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お預け後の夜 1
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年始のパーティーも終盤を迎え、順番に帰宅する人たちが増えてきた。
伊織くんの妻として彼の隣で何度もお辞儀をして挨拶を繰り返す時間もいよいよ終わりのようだ。
「疲れただろ?」
「まぁ少しね」
私は帰宅する前にビュッフェの食事を最後に食べきるためにお皿に料理を盛る。
食意地が張っているかと思われるが、本当に美味しいから仕方ない。
そんな姿を伊織くんはクスッと笑いながら見守ってくれる。
こんなところまで伊織くんは私に甘い。
「俺もいっぱい食べようかな」
「爆食夫婦だね」
そんなことを言い合いながらお互いに取り皿にこれでもかと言うほどの料理を乗せて顔を見合って食べる。
肩の荷がおりたことによってさっきよりも食事がさらに美味しい気がした。
ビュッフェを最後まで楽しみつつ、参加してくれた人たちが全員帰るまで私たちは残る。
一通り見送った私たちはいよいよ帰り支度を始めた。
お義父さんたちはおじい様たちと少し話があるようでもう少し残るとのことだ。
私はというと、麗華さんに起こった詳細を伝える連絡を入れるため伊織くんと別れた。
宴会会場を出て邪魔にならないエントランスまで来てから麗華さん宛に電話を入れる。
数コール後にすぐ麗華さんは出てくれた。
「麗華さん?今お時間いいですか?」
『もちろんです。どうでしたか?』
「一旦は大丈夫そうです。快くではなかったですけど、納得はしてもらえました」
『よかった⋯⋯⋯』
電話の向こう側で心底安心したように息を吐いたのが分かった。
きっと今は大切な彼と一緒にいるだろうが、気が気ではなかったのだろう。
麗華さんもまたとても勇気のある選択をしたのだから、私たちの動向が気になるのも無理はない。
本当の意味でやっと大切な彼と過ごす時間を楽しめるのはこれからになるかもしれない。
「伊織くんが考えてくれた案で一旦納得してもらえました。きっとこれから麗華さんにも協力してもらいたいこともあると思います。その時はぜひ、お力をお借りしたいです」
『もちろんですよ。全力でお応えします』
「ありがとうございます。今は彼と一緒ですか?」
『はい。ちょうど誕生日のケーキを食べようって話してたところです』
「邪魔してしまってごめんなさい。私、切りますね」
『心春さん、待ってください』
電話を切ろうとすると向こうから焦ったようにそれを止める麗華さんの声が聞こえてきた。
大切な時間の邪魔になりたくはなかったが、まだ何か伝えるべき内容があっただろうか。
『私、心春さんに出会えてよかった。東雲さんと結婚しろって話がなきゃ、心春さんに会えなかったと思うと、この話も無駄ではなかったと思えます』
「麗華さん⋯⋯」
『心春さんと出会ってからいろんなことが上手くいっています。背中を押してくれたあなたがいたからです』
「嬉しいです。麗華さんのそんな存在になれて」
『これからケーキと一緒にあのカップでコーヒーを飲もうと思っています』
一緒に出かけた時に大切な人を想って選んだカップを使える時間が作れたようですごく嬉しい。
あのカップを選んでいた麗華さんは本当に幸せそうで見ていて自然と笑顔になれた。
『今度、改めて彼から必ずお礼を言わせてください』
「わざわざありがとうございます」
『お礼を言っても足りないくらいのことをしてくれました』
「そんなことないですよ。最終的に行動したのは麗華さんなんですから」
こうやって麗華さんと次の話ができることはとても嬉しいことだ。
株式会社kisaragiの令嬢で私とはあまり交わるべきじゃない立場かもしれないが、単純に麗華さんという人柄に惹かれたのは事実だった。
伊織くんの妻として彼の隣で何度もお辞儀をして挨拶を繰り返す時間もいよいよ終わりのようだ。
「疲れただろ?」
「まぁ少しね」
私は帰宅する前にビュッフェの食事を最後に食べきるためにお皿に料理を盛る。
食意地が張っているかと思われるが、本当に美味しいから仕方ない。
そんな姿を伊織くんはクスッと笑いながら見守ってくれる。
こんなところまで伊織くんは私に甘い。
「俺もいっぱい食べようかな」
「爆食夫婦だね」
そんなことを言い合いながらお互いに取り皿にこれでもかと言うほどの料理を乗せて顔を見合って食べる。
肩の荷がおりたことによってさっきよりも食事がさらに美味しい気がした。
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私はというと、麗華さんに起こった詳細を伝える連絡を入れるため伊織くんと別れた。
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数コール後にすぐ麗華さんは出てくれた。
「麗華さん?今お時間いいですか?」
『もちろんです。どうでしたか?』
「一旦は大丈夫そうです。快くではなかったですけど、納得はしてもらえました」
『よかった⋯⋯⋯』
電話の向こう側で心底安心したように息を吐いたのが分かった。
きっと今は大切な彼と一緒にいるだろうが、気が気ではなかったのだろう。
麗華さんもまたとても勇気のある選択をしたのだから、私たちの動向が気になるのも無理はない。
本当の意味でやっと大切な彼と過ごす時間を楽しめるのはこれからになるかもしれない。
「伊織くんが考えてくれた案で一旦納得してもらえました。きっとこれから麗華さんにも協力してもらいたいこともあると思います。その時はぜひ、お力をお借りしたいです」
『もちろんですよ。全力でお応えします』
「ありがとうございます。今は彼と一緒ですか?」
『はい。ちょうど誕生日のケーキを食べようって話してたところです』
「邪魔してしまってごめんなさい。私、切りますね」
『心春さん、待ってください』
電話を切ろうとすると向こうから焦ったようにそれを止める麗華さんの声が聞こえてきた。
大切な時間の邪魔になりたくはなかったが、まだ何か伝えるべき内容があっただろうか。
『私、心春さんに出会えてよかった。東雲さんと結婚しろって話がなきゃ、心春さんに会えなかったと思うと、この話も無駄ではなかったと思えます』
「麗華さん⋯⋯」
『心春さんと出会ってからいろんなことが上手くいっています。背中を押してくれたあなたがいたからです』
「嬉しいです。麗華さんのそんな存在になれて」
『これからケーキと一緒にあのカップでコーヒーを飲もうと思っています』
一緒に出かけた時に大切な人を想って選んだカップを使える時間が作れたようですごく嬉しい。
あのカップを選んでいた麗華さんは本当に幸せそうで見ていて自然と笑顔になれた。
『今度、改めて彼から必ずお礼を言わせてください』
「わざわざありがとうございます」
『お礼を言っても足りないくらいのことをしてくれました』
「そんなことないですよ。最終的に行動したのは麗華さんなんですから」
こうやって麗華さんと次の話ができることはとても嬉しいことだ。
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