を聞いてくれた。
こんなこと話せるのは寧々ちゃんしかいない。
「私にも家族ができたらなって⋯⋯でもそれってわがままかな。始まりがあんな感じだし付き合ってる期間もないに等しいし、それなのにこんなこと思うのって重いかな?」
「んーそうだな⋯⋯⋯」
少しだけナイーブな話だと思うしきっと寧々ちゃんの中でもどんな言葉を使うべきなのか悩んでいるんだろう。
私は静かに寧々ちゃんの言葉を待った。
「子供のことは私がどうこう言えることじゃないから東雲くんと話すのが1番だと思うよ」
「うん⋯⋯⋯」
「だけどそれを言ってわがままだと思うような人ではないのは確かなんじゃない?」
「そうかな?」
「うん。だってあんなにかっこいいし仕事もできて女性関係には困らないはずなのに、高校からずっと一途に心春を想ってたんだよ?東雲くんって相当拗らせてるだろうし独占欲強めじゃんどう見ても」
笑って話す寧々ちゃんに私の気持ちが少しだけ軽くなる。
最大限私を配慮してくれているその言葉の数々に心がじんわりと温かくなっていった。
「誰から見ても間違いなく心春を特別に思ってるし、心春のことしか見えてないし、心春を溺愛してる。世界で1番愛してる心春からそんなこと言われたら泣いて喜ぶんじゃない?」
「伊織くんが泣く姿なんて想像できないな⋯」
冬麻は弟でお義父さんたちも家族だけど、私自身の家族というものに憧れがある。
それが伊織くんとの家族だったらきっと最高に幸せだろうしずっと笑って過ごせるんだろうな、とさえ簡単に想像がついた。
いつかそんなふうになれたらいいな、と思っていたことが一緒に暮らす時間が長くなり、伊織くんからの愛をこれでもかと受け取ったことによって私の中にそんな想いが芽生える。
「東雲くんにはもっと自分の気持ち伝えていいんじゃない?今まで心春が冬麻くんを支えようと頑張ってきたことも知ってるんだし、わがままたくさん言うほど嬉しいって思ってくれる人だと思うけどな」
似たようなことを翔くんにも言われたことを思い出した。
伊織くんは私のわがままを愛しいと思える人だと、そういう風に彼にも言われたんだ。
私がただ怖がっているだけで、きっとそう言えば伊織くんは喜んで受け入れてくれるだろう。
だけどまだ今じゃない、と思われていたらなんて考えると不安になり言葉にすることができなくなる。
「心春って人の変化にはすぐに気づくのに自分のことになるとほんとポンコツになるわよね」
「ぽ、ポンコツ?!」
「自分のこともっと考えていいんだよ。東雲くんと結婚してもう1人じゃないんだから、1人で冬麻くんを守るわけじゃなくなったんだよ。だから自分の幸せ、もっとたくさん考えていいの」
寧々ちゃんの言葉がやけに優しく聞こえて思わず涙が溢れそうになるのをティラミスを口に運び紛らわす。
いろんなことを共有してきた寧々ちゃんだからか、素直に私の心に染み込んできた。
いつも寧々ちゃんには助けられている。
今回もまた寧々ちゃんの真っ直ぐな言葉に私は救われて、また前を向こうと思えた。
伊織くんに話してみよう。
きっと伊織くんなら真正面から私の話を受け止めてくれるはずだ。
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