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私の家族 4
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3人で他愛もない話をしながら最高に美味しいハンバーグをどんどん頬張っていく。
美味しすぎる食べ物を食べる間というのは自然と笑顔になるし幸せになれる。
「あ、そういえば姉ちゃんに報告なんだけど」
「ん、なに?」
「無事にね臨床検査技師の国家試験受かりました」
「え⋯⋯?!」
さらっとした報告に私は唖然としたままリアクションをとることができない。
1ヶ月ほど前に国家試験があったことは知っていたがこんなナチュラルに受かったことを報告されるとは。
(そんな普通に言うこと?!もっと言い方あるのに⋯!)
「あ、え、あのすごい、ほんと?!おめでとう!!」
「すごいな冬麻くん」
「ありがとうございます伊織さん。ってか姉ちゃんはテンパりすぎだって」
「だって、そりゃテンパるでしょ?!だって国家試験だよ!?すごいよ本当に」
冬麻が臨床検査技師になるために私は今まで必死に働いてきた。
その道の1つが叶ったと言っても過言ではないこの状況に嬉しすぎて思わず目元に涙が溜まる。
「姉ちゃん⋯⋯」
「ごめん⋯その、嬉しくて」
「ありがとう姉ちゃん。姉ちゃんのおかげだよ試験受かったのは」
「私、何もしてないよ⋯っ」
「ううん、姉ちゃんがずっと頑張って働いて俺を学校に行かせてくれたから、だから受かったんだよ」
私の中での目標に冬麻を卒業させる、というものがあった。
唯一の家族である冬麻を絶対に幸せにすると、姉として決めていたんだ。
その中での試験に受かったとの報告は私にとってはこれ以上に嬉しいことはなくて、まるで自分の事のように幸せだった。
伊織くんも心から祝福してくれているようで冬麻も嬉しそうに笑っている。
「姉ちゃんには直接伝えたくて、これからって日なのにこんなタイミングになっちゃってごめん」
「ううん、おかげですごく元気出た。これから両親に会うのも前向きになれるよ」
「試験受かったのがゴールじゃないから、あとは就職先どこにするか決めるだけ。内定2個もらっててまだ考えてるから、もうちょっと俺の面倒見ててね」
「これからもだよ。冬麻は弟なんだからずっと一緒だよ」
ハンバーグを口の頬張るとさっきよりもずっとそれが美味しく感じた。
冬麻もまた1つ報告ができたことで気持ちが楽になったのか先程よりも勢いよくご飯を頬張っている。
「帰ったらお祝いしよう」
「え、そんな大袈裟ですよ!就職先決まったわけじゃないんですから」
「就職先が決まった時はまたお祝いしよう。何度だってお祝いさせてくれよ。冬麻くんは心春の大切な弟で俺の家族なんだから」
伊織くんが夫で心から良かったと思う。
この人と家族になれたことが私にとっても冬麻にとっても何よりの宝物だ。
私は私の家族と共に生きていく。
今日はそれを伝えるんだ、と改めて決意を固めるのだった。
***
夕方になりいよいよ約束の時間がやって来た。
あまり暗い雰囲気になりたくなくてあえて会う場所としてカフェを指定している。
ただオープンになりすぎていないカフェがよかったため、仕切りなどがありパーソナルスペースを確保できるようなカフェをチョイスした。
タクシーで約束のカフェまで向かい車から降りると、ふーっと深呼吸をする。
数年ぶりに会う両親はどんな姿をしているのか想像がつかないし、正直好んで会いたい相手ではないため足取りは重い。
更には緊張も相まってため息まで出てしまう始末だ。
「冬麻くん。帰ったら何食べたい?」
「えっ?」
「楽しいことを考えよう。帰ったら3人でお祝いだ。そしたら少しだけ気持ち楽にならないか?」
「なります。姉ちゃんと伊織さんと楽しい時間過ごせると思うと、すげー楽しみになりました」
2人の会話を聞いていると私も自然と気持ちが軽くなった。
伊織くんがいてくれて本当に良かった。
私と冬麻だけだったらこんなふうな気持ちにはなれていなかっただろう。
意を決した私たちは3人揃ってカフェに入り名前を伝えた。
一応予約していたためスムーズに案内される。
スタッフの方に案内された先には既に男女が2人座っており、気まずそうに会話もなくお互い違う方に視線を向けていた。
私たちに気づいた2人はこの空気が変わることにホッとしたのか表情が少しだけ和らぐ。
両親は隣同士に座っているがその間は絶妙な距離が空いており、私たち3人は向かい側に座った。
美味しすぎる食べ物を食べる間というのは自然と笑顔になるし幸せになれる。
「あ、そういえば姉ちゃんに報告なんだけど」
「ん、なに?」
「無事にね臨床検査技師の国家試験受かりました」
「え⋯⋯?!」
さらっとした報告に私は唖然としたままリアクションをとることができない。
1ヶ月ほど前に国家試験があったことは知っていたがこんなナチュラルに受かったことを報告されるとは。
(そんな普通に言うこと?!もっと言い方あるのに⋯!)
「あ、え、あのすごい、ほんと?!おめでとう!!」
「すごいな冬麻くん」
「ありがとうございます伊織さん。ってか姉ちゃんはテンパりすぎだって」
「だって、そりゃテンパるでしょ?!だって国家試験だよ!?すごいよ本当に」
冬麻が臨床検査技師になるために私は今まで必死に働いてきた。
その道の1つが叶ったと言っても過言ではないこの状況に嬉しすぎて思わず目元に涙が溜まる。
「姉ちゃん⋯⋯」
「ごめん⋯その、嬉しくて」
「ありがとう姉ちゃん。姉ちゃんのおかげだよ試験受かったのは」
「私、何もしてないよ⋯っ」
「ううん、姉ちゃんがずっと頑張って働いて俺を学校に行かせてくれたから、だから受かったんだよ」
私の中での目標に冬麻を卒業させる、というものがあった。
唯一の家族である冬麻を絶対に幸せにすると、姉として決めていたんだ。
その中での試験に受かったとの報告は私にとってはこれ以上に嬉しいことはなくて、まるで自分の事のように幸せだった。
伊織くんも心から祝福してくれているようで冬麻も嬉しそうに笑っている。
「姉ちゃんには直接伝えたくて、これからって日なのにこんなタイミングになっちゃってごめん」
「ううん、おかげですごく元気出た。これから両親に会うのも前向きになれるよ」
「試験受かったのがゴールじゃないから、あとは就職先どこにするか決めるだけ。内定2個もらっててまだ考えてるから、もうちょっと俺の面倒見ててね」
「これからもだよ。冬麻は弟なんだからずっと一緒だよ」
ハンバーグを口の頬張るとさっきよりもずっとそれが美味しく感じた。
冬麻もまた1つ報告ができたことで気持ちが楽になったのか先程よりも勢いよくご飯を頬張っている。
「帰ったらお祝いしよう」
「え、そんな大袈裟ですよ!就職先決まったわけじゃないんですから」
「就職先が決まった時はまたお祝いしよう。何度だってお祝いさせてくれよ。冬麻くんは心春の大切な弟で俺の家族なんだから」
伊織くんが夫で心から良かったと思う。
この人と家族になれたことが私にとっても冬麻にとっても何よりの宝物だ。
私は私の家族と共に生きていく。
今日はそれを伝えるんだ、と改めて決意を固めるのだった。
***
夕方になりいよいよ約束の時間がやって来た。
あまり暗い雰囲気になりたくなくてあえて会う場所としてカフェを指定している。
ただオープンになりすぎていないカフェがよかったため、仕切りなどがありパーソナルスペースを確保できるようなカフェをチョイスした。
タクシーで約束のカフェまで向かい車から降りると、ふーっと深呼吸をする。
数年ぶりに会う両親はどんな姿をしているのか想像がつかないし、正直好んで会いたい相手ではないため足取りは重い。
更には緊張も相まってため息まで出てしまう始末だ。
「冬麻くん。帰ったら何食べたい?」
「えっ?」
「楽しいことを考えよう。帰ったら3人でお祝いだ。そしたら少しだけ気持ち楽にならないか?」
「なります。姉ちゃんと伊織さんと楽しい時間過ごせると思うと、すげー楽しみになりました」
2人の会話を聞いていると私も自然と気持ちが軽くなった。
伊織くんがいてくれて本当に良かった。
私と冬麻だけだったらこんなふうな気持ちにはなれていなかっただろう。
意を決した私たちは3人揃ってカフェに入り名前を伝えた。
一応予約していたためスムーズに案内される。
スタッフの方に案内された先には既に男女が2人座っており、気まずそうに会話もなくお互い違う方に視線を向けていた。
私たちに気づいた2人はこの空気が変わることにホッとしたのか表情が少しだけ和らぐ。
両親は隣同士に座っているがその間は絶妙な距離が空いており、私たち3人は向かい側に座った。
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