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心春の怒り 1
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翌日、いつものように朝食を準備し伊織くんはそれを美味しそうに食べていた。
今日は和食で焼き魚とだし巻き玉子、お味噌汁とご飯という典型的なメニューを選んだ。
「昨日はよく眠れたか?」
「うん。伊織くんがいてくれたからね」
「ならよかった。珍しく怒ってたからな」
「ごめんね。仕事で疲れてたはずなのに私の話聞かせちゃって」
「謝らなくていいよ。どんな話だって心春との会話は全部大事なんだから。これからもなんでも話してくれ」
お味噌汁を飲みながら優しく微笑む伊織くん。
私は尚くんから聞いた話にあまりにも怒りが収まらなくて、自分の気持ちを整理するためにも伊織くんにぐちゃぐちゃな感情をぶつけていた。
うまく言葉にできない感情も伊織くんは優しく頷きながら聞いてくれて、その広い心に私は救われた。
交換制度は伊織くんやお義父さんが考えてくれた施策のため私たちの未来のためにも成功させたいものだ。
そのためこの話は伊織くんも全く無関係というわけではない。
この施策の責任者として受け入れた社員の責任もあるだろうし、第一自分の会社のメンバーを守るのも伊織くんの仕事だ。
「高柳くんのためになんでそこまでするんだ?」
「⋯⋯⋯なんか、弟みたいなんだよね」
「冬麻くんみたい?」
「それに今までたくさん助けられた。いろんなことに力になってくれたから、今度は私がそうなりたいの」
尚くんだけじゃない。
翔くんも雛菊ちゃんもみんな困った時にいつも私を助けてくれる。
大事なチームメンバーだ。
だから私はチームメンバーが何か困っていたら全力で力になりたいし、尚くんじゃなくても同じことをしてたと思う。
専務である伊織くんの力を借りるのはずるいと言われるかもしれないけど、そう思われてもいいと思えるくらい私は佐藤チームのみんなのことがいつの間にか好きになっていた。
「なんか妬けるけどな」
「え、なんで」
「心春の中に別の男がいるのが妬ける。ずっと俺のことだけ考えてて欲しいけど、でもそういう所が俺は好きだよ」
「伊織くん⋯⋯」
「俺が好きになった心春はそういう人だ。けど、大沢康太。彼のことはきっちり落とし前つけないとな」
彼の名前を呟いた伊織くんの背後からは真っ黒ならオーラが見えた気がした。
明らかに不機嫌で怒っているのがすぐに分かる。
「俺に喧嘩売ってくるなんて相当自信があるようだ。心春を俺から奪おうとするなんて、どうなるか目に物見せてやる」
「こ、怖いよオーラが。人道外れたこととかしちゃだめだよ」
「いくらなんでもそんなことはしない。俺の事そんなふうに思ってるのか心春は」
そんな会話をしながら2人で小さく笑い合う。
家に帰れば伊織くんがいるし彼が私の1番の味方でいてくれることがどれだけ心強いことなのか改めて実感した。
朝ご飯を綺麗に食べ終えた伊織くんはいつものように身支度を整え、完璧な姿で会社へ向かおうとする。
私もまた同じように玄関まで見送るためその背中を追いかけると、靴を履く前に伊織くんがこちらを振り返った。
そしてジリジリと距離を詰められ私の身体は壁と伊織くんで挟まれ身動きが取れない。
見上げるその顔は小さく微笑まれているが瞳の奥には雄っぽさを隠しているような気がして心臓がドクンと高鳴る。
「大沢康太に簡単に触れられたらだめだからな」
「うん」
「心春は俺だけの心春だ。身も心も全部」
伊織くんの甘い言葉は私の耳を通り身体の芯を蕩けさせていくように広がっていく。
きゅんと甘く痺れた下腹部が切なく疼くのは伊織くんのそんな言葉のせいだった。
長い指が私の頬を撫でそのまま首元で止まるとゆっくりと引き寄せられ唇が近づく。
キスされるのが分かり私は応えるようにゆっくりと目を閉じた。
触れるだけの口付けはだんだんと啄むように私の唇を何度も奪いそれに伴って激しさを増していく。
にゅるっと滑り込まされた舌は私の舌を絡め取り唾液が混ざり合った。
「んっんぁ」
「心春⋯もっと舌、出して」
「あ⋯⋯っ」
伊織くんのお願いを素直に聞き入れてしまうほど彼とのキスは気持ちよくて、自然ともっと、と欲してしまう自分がいた。
はしたなく舌を突き出した私を見た伊織くんは満足そうに微笑み、私の口内を激しく犯していく。
今日は和食で焼き魚とだし巻き玉子、お味噌汁とご飯という典型的なメニューを選んだ。
「昨日はよく眠れたか?」
「うん。伊織くんがいてくれたからね」
「ならよかった。珍しく怒ってたからな」
「ごめんね。仕事で疲れてたはずなのに私の話聞かせちゃって」
「謝らなくていいよ。どんな話だって心春との会話は全部大事なんだから。これからもなんでも話してくれ」
お味噌汁を飲みながら優しく微笑む伊織くん。
私は尚くんから聞いた話にあまりにも怒りが収まらなくて、自分の気持ちを整理するためにも伊織くんにぐちゃぐちゃな感情をぶつけていた。
うまく言葉にできない感情も伊織くんは優しく頷きながら聞いてくれて、その広い心に私は救われた。
交換制度は伊織くんやお義父さんが考えてくれた施策のため私たちの未来のためにも成功させたいものだ。
そのためこの話は伊織くんも全く無関係というわけではない。
この施策の責任者として受け入れた社員の責任もあるだろうし、第一自分の会社のメンバーを守るのも伊織くんの仕事だ。
「高柳くんのためになんでそこまでするんだ?」
「⋯⋯⋯なんか、弟みたいなんだよね」
「冬麻くんみたい?」
「それに今までたくさん助けられた。いろんなことに力になってくれたから、今度は私がそうなりたいの」
尚くんだけじゃない。
翔くんも雛菊ちゃんもみんな困った時にいつも私を助けてくれる。
大事なチームメンバーだ。
だから私はチームメンバーが何か困っていたら全力で力になりたいし、尚くんじゃなくても同じことをしてたと思う。
専務である伊織くんの力を借りるのはずるいと言われるかもしれないけど、そう思われてもいいと思えるくらい私は佐藤チームのみんなのことがいつの間にか好きになっていた。
「なんか妬けるけどな」
「え、なんで」
「心春の中に別の男がいるのが妬ける。ずっと俺のことだけ考えてて欲しいけど、でもそういう所が俺は好きだよ」
「伊織くん⋯⋯」
「俺が好きになった心春はそういう人だ。けど、大沢康太。彼のことはきっちり落とし前つけないとな」
彼の名前を呟いた伊織くんの背後からは真っ黒ならオーラが見えた気がした。
明らかに不機嫌で怒っているのがすぐに分かる。
「俺に喧嘩売ってくるなんて相当自信があるようだ。心春を俺から奪おうとするなんて、どうなるか目に物見せてやる」
「こ、怖いよオーラが。人道外れたこととかしちゃだめだよ」
「いくらなんでもそんなことはしない。俺の事そんなふうに思ってるのか心春は」
そんな会話をしながら2人で小さく笑い合う。
家に帰れば伊織くんがいるし彼が私の1番の味方でいてくれることがどれだけ心強いことなのか改めて実感した。
朝ご飯を綺麗に食べ終えた伊織くんはいつものように身支度を整え、完璧な姿で会社へ向かおうとする。
私もまた同じように玄関まで見送るためその背中を追いかけると、靴を履く前に伊織くんがこちらを振り返った。
そしてジリジリと距離を詰められ私の身体は壁と伊織くんで挟まれ身動きが取れない。
見上げるその顔は小さく微笑まれているが瞳の奥には雄っぽさを隠しているような気がして心臓がドクンと高鳴る。
「大沢康太に簡単に触れられたらだめだからな」
「うん」
「心春は俺だけの心春だ。身も心も全部」
伊織くんの甘い言葉は私の耳を通り身体の芯を蕩けさせていくように広がっていく。
きゅんと甘く痺れた下腹部が切なく疼くのは伊織くんのそんな言葉のせいだった。
長い指が私の頬を撫でそのまま首元で止まるとゆっくりと引き寄せられ唇が近づく。
キスされるのが分かり私は応えるようにゆっくりと目を閉じた。
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にゅるっと滑り込まされた舌は私の舌を絡め取り唾液が混ざり合った。
「んっんぁ」
「心春⋯もっと舌、出して」
「あ⋯⋯っ」
伊織くんのお願いを素直に聞き入れてしまうほど彼とのキスは気持ちよくて、自然ともっと、と欲してしまう自分がいた。
はしたなく舌を突き出した私を見た伊織くんは満足そうに微笑み、私の口内を激しく犯していく。
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