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伊織side 〈自分に出来ること〉 1
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会長に交換制度を提案し試用期間が始まったのは昨日のことだ。
心春が所属するチームにも1人、kisaragiからやって来たプログラマーがいる。
如月の令嬢と結婚せず心春と共にいられるように考えた施策のため失敗は許されないが、1つアクシデントが発生した。
昨日は歓迎会を兼ねて心春がチームメンバーと飲みに行ったが、迎えに行った心春の様子がおかしかった。
しっかりと話を聞くと、今回やって来た大沢康太は心春と同じチームに所属する高柳尚の大学の同級生らしく彼の努力を奪い自分のものとした、とのことだ。
珍しく心春が怒っていてそれが俺のためじゃないことが少し残念だが、そんな心春も俺は好きだった。
そして結婚してから心春が俺にお願いごとをしてきたのはこれで2度目だ。
俺以外の男のためのお願いだったため少し複雑な気持ちではあるが、俺の1番はいつだって心春のため快くそのお願いを引き受ける。
心春からのお願いは1つで、"大沢康太について調べて欲しい"ということだ。
正直他社に所属する人物の機密情報を手に入れるのは骨が折れるし、簡単じゃないことは分かりきっている。
それでもやろうと思えたのは心春が必死だったからだ。
それに高柳尚は心春が大切にするチームメンバーの1人で、仕事の話をする時もすごく嬉しそうに彼らのことを話してくれる。
自分以外の男のために必死になる姿には正直嫉妬するが、心春が大切にするものを俺も大切にしたい。
朝からそんな小さな嫉妬を心春にぶつけ激しく口付けを交わして家を出た。
離れていてもいつだってそのキスを思い出し誰にそんな顔をさせられたのか思い出せるように言葉を残している。
しかし警戒すべきは大沢康太だ。
結婚していて夫が俺だと知っていながら心春を口説くなんてどうかしている。
俺の心春に手を出したことを必ず後悔させてやる、そう俺は密かに誓っていた。
会社用のスマートフォンを手に取った俺はある人物に電話をかける。
するとその人物は俺と会うことを了承してくれたため1時間後に会うことになった。
約束の場所に指定されたのは株式会社kisaragiの本社の近くにある落ち着きのあるカフェだ。
カフェに入り辺りを見渡すと既にその人物は席に着いており一足先にコーヒーを飲んでいた。
ゆっくりと近づき目の前に座ると顔を上げたその視線とバチッと絡み合う。
「まさかあなたからの呼び出しがあるとは思ってもいませんでした」
「お忙しいのにすみません。呼び出してしまって」
俺が連絡したのはkisaragiの令嬢である如月麗華だった。
彼女はkisaragiの情報システム部門で働いているため、様々な人物の機密情報などを閲覧出来る立場にいる。
席に座った俺の元にやって来た男性スタッフにホットコーヒーを注文し、目の前で優雅にコーヒーを飲む彼女に視線を向けた。
彼女と心春はどうやら友人関係になったようで、嬉しそうにそれを話してくれたのを思い出すと自然と口角が上がってしまう。
「心春さんのことでも思い出しましたか?」
「いえ別に」
「分かりやすくニヤついていましたよ。あなたがそんなふうに笑うなんて心春さんのことを考えてる時しかないんじゃないです?」
心春を想うだけで自然と表情が緩んでしまうくらいには俺の心は心春でいっぱいだ。
それを彼女に悟られても不思議と嫌な気はしなかった。
「私に連絡なんて、どうかしましたか?」
「昨日から交換制度の試験運用が行われていることはご存知ですよね?」
「はい。あなたのおかげで私自身も自分の道を歩めているので感謝しています。それがどうかされましたか?」
「うちにトレードで来ているプログラマーの1人に気になる点がありまして少し情報をいただきたいんです」
「⋯⋯機密情報を漏らせということですか?」
「⋯⋯ハッキリ申し上げるとそういうことになるかもしれません」
彼女はバカにしないで、と言わんばかりにコーヒーを口に運び少し乱暴にカップを置いた。
失礼なことを言っているのは重々承知している。
それでも彼女しか頼る人物がいないのは事実だ。
「まずは理由を聞きましょうか」
「⋯⋯心春の所属するチームにそちらからやって来たプログラマーの大学の同級生がいまして、その者がうちのプログラマーの学生時代の作品を盗作した、という情報が入りました。しかもその盗作したデータを就活時に利用したとか」
「それで?」
「それが大沢康太、というプログラマーなのですが、そちらの制作部門の主軸となる人物ですよね?その者に本当にそのような疑惑があるのであれば晴らしておくに越したことはないかと思うのですが⋯⋯」
俺の話を聞いた彼女は腕を組み思考を巡らせているようだ。
丁度そのタイミングでホットコーヒーが運ばれてきたためそれを受け取り静かに口をつけた。
心春が所属するチームにも1人、kisaragiからやって来たプログラマーがいる。
如月の令嬢と結婚せず心春と共にいられるように考えた施策のため失敗は許されないが、1つアクシデントが発生した。
昨日は歓迎会を兼ねて心春がチームメンバーと飲みに行ったが、迎えに行った心春の様子がおかしかった。
しっかりと話を聞くと、今回やって来た大沢康太は心春と同じチームに所属する高柳尚の大学の同級生らしく彼の努力を奪い自分のものとした、とのことだ。
珍しく心春が怒っていてそれが俺のためじゃないことが少し残念だが、そんな心春も俺は好きだった。
そして結婚してから心春が俺にお願いごとをしてきたのはこれで2度目だ。
俺以外の男のためのお願いだったため少し複雑な気持ちではあるが、俺の1番はいつだって心春のため快くそのお願いを引き受ける。
心春からのお願いは1つで、"大沢康太について調べて欲しい"ということだ。
正直他社に所属する人物の機密情報を手に入れるのは骨が折れるし、簡単じゃないことは分かりきっている。
それでもやろうと思えたのは心春が必死だったからだ。
それに高柳尚は心春が大切にするチームメンバーの1人で、仕事の話をする時もすごく嬉しそうに彼らのことを話してくれる。
自分以外の男のために必死になる姿には正直嫉妬するが、心春が大切にするものを俺も大切にしたい。
朝からそんな小さな嫉妬を心春にぶつけ激しく口付けを交わして家を出た。
離れていてもいつだってそのキスを思い出し誰にそんな顔をさせられたのか思い出せるように言葉を残している。
しかし警戒すべきは大沢康太だ。
結婚していて夫が俺だと知っていながら心春を口説くなんてどうかしている。
俺の心春に手を出したことを必ず後悔させてやる、そう俺は密かに誓っていた。
会社用のスマートフォンを手に取った俺はある人物に電話をかける。
するとその人物は俺と会うことを了承してくれたため1時間後に会うことになった。
約束の場所に指定されたのは株式会社kisaragiの本社の近くにある落ち着きのあるカフェだ。
カフェに入り辺りを見渡すと既にその人物は席に着いており一足先にコーヒーを飲んでいた。
ゆっくりと近づき目の前に座ると顔を上げたその視線とバチッと絡み合う。
「まさかあなたからの呼び出しがあるとは思ってもいませんでした」
「お忙しいのにすみません。呼び出してしまって」
俺が連絡したのはkisaragiの令嬢である如月麗華だった。
彼女はkisaragiの情報システム部門で働いているため、様々な人物の機密情報などを閲覧出来る立場にいる。
席に座った俺の元にやって来た男性スタッフにホットコーヒーを注文し、目の前で優雅にコーヒーを飲む彼女に視線を向けた。
彼女と心春はどうやら友人関係になったようで、嬉しそうにそれを話してくれたのを思い出すと自然と口角が上がってしまう。
「心春さんのことでも思い出しましたか?」
「いえ別に」
「分かりやすくニヤついていましたよ。あなたがそんなふうに笑うなんて心春さんのことを考えてる時しかないんじゃないです?」
心春を想うだけで自然と表情が緩んでしまうくらいには俺の心は心春でいっぱいだ。
それを彼女に悟られても不思議と嫌な気はしなかった。
「私に連絡なんて、どうかしましたか?」
「昨日から交換制度の試験運用が行われていることはご存知ですよね?」
「はい。あなたのおかげで私自身も自分の道を歩めているので感謝しています。それがどうかされましたか?」
「うちにトレードで来ているプログラマーの1人に気になる点がありまして少し情報をいただきたいんです」
「⋯⋯機密情報を漏らせということですか?」
「⋯⋯ハッキリ申し上げるとそういうことになるかもしれません」
彼女はバカにしないで、と言わんばかりにコーヒーを口に運び少し乱暴にカップを置いた。
失礼なことを言っているのは重々承知している。
それでも彼女しか頼る人物がいないのは事実だ。
「まずは理由を聞きましょうか」
「⋯⋯心春の所属するチームにそちらからやって来たプログラマーの大学の同級生がいまして、その者がうちのプログラマーの学生時代の作品を盗作した、という情報が入りました。しかもその盗作したデータを就活時に利用したとか」
「それで?」
「それが大沢康太、というプログラマーなのですが、そちらの制作部門の主軸となる人物ですよね?その者に本当にそのような疑惑があるのであれば晴らしておくに越したことはないかと思うのですが⋯⋯」
俺の話を聞いた彼女は腕を組み思考を巡らせているようだ。
丁度そのタイミングでホットコーヒーが運ばれてきたためそれを受け取り静かに口をつけた。
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