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尚の抱えるもの 4
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本来だったら純粋に楽しめそうだが尚くんの話を聞くと彼のことが心配だった。
それを知らない翔くんは雛菊ちゃんと一緒に行けそうなお店を調べだしている。
チラッと尚くんの方を見ると私の視線に気づいたのか安心させるように小さく微笑んでくれた。
私の思いを感じ取ってくれたのか、無言で大丈夫、と言われているようだ。
「嬉しいです。僕のために歓迎会やってくれるなんて」
「大したことじゃないけど、ご飯くらいはね」
「ふふふ。楽しみです。ね、なおなお!」
「あ、はい。そうですね」
みんなでご飯に行くことになったため、夜ご飯が作れない旨を伊織くんにメッセージを送る。
すると相変わらずすぐに返信が返ってきた。
"分かった。楽しんでおいで。帰りは迎えに行くから連絡待ってる"
その文章からも過保護さが伝わってきてしっかりと愛されていることがちゃんと分かる。
その後は穏やかに時間が過ぎていき、私は雛菊ちゃんと相談しながら制作を進めていった。
翔くんたちも大沢くんのプログラミングの知識や言語のことなどディスカッションを繰り返し、交換制度の時間を有意義に使っているようだ。
あっという間に時間は過ぎていき定時となる。
パソコンの電源を落とし、それぞれ帰宅の準備を整えていると楽しみですね、と雛菊ちゃんが笑いかけてくれた。
ニコッと笑うその姿は可愛らしくて私もそれに笑顔で頷く。
「心春ちゃん。ここが予約できたお店だから先に行ってて。俺は少し牧さんと話してから合流するね」
「うん分かった。先行って待ってるね」
翔くんから共有されたお店はここから歩いて5分くらいの場所のため4人でそのまま向かう。
雛菊ちゃんと大沢くんは2人で話しながらこれからの時間を楽しみにしてくれているようだ。
私の隣を歩く尚くんは静かで落ち着いていた。
一瞬も大沢くんから目を離さないくらいの勢いで前を歩く2人を見つめている。
(この歓迎会、波乱の予感⋯⋯)
「彼は⋯⋯俺の大学の同級生なんです」
「あ、そうだったんだ」
唐突に呟いた尚くんの視線は真っ直ぐ前を向いたままで見つめる先には大沢くんがいた。
2人にどんな過去があったのか分からないけど、学生時代に何かあったのは明白だった。
「それ、翔くんは知ってるの?」
「知ってます。でも詳しくは話してません」
「言わないの?」
「言ったら翔さん絶対心配するじゃないですか。あの人、めちゃくちゃいい人だから」
「⋯⋯でも、前私に尚くん言ってくれたよね。頼ってくださいねって。それ、そっくりそのまま尚くんに今度は私から贈っちゃいます」
私が困った時にその言葉を投げかけてくれたことを私は今でも覚えている。
雛菊ちゃんも尚くんも、翔くんもみんな私に同じように言葉をくれた。
だから今度は私がその言葉を尚くんに贈るんだ。
尚くんは私の隣でフッと小さく笑ったような気がした。
それと同時に尚くんの空気が少しだけ柔らかくなり、私の方をチラッと見た彼はメガネ越しの奥の瞳を和らげる。
お店に着いた私たちは店員さんに案内され席に移動した。
翔くんが探してくれたお店はオシャレなバルのような場所で生ハムやワインなどがオススメな場所のようだ。
5人が座れる椅子が用意されており、大沢くんの隣に雛菊ちゃんが座り、私の隣に尚くん、そして遅れてくる翔くんが座れるように空けておく。
「ひとまず先に飲み物とか、軽いおつまみ頼みましょう!なおなおとこはるんはどうしますか?」
「俺はジンジャエールにします」
「なおなお飲まないんです?」
「今日はやめときます」
「私はサングリアにしようかな」
「一緒に頼んじゃいますね」
尚くんの向かい側に座る大沢くんは余裕そうな笑みを浮かべていた。
この場の空間を楽しむように1人だけ全てを悟ったような空気をまとっている。
「高柳さんは飲まないんですね」
「飲まない気分なだけです」
それを知らない翔くんは雛菊ちゃんと一緒に行けそうなお店を調べだしている。
チラッと尚くんの方を見ると私の視線に気づいたのか安心させるように小さく微笑んでくれた。
私の思いを感じ取ってくれたのか、無言で大丈夫、と言われているようだ。
「嬉しいです。僕のために歓迎会やってくれるなんて」
「大したことじゃないけど、ご飯くらいはね」
「ふふふ。楽しみです。ね、なおなお!」
「あ、はい。そうですね」
みんなでご飯に行くことになったため、夜ご飯が作れない旨を伊織くんにメッセージを送る。
すると相変わらずすぐに返信が返ってきた。
"分かった。楽しんでおいで。帰りは迎えに行くから連絡待ってる"
その文章からも過保護さが伝わってきてしっかりと愛されていることがちゃんと分かる。
その後は穏やかに時間が過ぎていき、私は雛菊ちゃんと相談しながら制作を進めていった。
翔くんたちも大沢くんのプログラミングの知識や言語のことなどディスカッションを繰り返し、交換制度の時間を有意義に使っているようだ。
あっという間に時間は過ぎていき定時となる。
パソコンの電源を落とし、それぞれ帰宅の準備を整えていると楽しみですね、と雛菊ちゃんが笑いかけてくれた。
ニコッと笑うその姿は可愛らしくて私もそれに笑顔で頷く。
「心春ちゃん。ここが予約できたお店だから先に行ってて。俺は少し牧さんと話してから合流するね」
「うん分かった。先行って待ってるね」
翔くんから共有されたお店はここから歩いて5分くらいの場所のため4人でそのまま向かう。
雛菊ちゃんと大沢くんは2人で話しながらこれからの時間を楽しみにしてくれているようだ。
私の隣を歩く尚くんは静かで落ち着いていた。
一瞬も大沢くんから目を離さないくらいの勢いで前を歩く2人を見つめている。
(この歓迎会、波乱の予感⋯⋯)
「彼は⋯⋯俺の大学の同級生なんです」
「あ、そうだったんだ」
唐突に呟いた尚くんの視線は真っ直ぐ前を向いたままで見つめる先には大沢くんがいた。
2人にどんな過去があったのか分からないけど、学生時代に何かあったのは明白だった。
「それ、翔くんは知ってるの?」
「知ってます。でも詳しくは話してません」
「言わないの?」
「言ったら翔さん絶対心配するじゃないですか。あの人、めちゃくちゃいい人だから」
「⋯⋯でも、前私に尚くん言ってくれたよね。頼ってくださいねって。それ、そっくりそのまま尚くんに今度は私から贈っちゃいます」
私が困った時にその言葉を投げかけてくれたことを私は今でも覚えている。
雛菊ちゃんも尚くんも、翔くんもみんな私に同じように言葉をくれた。
だから今度は私がその言葉を尚くんに贈るんだ。
尚くんは私の隣でフッと小さく笑ったような気がした。
それと同時に尚くんの空気が少しだけ柔らかくなり、私の方をチラッと見た彼はメガネ越しの奥の瞳を和らげる。
お店に着いた私たちは店員さんに案内され席に移動した。
翔くんが探してくれたお店はオシャレなバルのような場所で生ハムやワインなどがオススメな場所のようだ。
5人が座れる椅子が用意されており、大沢くんの隣に雛菊ちゃんが座り、私の隣に尚くん、そして遅れてくる翔くんが座れるように空けておく。
「ひとまず先に飲み物とか、軽いおつまみ頼みましょう!なおなおとこはるんはどうしますか?」
「俺はジンジャエールにします」
「なおなお飲まないんです?」
「今日はやめときます」
「私はサングリアにしようかな」
「一緒に頼んじゃいますね」
尚くんの向かい側に座る大沢くんは余裕そうな笑みを浮かべていた。
この場の空間を楽しむように1人だけ全てを悟ったような空気をまとっている。
「高柳さんは飲まないんですね」
「飲まない気分なだけです」
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