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伊織side 〈姿を表す感情〉 5

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そんなタイミングでインターホンがなる音が聞こえてきた。
モニターを確認すると何やら言い合いをしているような姿の2人が目に入る。


心春と一緒に並んでそれをしばらく眺めていると再びインターホンが鳴った。
足早に玄関に2人で向かい扉を開けるといきなり2人の声が響いてきて家の中が一気に賑やかになる。


「さっきエントランスで清水に会ったんだけど、全然変わってないね!」

「いやいやそれはこっちのセリフ!高校生の時のまんまじゃん!成長止まってる?」

「え、それ俺褒められてる?若々しいってこと?それとも子供っぽいまま成長してないってこと?」

「どっちでもいいじゃん別に!それより心春久しぶり~!最近全然会えてなかったから会えて嬉しい」


清水はそう言いながら心春にぎゅっと抱きつく。
そんな姿を見て嬉しそうに微笑む心春が可愛くて、心がジーンと温かくなった。


俺に見せる笑顔とはまた違ったその表情はきっと清水にしか見せないもので、それを見られるのもまた特別なようにも感じて清水には感謝しかない。
こんな風に笑顔にしてくれる存在が心春の近くにいることが誇らしかった。


「2人とも久しぶりに会ったのに仲良しだね」

「別に仲良しとかじゃないよ。高校の時もすごい喋ってたわけじゃないしね」

「確かに。俺ら4人って特別仲良かったわけじゃないけど、なんか不思議な縁だよな」


リビングに案内すると清水からおーっという小さな歓声が聞こえた。
この家に俺と心春が結婚する前に翔は何度か来たことがあるが、それ以降は誰も呼んでいない。


「東雲くんって本当に東雲ホールディングスの一人息子なんだね。実感湧いてきた」

「なんだそれ」

「想像つかなかったからさ!でもオシャレな家だね。シンプルだけど色味も統一されてるしすごくいいと思う」


そういえば清水はインテリアコーディネーターだと心春から聞いていたため、彼女からそう言われるのは単純に嬉しいことだ。
清水は手土産としてケーキを買ってきてくれたようで、翔はたくさんのお酒を持ってきてくれた。


それを受け取った心春は冷蔵庫にケーキをしまい、お酒は何本か用意しコップを4人分準備する。
お寿司以外に心春がアサリの酒蒸しやきゅうりの塩昆布和え、お吸い物などを準備してくれたため最後にそれをテーブルに準備した。


「うわ~俺心春ちゃんの手料理食べれるんだ。嬉しいな~」

「翔の分はないぞ」

「えっ?!俺にそんなに嫉妬しなくていいじゃん!友達じゃん!俺は特別でしょ!」

「うるさい」

「またまた~俺のこと好きなくせに」

「離れろうざい」


俺とは正反対とも言えるほど翔は明るくてコミュニケーション能力も高く、誰とでも仲良くなれるタイプだ。
そんなこいつの明るさが時に羨ましいと思うこともたくさんある。


高校の時も友達と上手く関係を構築できたのも翔がいてくれたからだ。
だけどそれは絶対直接翔には言わない。
言えば絶対調子に乗るからだ。


「さて、全部準備もできたからみんなで食べよう」

「ん~美味しそう。ありがとね心春」

「いいんだよ。ちなみに寧々ちゃんの好きな日本酒、買ってきちゃいました!」

「え、うそ?!やだうれしい!大好き~心春」

「うふふ私もだよ」


目の前で心春と清水が抱き合う姿が癒し空間そのもので尊い、という言葉が相応しい。
こんな風に心春が笑ってくれるならもう少し清水と話してみよう、と密かに心に誓った。


俺の隣に翔、心春の隣に清水という形でダイニングテーブルにそれぞれ腰をかけ、取り皿に醤油などを準備し4人揃って手を合わせていただきますをする。


そして俺たちのプチ同窓会が始まったのだった。
翔はというと大好物のお寿司を前にワクワクしておりいつもよりテンションが高そうだ。


こういう時に翔はまずお寿司の中でも1番好きなサーモンから食べる癖があり、それをここでも早速発揮していた。
隣で美味しそうにお寿司を頬張る翔を見ると、お寿司にしてよかったと思える。


清水はというといきなり心春が準備した日本酒を開け、猪口に注がれたお酒をグイッと一気飲みしていた。
お酒が強いとは聞いていたが、そんな男らしさに姐さん、という言葉がふと思い浮かぶ。
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