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尚の抱えるもの 2
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午前の作業を終えてお昼を少し過ぎたくらい、私たちにも休憩の時間がやってきた。
朝の挨拶の後は比較的穏やかに時間が過ぎているようにも感じるがやはり尚くんの様子が気になる。
「ふう~お疲れ様大沢くん。次、午後からまたよろしくね」
「はい。こちらこそです」
「さて、今日みんなはお昼どうする?」
「今日は大沢さんもいるのであの美味しいチキン南蛮弁当にしませんか!」
「あ、いいね雛菊。そうしようか。大沢くんもそれでいいかな?」
「楽しみですチキン南蛮弁当」
お昼ご飯は以前みんなで買って美味しかったチキン南蛮をキッチンカーで購入することとなり、翔くんと雛菊ちゃんが人数分を買いに行ってくれることになった。
残された私たちはみんなの分の飲み物などを準備する。
「尚く──」
「あの、加賀美さん」
あまり話さない尚くんが気になり声をかけようとするが、それと同じタイミングで大沢くんに話しかけられた。
焦げ茶の髪の隙間から覗く瞳が私の目を真っ直ぐ捉えており、目を逸らせなくなる。
「な、なんでしょう」
「申し訳ないのですが、お手洗いの場所を教えていただきたくて⋯⋯」
「あ、はい。分かりました⋯」
(トイレなら尚くんに聞くほうがいいんじゃ⋯⋯)
そんなことを思っていると尚くんも同じことを思ったのかふと立ち上がり私の前に立ちはだかる。
それはまるで大沢くんから守るように壁になってくれているようにも感じて、それに違和感を覚えた。
「トイレなら俺が案内しますよ」
「⋯⋯⋯いいんですか?ならお願いします」
一瞬の沈黙の後、にこやかに微笑んだ大沢くんは尚くんと共に背中を向けて歩き出す。
2人の向き合う視線が普通じゃない気がしてならない。
得体の知れないもやもやを抱えていると明らかに雰囲気の重たい2人が戻ってきた。
いや、正確に言うと空気の重たい尚くんと能面のような笑みを浮かべた大沢くん、だ。
席に戻ってきた途端に大沢くんは私に距離を詰めてきた。
突然の距離感にびっくりしていると人懐こい笑顔を浮かべて他愛もない話をしてくる。
「さすが東雲ホールディングスですね。社内も広くてすごく綺麗でした」
「確かに。どこまでも整備されてて抜かりないですよね」
「この部屋の中にドリンクバーなどついてるのは驚きました。kisaragiにもつけてもらえないか聞いてみようと思ったくらいです」
傍から聞けばなんてことない普通の会話だと思うけど、なんだか尚くんの存在をないもののように扱っているような気がしてならない。
尚くん自身も私と大沢くんが話すことをなんだか気にしているみたいで落ち着きがなさそうだ。
「加賀美さんはここの会社に務めて長いんですか?」
「いえ、私は中途入社なのでまだまだですよ」
「そうなんですか?さっきやってたプログラミングの言語もすごく綺麗でしたよ。長くゲーム制作に携わってるのかと思ってました」
大沢くんのために用意されている椅子に腰をかけると距離をぐっと詰めてくる。
膝がぶつかりそうな距離感に驚いてしまい無意識に少しだけ離れようと背もたれにもたれかかった。
プログラミング言語というのは同じことを表現しようとしてもいくつもの方法があるため、その人の癖が出やすいとも言われている。
綺麗、というのはそういった癖のことを指しているんだろう。
一瞬画面を開いていたのを見ただけでそこまで判断できるのがやはり彼の優秀さを物語っていた。
尚くんもプログラミング言語を一瞬で読み取ることができるため、本当に彼らの能力値は近いようだ。
「心春さん」
「ん、どうしたの?」
「みんなの分の飲み物準備したいので手伝ってもらっていいですか?」
「うん。もちろんだよ」
初対面の大沢くんとの距離感に少しだけ困っていたため尚くんの言葉がとても助け舟のように感じた。
もしかしたら分かってて言葉をかけてくれたのかもしれない。
「大沢くん何飲みますか?」
「なら僕は緑茶でお願いします」
「分かりました。少しここで待っててください。みんなの分取ってくるので」
午前の作業を終えてお昼を少し過ぎたくらい、私たちにも休憩の時間がやってきた。
朝の挨拶の後は比較的穏やかに時間が過ぎているようにも感じるがやはり尚くんの様子が気になる。
「ふう~お疲れ様大沢くん。次、午後からまたよろしくね」
「はい。こちらこそです」
「さて、今日みんなはお昼どうする?」
「今日は大沢さんもいるのであの美味しいチキン南蛮弁当にしませんか!」
「あ、いいね雛菊。そうしようか。大沢くんもそれでいいかな?」
「楽しみですチキン南蛮弁当」
お昼ご飯は以前みんなで買って美味しかったチキン南蛮をキッチンカーで購入することとなり、翔くんと雛菊ちゃんが人数分を買いに行ってくれることになった。
残された私たちはみんなの分の飲み物などを準備する。
「尚く──」
「あの、加賀美さん」
あまり話さない尚くんが気になり声をかけようとするが、それと同じタイミングで大沢くんに話しかけられた。
焦げ茶の髪の隙間から覗く瞳が私の目を真っ直ぐ捉えており、目を逸らせなくなる。
「な、なんでしょう」
「申し訳ないのですが、お手洗いの場所を教えていただきたくて⋯⋯」
「あ、はい。分かりました⋯」
(トイレなら尚くんに聞くほうがいいんじゃ⋯⋯)
そんなことを思っていると尚くんも同じことを思ったのかふと立ち上がり私の前に立ちはだかる。
それはまるで大沢くんから守るように壁になってくれているようにも感じて、それに違和感を覚えた。
「トイレなら俺が案内しますよ」
「⋯⋯⋯いいんですか?ならお願いします」
一瞬の沈黙の後、にこやかに微笑んだ大沢くんは尚くんと共に背中を向けて歩き出す。
2人の向き合う視線が普通じゃない気がしてならない。
得体の知れないもやもやを抱えていると明らかに雰囲気の重たい2人が戻ってきた。
いや、正確に言うと空気の重たい尚くんと能面のような笑みを浮かべた大沢くん、だ。
席に戻ってきた途端に大沢くんは私に距離を詰めてきた。
突然の距離感にびっくりしていると人懐こい笑顔を浮かべて他愛もない話をしてくる。
「さすが東雲ホールディングスですね。社内も広くてすごく綺麗でした」
「確かに。どこまでも整備されてて抜かりないですよね」
「この部屋の中にドリンクバーなどついてるのは驚きました。kisaragiにもつけてもらえないか聞いてみようと思ったくらいです」
傍から聞けばなんてことない普通の会話だと思うけど、なんだか尚くんの存在をないもののように扱っているような気がしてならない。
尚くん自身も私と大沢くんが話すことをなんだか気にしているみたいで落ち着きがなさそうだ。
「加賀美さんはここの会社に務めて長いんですか?」
「いえ、私は中途入社なのでまだまだですよ」
「そうなんですか?さっきやってたプログラミングの言語もすごく綺麗でしたよ。長くゲーム制作に携わってるのかと思ってました」
大沢くんのために用意されている椅子に腰をかけると距離をぐっと詰めてくる。
膝がぶつかりそうな距離感に驚いてしまい無意識に少しだけ離れようと背もたれにもたれかかった。
プログラミング言語というのは同じことを表現しようとしてもいくつもの方法があるため、その人の癖が出やすいとも言われている。
綺麗、というのはそういった癖のことを指しているんだろう。
一瞬画面を開いていたのを見ただけでそこまで判断できるのがやはり彼の優秀さを物語っていた。
尚くんもプログラミング言語を一瞬で読み取ることができるため、本当に彼らの能力値は近いようだ。
「心春さん」
「ん、どうしたの?」
「みんなの分の飲み物準備したいので手伝ってもらっていいですか?」
「うん。もちろんだよ」
初対面の大沢くんとの距離感に少しだけ困っていたため尚くんの言葉がとても助け舟のように感じた。
もしかしたら分かってて言葉をかけてくれたのかもしれない。
「大沢くん何飲みますか?」
「なら僕は緑茶でお願いします」
「分かりました。少しここで待っててください。みんなの分取ってくるので」
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