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尚の抱えるもの 5
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雛菊ちゃんが全員分の飲み物といくつかのおつまみを頼んでくれた。
少し待つと店員さんが飲み物やおつまみを運んできてくれる。
人気の生ハム、そしてチーズの盛り合わせそしてアルコールがテーブルに並んだ。
雛菊ちゃんも私と同じサングリアを頼んだようで、大沢くんは赤ワインを注文していた。
「翔たんいないですけど、ひとまず先に乾杯しちゃいましょう!大沢さんようこそ~」
「ありがとうございます」
4人でグラスを合わせるものの、当然尚くんと大沢くんのグラスが触れ合うことはなかった。
乾杯の時にグラスが触れ合わないことなんて不思議じゃなくて誰も気に止める人物はいない。
取り皿を片手に大沢くんが生ハムやチーズをお皿に分けてくれた。
それを差し出されお礼を言って受け取る。
「ありがとうございます」
「高柳さんのもどうぞ」
「⋯⋯⋯どうも」
心底不快そうにその取り皿を受け取った尚くんは少しだけ乱暴にテーブルに置いた。
雛菊ちゃんはその様子をチラッと確認していたがそんな空気を消すかのように笑顔で話しかけてくれる。
きっと雛菊ちゃんも違和感を感じ取っているはずだ。
それでもこの場の空気を重たくしないように気を利かせてくれているんだろう。
乾杯後、少しだけ談笑をしながらおつまみやお酒を楽しんでいると私のスマートフォンが鳴った。
そこに表示されているのは翔くんの名前で私は慌てて席を立ち上がり邪魔にならない通路でその電話に出る。
「もしもし翔くん?」
『ごめん心春ちゃん。ちょっと仕事でアクシデントがあってそっちに行けなくなった』
「仕事は大丈夫?手伝おうか?」
『それは大丈夫。大したことじゃないけど、みんなが歓迎会やってる間には間に合いそうになくて⋯⋯』
「分かった。みんなにも伝えておくね」
しばらく電話の向こうで翔くんが無言になった。
何かを言い出そうとしているようで私もまたそれを静かに待つ。
『尚のことなんだけど⋯⋯』
「うん。様子がおかしいのは気づいてたよ」
『やっぱり。俺も詳しくは話聞いてないから分からないんだけど、過去に何かあったっぽくて、知らずに彼をうちのチームで受け入れちゃったから尚には悪いことをしたと思ってる。俺がそっち行けないから、心春ちゃんに尚のこと頼みたいんだ』
「もちろんだよ。任せて」
『頼もしいな~。何かあったらいつでも連絡して。出れるようには常にしてるから』
「ありがとう。翔くんも頑張ってね」
電話を切った私はみんなの待つ席へ戻り、翔くんが来れなくなったことを伝える。
仕方ないね、と言いつつもどこかみんな寂しそうで翔くんの存在の大きさを感じた。
きっとそれを翔くんに話したら喜ぶだろうな、なんて思いながら今度教えてあげようと思う。
そんな中で沈黙を破ったのは大沢くんだった。
ワイングラスを片手に何かを企むような笑みを浮かべながら楽しそうに話す。
その笑みはとても柔らかくて人あたりの良さそうなものだが、どこか危なげな怪しさも感じて目が離せない。
「実は高柳さんと僕、大学の同級生なんですよ」
「え、そうだったんですか!なんで教えてくれなかったんですか~なおなお!」
「別に、言う必要ないかと思っただけです」
「同級生といえば翔たんとこはるんも高校の同級生なんですよね。あ、あとうちの会社の専務も3人同じですよね!」
「へぇ⋯⋯そうなんですね。同級生となると学生時代のエピソードとかもあるんですか?」
「まぁ、それなりに、ですかね」
赤ワインを口に運ぶ姿はとても絵になっており、傍から見ればその一連の動作を含めて美しいと誰もが思うだろう。
楽しいだけの空気ではない感じにどんどん変わっていくのが分かり、私も雛菊ちゃんもその変化をどうにか元に戻せないか試行錯誤する。
「高柳さんは大学の頃からすごく優秀でしたよ」
「昔の話はしなくていいですよ」
「なんでですか?あの話しなくていいんですか?盛り上がりますよきっと」
「っ!!」
(なんか嫌な感じ⋯⋯)
少し待つと店員さんが飲み物やおつまみを運んできてくれる。
人気の生ハム、そしてチーズの盛り合わせそしてアルコールがテーブルに並んだ。
雛菊ちゃんも私と同じサングリアを頼んだようで、大沢くんは赤ワインを注文していた。
「翔たんいないですけど、ひとまず先に乾杯しちゃいましょう!大沢さんようこそ~」
「ありがとうございます」
4人でグラスを合わせるものの、当然尚くんと大沢くんのグラスが触れ合うことはなかった。
乾杯の時にグラスが触れ合わないことなんて不思議じゃなくて誰も気に止める人物はいない。
取り皿を片手に大沢くんが生ハムやチーズをお皿に分けてくれた。
それを差し出されお礼を言って受け取る。
「ありがとうございます」
「高柳さんのもどうぞ」
「⋯⋯⋯どうも」
心底不快そうにその取り皿を受け取った尚くんは少しだけ乱暴にテーブルに置いた。
雛菊ちゃんはその様子をチラッと確認していたがそんな空気を消すかのように笑顔で話しかけてくれる。
きっと雛菊ちゃんも違和感を感じ取っているはずだ。
それでもこの場の空気を重たくしないように気を利かせてくれているんだろう。
乾杯後、少しだけ談笑をしながらおつまみやお酒を楽しんでいると私のスマートフォンが鳴った。
そこに表示されているのは翔くんの名前で私は慌てて席を立ち上がり邪魔にならない通路でその電話に出る。
「もしもし翔くん?」
『ごめん心春ちゃん。ちょっと仕事でアクシデントがあってそっちに行けなくなった』
「仕事は大丈夫?手伝おうか?」
『それは大丈夫。大したことじゃないけど、みんなが歓迎会やってる間には間に合いそうになくて⋯⋯』
「分かった。みんなにも伝えておくね」
しばらく電話の向こうで翔くんが無言になった。
何かを言い出そうとしているようで私もまたそれを静かに待つ。
『尚のことなんだけど⋯⋯』
「うん。様子がおかしいのは気づいてたよ」
『やっぱり。俺も詳しくは話聞いてないから分からないんだけど、過去に何かあったっぽくて、知らずに彼をうちのチームで受け入れちゃったから尚には悪いことをしたと思ってる。俺がそっち行けないから、心春ちゃんに尚のこと頼みたいんだ』
「もちろんだよ。任せて」
『頼もしいな~。何かあったらいつでも連絡して。出れるようには常にしてるから』
「ありがとう。翔くんも頑張ってね」
電話を切った私はみんなの待つ席へ戻り、翔くんが来れなくなったことを伝える。
仕方ないね、と言いつつもどこかみんな寂しそうで翔くんの存在の大きさを感じた。
きっとそれを翔くんに話したら喜ぶだろうな、なんて思いながら今度教えてあげようと思う。
そんな中で沈黙を破ったのは大沢くんだった。
ワイングラスを片手に何かを企むような笑みを浮かべながら楽しそうに話す。
その笑みはとても柔らかくて人あたりの良さそうなものだが、どこか危なげな怪しさも感じて目が離せない。
「実は高柳さんと僕、大学の同級生なんですよ」
「え、そうだったんですか!なんで教えてくれなかったんですか~なおなお!」
「別に、言う必要ないかと思っただけです」
「同級生といえば翔たんとこはるんも高校の同級生なんですよね。あ、あとうちの会社の専務も3人同じですよね!」
「へぇ⋯⋯そうなんですね。同級生となると学生時代のエピソードとかもあるんですか?」
「まぁ、それなりに、ですかね」
赤ワインを口に運ぶ姿はとても絵になっており、傍から見ればその一連の動作を含めて美しいと誰もが思うだろう。
楽しいだけの空気ではない感じにどんどん変わっていくのが分かり、私も雛菊ちゃんもその変化をどうにか元に戻せないか試行錯誤する。
「高柳さんは大学の頃からすごく優秀でしたよ」
「昔の話はしなくていいですよ」
「なんでですか?あの話しなくていいんですか?盛り上がりますよきっと」
「っ!!」
(なんか嫌な感じ⋯⋯)
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